賽は投げられた
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3月22日 午後4時03分
留置所 面会室
「おや、ずいぶんとお早いお帰りで」
「調査をしていたら、気になることがわかったんです」
「アタシでよければ、答えるが」
「ありがとうございます」
成歩堂はポケットから翡翠色の石ころを取り出し、彼女の前に置いた。
「聞かせてもらえませんか。あなたと“鬼”の関係を」
大きな音と共に、相手の背景の色が反転する。
青白い不気味な空間が一瞬現れたかと思うと、すぐに真っ黒になった。
“ジャラッ”
金属のこすれるような音がしたあと、相手の周りに鉄色の鎖が張り巡らされる。
赤い錠前が鎖にブラ下がり、ガシャンッと錠前の閉まる音がした
「鬼風は被害者から“金山の人形”を盗もうとしていた」
「ほお……」
「けど、今回だけは違った」
「違った?」
怪訝な表情を浮かべる杏里。
「鬼風は人形を盗まなかった。
いや、人形ではなく本当はある資料を盗もうとしていた。
人形を盗むより前に、その資料を盗むことは計画していたんじゃないですか?」
「!」
ガタッと杏里は椅子から腰を浮かせる。
パリンと赤い錠前が1個だけ砕ける。
「反応するってことは、間違ってはいないんですね」
「どこでその話を聞いた?」
「窃盗課の刑事から聞きました。藪下さんは自身の研究資料が盗まれたと被害届を出していたそうです。そして、それを盗んだのは鬼風ではないかと警察が捜査をしていたんですよ」
杏里は表情を消し、静かに成歩堂を見ている。
「なにを研究していたのかはわかっているのか?」
「今は絶滅した病気で名前は」
わかりません。と成歩堂が答えようとして
「待った」
眼鏡の女が成歩堂の前に手の平を見せるように突きつけてきた。
杏里は白衣のポケットに手を突っ込んで、時計を見る。
少しして、ニヤリと笑う。
「いいぜ。話してやりますよ」
パリンパリンパリンと一斉に彼女の錠前がすべて砕ける。
心の鎖が消え去り、成歩堂は肩すかしをくらう。
「えっと……いいんですか?」
錠前の数は相手の心の秘密の頑なさを示す。
最大は5つで、念入りに証拠品を用意して、慎重に考えなければ錠前を砕くことはできないのだ。
「あぁ。今、監視カメラを止めたしな」
「え。とっ止めた?」
「ここの監視カメラを止めるなんて訳ねえさ。くくっ」
(この人、今さらっととんでもないこと言ったぞ)
「あなたは一体何者なんですか?」
「アタシは黒谷杏里。鬼風であり、伊呂波モミジの相棒だ」
「“相棒”」
≪怪盗鬼風≫
「まっ待ってください。怪盗鬼風はもう一人の……あなたに変装していた“彼”ではないのですか?」
「彼?……あぁ。あいつのことか」
「?」
杏里は“彼”と言われると一瞬だけ首を傾げたので、成歩堂はその動作になんとなく疑問を覚えた。
だが大した疑問ではないのでそのまま話を聞くことにした。
「あいつはモミジは実行犯だよ」
「直接盗む人間ってことですか」
「そう。鬼風はアタシとあいつ、二人で一人の人物なんだ。表に出ている実行犯が、モミジ。裏で情報を得てあいつに指示するのがアタシだ。」
≪杏里とモミジの関係≫
「それにしても……」
「ん?」
じろじろと成歩堂は不躾だが、杏里を下から上までじっくり見る。
「いや、鬼風が変装していたのだから当たり前ですけど。最初と全然性格が違うなと」
「最初はどんな感じだったんだ」
「……ヒステリック……」
「くくっぶくく!」
杏里は噴き出したかと思うと体をくの字に曲げ、パイプ椅子で丸まっている。
「アンタ、ぷぷっなかなか、ハッキリ、言うなっ……」
