同日　午後２時１２分　

九尾村・妖怪横丁　


「うわぁああ。もう食べれない。」

「そりゃ、あれだけ食べればね。」

苦笑いのオドロキの言葉に、希月はビシッとＶサインを突きつける。

「成長期ですからね！センパイも食べないと身長伸びませんよ！」

「だからオレはもう伸びなっ」

どんっと体がぶつかり、オドロキは頭を下げる。

「すみませっあぁあ！」

「センパイどうしたん……あぁ！」

オドロキにぶつかってきた中年の男を見て、二人は声をあげた。

男はくすんだベージュのジャケットを羽織り、同色のハンキャスの帽子を被り、肩にさつまいも色のタオルをかけている。

「「クマベエさん！」」

たぬきのような隈を持つ男は、しまったという顔をした後、すぐに愛想笑いをして手をこすりはじめた。

「へへっセンセイたち久しぶりだべ」

「って！また勝手に盗ってる！」

ココネは目を三角にして、声を荒げる。

クマベエの腕にはオドロキの腕輪がはめられている。

「オレの腕輪返してください！」

「すっすまねええええええ！」

クマベエが顔を伏せ、両手で手を合わせた。