「きゃぁあああ！」

「……へっ？」

懐中電灯の光に照らされているのは赤い鬼の泥棒ではなく、メガネをかけた妙齢の女性だった。

女性が警官たちに囲まれ悲鳴をあげた。

「おっ女？」

「すすすすみませんすみません！わわわわっわたしなにか悪いことしちゃったんですか！？」

「いっいえっ、あなたではなくてですね」

「失礼。」

奥沢警部は、首をかしげた女性の頬を思いっきりつねった。

「いたたたたた！」

女の口が横に広くなり、頬の皮膚がびろーんと伸びる。

「うむ。変装ではなく、本物の皮膚のようだな」

「うううううう。本当にすみません」

「いやっ、だから、あなたではなくてですね」

「お嬢さん。悪かったね。だが、女性が暗くなる時間に一人歩きは感心せんよ。

すぐに帰りなさい」

「えっあの、私、帰って大丈夫なんですか？」

「大丈夫ですよ。どうもお騒がせしました」

恐々と警官たちの顔を覗きながら、そそくさと警官たちの間をメガネの女は走り抜けた。

「一体、鬼風はどこに行っちまったんだ？」

奥沢は髪をぐしゃぐしゃとイラ立たしそうにかき混ぜた。