「はぁ……(どこに笑うところがあったんだ?)」
「まぁ、あいつは昔からああいう性格だからな」
「あの、昔ってことは、長い付き合いになるんですか」
「くくっ。12歳からの付き合いだから、そこそこ長いだろ」
「幼馴染というやつですか」
「いや、15歳のときに別れて、また会ったのは20歳の時だからちと違うな。
アタシは組織で生まれ育って、あいつは里から売られてきた。
お互い育った環境は違うけど、なんとなく一緒に居て楽だったんだわ」
「え」
険しい表情で固まった成歩堂に、杏里は肩をすくめてみせる。
「実験材料として、組織に色々とやらされたんだよ。アタシもあいつも」
「……」
「それでも、アイツの方が酷かったな。扱いは。
最終的にはモルモット行きだったから」
「…………」
「……へえー。アンタ、そんな顔できるんだな」
「組織って、モルモット行きって……」
「これ以上は本人に訊け。まぁ、話してくれるかどうかは知らんが
運がよければ“組織”についても話してくれるかもな」
「(自分から話す気はない、か)…………」
モルモットと告げた言葉を思い出し、無意識に成歩堂は両の拳を握りこんだ。
≪半年前に辞めた理由≫
「藪下さんが研究していたのは……」
「“ジンニク病”」
杏里のその言葉が資料を盗んだことの肯定だった。
「警察にその研究資料の盗難届が出されていたようです。
それを盗んだのはやっぱり、……あなたたち、鬼風なんですね」
「あぁ、そうだよ。アタシたちは人形を盗むのではなく、その資料を盗まなければいけなかった」
「なぜですか?」
「人形よりも資料の方が優先度が高かったから。それに、あの『吉田の桜姫』はすでに偽物だったからな」
「偽物?」
「偽物というと少し違うな。あの人形にはすでに価値がなくなっていた」
「価値がないって、どういうことですか?」
「アタシたちは“人形”が欲しくて盗みを働いてるわけじゃないから」
「え」
今までの前提を覆すような答えに、成歩堂は声をもらす。
「人形が欲しくない?じゃあ、なぜ盗んでいるんですか」
杏里の瞳がレンズ越しに成歩堂を見つめる。
「アタシたちは、歌舞伎人形シリーズの瞳に埋め込まれた“紅石 ”が欲しいのさ」
コウセキ。成歩堂はその言葉をオウム返した。
「その“コウセキ”ってのは一体?」
「赤く輝く石のことさ」
「つまり、宝石?」
「くくっ。あれに宝石の価値があれば高く売れたんだがな」
「じゃあ、なぜあなたたちはそんな石ころを盗むんですか?」
「“コウセキ”はただの石じゃない。特別な力を持つ石なんだ。
その石は人間の視覚すなわち可視領域では認識できない長い特殊な波長の光線を発していて眼を通じて網膜に入ってきたその光を視細胞の杆細胞と錐細胞で受けて視神経へ伝えていく。するとグルタミン酸受容体の1つであるAMPA受容体が海馬で形成されるシナプスに移行することにより」
「まっ待った!」
専門用語をベラベラと並べられて、思わず成歩堂は制止をかけてしまった。
「なんだ?説明の途中だが」
説明を遮られて杏里は不満そうな顔で成歩堂を見る。
「えっと、その、……もう少しわかりやすく言うと?」
杏里は眉頭を落とし、目をきつく細める。
「ちゃんと説明を聞かないと、信じてもらえないと思うんだが」
成歩堂の言葉を予測しているかのように、杏里は言うことを渋る。
「今の説明を全部聞いても、理解できる自信がないので……」
成歩堂は目をそらし、頭をぽりぽりと掻く。
パイプ椅子に深く腰掛けながら、杏里は息を一つ吐く。
「簡単に言うなら、“人を操る”石だ」
成歩堂が胡散臭いものを見るような顔になる。
くくっと笑いながら杏里は肩をすくめる。
「ほらな」
