可愛い子には旅をさせよ
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同日 午後 3 時 2 分
大山田 遊園地
「ほらほら!なにしてるんですか!次行きますよー」
ぐったりとベンチにへたり込む青年二人に向かって、みぬきが声をかける。
「あの子、なんであんな元気なんだよ」
「みぬきちゃんは絶叫系大好きですから……」
「あの黄色い……希月ちゃんって子もあんな感じ?」
「いや、希月さんはあんまり得意じゃないですよ。絶叫系」
「意外だな。あの子の方が好きそうなのに」
「というか、オレはあんたが絶叫系苦手な方が意外でしたよ」
「そうか?」
「もう!はやくはやく!」
二人の青年がのそりと立ち上がる。
「さて、どうするよ。ダーリン。
うちのわがままお姫様が超高速ジェットコースター“カメハメハ”をご所望しているようだが」
「誰がダーリンですか。……絶対乗りたくないです。
ここは別のもので気をそらしましょう」
「となると」
ちらっとある方向を鬼風が見る。
鬼風の視線の先を王泥喜の目が追う。
鬼風と王泥喜は視線を合わせ、お互い頷き合う。
「みぬきちゃん、一度休憩しない?」
「えー、まだ序の口ですよ?」
「ソフトクリーム屋があるから、行ってみないかい?私のおごりで」
ソフトクリームの屋台を見て、みぬきは目を輝かせる。
「あっ本当です。おいしそうですね!行きましょう!」
王泥喜と鬼風は同時にほっと息を吐いた。
「ソフトクリームいらんかねぇー」
白い髪をソフトクリームのように巻いている老人が店番をしていた。
「今ならソフトクリーム占いももれなくついてくるぞー」
「ソフト」「クリーム」「占い?」
王泥喜、みぬき、鬼風の順に言葉を発した。
「……なにそれ?どうやって占うんだよ爺さん」
財布を取り出しながら、老人の発した言葉に鬼風が思わず尋ねてしまう。
「ソフトクリームの舐め方から相手を占うものじゃよ」
「舐め方ねぇー」
「これでも昔はクール斎藤という名でソフトクリーム占いをやっていてな。
どうじゃ、試しに買ってみんか?」
「なんでソフトクリームで占うんですか?」
王泥喜がそう尋ねると、クール斎藤が語り始める。
「ソフトクリームには古代ギリシャ時代から受け継がれてきた
人類の知恵が詰まっとるのだよ……」
「古代ギリシャにソフトクリームってあったっけ?」
鬼風が半目になりながら、ソフトクリームの髪型の老人を胡乱に見つめる。
「ソフトクリームの舐め方に人生が凝縮されとると言ってもいいがね」
「はぁ」
王泥喜も胡散臭そうな目で老人を見つめる。
「ちょうど、ソフトクリーム食べたかったですし、ついでに占ってもらいましょうよ」
「まぁ、ついでだし。いっか」
そう言って、鬼風が財布からお金を取り出し、三人分のソフトクリームを購入した。
「じゃあ、みぬきからいきますね」
ぺろっと小さな舌が白い滑らかな山を掬い取る。
「むむむ」
と顔を近づけ、みぬきの顔を観察する。
「……おい、あれどう見てもそういう趣味の変態爺にしか見えないんだけど」
「……でも。ちょっとだけ……」
「……やめろ王泥喜くん。ちょっとだけえっちぃと思ったなんてそんな破廉恥な」
「……なっ!?そそそんなことおおおおお思ってなんんか!?」
みぬきの後ろでヒソヒソと囁き合い、相手の脇を小突き合う王泥喜と鬼風。
「ふむ、お嬢ちゃん。近い内に大舞台に立つことになりそうじゃ」
「えー!本当ですかぁー!?」
えへへっと嬉しそうに笑う空色の魔術師。
「……それ、みぬきちゃんの恰好がマジシャンだから、それっぽいことテキトーに言ってるだけなんじゃないですか?」
「カァアアアアア!!」
「うっわ!!」
王泥喜の言葉に突如老人が奇声を発す。
「これでも占い一本でやってきたんじゃ!テキトーではない!
