賽は投げられた
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同日 某時刻
警官は立っていなかったが、成歩堂が見た限りもう警察が調べたあとのようだった。
「来てみたものの、家に勝手に入るわけにいかないしなぁ……」
「あらあらまぁまぁ!真っ青な男の子がいるわ!」
「へ?」
成歩堂が振り返るとそこにショッキングピンクのワンピースを着たおばさんが居た。
……おばさんが居た。
「あの、あなたは?」
「私?私は
「事件の日のことについて詳しく話を聞かせてもらえますか」
「ええー!だめよ!だめだめ!私事件に関連する話なんてできないわ。知ってることって言ったら本当に些細なことぐらいよ。例えばうちの先生、いつも飲み薬を飲んでるのよ。事件の前日も飲んでてね、なんでも元部下が調合してくれた飲み薬でないと効かないらしくていつも彼女からもらってたのよ。三時のおやつのあとに必ずその薬を飲んでいたわ。でも、前は私ね暇を出されてて、最近になってまた働いてくれって言われて働き出したのよ。きっとお部屋は汚れてるだろうと思ってたんだけど来てみたらびっくり思ったよりも綺麗だったものだから!」
「わっわかりました。もっもう充分です」
成歩堂が両手を上げながらそう告げたが、モモイロの口は止まらない。
彼女は事件の関係していることを話しているというより思い浮かんだことをひたすら口に出しているという感じだった。
「それに藪下先生は隠していたみたいだけど、あの人不倫していたみたいでね」
「ふっ不倫?」
「先生、結婚してないけど」
「……はぁ。……そのなぜそう思ったんですか」
「だって、あなたね、つまらないジジィの部屋にこんな洒落たモノが落ちてたらそう思うに決まってるじゃない!」
そう言ってモモイロが取り出したのは
「ロケットですか?」
成歩堂のスーツの胸ポケットに入ってる物と似た形状のペンダントだった。
「そう!この間掃除していたときに棚の隙間の奥にあったのを見つけちゃったのよ!
しかもこのロケットの写真なんだと思う?思う?なんと……若い男の子の写真だったのよ!きっと恋人なんでしょうね不倫相手の!」
「いや、藪下先生のものかもしれないじゃないですか。息子の写真とか」
「先生は未婚者なんだから、子どもなんているわけないじゃない!」
(不倫とか言ってたの誰だよ)
成歩堂は目の前のピンクの老婦人を見つめる。
だが、モモイロは彼の視線も気にせず舌を回し続ける。
「だってこのロケットにはKとHのイニシアルが彫られていたのよ。
もし先生のならSとYのはずでしょ」
「それは、そうですね」
「きっと不倫相手は二股よ。ズバリそうよ。そうに決まっている
わ」
「あっと、その、部屋の中は見てもいいですか?」
このまま話してても時間が潰れると思った成歩堂は、部屋の探索に切り替えることにした。
「いいけど、警察の人が調査したあとだからなにもないけど」
そう言って、モモイロは玄関の鍵を開け、中へと成歩堂を招きいれた。
彼女の言う通り中は警察の捜査のあとのようで、手がかりになりそうなものはあまり残っていなかった。
成歩堂は中を見回すと、扉が開いている金庫が目についた。
「この金庫は警察が開けたんですか?」
「そうなのよ。本当は人形が置いてあったけど。警察が重要な手がかりだからって持ってちゃって。
なんだったかしら。有名な作品だったのよ。たしか、かっかね、金山?だったかしら作者の名前」
人形?
成歩堂はなんとなく頭に浮かんだ名前を口にしてみる。
「それってもしかして金山繁座衛門ですか?」
「そうよそれ。お人形の名前が確か桜姫だったわ。まるで私のように桃色の衣が似合っている綺麗なお人形さんだったわ」
「は、はぁ」
成歩堂は全身から汗をだらだら流しながら、固い声色を出した。
ふと、浮かんだ疑問を思わず声に出していた。
「人形は盗まれていなかったんですか?」
「ええ。ちゃんとあったわよ」
「そう、ですか」
成歩堂が違和感を覚えていると、モモイロがそうそうとなにかを思い出したようで手を叩いた。
「それと、なぜか空の木箱もあったわね。妙に細長ーい箱で……孫の手でも入ってたのかしらねぇ」
「細長い、箱ですか」
「一体、なにが入ってたのかしらね」
「それも警察が?」
「いいえ。それだけは事件の前から空だったらしいわよ。警察はその細長い箱を持っていってたわ」
「箱しかなかったんですか?中身は?」
「さぁ?」
そのあとも成歩堂は部屋を探索したが、それと言った証拠を見つけられず、モモイロに礼を言って、部屋から出ていく。