可愛い子には旅をさせよ
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4月23日 午前11時05分
成歩堂なんでも事務所
「それじゃ、捜査行ってきまーす!」
「留守番は頼んだよ」
「いってらっしゃーい」
成歩堂と心音をみぬきが手を振って見送る。
扉が閉まってから、みぬきはトイレの方にいる赤いスーツを見て腰に手を当てる。
開け放たれている扉の向こうでは、王泥喜がトイレ掃除中であった。
「王泥喜さん。心音さんに仕事取られたからって、いつまでそうやって拗ねてるんですか」
みぬきの言葉に王泥喜の肩が跳ねた。
「すっ拗ねてないよっ!」
「見送りしなかったじゃないですか」
「それは、今トイレ掃除中だから……」
王泥喜は語尾を弱めながら、ゴム手袋をはめた手でブラシを便器にこすりつける。
「留守番と言っても、みぬきと一緒に芸を磨くという立派な仕事があるんですからね」
「だから、オレは芸人じゃなくて、弁護士で……」
「法廷よりもステージに立つ方が多いんだから、もう芸人が本業でも良いんじゃない?」
「わっ」「えっ」
突然聞こえた声に、みぬきと王泥喜が振り返る。
受付と事務所を繋ぐ扉の前で、よっと手をあげている青いシャツに黒スーツの美青年が立っていた。
「怪盗鬼風!?」
王泥喜の声をスルーして、鬼風はみぬきに声をかける。
「タマゴちゃん、この前のマジックショーはなかなか良かったよ」
「えー!鬼風さん見に来てくれたんですか!?」
「なかなかに腕をあげたね。そのうちタマゴからヒヨコになれそうだよ」
「もう!これでもみぬきはちゃきちゃきの売れっ子魔術師ですよ!」
「はははっ」
「で、何か用ですか?」
「冷たい。君の弟くん私に冷たいっ!」
「王泥喜さん。せっかくの上客なんですからもっと愛想良くしなきゃダメですよ」
「あれ、君もなかなか酷いねタマゴちゃん!」
「用がないならさっさと帰ってくれませんか」
「あっと。忘れるところだった。ごほん」
わざとらしく大げさに咳払いをして、眼鏡の美青年がにっこりと微笑む。
「キサマらのタレントは預かった。ちがう預からせてもらう?」
「は?」
「きゃっ!」
そう言うと鬼風はみぬきの膝裏に手を入れ、横抱きにした。
王泥喜が動いたときには、すでに鬼の泥棒が窓枠に足をかけて二階から飛び降りていた。
鬼風はみぬきを抱えたまま、ストンっと音を立てずに地面へ着地する。
「待てっ!!」
王泥喜は事務所を飛び出し、階段を駆け下りる。
フルフェイスヘルメットに身を包んだ鬼風がエンジンをふかしバイクにまたがっていた。
そのバイクの隣にあるサイドカーの中に空色の魔術師が見える。
「みぬきちゃんを返せ!」
王泥喜が鬼風につかみかかろうとした瞬間、
カポっ。
「うわっ!」
「はいっ。いっちょあがり」
王泥喜の触覚のような前髪に白いヘルメットがかぶせられた。
「それじゃ、しゅっぱーつ!」
腕を上げたみぬきに、王泥喜が目を丸くする。
「はっ、みぬきちゃん?なにいっ……てぇえええええ!?」
王泥喜が引きずりこまれるようにバイクの後部座席に座らせられた瞬間、グンッと彼の身体が後ろにそれされそうになる。
彼はとっさに鬼風の腰に腕を回す。
「いやー、悪いねぇ。今、私は……」
ぶおおおおお
突如背後から響く排気音に王泥喜が後ろを振り向くと、黒塗りのガラスがはめられた真っ黒な高級車が大量に追いかけてきている。
「追われてるんだ☆」
「見ればわかるっ!そもそもなんで追われてるんですか!?あれどう見ても警察じゃないだろ!?」
「いやぁー、今回のお姫様盗んだとき警察の警備がいないから、あれぇー?おっかしいなぁー?と思ったんだよねぇー。そしたら、まさかのヤーさんの持ち物だったらしくて……今ちょっと命(たま)狙われてるんだよねー」
「はぁ!?!?!?それあんたの自業自得じゃ…………」
パンッという破裂音と同時にチッと王泥喜の頬になにかが掠める。
バイクのハンドルを握ってる泥棒が鋭く舌打ちをした。
「あんにゃろうども、鉄砲(チャカ)出してきやがった」
「すごいですね!みぬき、映画でしか見たことないですよ!」
声を上げてはしゃぐ魔術師の少女に、ドスの効いた低音で呟く険しい顔の泥棒。
それを目にしながら、王泥喜は遠い目をする。
あぁっ、裁判に出れず芸人の練習を嫌がっていた俺に言いたい、今と比べたらそれはとても幸せな状況だということを。
「までごらぁああああああ!!」
「どまれごらぁあああああ!!」
濁った低い怒声が背後から迫ってきて、鬼風はアクセルを吹かした。
「うわああああああああああああああ!!」
