第三話:魚の水を得たるが如し
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警官たちの姿が見えなくなって、女はメガネのブリッジを指で押し上げた。
「ふっはぁー……あっぶなぁ。」
メガネの女……鬼風は強張っていた肩の力を抜いた。
逃げるときは女に化けるのが一番だな。
先ほどの緊張感を思いだし、鬼風はふうと息をひとつ吐き出した。
さってとターゲットも手に入ったことだし、このままとんずらといきますか。
そう考えながら歩いていたら、ドンっと前にいた男たちとぶつかる。
「あっすみませ」
「あぁあああああ!!」
突如鬼風とぶつかった男が肩を押さえて、大声をあげた。
「おい。金田!どうした!?」
「いってぇええええ。ちょっと肩の骨折れたかもしんね」
……おいおい。
「おい!てめえ!俺のダチ怪我させやがったなぁ!」
運が悪い。
ガラの悪そうなチンピラに目をつけられてしまった。
鬼風は内心舌打ちをしながらも、怯えた表情を顔に張り付ける。
「えっえ、あっあの、わたし」
ぶつかった男に声をかけていた男が、鬼風の顔をじろじろと見る。
「うっわぁ。目も覚めるようなこんなブス初めて見た。いまどき居るんだな。こういう芋くさい女って」
「おいっ。人の大事なダチに怪我させて無視してんじゃねえぞ。
治療代くらい出すのが礼儀ってもんだろ。」
「すみません!あのっでも、私、その、まだ給料日じゃなくて……」
「あんたみたいなダサい女なら
たんまり貯めこんでるんだろ?
使われないお金を俺たちが有効活用してやるからよ」
やばいなぁ。
鬼風は今の状況について、必死に思考をめぐらす。
チンピラをぼこぼこにしても多少なら正当防衛が通るだろう。
鬼風はチンピラを倒してしまおうかと思った。
だが、目立つ行動はなるだけ避けたかった鬼風は、じっとすることしかできなかった。
警察がウロウロしている中で目立つことはしたくないしなぁ。
鬼風は鞄をつかんで、震えながら謝っているフリをすると。
「女性をかつあげするなんて、最悪な趣味だね。」
「あぁ?」
「なんだてめえは?」
突如、金髪に小麦色の肌、爽やかな青い瞳の男性が現れる。
その人物を見て、鬼風は心の中で声をあげた。
―――牙琉響也!
「げっ。おいっ行こうぜ。」
牙琉の顔を見て、チンピラのひとりが仲間たちに声をかける。
「はぁ?なんで」
「牙琉だよ。」
「サツか?」
「いんや、検事だよ。ケ・ン・ジ。」
そう言った仲間の態度を見て、ぶつかった男は軽く舌打ちをして、鬼風の方を見る。
「2度と顔見せんなよブスっ!」
男たちはそう吐き捨てると、その場から去って行った。
あらら?
鬼風はきょとんと、目の前で起こったことに驚いていた。
「センスの欠片もない捨て台詞だな。」
牙琉は顔をしかめながら、男たちの背中を睨んでいた。
鬼風はメガネ女の演技を続けた。
「あっあの!」
「ん?」
褐色肌の美男はカメラの前に出ても恥ずかしくないような、爽やかな微笑を鬼風に向ける。
悔しいけど男前だな……。
鬼は心の中でそう思いながら、頭を勢いよく下げて体を直角に曲げた。
「あっありがとうございました」
胸の前で鞄を抱きながら、ゆっくりと顔をあげる。
「あっあの、なんとお礼を言ったら、その、」
おどおどと言葉を紡ぐ。
「男性数人が女性一人を取り囲んでいたら、助けるのは当り前さ」
男前めっ。
心の中で毒づきながら、何度もお礼の言葉を口にする。
「あのっ、よろしければお名前だけでも聞いていいですか?」
鬼風がそう言うと、牙琉は微かに目を見開いて、驚いたような顔をした。
まっまずいことでも言ったか?
鬼は内心冷や汗をかきながら、無表情で首をかしげる。
「あっごめん。久しぶりに聞いたからつい」
「久しぶり?」
あっ。
鬼風は自分の失言にきづいて、内心滝のような冷や汗を流していた。
し、しまったぁあ!そういえばこいつ、有名人だったぁ!
しかも一般女性なら知らない人がいないレベルの有名人だったぁ!
