賽は投げられた
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
3月22日 午後2時11分
留置所 面会室
「それじゃ、あなたは事件当日から警察に発見されるまでクリニックに居たんですね」
「そうだ」
「……それを証明できる証拠はありますか?」
「ない」
「そう、ですか」
「容疑者にされていることすら知らなかったからな。すまないね」
成歩堂はずっと言うべきか迷っていた質問を口にする。
「あなたは鬼風とはどういった関係なんですか?」
成歩堂がそう尋ねた瞬間、大きな音と共に、相手の背景の色が反転する。
青白い不気味な空間が一瞬現れたかと思うと、すぐに真っ黒になった。
“ジャラッ”
金属のこすれるような音がしたあと、相手の周りに鉄色の鎖が張り巡らされる。
赤い錠前が鎖にブラ下がり、ガシャンッと錠前の閉まる音がした
(サイコロック……!)
杏里はちらりと監視カメラを一瞥する。
「悪いが、アタシから言えることはない」
杏里は鬼風のことについて隠している。
これ以上問い詰めても、証拠がない限りはサイコロックは解除できない。
「……じゃあ、質問を変えます。藪下さんに薬を渡したのはあなたなんですね」
「先生はアタシの患者で、診察を受けに来ていたからな。
薬も毎回渡していた。
けど、毒は入れてない」
「あなたはやってないんですね」
成歩堂はスーツのポケットに手を入れ、中のモノをぎゅっと握る。
「あぁ、やってない」
今度は何も変化しなかった。
それに成歩堂はホッと息を吐く。
「黒谷さん。正直に言うと、今のままだとこの事件の犯人としてあなたは有罪になります。
もう一度調査をして、明日の裁判で無罪を証明できるようにします」
「よろしくお願いします」
杏里は静かに頭を下げる。
3月22日 午後2時32分
留置所 入り口
さて、どうしたものか。
成歩堂はどこから調査をするべきか、思考を巡らせていた。
「成歩堂先生!」
女性の大きな声で呼ばれ、成歩堂は振り向いた。
「あなたが杏里の弁護をしてくれた成歩堂弁護士ですよね!?」
茶髪のロングヘアーの女性が、息を切らしながら成歩堂のところまで走ってきた。
「あっあなたは?」
「あっ、私は杏里の友人の 佐藤 楓 って言います」
「佐藤さん」
「杏里が捕まったって聞いて!びっくりしちゃって!あの子元気にしてますか!?」
「元気……かどうかはわかりませんが、顔色は青白かったですね」
「よかった。いつも通りみたいですね」
(いつも通りなのか)
「それで、裁判について聞いたんです!なんか変な泥棒のせいで、杏里が捕まっちゃたんですよね!ああんもう!その泥棒が有罪になればよかったのに!」
「……すみません。僕が弁護をしてしまって」
「あっいや、そのそんなつもりじゃ!
あの!あっ杏里は大丈夫ですよね!牢屋に入れられることはありませんよね」
「正直、今の状況から無罪を証明するのは難しいですね」
「そっそんな」
「けど、このまま有罪にするつもりもありません。やれることはやってみます」
「わかりました!じゃあ、私も私ができることをしてみます!お役に立てるようにがんばりますから!」
「えっちょ!……行っちゃったよ」
成歩堂が引き止める前に、すでに佐藤は走り去った後だった。
「……パワフルな人だな」
成歩堂は顎を撫でながら、調査すべき場所を考える。