王泥喜は絶叫しながら、身体が振り落とされそうになり目の前の泥棒の腰に必死にしがみついていた。
成歩堂なんでも事務所
「それじゃ、捜査行ってきまーす!」
「留守番は頼んだよ」
「いってらっしゃーい」
成歩堂と心音をみぬきが手を振って見送る。
扉が閉まってから、みぬきはトイレの方にいる赤いスーツを見て腰に手を当てる。
開け放たれている扉の向こうでは、王泥喜がトイレ掃除中であった。
「王泥喜さん。心音さんに仕事取られたからって、いつまでそうやって拗ねてるんですか」
みぬきの言葉に王泥喜の肩が跳ねた。
「すっ拗ねてないよっ!」
「見送りしなかったじゃないですか」
「それは、今トイレ掃除中だから……」
王泥喜は語尾を弱めながら、ゴム手袋をはめた手でブラシを便器にこすりつける。
「留守番と言っても、みぬきと一緒に芸を磨くという立派な仕事があるんですからね」
「だから、オレは芸人じゃなくて、弁護士で……」
「法廷よりもステージに立つ方が多いんだから、もう芸人が本業でも良いんじゃない?」
「わっ」「えっ」
突然聞こえた声に、みぬきと王泥喜が振り返る。
受付と事務所を繋ぐ扉の前で、よっと手をあげている青いシャツに黒スーツの美青年が立っていた。
「怪盗鬼風!?」
王泥喜の声をスルーして、鬼風はみぬきに声をかける。
「タマゴちゃん、この前のマジックショーはなかなか良かったよ」
「えー!鬼風さん見に来てくれたんですか!?」
「なかなかに腕をあげたね。そのうちタマゴからヒヨコになれそうだよ」
「もう!これでもみぬきはちゃきちゃきの売れっ子魔術師ですよ!」
「はははっ」
「で、何か用ですか?」
「冷たい。君の弟くん私に冷たいっ!」
「王泥喜さん。せっかくの上客なんですからもっと愛想良くしなきゃダメですよ」
「あれ、君もなかなか酷いねタマゴちゃん!」
「用がないならさっさと帰ってくれませんか」
「あっと。忘れるところだった。ごほん」
わざとらしく大げさに咳払いをして、眼鏡の美青年がにっこりと微笑む。
「キサマらのタレントは預かった。ちがう預からせてもらう?」
「は?」
「きゃっ!」
そう言うと鬼風はみぬきの膝裏に手を入れ、横抱きにした。
王泥喜が動いたときには、すでに鬼の泥棒が窓枠に足をかけて二階から飛び降りていた。
鬼風はみぬきを抱えたまま、ストンっと音を立てずに地面へ着地する。
「待てっ!!」
王泥喜は事務所を飛び出し、階段を駆け下りる。
フルフェイスヘルメットに身を包んだ鬼風がエンジンをふかしバイクにまたがっていた。
そのバイクの隣にあるサイドカーの中に空色の魔術師が見える。
「みぬきちゃんを返せ!」
王泥喜が鬼風につかみかかろうとした瞬間、
カポっ。
「うわっ!」
「はいっ。いっちょあがり」
王泥喜の触覚のような前髪に白いヘルメットがかぶせられた。
「それじゃ、しゅっぱーつ!」
腕を上げたみぬきに、王泥喜が目を丸くする。
「はっ、みぬきちゃん?なにいっ……てぇえええええ!?」
王泥喜が引きずりこまれるようにバイクの後部座席に座らせられた瞬間、グンッと彼の身体が後ろにそれされそうになる。
彼はとっさに鬼風の腰に腕を回す。
「いやー、悪いねぇ。今、私は……」
ぶおおおおお
突如背後から響く排気音に王泥喜が後ろを振り向くと、黒塗りのガラスがはめられた真っ黒な高級車が大量に追いかけてきている。
「追われてるんだ☆」
「見ればわかるっ!そもそもなんで追われてるんですか!?あれどう見ても警察じゃないだろ!?」
「いやぁー、今回のお姫様盗んだとき警察の警備がいないから、あれぇー?おっかしいなぁー?と思ったんだよねぇー。そしたら、まさかのヤーさんの持ち物だったらしくて……今ちょっと命(たま)狙われてるんだよねー」
「はぁ!?!?!?それあんたの自業自得じゃ…………」
パンッという破裂音と同時にチッと王泥喜の頬になにかが掠める。
バイクのハンドルを握ってる泥棒が鋭く舌打ちをした。
「あんにゃろうども、鉄砲(チャカ)出してきやがった」
「すごいですね!みぬき、映画でしか見たことないですよ!」
声を上げてはしゃぐ魔術師の少女に、ドスの効いた低音で呟く険しい顔の泥棒。
それを目にしながら、王泥喜は遠い目をする。
あぁっ、裁判に出れず芸人の練習を嫌がっていた俺に言いたい、今と比べたらそれはとても幸せな状況だということを。
「までごらぁああああああ!!」
「どまれごらぁあああああ!!」
濁った低い怒声が背後から迫ってきて、鬼風はアクセルを吹かした。
「うわああああああああああああああ!!」
王泥喜は絶叫しながら、身体が振り落とされそうになり目の前の泥棒の腰に必死にしがみついていた。