第一話:嘘吐きは泥棒のはじまり
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同日 某時刻
鬼寺・離れ家
「えっ?山を降りるんですか!?」
今野の言葉を聞き、ココネが驚愕した。
今野は事件現場に居た全員の身体検査及び事情聴取を終えて、現場を捜査しようとした。
そこへ、無線から連絡が入ったのだ。
「……この事件の犯人が九尾村に現れたらしいんだ。」
なんですってぇ!?とオドロキたち3人はそれぞれ驚きの声をあげた。
「どうやら、我々がここでもたついていた間に、奴は寺からとっくに逃げ出していたみたいだ。」
悔しそうに今野が拳を握る。
「強盗および殺人か……あんな噂なんかをあてにするんじゃなかったよ」
「噂?」
苦々しく吐き出した彼のセリフを聞き、オドロキは眉をよせた。
「あの今野さん。さっき言ってた≪鬼風 ≫って、もしかしてあの予告状を出した泥棒のことですよね?」
さきほどから彼の口から出てくる名前について、ココネが尋ねた。
「あぁ。そして、鬼切り像を盗み、白川さんを殺した犯人さ」
「今野さんは≪鬼風≫って泥棒を知ってるんですか?」
その言葉を聞き、じっと今野はオドロキに視線を向けた。
その視線に少しオドロキはたじろく。
「……念のため訊きたいんだが……君は本当に鬼風の仲間ではないんだな?」
「はぁ?ちっちがいますよ!」
「そうですよ!オドロキ先輩が泥棒や殺人をする人の仲間なわけないですよ!」
「しかし、さきほどから天馬さんに【オニの弁護士】と呼ばれていたしな……」
「今野さん。鬼の弁護士さんは泥棒ではないのです。私が断言します。」
「うーん……わかった。君たちを信じて、話そう。」
オドロキたちの言葉を信用して、今野は説明を始めた。
「私も知り合いから聞いた話なんだがね。≪鬼風≫はこの辺りではまだ知られていないけど、ある地方では有名な悪党らしいんだ。
"変幻自在神出鬼没の大泥棒"
"時代遅れな傾奇者"
"平成の石川五右衛門"
いろんな呼び名をつけられているが、最も呼ばれてるのが≪オニカゼ≫
そう呼ばれる理由は、奴の姿だ。
黒い忍び装束に身を包み、顔に真っ赤な鬼の面をつけ、月夜の闇を駆ける姿はまるで風のよう。
そんな奴を見て、誰かが《鬼風》と呼ぶようになってね。
本人もそれを気に入ったらしくて、予告状で鬼風と名乗るようになったんだ。
奴の手口は獲物の持ち主に犯行予告を送りつけ、あざやかな技でそれを盗み出す。
変装の名人でもあり、あるときは足の悪いご老人、またあるときは郵便配達の青年、またあるときはOL勤めの美女。
そして、奴の本当の正体は誰も知らない。
全てが謎に包まれている悪党さ」
「それ以外に、特徴みたいなのは聞いてないんですか?」
「自分もあまり情報を与えられていないでありますが、人殺しはしないのと
ヘンテコな詩みたいな言葉で書かれた予告を送ってくるけど、時間を破ったことはないってことぐらいしか。
まぁ、その情報もどうやらデマであったようでありますが。」
今野ははぁとため息を吐いた。
「とにかく、私は犯人を捕まえに村に戻ります。
それまで決して現場はいじらないように!」
そう言い残して、今野はお寺を出て行った。
「私たちも九尾村に行きましょう!」
「待った!」
オドロキは寺を飛び出そうとするココネに制止をかけた。
「警察が来るまでここは離れられないだろ。それに……」
オドロキは腕を組んで、額を指で押す。
「……本当に犯人は≪鬼風≫なんだろうか。」
「なにを言ってるんですか。現にこうして像が盗まれて、≪鬼風≫は九尾村へ逃げたじゃないですか。」
「……この鬼寺から九尾村まで約1時間半かかる。
けど、この事件が起きてから30分後に、鬼風は九尾村に現れた。
鬼風が白山さんを殺害して、九尾村に現れるのは距離的に不可能なんだよ。」
「もしかしたら、犯行時刻がもっと前だったのではないですか?」
ゆめみが怖々と自分の考えを口にした。
「本当の犯行時刻は3時ぐらいで、私たちが来た4時半頃に銃声と錯覚させるために遠隔操作で爆竹を使ったかもしれないです。」
「それはない!あれは銃声だった!アメリカでも聞いたから間違いないよ!」
「……だそうだよ。」
オドロキがゆめみに目を向ける。
「俺もあれが爆竹だったとは思ってないよ。」
「もしかして……オドロキ先輩は、犯人がこのお寺に残ってる人たちだと考えてるんですか?」
「ええええ!?」
ココネの推測に、ゆめみが驚愕の声をあげた。
オドロキが静かにココネの言葉に頷く。
「死体解剖がされてないから、正確な死亡時刻はわからないけど
死体の状態を見る限り、俺たちが発見したときは死亡してから時間はそれほど経っていなかった。
死亡してしばらく時間が経っていたなら、血が固まっているはずだからね」
ココネが腰に手を当てながら、オドロキに尋ねた。
「でも、犯人がこのお寺の中にいる人だと考えた根拠はなんですか?オドロキ先輩」
オドロキはキュッと左の二の腕を握る。
「……あの三人が証言していたときなんだ。」
それは今野がまだ寺にいて、事情聴取をしているときのことだった。
…………
「それでは、あなたたちのお名前と職業。
あなたたちが現場に駆けつけるまでどこでなにをしていたか答えていただけますか?」