「だけど、やはりただの石がそんな……」
「もう少し詳しく言うならば、記憶に作用して自分の都合の良い人形を形成できる石。催眠術にかけると言えばわかるか?」
「詳しく言われても、それでもやっぱり」
「そういう顔をしたくなるのはわかるが、夢物語の話というわけでもないんだよ。
その証拠に、藪下はすでに人形の“コウセキ”を使っていたんだから」
「!」
「言ったろ?その人形はアタシたちにとってすでに“偽物”だったと」
「どうやって、使ったとわかったんですか」
「過去の患者にコウセキの催眠にかかった奴が見つかった。
あいつは人形を所持したのは最近だが、“コウセキ”について研究していたのは昔からだった。
私たちはコウセキに関するその研究データをなんとしてでも破棄したかったんだ」
「えっ。まっ待ってください。藪下さんは“コウセキ”を使っていたと言いましたけど、
彼が研究していたのは、“ジンニク病”だとさっき言ったじゃないですか」
「“コウセキ”も“ジンニク病”も奴は研究していた。その二つは密接につながっているからな」
「どういうことですか?」
「さて、成歩堂センセイ。コウセキは一体どうやって作られるでしょうか?」
試すような笑みを浮かべ、眼鏡の女は成歩堂に問いかける。
成歩堂が答えられず言葉を詰まらせていると、ちらりと杏里は時計を再び見た。
「―――――時間切れだ」
杏里はそう言って、監視カメラのほうを仰ぐ。
「アタシが話せるのはここまでだ。悪いがこれ以上は話せない」
「待ってください!まだ聞きたいことが!」
チラっと杏里が成歩堂の持っている勾玉に視線を向ける。
「もし、これ以上のことを聞きたいなら、あいつを探しな」
「“あいつ”?」
「……“相棒”ならあんたの知りたいことを話してくれるだろうよ。
ただし、あいつを見つけて、話してくれるように説得できればだけどな」
そう言って、眼鏡の女はククッと笑みを面会室にこぼした。
留置所 面会室
「おや、ずいぶんとお早いお帰りで」
「調査をしていたら、気になることがわかったんです」
「アタシでよければ、答えるが」
「ありがとうございます」
成歩堂はポケットから翡翠色の石ころを取り出し、彼女の前に置いた。
「聞かせてもらえませんか。あなたと“鬼”の関係を」
大きな音と共に、相手の背景の色が反転する。
青白い不気味な空間が一瞬現れたかと思うと、すぐに真っ黒になった。
“ジャラッ”
金属のこすれるような音がしたあと、相手の周りに鉄色の鎖が張り巡らされる。
赤い錠前が鎖にブラ下がり、ガシャンッと錠前の閉まる音がした
「鬼風は被害者から“金山の人形”を盗もうとしていた」
「ほお……」
「けど、今回だけは違った」
「違った?」
怪訝な表情を浮かべる杏里。
「鬼風は人形を盗まなかった。
いや、人形ではなく本当はある資料を盗もうとしていた。
人形を盗むより前に、その資料を盗むことは計画していたんじゃないですか?」
「!」
ガタッと杏里は椅子から腰を浮かせる。
パリンと赤い錠前が1個だけ砕ける。
「反応するってことは、間違ってはいないんですね」
「どこでその話を聞いた?」
「窃盗課の刑事から聞きました。藪下さんは自身の研究資料が盗まれたと被害届を出していたそうです。そして、それを盗んだのは鬼風ではないかと警察が捜査をしていたんですよ」
杏里は表情を消し、静かに成歩堂を見ている。
「なにを研究していたのかはわかっているのか?」
「今は絶滅した病気で名前は」
わかりません。と成歩堂が答えようとして
「待った」
眼鏡の女が成歩堂の前に手の平を見せるように突きつけてきた。
杏里は白衣のポケットに手を突っ込んで、時計を見る。
