女たちの背後では、空から夕焼けの名残りの赤さが失われ、藍色の空が広がりはじめていた。

夕日に照らされていた部屋の人間の顔が少しずつ闇に包まれ、判別ができなくなっていく。

「……恐ろしいです。」

不藤の腕にブラ下がっていたゆめみが、顔をうつむかせながらポツリと言葉を落とす。

その言葉を冥土野は鼻であしらった。

「今更命乞いをしても遅いわよ」

「≪逢魔時≫になってしまいました。」

「は？」

噛み合わない会話に女中がイラ立ちを見せる。

「逢魔時は恐ろしい妖怪が出るのです。」

「言いたいことはそれだけ……」

風が吹く。

不藤の巨体が背後へ大きく吹っ飛んだ。

突如ズーンッと大きな音を立てながら床に倒れ伏せた仲間に弥勒は気を取られた。

刃先がゆめみから逸れる。

弥勒の手から刃物が飛び出し、空中でくるくる回りながら彼の背後の畳に刺さった。

弥勒は刃物の行方を目で追うが、弥勒の額にカツっとなにかが当たる。

ボンッと音がするとなにやら彼の顔の周りに白い気体が発生した。

そのガスを吸いこんだ途端、彼の足元がフラつく。

ふにゃっと奇声を漏らしながら、弥勒はその場に崩れ落ちる。

突如、仲間がバタバタと倒れていく。

それを目の前にして、女はスーッと神経が凝結していくような気味悪さを感じた。

ゆめみの首に腕をまきつけ、銃を少女のこめかみに突きつける。

「うっ動くな！！」

訳のわからない状況に、女はヒステリックな声をあげる。

「どこにいるかは知らないけど今度妙な真似をしたら」

「ここに居るじゃないですか。」

冥土野の瞳孔が恐怖で揺れた。

ゆめみは伏せていた顔をゆっくりと上げる。

女は腕の中の少女を見て、ひっと息を飲んだ。