「すっすみましぇん。奥沢警部」

うつらうつらと頭が船を漕いでる状態の紗針刑事が現れる。

頭を振りながら、警部に謝罪する。

「あっ怪しい人物を捕まえようとしましたが、やられてしまいました。」

刑事が状況を警部に説明しはじめる。

「なにかが額に当たり、急に意識が遠のいて……。」

意識がまだ覚醒していないらしく、半分寝ぼけながら説明する刑事にイライラを募らせる警部。

「しゃきっとせんかっ！トイレ行って顔洗ってこいっ！」

「はっはぃ」

紗針はフラフラとしながらも、東階段にあるトイレへと向かう。

牙琉は刑事の背中をじっと真剣な眼差しで睨んでいた。

「どうやら、彼は催眠ガスを浴びせられたようですね」

「鬼風の得意技ですよ。自分の姿を見た者はああやって催眠ガスの入ってる玉を投げられ、眠らされてしまうのです。まぁ、あの様子なら体に害はないようですし、大丈夫でしょう」

ちらっと検事を見て、奥沢は一瞬迷ったが、口を開く。

「牙琉検事」

「ん？」

「そのっ今回の警備ですが……」

そう言いかけて、奥沢は首を振った。

「いえっなんでもありません。気にせんでください」

そう言うと、トイレから戻ってきた刑事に近づき、再び警部は拳骨を振り下ろしていた。