それでは、次、お前さんが舐めなされ!」
「え?」
「早く!!」
「はっはぁ」
むむむと眉間や顎に深い皺を刻みながら、王泥喜の鼻先に顔を近づける。
そして、憐れむような表情を向けた。
「お前さん。女難の相が出ておるぞ」
「え」
「しかもこれは……相当タチの悪いタイプじゃな」
「なああああああ」
大きく口を開き、鼻の下を伸ばしながらクール斎藤をまじまじと見る。
「大丈夫!王泥喜くんには私がついてるじゃないか!」
「アンタ男だろ!……それに占いなんて非科学的なこと……」
「これでもソフトクリーム占い師として30年はやってきたんじゃ。
バカにするなよ小僧!」
王泥喜の言葉にクール斎藤は激しく噛み付いた。
「それにそんなタチの悪い女 が王泥喜くんに近づいたら、皆殺しにしてあげるよ」
「…………」
星を飛ばしそうな軽いノリで物騒な言葉を吐き出す鬼の泥棒に、王泥喜は冷や汗をだらだらとながす。
「さて、最後はお前さんじゃな」
そう言ってクール斎藤は眼鏡の青年に目を向けた。
「ん?なに。私の人生。そりゃもう、億万長者になって愛する人と赤い屋根の白いお家で幸せに暮らすという万々歳な暮らしですとも」
「……お前さん…………」
なぜか突然クール斎藤は言葉を発しなくなってしまった。
それに対して鬼風がぐっと顔を近づける。
「じいさん。ハッキリ言っていいんだぜ。
愛する人にフラれるという占い結果以外なら心折れるようなタマじゃないから。私は」
「それ“占い結果”じゃなくて“確定事項”ですよ」
王泥喜が冷めた眼差しで鬼風を見る。
「…………」
クール斎藤はとうとう言葉を紡がなくなってしまう。
それどころか、顔色がどことなく悪い。
「おい、大丈夫か?爺さん」
「すまんが、お前さんに大事な話がある」
「おいおい、愛の告白か?
ジジィは私のストライクゾーンの範囲外なんだがな」
茶々を入れても、相手は何の反応も示さない。
鬼風が肩をすくめて、二人の方に振り返る。
「王泥喜くん、タマゴちゃん。
あっちのベンチで座っててくれるか?この爺さんが私と二人だけで話したいらしい」
状況は上手く把握できなかったが、鬼風の言葉に従い王泥喜とみぬきはベンチに向かった。
「それで?一体私の未來に何が見えたんだよ?爺さん」
「お前さん、何をする気だ?」
「はぁ?占ってたのはアンタだろ?なんで私が質問されなきゃなんねえんだよ」
「普通の人間なら、こんな結果は出ない。
“ ”なんて未來は普通あり得ない」
クール斎藤の言葉に大きく目を見開く鬼風。
「悪いことは言わん。今すぐ考え直せ。
何をする気かはわからんが、この先にはお前さんにとって絶望しかないぞ」
その言葉に鬼の泥棒はくくっと喉で笑う。
「つまらないこと言うなよ。じいさん」
財布から札を出し、テーブルの上に置く。
「気が変わった。あんたの占いは相当優秀だ。良い芸を見せてもらった礼だよ」
「もう一度言う。お前さんが進もうとしている未來には絶望しかない」
「あぁ、そうさ。この先には“絶望”しかない」
老人に背を向け鬼の盗人は歩き出す。
「だから私は進むのさ」
なにか言おうとする老人を片手を上げて黙らせる。
「悪いね。じいさん。私は筋金入りのひねくれモノ……」
ちらっと後ろを振り返った青年は、逢魔が時に落ちる影のような異様な雰囲気に包まれる。
「“アマノジャク”ってやつなんだよ」
顔を戻し、再び歩みを進める。
「決められたルールや人の言葉には、逆らいたくなるタチなんだ」
「ほらほら!なにしてるんですか!次行きますよー」
