しばらく走り、鬼風はちらりっと後ろを振り返ると、金髪の男性が目に入る。

ちっと鬼風は舌打ちをする。

まだ追っかけてくるよあのジャラジャラ検事ぃいい！

泥棒と検事による長い追いかけっこはなかなか決着がつかずにいた。

「つーか！」

このままじゃ埒が明かないと、鬼風は大声を出しながら、後ろを振り返り、足を止めた。

「君には逮捕権がねえだろ！」

鬼風がようやく足を止め、牙琉も足を止めた。

「近くに待機してる警官に引き渡せば問題ないよ！」

「そもそも、さっきのお前の発言に異議ありだ！

今の私の顔が素顔と決めつけるのは早急すぎんじゃねえか？」

牙琉はハハッと短い笑い声をあげ、微笑みを鬼風に向かって浮かべる。

「いや、それが君の素顔だろ。

さっき切れた傷からは赤い血しか滴り落ちていない。

もし、アンタが変装をしているなら、傷口からマスクの切れ目と血が見えるはず。

つまり、その傷こそが、君の素顔である証拠だ。」

理にかなった推理に鬼風は挑発的な笑みを浮かべる。

「なかなかやるじゃないか。イケメン検事さんよぉ」

「女の子の顔は覚えるのは得意だけど、男の顔は覚えるのは苦手でね。

でも、君のような犯人の顔なら話は別だよ。その顔をそう簡単に忘れることはないだろう。」

走ってる内に、鬼風は入るつもりのなかった水族館のショーをリハーサルするための地下ステージへといつの間にか入ってしまっていた。

「というか、アンタよくこんな地下に入ってきたよな。まさか、私が地下に来ることまで推理済み？」

「偶然さ。たまたま地下に入っていく君の姿が見えたからだよ」

その言葉に鬼風は眉を歪めた。