少しして、ニヤリと笑う。
「いいぜ。話してやりますよ」
パリンパリンパリンと一斉に彼女の錠前がすべて砕ける。
心の鎖が消え去り、成歩堂は肩すかしをくらう。
「えっと……いいんですか?」
錠前の数は相手の心の秘密の頑なさを示す。
最大は5つで、念入りに証拠品を用意して、慎重に考えなければ錠前を砕くことはできないのだ。
「あぁ。今、監視カメラを止めたしな」
「え。とっ止めた?」
「ここの監視カメラを止めるなんて訳ねえさ。くくっ」
(この人、今さらっととんでもないこと言ったぞ)
「あなたは一体何者なんですか?」
「アタシは黒谷杏里。鬼風であり、伊呂波モミジの相棒だ」
「“相棒”」
≪怪盗鬼風≫
「まっ待ってください。怪盗鬼風はもう一人の……あなたに変装していた“彼”ではないのですか?」
「彼?……あぁ。あいつのことか」
「?」
杏里は“彼”と言われると一瞬だけ首を傾げたので、成歩堂はその動作になんとなく疑問を覚えた。
だが大した疑問ではないのでそのまま話を聞くことにした。
「あいつはモミジは実行犯だよ」
「直接盗む人間ってことですか」
「そう。鬼風はアタシとあいつ、二人で一人の人物なんだ。表に出ている実行犯が、モミジ。裏で情報を得てあいつに指示するのがアタシだ。」
≪杏里とモミジの関係≫
「それにしても……」
「ん?」
じろじろと成歩堂は不躾だが、杏里を下から上までじっくり見る。
「いや、鬼風が変装していたのだから当たり前ですけど。最初と全然性格が違うなと」
「最初はどんな感じだったんだ」
「……ヒステリック……」
「くくっぶくく!」
杏里は噴き出したかと思うと体をくの字に曲げ、パイプ椅子で丸まっている。
「アンタ、ぷぷっなかなか、ハッキリ、言うなっ……」
「はぁ……(どこに笑うところがあったんだ?)」
「まぁ、あいつは昔からああいう性格だからな」
「あの、昔ってことは、長い付き合いになるんですか」
「くくっ。12歳からの付き合いだから、そこそこ長いだろ」
「幼馴染というやつですか」
「いや、15歳のときに別れて、また会ったのは20歳の時だからちと違うな。
アタシは組織で生まれ育って、あいつは里から売られてきた。
お互い育った環境は違うけど、なんとなく一緒に居て楽だったんだわ」
「え」
険しい表情で固まった成歩堂に、杏里は肩をすくめてみせる。
「実験材料として、組織に色々とやらされたんだよ。アタシもあいつも」
「……」
「それでも、アイツの方が酷かったな。扱いは。
最終的にはモルモット行きだったから」
「…………」
「……へえー。アンタ、そんな顔できるんだな」
「組織って、モルモット行きって……」
「これ以上は本人に訊け。まぁ、話してくれるかどうかは知らんが
運がよければ“組織”についても話してくれるかもな」
「(自分から話す気はない、か)…………」
モルモットと告げた言葉を思い出し、無意識に成歩堂は両の拳を握りこんだ。
≪半年前に辞めた理由≫
「藪下さんが研究していたのは……」
「“ジンニク病”」
杏里のその言葉が資料を盗んだことの肯定だった。
「警察にその研究資料の盗難届が出されていたようです。
それを盗んだのはやっぱり、……あなたたち、鬼風なんですね」
「あぁ、そうだよ。アタシたちは人形を盗むのではなく、その資料を盗まなければいけなかった」
「なぜですか?」
「人形よりも資料の方が優先度が高かったから。それに、あの『吉田の桜姫』はすでに偽物だったからな」
「偽物?」
「偽物というと少し違うな。あの人形にはすでに価値がなくなっていた」
「価値がないって、どういうことですか?」
「アタシたちは“人形”が欲しくて盗みを働いてるわけじゃないから」