ぐったりとベンチにへたり込む青年二人に向かって、みぬきが声をかける。
「あの子、なんであんな元気なんだよ」
「みぬきちゃんは絶叫系大好きですから……」
「あの黄色い……希月ちゃんって子もあんな感じ?」
「いや、希月さんはあんまり得意じゃないですよ。絶叫系」
「意外だな。あの子の方が好きそうなのに」
「というか、オレはあんたが絶叫系苦手な方が意外でしたよ」
「そうか?」
「もう!はやくはやく!」
二人の青年がのそりと立ち上がる。
「さて、どうするよ。ダーリン。
うちのわがままお姫様が超高速ジェットコースター“カメハメハ”をご所望しているようだが」
「誰がダーリンですか。……絶対乗りたくないです。
ここは別のもので気をそらしましょう」
「となると」
ちらっとある方向を鬼風が見る。
鬼風の視線の先を王泥喜の目が追う。
鬼風と王泥喜は視線を合わせ、お互い頷き合う。
「みぬきちゃん、一度休憩しない?」
「えー、まだ序の口ですよ?」
「ソフトクリーム屋があるから、行ってみないかい?私のおごりで」
ソフトクリームの屋台を見て、みぬきは目を輝かせる。
「あっ本当です。おいしそうですね!行きましょう!」
王泥喜と鬼風は同時にほっと息を吐いた。
「ソフトクリームいらんかねぇー」
白い髪をソフトクリームのように巻いている老人が店番をしていた。
「今ならソフトクリーム占いももれなくついてくるぞー」
「ソフト」「クリーム」「占い?」
王泥喜、みぬき、鬼風の順に言葉を発した。
「……なにそれ?どうやって占うんだよ爺さん」
財布を取り出しながら、老人の発した言葉に鬼風が思わず尋ねてしまう。
「ソフトクリームの舐め方から相手を占うものじゃよ」
「舐め方ねぇー」
「これでも昔はクール斎藤という名でソフトクリーム占いをやっていてな。
どうじゃ、試しに買ってみんか?」
「なんでソフトクリームで占うんですか?」
王泥喜がそう尋ねると、クール斎藤が語り始める。
「ソフトクリームには古代ギリシャ時代から受け継がれてきた
人類の知恵が詰まっとるのだよ……」
「古代ギリシャにソフトクリームってあったっけ?」
鬼風が半目になりながら、ソフトクリームの髪型の老人を胡乱に見つめる。
「ソフトクリームの舐め方に人生が凝縮されとると言ってもいいがね」
「はぁ」
王泥喜も胡散臭そうな目で老人を見つめる。
「ちょうど、ソフトクリーム食べたかったですし、ついでに占ってもらいましょうよ」
「まぁ、ついでだし。いっか」
そう言って、鬼風が財布からお金を取り出し、三人分のソフトクリームを購入した。
「じゃあ、みぬきからいきますね」
ぺろっと小さな舌が白い滑らかな山を掬い取る。
「むむむ」
と顔を近づけ、みぬきの顔を観察する。
「……おい、あれどう見てもそういう趣味の変態爺にしか見えないんだけど」
「……でも。ちょっとだけ……」
「……やめろ王泥喜くん。ちょっとだけえっちぃと思ったなんてそんな破廉恥な」
「……なっ!?そそそんなことおおおおお思ってなんんか!?」
みぬきの後ろでヒソヒソと囁き合い、相手の脇を小突き合う王泥喜と鬼風。
「ふむ、お嬢ちゃん。近い内に大舞台に立つことになりそうじゃ」
「えー!本当ですかぁー!?」
えへへっと嬉しそうに笑う空色の魔術師。
「……それ、みぬきちゃんの恰好がマジシャンだから、それっぽいことテキトーに言ってるだけなんじゃないですか?」
「カァアアアアア!!」
「うっわ!!」
王泥喜の言葉に突如老人が奇声を発す。
「これでも占い一本でやってきたんじゃ!テキトーではない!
