第二話:紅葉に置けば紅の露
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カタカタとパソコンの音が薄暗い部屋に響く。
黒装束に身を包んだ女が、PCに向かう白衣の背を気まずそうに見つめる。
「九尾村でずいぶん楽しんできたみてぇじゃねえか」
「あのね。あれは前から狙ってた獲物で……」
「アタシが作ってやったダミーを使ったのに、警察にすぐバレるなんて超マヌケ」
「ぐっ」
「おまけにせっかく盗んだ鬼切り像を青臭い弁護士に取り返されちまってさ」
いや、彼は青じゃなくて赤かったぞ。と黒装束の女は心の中でつっこむが、口では言い訳をする。
「だってあれは、元々偽物だったし……」
あぁああああ!と黒装束の女が両手で髪をかきむしった。
「悪かった!ごめんなさい!お前に話さず鬼寺に行ってきて悪かった!」
女が声を大きくして、謝った。
「だから、機嫌直してよ。ねえ杏里!」
くるっと白衣の女―――黒谷 杏里(クロタニ アンリ)は、黒装束の女―――鬼風の方に回転椅子を回した。
色素の薄い髪、黒縁の眼鏡、不健康そうな青白い肌の女が嫌味な笑いを浮かべる。
「くっくく。アタシを置いてくなんて良い度胸してるじゃないか」
「私一人で十分だと思ったんだ。それにお前はハッカーだろ。
前回は簡単な警備のお寺だったから一人でもよかったさ。
けど、今回のターゲットは設備の整った厳重な警備がされてる美術館なんだ。
私一人じゃ入るのは難しい、杏里の力が必要なんだよ」
「"出来ない"じゃなく、"難しい"ねぇ。さすが、鬼寺に盗みに入って帰ってきた鬼風様だ。随分自信があるみたいですね」
「……間違えました。できません。杏里さまの力が無ければ私は無力です。だから、どうか力を貸してください。」
「しゃぁーないなぁ」
クックック。と嫌な笑い声を聞き、鬼風はほっと一息吐いた。
笑ってくれたってことは機嫌が直ったらしいな。
長年の付き合いから、相棒の機嫌がもとに戻り、鬼風は安心した。
「今回のターゲットは。【紅葉姫】。
収容されてる場所はささやき美術館。
50階建てビルのヒノクレホテルの最上階にある美術館だ。」
「その美術館に予告状は?」
「すでに送ってある」
「じゃ、あとは忍び込むだけか」
「そういえば、面白い情報を手に入れたぜ」
「面白い情報?」
ちょいちょいと手招きされ、鬼風は杏里に近寄る。
「なにさ?面白い情報って」
「まぁ、まずこれを見てみなよ」
そう言って、差し出されたタブレット画面を覗き込む。
鬼風の目に、動画が映る。
動画の中はなにやら赤、青、緑と瞬時に色が変わっていく、目がチカチカするようなライトが動き回っている。
そのライトの中央でマイクスタンドに立つ金髪の男性に鬼風は目を向ける。
「これ、なんかのライブ?」
「ガリューウェーブ。警察関係者5人によって構成されている元人気ロックバンドさ。」
「元ってことは……」
「最近、解散したらしいぜ」
「この歌ってる人がヴォーカルだよな?」
上品な顔立ちでいかにも女受けしそうな容姿だなぁ。
鬼風は恨みがましそうに目を細めて、画面を見つめていた。
「これがガリューウェーブの元リーダーで検事の牙琉響也。今は検事の方に専念してるようだぜ」
ポンッと手を叩いて、鬼風は声をあげた。
「思い出した!確か、音楽番組によく出てた金髪ガングロの人でしょ。」
じとっとした目で相棒を睨む。
「というか、杏里。結局、この我流なんたらだかバリウムなんたらだかのロックバンドと今回の件とどう関係があるのさ?」
まぁ待てよ、と手で制して、杏里は椅子を回し鬼風に向き直る。
「このヴォーカルさんが、美術館の警備に参加するらしい」
その情報を聞き、鬼風ははぁ!?と驚きの声をあげる。
「なんで検事が現場に来るんだよ!検察って普通は大量の事件を抱えてデスクワークや裁判で忙しいはずだろ!?」
呆れたような嫌そうな顔をしながら鬼風は続ける。
「というか、検察って捜査に参加してもいいの?」
「検察にも刑事同様、操作権は与えられてるぜ。」
杏里はメガネを指で持ち上げて、言葉を切る。
「……鬼風の捜査権はもちろんないけどな」
「ってことは、別件で捜査してるのか?」
杏里は肩をすくめてみせた。
「そこんところはアタシもまだわからん。」
「調査中ってことか……まぁ、いいさ。イケメン検事だろうと美形検事だろうと、この鬼風サマが簡単に捕まるかってんだ。」
鬼はニィッと片頬をつりあげてみせる。
「それじゃ相棒。今回の作戦はどう行こうか?」
「いつも通りでいいよ。」
肩を回し、鬼風は答える。
「―――“モミジ”」
鬼風は自分の名前を呼ばれ、杏里の方に振り返る。
「なに?杏里」
「私たちは二人で鬼風だ。」
「わかってるよ」
