「牙琉けんっ」

鬼が検事を助けようとするが、動きが止まる。

目を凝らすと、わずかだが光に反射している物が目に入った。

――――いつの間に！？

鬼の周りだけでなく、部屋中に張り巡らされている糸を睨む。

鬼風は懐からクナイを取り出し、糸を切る。

だが、糸をかいくぐって鋭利な刃物が水蜘蛛から飛んでくる。

そのうちのひとつが、鬼風の左肩に刺さった。

「ぐぁっ！」

「さてさて、色男を助けるのにどれくらい持つかしらね！」

「くっ！」

鬼風は後ろ宙返りをしながら、張られた一本の糸に足を乗せる。

糸を使い、真上に跳んだ。

牙琉の居る高さまで来た瞬間、横に蹴りを入れ、そこに張られていた糸を使い、横へ飛んだ。

途中にある邪魔な糸をクナイで切りながら、まっすぐ牙琉の元へ向かう。

「単純な動きね」

キンッ！と甲高い音がした。

鬼風の持ったクナイを水蜘蛛がクナイで受け止める。

重力に従い鬼の体が下に落ちる。

近くの糸にとんっと静かに降りた。

「動きは鈍ってないようね、鬼風。―――いいえ、被検体S-613T、"カレハ"。」