可愛い子には旅をさせよ
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「あー。さっぱりした」
ソファに腰かけ、湿った髪をタオルでがしがしと拭く。
風呂上がりの青年を王泥喜はベッドに寝転がりながら、じっと見据える。
「なんだ?そんなに見つめられたら鬼風さん照れちゃう」
くねくねとした動きを綺麗に無視して、王泥喜は問いかける。
「どうしてこんなことしたんですか?」
真犯人を追い詰めた後のようなセリフを、王泥喜はこの旅行をすることになった原因である鬼の泥棒に投げかけた。
「それじゃあまるで私が犯罪者みたいな問いかけじゃないか」
「アンタ犯罪者だろ」
「なんだ。気づいてたのか」
王泥喜の黒瞳がじっと射抜くように見つめても、鬼の青年は秋風のような涼し気な表情を崩さない。
王泥喜は目をきつく細めながら、今まで疑問に思っていたことを問いかける。
「どうして、オレに近づくんですか」
「君が好きだから」
そう告げた鬼の泥棒に、王泥喜の顔は何の感情も浮かべない。
「嘘吐き」
王泥喜は気づいていた。
好きだと鬼の泥棒が愛の告白をした瞬間、相手が嘘を吐いていることに。
締めつける腕輪が持ち主に嘘を伝え、彼の黒褐色の双眸がそれを見逃さない。
「ひどいなぁー」
王泥喜の冷めた言葉にも、鬼風は優しい笑顔のままだ。
けれど、その細められた薄闇の黒瞳を見るたび、王泥喜の仄暗い胸の奥底で警告めいた赤い光が明滅している。
――――――この人は、危険だ。
まるで崖の上から奈落を覗き込んでいるかのようだった。
本能とでも言うべきなのだろうか。
王泥喜はこの鬼の泥棒がいくら危害を加えず、今まで自分たちの味方をしてきてくれたとしても、王泥喜はこの先、この鬼の泥棒を信頼することはできそうになかった。
元師匠から論理的に考えるクセをつけられている彼にしては珍しく、根拠はなく直感で彼を信用してはいけないと思った。
彼の身体中の細胞が、血液が、鼓動が、この鬼の青年に近づいてはいけないと警報を鳴らしているからだ。
「本当はみぬきちゃんが好きなくせに」
鬼の青年は顔を乗せていた掌から顔を上げ、王泥喜の顔を凝視する。
「まさか鈍ちんの王泥喜くんに指摘されるとは思わなかった」
「どういう意味ですか」
「だって彼女いない=年齢の君に言われるとは思わなくて、つい驚いちゃった」
「うっ」
ぐさっと王泥喜の胸に鬼の言葉が刺さる。
「れっ恋愛にそういうのはかっ関係ないと思います」
「ははははっ弁護人。おデコが動揺しまくってるぞ」
「意味がわかりません!なんですかおデコが動揺って」
ピコンッと王泥喜の丸く白い額を指で弾く。
「いっつ」
「ははは」
「それでどうなんですか」
「さぁ?」
鬼の青年は笑って首を傾げる。
「なんですかその答え」
「そんなに気にするってことは、もしやヤキモチ!?」
「ちがう」
はしゃいだ声を上げた泥棒に、辛辣な声色で否定した。
「なーんだぁ。つまんないのー」
「それで、どうなんですか」
「君に教えてなんの得があるの?」
冷めた視線を返され、王泥喜はたじろく。
「なんのって……恋のキューピッドとか」
「いらん」
即答されぐっとつまる王泥喜。
「それに、あの子とはそういうのではない。もしそう言った感情があればわざわざ君の部屋まで逃げたりするものか」
「責任を取りたくなくて逃げただけなんじゃないんですか」
ひんやりと底冷えするような視線で王泥喜は鬼風を睨むように見つめる。
「んなわけあるか!!……責任取ろうにもそもそも私に“子種”がないからな」
ぶっと王泥喜が鬼風が発した言葉に吹いた。
「たったねっ!?にいって!!!!」
「いや、だから私じゃ彼女に種付けできないって話」
「だから、言い方!!なんでそんな……」
ん?と王泥喜はその言葉に疑問を覚えた。
「“ない”?」
少し迷ったように鬼風が視線を泳がせる。
「……君ん家に居た“ミケ子”とおんなじ」
世にも珍しい三毛猫の雄。
王泥喜はとある事件をきっかけに飼っていた猫の話が出て、黙る。
三毛猫の雄は貴重であり、生殖能力を持たない。
「……すいません」
あー……ぽりぽりとバツが悪そうに鬼風がこめかみをかいた。
「君が謝らんでいいよ。うかつに出したのは私だからな。まぁ、そういうことだから君を襲う心配もしなくていいさ」
微妙な空気が部屋に漂う。
あーそろそろ寝るかと曖昧な笑みを浮かべ言った。