会話を変えることはできないので、鬼風は”牙琉響也”という有名人を知らないという設定を貫くことにした。
「ガリューウェーブっていうバンド知ってる?」
「すっすみません。私、あまりテレビを見ないので、芸能とかに疎くて……」
「そっか。」
「あのっ気分を悪くさせて、ほんっとすみません」
「いいよ。そういう人もいると思ったら新鮮に見えるから」
いい奴すぎてムカツクわぁー。
「わっ私は伊呂波モミジっていいます。」
「僕は牙琉響也。」
「あのっお礼になるかわかりませんが。」
飴を差し出す。
「こんなものしか渡せなくて、そのすみません」
「ありがとう。大事に食べるよ」
牙琉は渡された飴を口元に持っていき、片目をつぶる。
サマになっている牙琉の姿に、鬼風は目をきつく細めたくなるのを我慢した。
「じゃっ。僕はこれで。」
片手をひらりと振り、鬼風に背を向けた。
「本当にありがとうございましたっ!」
頭を下げて、牙琉の姿が見えなくなって、しばらく。
はぁーと盛大なため息を吐いて、メガネ女は腰に手を当てた。
「あの検事……やっぱムカツクわ」
「ふっはぁー……あっぶなぁ。」
メガネの女……鬼風は強張っていた肩の力を抜いた。
逃げるときは女に化けるのが一番だな。
先ほどの緊張感を思いだし、鬼風はふうと息をひとつ吐き出した。
さってとターゲットも手に入ったことだし、このままとんずらといきますか。
そう考えながら歩いていたら、ドンっと前にいた男たちとぶつかる。
「あっすみませ」
「あぁあああああ!!」
突如鬼風とぶつかった男が肩を押さえて、大声をあげた。
「おい。金田!どうした!?」
「いってぇええええ。ちょっと肩の骨折れたかもしんね」
……おいおい。
「おい!てめえ!俺のダチ怪我させやがったなぁ!」
運が悪い。
ガラの悪そうなチンピラに目をつけられてしまった。
鬼風は内心舌打ちをしながらも、怯えた表情を顔に張り付ける。
「えっえ、あっあの、わたし」
ぶつかった男に声をかけていた男が、鬼風の顔をじろじろと見る。
「うっわぁ。目も覚めるようなこんなブス初めて見た。いまどき居るんだな。こういう芋くさい女って」
「おいっ。人の大事なダチに怪我させて無視してんじゃねえぞ。
治療代くらい出すのが礼儀ってもんだろ。」
「すみません!あのっでも、私、その、まだ給料日じゃなくて……」
「あんたみたいなダサい女なら
たんまり貯めこんでるんだろ?
使われないお金を俺たちが有効活用してやるからよ」
やばいなぁ。
鬼風は今の状況について、必死に思考をめぐらす。
チンピラをぼこぼこにしても多少なら正当防衛が通るだろう。
鬼風はチンピラを倒してしまおうかと思った。
だが、目立つ行動はなるだけ避けたかった鬼風は、じっとすることしかできなかった。
警察がウロウロしている中で目立つことはしたくないしなぁ。
鬼風は鞄をつかんで、震えながら謝っているフリをすると。
「女性をかつあげするなんて、最悪な趣味だね。」
「あぁ?」
「なんだてめえは?」
突如、金髪に小麦色の肌、爽やかな青い瞳の男性が現れる。
その人物を見て、鬼風は心の中で声をあげた。
―――牙琉響也!
「げっ。おいっ行こうぜ。」
牙琉の顔を見て、チンピラのひとりが仲間たちに声をかける。
「はぁ?なんで」
「牙琉だよ。」
「サツか?」
「いんや、検事だよ。ケ・ン・ジ。」
そう言った仲間の態度を見て、ぶつかった男は軽く舌打ちをして、鬼風の方を見る。
「2度と顔見せんなよブスっ!」
男たちはそう吐き捨てると、その場から去って行った。
あらら?
鬼風はきょとんと、目の前で起こったことに驚いていた。
「センスの欠片もない捨て台詞だな。」
牙琉は顔をしかめながら、男たちの背中を睨んでいた。
鬼風はメガネ女の演技を続けた。
「あっあの!」
「ん?」
褐色肌の美男はカメラの前に出ても恥ずかしくないような、爽やかな微笑を鬼風に向ける。
悔しいけど男前だな……。
鬼は心の中でそう思いながら、頭を勢いよく下げて体を直角に曲げた。
「あっありがとうございました」
胸の前で鞄を抱きながら、ゆっくりと顔をあげる。
「あっあの、なんとお礼を言ったら、その、」
おどおどと言葉を紡ぐ。
「男性数人が女性一人を取り囲んでいたら、助けるのは当り前さ」
男前めっ。
心の中で毒づきながら、何度もお礼の言葉を口にする。
「あのっ、よろしければお名前だけでも聞いていいですか?」
鬼風がそう言うと、牙琉は微かに目を見開いて、驚いたような顔をした。
まっまずいことでも言ったか?
鬼は内心冷や汗をかきながら、無表情で首をかしげる。
「あっごめん。久しぶりに聞いたからつい」
「久しぶり?」
あっ。
鬼風は自分の失言にきづいて、内心滝のような冷や汗を流していた。
し、しまったぁあ!そういえばこいつ、有名人だったぁ!
しかも一般女性なら知らない人がいないレベルの有名人だったぁ!
会話を変えることはできないので、鬼風は”牙琉響也”という有名人を知らないという設定を貫くことにした。
「ガリューウェーブっていうバンド知ってる?」
「すっすみません。私、あまりテレビを見ないので、芸能とかに疎くて……」
「そっか。」
「あのっ気分を悪くさせて、ほんっとすみません」
「いいよ。そういう人もいると思ったら新鮮に見えるから」
いい奴すぎてムカツクわぁー。
「わっ私は伊呂波モミジっていいます。」
「僕は牙琉響也。」
「あのっお礼になるかわかりませんが。」
飴を差し出す。
「こんなものしか渡せなくて、そのすみません」
「ありがとう。大事に食べるよ」
牙琉は渡された飴を口元に持っていき、片目をつぶる。
サマになっている牙琉の姿に、鬼風は目をきつく細めたくなるのを我慢した。
「じゃっ。僕はこれで。」
片手をひらりと振り、鬼風に背を向けた。
「本当にありがとうございましたっ!」
頭を下げて、牙琉の姿が見えなくなって、しばらく。
はぁーと盛大なため息を吐いて、メガネ女は腰に手を当てた。
「あの検事……やっぱムカツクわ」