それでは、次、お前さんが舐めなされ!」
「え?」
「早く!!」
「はっはぁ」
むむむと眉間や顎に深い皺を刻みながら、王泥喜の鼻先に顔を近づける。
そして、憐れむような表情を向けた。
「お前さん。女難の相が出ておるぞ」
「え」
「しかもこれは……相当タチの悪いタイプじゃな」
「なああああああ」
大きく口を開き、鼻の下を伸ばしながらクール斎藤をまじまじと見る。
「大丈夫!王泥喜くんには私がついてるじゃないか!」
「アンタ男だろ!……それに占いなんて非科学的なこと……」
「これでもソフトクリーム占い師として30年はやってきたんじゃ。
バカにするなよ小僧!」
王泥喜の言葉にクール斎藤は激しく噛み付いた。
「それにそんなタチの悪い
「…………」
星を飛ばしそうな軽いノリで物騒な言葉を吐き出す鬼の泥棒に、王泥喜は冷や汗をだらだらとながす。
「さて、最後はお前さんじゃな」
そう言ってクール斎藤は眼鏡の青年に目を向けた。
「ん?なに。私の人生。そりゃもう、億万長者になって愛する人と赤い屋根の白いお家で幸せに暮らすという万々歳な暮らしですとも」
「……お前さん…………」
なぜか突然クール斎藤は言葉を発しなくなってしまった。
それに対して鬼風がぐっと顔を近づける。
「じいさん。ハッキリ言っていいんだぜ。
愛する人にフラれるという占い結果以外なら心折れるようなタマじゃないから。私は」
「それ“占い結果”じゃなくて“確定事項”ですよ」
王泥喜が冷めた眼差しで鬼風を見る。
「…………」
クール斎藤はとうとう言葉を紡がなくなってしまう。
それどころか、顔色がどことなく悪い。
「おい、大丈夫か?爺さん」
「すまんが、お前さんに大事な話がある」
「おいおい、愛の告白か?
ジジィは私のストライクゾーンの範囲外なんだがな」
茶々を入れても、相手は何の反応も示さない。
鬼風が肩をすくめて、二人の方に振り返る。
「王泥喜くん、タマゴちゃん。
あっちのベンチで座っててくれるか?この爺さんが私と二人だけで話したいらしい」
状況は上手く把握できなかったが、鬼風の言葉に従い王泥喜とみぬきはベンチに向かった。
「それで?一体私の未來に何が見えたんだよ?爺さん」
「お前さん、何をする気だ?」
「はぁ?占ってたのはアンタだろ?なんで私が質問されなきゃなんねえんだよ」
「普通の人間なら、こんな結果は出ない。
“ ”なんて未來は普通あり得ない」
クール斎藤の言葉に大きく目を見開く鬼風。
「悪いことは言わん。今すぐ考え直せ。
何をする気かはわからんが、この先にはお前さんにとって絶望しかないぞ」
その言葉に鬼の泥棒はくくっと喉で笑う。
「つまらないこと言うなよ。じいさん」
財布から札を出し、テーブルの上に置く。
「気が変わった。あんたの占いは相当優秀だ。良い芸を見せてもらった礼だよ」
「もう一度言う。お前さんが進もうとしている未來には絶望しかない」
「あぁ、そうさ。この先には“絶望”しかない」
老人に背を向け鬼の盗人は歩き出す。
「だから私は進むのさ」
なにか言おうとする老人を片手を上げて黙らせる。
「悪いね。じいさん。私は筋金入りのひねくれモノ……」
ちらっと後ろを振り返った青年は、逢魔が時に落ちる影のような異様な雰囲気に包まれる。
「“アマノジャク”ってやつなんだよ」
顔を戻し、再び歩みを進める。
「決められたルールや人の言葉には、逆らいたくなるタチなんだ」