第二話:紅葉に置けば紅の露
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12月4日 某時刻
ヒノクレホテル・屋上
刑事は屋上の扉の前で待機していた警備員を美術館へ向かせた。
「ずいぶんと甘いセキュリティだな」
刑事の姿をした鬼風は針金で鍵を開け、屋上へと足を踏み入れた。
「こんなんじゃ入ってくれと言わんばかりの鍵じゃねえかよ」
屋上の端まで来ると、下から吹き付ける風が刑事の髪を揺らす。
「今日は良い風が吹くな。」
刑事は懐に隠しておいた紅葉姫を取り出し、にっと笑みを浮かべる。
「……美形天才検事破れたりってね」
「それは誰のことかな?」
ばっと後ろを振り返る。
屋上の扉に、風で乱れる金髪を手で押さえながら牙琉検事が立っていた。
「怪盗鬼風くん」
「なっ」
刑事の顔に焦りの表情が浮かぶ。
「下の警備員たちに情報が回ってなかったからね。もしかしてと思って屋上に来てみたんだ。
そしたら、大当たりってやつさ」
髪をかきあげ、青い瞳が泥棒に向かって強い眼差しを放つ。
「ツメが甘かったね。ビルから逃げたと思わせて屋上で待機し、
ビル内部の警備が薄くなったところを逃走するつもりだったんだろう。
けど、それももうできない。」
「残念だが、そうらしいな。」
刑事は肩で両手を広げてみせたあと、スーツを脱ぎ捨てる。
怪盗鬼風の姿が月夜の下に現れる。
鬼の早業に検事はヒューと口笛を鳴らす。
「真っ赤な鬼の面に、闇夜に紛れる黒い装束、見事な変装術だね」
牙琉の後ろの扉が開き、大勢の警官たちが雪崩こんでくる。
鬼風の背後は断崖絶壁で、周りは警官で包囲されていた。
「さぁ、時代遅れな奇術師のショーも今回で終わりだ」
検事の言葉に鬼はハッと鼻で笑い飛ばす。
「バカ言っちゃいけねえ。検事さん。
あんなペテン師たちと同じに扱うなよ。
私は例えて言うならしがねえ業を演じる芸人さ。
奇術師と芸人の違いを教えてやるよ。
奇術師は大魔術という名のペテンで客の視線を盗み出す。
けど、芸人は己の身ひとつだけで客の視線を盗み出す。
つまりだ、芸人にはタネも仕掛けもないってことさ。」
そう言って、鬼風は地面を蹴り、後ろへと跳んだ。
「なっ」
予想外の行動に牙琉は反応が遅れた。
ヒノクレホテル・屋上
刑事は屋上の扉の前で待機していた警備員を美術館へ向かせた。
「ずいぶんと甘いセキュリティだな」
刑事の姿をした鬼風は針金で鍵を開け、屋上へと足を踏み入れた。
「こんなんじゃ入ってくれと言わんばかりの鍵じゃねえかよ」
屋上の端まで来ると、下から吹き付ける風が刑事の髪を揺らす。
「今日は良い風が吹くな。」
刑事は懐に隠しておいた紅葉姫を取り出し、にっと笑みを浮かべる。
「……美形天才検事破れたりってね」
「それは誰のことかな?」
ばっと後ろを振り返る。
屋上の扉に、風で乱れる金髪を手で押さえながら牙琉検事が立っていた。
「怪盗鬼風くん」
「なっ」
刑事の顔に焦りの表情が浮かぶ。
「下の警備員たちに情報が回ってなかったからね。もしかしてと思って屋上に来てみたんだ。
そしたら、大当たりってやつさ」
髪をかきあげ、青い瞳が泥棒に向かって強い眼差しを放つ。
「ツメが甘かったね。ビルから逃げたと思わせて屋上で待機し、
ビル内部の警備が薄くなったところを逃走するつもりだったんだろう。
けど、それももうできない。」
「残念だが、そうらしいな。」
刑事は肩で両手を広げてみせたあと、スーツを脱ぎ捨てる。
怪盗鬼風の姿が月夜の下に現れる。
鬼の早業に検事はヒューと口笛を鳴らす。
「真っ赤な鬼の面に、闇夜に紛れる黒い装束、見事な変装術だね」
牙琉の後ろの扉が開き、大勢の警官たちが雪崩こんでくる。
鬼風の背後は断崖絶壁で、周りは警官で包囲されていた。
「さぁ、時代遅れな奇術師のショーも今回で終わりだ」
検事の言葉に鬼はハッと鼻で笑い飛ばす。
「バカ言っちゃいけねえ。検事さん。
あんなペテン師たちと同じに扱うなよ。
私は例えて言うならしがねえ業を演じる芸人さ。
奇術師と芸人の違いを教えてやるよ。
奇術師は大魔術という名のペテンで客の視線を盗み出す。
けど、芸人は己の身ひとつだけで客の視線を盗み出す。
つまりだ、芸人にはタネも仕掛けもないってことさ。」
そう言って、鬼風は地面を蹴り、後ろへと跳んだ。
「なっ」
予想外の行動に牙琉は反応が遅れた。