王泥喜はなんともいえない感情を胸に残しつつ、鬼の泥棒の言葉に黙って頷いた。
ソファに腰かけ、湿った髪をタオルでがしがしと拭く。
風呂上がりの青年を王泥喜はベッドに寝転がりながら、じっと見据える。
「なんだ?そんなに見つめられたら鬼風さん照れちゃう」
くねくねとした動きを綺麗に無視して、王泥喜は問いかける。
「どうしてこんなことしたんですか?」
真犯人を追い詰めた後のようなセリフを、王泥喜はこの旅行をすることになった原因である鬼の泥棒に投げかけた。
「それじゃあまるで私が犯罪者みたいな問いかけじゃないか」
「アンタ犯罪者だろ」
「なんだ。気づいてたのか」
王泥喜の黒瞳がじっと射抜くように見つめても、鬼の青年は秋風のような涼し気な表情を崩さない。
王泥喜は目をきつく細めながら、今まで疑問に思っていたことを問いかける。
「どうして、オレに近づくんですか」
「君が好きだから」
そう告げた鬼の泥棒に、王泥喜の顔は何の感情も浮かべない。
「嘘吐き」
王泥喜は気づいていた。
好きだと鬼の泥棒が愛の告白をした瞬間、相手が嘘を吐いていることに。
締めつける腕輪が持ち主に嘘を伝え、彼の黒褐色の双眸がそれを見逃さない。
「ひどいなぁー」
王泥喜の冷めた言葉にも、鬼風は優しい笑顔のままだ。
けれど、その細められた薄闇の黒瞳を見るたび、王泥喜の仄暗い胸の奥底で警告めいた赤い光が明滅している。
――――――この人は、危険だ。
まるで崖の上から奈落を覗き込んでいるかのようだった。
本能とでも言うべきなのだろうか。
王泥喜はこの鬼の泥棒がいくら危害を加えず、今まで自分たちの味方をしてきてくれたとしても、王泥喜はこの先、この鬼の泥棒を信頼することはできそうになかった。
元師匠から論理的に考えるクセをつけられている彼にしては珍しく、根拠はなく直感で彼を信用してはいけないと思った。
彼の身体中の細胞が、血液が、鼓動が、この鬼の青年に近づいてはいけないと警報を鳴らしているからだ。
「本当はみぬきちゃんが好きなくせに」
鬼の青年は顔を乗せていた掌から顔を上げ、王泥喜の顔を凝視する。
「まさか鈍ちんの王泥喜くんに指摘されるとは思わなかった」
「どういう意味ですか」
「だって彼女いない=年齢の君に言われるとは思わなくて、つい驚いちゃった」
「うっ」
ぐさっと王泥喜の胸に鬼の言葉が刺さる。
「れっ恋愛にそういうのはかっ関係ないと思います」
「ははははっ弁護人。おデコが動揺しまくってるぞ」
「意味がわかりません!なんですかおデコが動揺って」
ピコンッと王泥喜の丸く白い額を指で弾く。
「いっつ」
「ははは」
「それでどうなんですか」
「さぁ?」
鬼の青年は笑って首を傾げる。
「なんですかその答え」
「そんなに気にするってことは、もしやヤキモチ!?」
「ちがう」
はしゃいだ声を上げた泥棒に、辛辣な声色で否定した。
「なーんだぁ。つまんないのー」
「それで、どうなんですか」
「君に教えてなんの得があるの?」
冷めた視線を返され、王泥喜はたじろく。
「なんのって……恋のキューピッドとか」
「いらん」
即答されぐっとつまる王泥喜。
「それに、あの子とはそういうのではない。もしそう言った感情があればわざわざ君の部屋まで逃げたりするものか」
「責任を取りたくなくて逃げただけなんじゃないんですか」
ひんやりと底冷えするような視線で王泥喜は鬼風を睨むように見つめる。
「んなわけあるか!!……責任取ろうにもそもそも私に“子種”がないからな」
ぶっと王泥喜が鬼風が発した言葉に吹いた。
「たったねっ!?にいって!!!!」
「いや、だから私じゃ彼女に種付けできないって話」
「だから、言い方!!なんでそんな……」
ん?と王泥喜はその言葉に疑問を覚えた。
「“ない”?」
少し迷ったように鬼風が視線を泳がせる。
「……君ん家に居た“ミケ子”とおんなじ」
世にも珍しい三毛猫の雄。
王泥喜はとある事件をきっかけに飼っていた猫の話が出て、黙る。
三毛猫の雄は貴重であり、生殖能力を持たない。
「……すいません」
あー……ぽりぽりとバツが悪そうに鬼風がこめかみをかいた。
「君が謝らんでいいよ。うかつに出したのは私だからな。まぁ、そういうことだから君を襲う心配もしなくていいさ」
微妙な空気が部屋に漂う。
あーそろそろ寝るかと曖昧な笑みを浮かべ言った。
王泥喜はなんともいえない感情を胸に残しつつ、鬼の泥棒の言葉に黙って頷いた。