可愛い子には旅をさせよ
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同日 午後 13時 20分
大山田 遊園地 屋外ステージ 舞台袖
「……まさか私がステージに立てるなんて思わなかったよ」
「オレも……泥棒と一緒に立つなんて思いませんでしたよ」
王泥喜はパピヨンマスクを身に着けた男をじっと見つめる。
「なんですかその仮面」
「この顔は知られちまってるからちょっとした変装だ」
ふふんっと鼻息荒くしつつ告げる鬼の青年に微妙にしかめた顔を見せる。
「カッコよくない?」
「別に」
「……いいと思うんだけどな」
眼鏡の美青年がステージのそでから客席を覗いた。
王泥喜はその横顔をじっと見つめる。
鬼の青年は切れ長の目を細めて、宝石でも見ているかのように瞳をきらきらと輝かせている。
頬をうっすらと朱に染め、唇は柔らかな笑みを描いていた。
「……嬉しそうですね」
ん?と王泥喜に視線を向け、そうか?と鬼の青年は朗らかに笑う。
「……そうだな。緊張もしてるけどな」
「えっ。鬼風さんが?」
腕輪が反応しなかったので、本音だと気付き王泥喜はぎょっと目を見開いた。
肩をすくめながら鬼の泥棒が答える。
「私だって緊張するさ。……むしろ本業よりも緊張してる」
ほらっと手を王泥喜に見せてみると、微かに指が揺れ動いているのがわかる。
「震えが止まらないだろ」
ハハッと少し引きつった笑みを見せる泥棒に、王泥喜は口を開く。
「……人を呑むといいですよ」
「は?」
王泥喜の言葉に怪訝そうに鬼風が振り向く。
「その、こう、手のひらに“人”って書いて、それを飲み込むと緊張がなくなるって」
鬼の泥棒はクスクスと笑う。
「なっ!?なんで笑うんですか!?」
「いや、ごめんごめん。……あぁ、それで効果はあったのかな?」
うぐっと言葉を詰まらせる王泥喜を見て、再び鬼風は笑う。
「なかなかの効果があったらしいな、弁護人」
「たったしかに、俺のときは効きませんでしたが……」
ごにょごにょと言葉を発している王泥喜の右手を鬼風は手首ごと掴んだ。
彼の掌を薄い唇の前まで持ってきて、“カプ”と音だけを発する。
そのあと、鬼風は王泥喜の手首をそっと放した。
伏せた目元をゆっくりと彼の方へ向ける。
男にしては長い睫毛が揺れるのを見て、王泥喜は無意識に息を呑む。
にこっと鬼の泥棒がいつもの笑いを向けた。
「あぁ、大丈夫そうだ。よく効くおまじないだな」
彼が調子を取り戻したようで、王泥喜はほっと息をついた。
確かに、鬼風は緊張していたようだと王泥喜はここで気づく。
今はすっかりいつもの王泥喜をからかって遊ぶ鬼の青年に戻っている。
「……そろそろ出番ですよ」
王泥喜は視線を無理矢理鬼風からステージへと向けた。
「……まさか私がステージに立てるなんて思わなかったよ」
「オレも……泥棒と一緒に立つなんて思いませんでしたよ」
王泥喜はパピヨンマスクを身に着けた男をじっと見つめる。
「なんですかその仮面」
「この顔は知られちまってるからちょっとした変装だ」
ふふんっと鼻息荒くしつつ告げる鬼の青年に微妙にしかめた顔を見せる。
「カッコよくない?」
「別に」
「……いいと思うんだけどな」
眼鏡の美青年がステージのそでから客席を覗いた。
王泥喜はその横顔をじっと見つめる。
鬼の青年は切れ長の目を細めて、宝石でも見ているかのように瞳をきらきらと輝かせている。
頬をうっすらと朱に染め、唇は柔らかな笑みを描いていた。
「……嬉しそうですね」
ん?と王泥喜に視線を向け、そうか?と鬼の青年は朗らかに笑う。
「……そうだな。緊張もしてるけどな」
「えっ。鬼風さんが?」
腕輪が反応しなかったので、本音だと気付き王泥喜はぎょっと目を見開いた。
肩をすくめながら鬼の泥棒が答える。
「私だって緊張するさ。……むしろ本業よりも緊張してる」
ほらっと手を王泥喜に見せてみると、微かに指が揺れ動いているのがわかる。
「震えが止まらないだろ」
ハハッと少し引きつった笑みを見せる泥棒に、王泥喜は口を開く。
「……人を呑むといいですよ」
「は?」
王泥喜の言葉に怪訝そうに鬼風が振り向く。
「その、こう、手のひらに“人”って書いて、それを飲み込むと緊張がなくなるって」
鬼の泥棒はクスクスと笑う。
「なっ!?なんで笑うんですか!?」
「いや、ごめんごめん。……あぁ、それで効果はあったのかな?」
うぐっと言葉を詰まらせる王泥喜を見て、再び鬼風は笑う。
「なかなかの効果があったらしいな、弁護人」
「たったしかに、俺のときは効きませんでしたが……」
ごにょごにょと言葉を発している王泥喜の右手を鬼風は手首ごと掴んだ。
彼の掌を薄い唇の前まで持ってきて、“カプ”と音だけを発する。
そのあと、鬼風は王泥喜の手首をそっと放した。
伏せた目元をゆっくりと彼の方へ向ける。
男にしては長い睫毛が揺れるのを見て、王泥喜は無意識に息を呑む。
にこっと鬼の泥棒がいつもの笑いを向けた。
「あぁ、大丈夫そうだ。よく効くおまじないだな」
彼が調子を取り戻したようで、王泥喜はほっと息をついた。
確かに、鬼風は緊張していたようだと王泥喜はここで気づく。
今はすっかりいつもの王泥喜をからかって遊ぶ鬼の青年に戻っている。
「……そろそろ出番ですよ」
王泥喜は視線を無理矢理鬼風からステージへと向けた。