「え」
今までの前提を覆すような答えに、成歩堂は声をもらす。
「人形が欲しくない?じゃあ、なぜ盗んでいるんですか」
杏里の瞳がレンズ越しに成歩堂を見つめる。
「アタシたちは、歌舞伎人形シリーズの瞳に埋め込まれた“
コウセキ。成歩堂はその言葉をオウム返した。
「その“コウセキ”ってのは一体?」
「赤く輝く石のことさ」
「つまり、宝石?」
「くくっ。あれに宝石の価値があれば高く売れたんだがな」
「じゃあ、なぜあなたたちはそんな石ころを盗むんですか?」
「“コウセキ”はただの石じゃない。特別な力を持つ石なんだ。
その石は人間の視覚すなわち可視領域では認識できない長い特殊な波長の光線を発していて眼を通じて網膜に入ってきたその光を視細胞の杆細胞と錐細胞で受けて視神経へ伝えていく。するとグルタミン酸受容体の1つであるAMPA受容体が海馬で形成されるシナプスに移行することにより」
「まっ待った!」
専門用語をベラベラと並べられて、思わず成歩堂は制止をかけてしまった。
「なんだ?説明の途中だが」
説明を遮られて杏里は不満そうな顔で成歩堂を見る。
「えっと、その、……もう少しわかりやすく言うと?」
杏里は眉頭を落とし、目をきつく細める。
「ちゃんと説明を聞かないと、信じてもらえないと思うんだが」
成歩堂の言葉を予測しているかのように、杏里は言うことを渋る。
「今の説明を全部聞いても、理解できる自信がないので……」
成歩堂は目をそらし、頭をぽりぽりと掻く。
パイプ椅子に深く腰掛けながら、杏里は息を一つ吐く。
「簡単に言うなら、“人を操る”石だ」
成歩堂が胡散臭いものを見るような顔になる。
くくっと笑いながら杏里は肩をすくめる。
「ほらな」
「だけど、やはりただの石がそんな……」
「もう少し詳しく言うならば、記憶に作用して自分の都合の良い人形を形成できる石。催眠術にかけると言えばわかるか?」
「詳しく言われても、それでもやっぱり」
「そういう顔をしたくなるのはわかるが、夢物語の話というわけでもないんだよ。
その証拠に、藪下はすでに人形の“コウセキ”を使っていたんだから」
「!」
「言ったろ?その人形はアタシたちにとってすでに“偽物”だったと」
「どうやって、使ったとわかったんですか」
「過去の患者にコウセキの催眠にかかった奴が見つかった。
あいつは人形を所持したのは最近だが、“コウセキ”について研究していたのは昔からだった。
私たちはコウセキに関するその研究データをなんとしてでも破棄したかったんだ」
「えっ。まっ待ってください。藪下さんは“コウセキ”を使っていたと言いましたけど、
彼が研究していたのは、“ジンニク病”だとさっき言ったじゃないですか」
「“コウセキ”も“ジンニク病”も奴は研究していた。その二つは密接につながっているからな」
「どういうことですか?」
「さて、成歩堂センセイ。コウセキは一体どうやって作られるでしょうか?」
試すような笑みを浮かべ、眼鏡の女は成歩堂に問いかける。
成歩堂が答えられず言葉を詰まらせていると、ちらりと杏里は時計を再び見た。
「―――――時間切れだ」
杏里はそう言って、監視カメラのほうを仰ぐ。
「アタシが話せるのはここまでだ。悪いがこれ以上は話せない」
「待ってください!まだ聞きたいことが!」
チラっと杏里が成歩堂の持っている勾玉に視線を向ける。
「もし、これ以上のことを聞きたいなら、あいつを探しな」
「“あいつ”?」
「……“相棒”ならあんたの知りたいことを話してくれるだろうよ。
ただし、あいつを見つけて、話してくれるように説得できればだけどな」
そう言って、眼鏡の女はククッと笑みを面会室にこぼした。