「……捕まるなよ」
「誰に言ってんのさ……“奴ら”を誘き出すまでは、捕まるようなヘマはしないさ」
黒装束に身を包んだ女が、PCに向かう白衣の背を気まずそうに見つめる。
「九尾村でずいぶん楽しんできたみてぇじゃねえか」
「あのね。あれは前から狙ってた獲物で……」
「アタシが作ってやったダミーを使ったのに、警察にすぐバレるなんて超マヌケ」
「ぐっ」
「おまけにせっかく盗んだ鬼切り像を青臭い弁護士に取り返されちまってさ」
いや、彼は青じゃなくて赤かったぞ。と黒装束の女は心の中でつっこむが、口では言い訳をする。
「だってあれは、元々偽物だったし……」
あぁああああ!と黒装束の女が両手で髪をかきむしった。
「悪かった!ごめんなさい!お前に話さず鬼寺に行ってきて悪かった!」
女が声を大きくして、謝った。
「だから、機嫌直してよ。ねえ杏里!」
くるっと白衣の女―――黒谷 杏里(クロタニ アンリ)は、黒装束の女―――鬼風の方に回転椅子を回した。
色素の薄い髪、黒縁の眼鏡、不健康そうな青白い肌の女が嫌味な笑いを浮かべる。
「くっくく。アタシを置いてくなんて良い度胸してるじゃないか」
「私一人で十分だと思ったんだ。それにお前はハッカーだろ。
前回は簡単な警備のお寺だったから一人でもよかったさ。
けど、今回のターゲットは設備の整った厳重な警備がされてる美術館なんだ。
私一人じゃ入るのは難しい、杏里の力が必要なんだよ」
「"出来ない"じゃなく、"難しい"ねぇ。さすが、鬼寺に盗みに入って帰ってきた鬼風様だ。随分自信があるみたいですね」
「……間違えました。できません。杏里さまの力が無ければ私は無力です。だから、どうか力を貸してください。」
「しゃぁーないなぁ」
クックック。と嫌な笑い声を聞き、鬼風はほっと一息吐いた。
笑ってくれたってことは機嫌が直ったらしいな。
長年の付き合いから、相棒の機嫌がもとに戻り、鬼風は安心した。
「今回のターゲットは。【紅葉姫】。
収容されてる場所はささやき美術館。
50階建てビルのヒノクレホテルの最上階にある美術館だ。」
「その美術館に予告状は?」
「すでに送ってある」
「じゃ、あとは忍び込むだけか」
「そういえば、面白い情報を手に入れたぜ」
「面白い情報?」
ちょいちょいと手招きされ、鬼風は杏里に近寄る。
「なにさ?面白い情報って」
「まぁ、まずこれを見てみなよ」
そう言って、差し出されたタブレット画面を覗き込む。
鬼風の目に、動画が映る。
動画の中はなにやら赤、青、緑と瞬時に色が変わっていく、目がチカチカするようなライトが動き回っている。
そのライトの中央でマイクスタンドに立つ金髪の男性に鬼風は目を向ける。
「これ、なんかのライブ?」
「ガリューウェーブ。警察関係者5人によって構成されている元人気ロックバンドさ。」
「元ってことは……」
「最近、解散したらしいぜ」
「この歌ってる人がヴォーカルだよな?」
上品な顔立ちでいかにも女受けしそうな容姿だなぁ。
鬼風は恨みがましそうに目を細めて、画面を見つめていた。
「これがガリューウェーブの元リーダーで検事の牙琉響也。今は検事の方に専念してるようだぜ」
ポンッと手を叩いて、鬼風は声をあげた。
「思い出した!確か、音楽番組によく出てた金髪ガングロの人でしょ。」
じとっとした目で相棒を睨む。
「というか、杏里。結局、この我流なんたらだかバリウムなんたらだかのロックバンドと今回の件とどう関係があるのさ?」
まぁ待てよ、と手で制して、杏里は椅子を回し鬼風に向き直る。
「このヴォーカルさんが、美術館の警備に参加するらしい」
その情報を聞き、鬼風ははぁ!?と驚きの声をあげる。
「なんで検事が現場に来るんだよ!検察って普通は大量の事件を抱えてデスクワークや裁判で忙しいはずだろ!?」
呆れたような嫌そうな顔をしながら鬼風は続ける。
「というか、検察って捜査に参加してもいいの?」
「検察にも刑事同様、操作権は与えられてるぜ。」
杏里はメガネを指で持ち上げて、言葉を切る。
「……鬼風の捜査権はもちろんないけどな」
「ってことは、別件で捜査してるのか?」
杏里は肩をすくめてみせた。
「そこんところはアタシもまだわからん。」
「調査中ってことか……まぁ、いいさ。イケメン検事だろうと美形検事だろうと、この鬼風サマが簡単に捕まるかってんだ。」
鬼はニィッと片頬をつりあげてみせる。
「それじゃ相棒。今回の作戦はどう行こうか?」
「いつも通りでいいよ。」
肩を回し、鬼風は答える。
「―――“モミジ”」
鬼風は自分の名前を呼ばれ、杏里の方に振り返る。
「なに?杏里」
「私たちは二人で鬼風だ。」
「わかってるよ」
「……捕まるなよ」
「誰に言ってんのさ……“奴ら”を誘き出すまでは、捕まるようなヘマはしないさ」