大柄な甚兵衛姿の男が野太い声で答える。
「私は不藤 明王(フドウ ミョウオウ)と言います。白川先生の弟子になりたいと志願し続け、ここに住み込んでおりました。
現場に来る前は母屋の方で夕食の準備をしていました。」
甚兵衛姿の細い男が話し始めた。
「僕は実緑 菩薩(ミロク ボサツ)と申します。不藤と同じく白川先生の弟子になりたいとこの寺に住み込み、住職様の手伝いをしておりました。現場に来る前は母屋の方で掃除をしていました。」
ハンカチで目元を抑えながら、和装姿の女中が答えた。
「私は冥土野 美焼(メイドノ ミヤケ)と申します。ここに居候していた白川様の身の回りの世話をしておりました。私は母屋で洗濯をしている最中でした。」
グズっと鼻を鳴らし、涙声でつづける。
「鬼切り像は白川様が大事に仏壇に飾られていたんです。まさか鬼風に白山様だけでなく、像まで奪われるなんて」
ドックン
オドロキは左手首が締め付けられる痛みを感じた。
「……」
オドロキは黒い瞳でじっと見つめながら、冥土野の言葉に耳を澄ましていた。
……………。
オドロキの話を聞き、ココネがはっとした。
「センパイ!もしかして!」
「……あぁ。あの女中さん。嘘を吐いてるんだ。」
ゆめみが大きく目を見開く。
ココネは興奮したように早口で結論を言う。
「じゃっじゃあ、白川さんを殺したのは、冥土野さん!?」
「まだ彼女がやったっていう証拠がない」
「あっ!でも、さっき私が彼女の身体検査をしましたけど、拳銃も像もでてきませんでしたよ」
「ということは、まだこの家に隠してあるってことだな。」
「あのっ調査するなら早く調べた方が良いと思います。冥土野さんたちは住職様に事情を説明しに行ってますから。」
ゆめみが恐る恐るそう言うと、心音が頷く。
「それもそうだね。今野さんには悪いけど、ちょっとお家を調査させてもらいます!」
「この家を手当たりしだい探してみよう。」
鬼寺・離れ家
「えっ?山を降りるんですか!?」
今野の言葉を聞き、ココネが驚愕した。
今野は事件現場に居た全員の身体検査及び事情聴取を終えて、現場を捜査しようとした。
そこへ、無線から連絡が入ったのだ。
「……この事件の犯人が九尾村に現れたらしいんだ。」
なんですってぇ!?とオドロキたち3人はそれぞれ驚きの声をあげた。
「どうやら、我々がここでもたついていた間に、奴は寺からとっくに逃げ出していたみたいだ。」
悔しそうに今野が拳を握る。
「強盗および殺人か……あんな噂なんかをあてにするんじゃなかったよ」
「噂?」
苦々しく吐き出した彼のセリフを聞き、オドロキは眉をよせた。
「あの今野さん。さっき言ってた≪
さきほどから彼の口から出てくる名前について、ココネが尋ねた。
「あぁ。そして、鬼切り像を盗み、白川さんを殺した犯人さ」
「今野さんは≪鬼風≫って泥棒を知ってるんですか?」
その言葉を聞き、じっと今野はオドロキに視線を向けた。
その視線に少しオドロキはたじろく。
「……念のため訊きたいんだが……君は本当に鬼風の仲間ではないんだな?」
「はぁ?ちっちがいますよ!」
「そうですよ!オドロキ先輩が泥棒や殺人をする人の仲間なわけないですよ!」
「しかし、さきほどから天馬さんに【オニの弁護士】と呼ばれていたしな……」
「今野さん。鬼の弁護士さんは泥棒ではないのです。私が断言します。」
「うーん……わかった。君たちを信じて、話そう。」
オドロキたちの言葉を信用して、今野は説明を始めた。
「私も知り合いから聞いた話なんだがね。≪鬼風≫はこの辺りではまだ知られていないけど、ある地方では有名な悪党らしいんだ。
"変幻自在神出鬼没の大泥棒"
"時代遅れな傾奇者"
"平成の石川五右衛門"
いろんな呼び名をつけられているが、最も呼ばれてるのが≪オニカゼ≫
そう呼ばれる理由は、奴の姿だ。
黒い忍び装束に身を包み、顔に真っ赤な鬼の面をつけ、月夜の闇を駆ける姿はまるで風のよう。
そんな奴を見て、誰かが《鬼風》と呼ぶようになってね。
本人もそれを気に入ったらしくて、予告状で鬼風と名乗るようになったんだ。
奴の手口は獲物の持ち主に犯行予告を送りつけ、あざやかな技でそれを盗み出す。
変装の名人でもあり、あるときは足の悪いご老人、またあるときは郵便配達の青年、またあるときはOL勤めの美女。
そして、奴の本当の正体は誰も知らない。
全てが謎に包まれている悪党さ」
「それ以外に、特徴みたいなのは聞いてないんですか?」
「自分もあまり情報を与えられていないでありますが、人殺しはしないのと
ヘンテコな詩みたいな言葉で書かれた予告を送ってくるけど、時間を破ったことはないってことぐらいしか。
まぁ、その情報もどうやらデマであったようでありますが。」
今野ははぁとため息を吐いた。
「とにかく、私は犯人を捕まえに村に戻ります。
それまで決して現場はいじらないように!」
そう言い残して、今野はお寺を出て行った。
「私たちも九尾村に行きましょう!」
「待った!」
オドロキは寺を飛び出そうとするココネに制止をかけた。
「警察が来るまでここは離れられないだろ。それに……」
オドロキは腕を組んで、額を指で押す。
「……本当に犯人は≪鬼風≫なんだろうか。」
「なにを言ってるんですか。現にこうして像が盗まれて、≪鬼風≫は九尾村へ逃げたじゃないですか。」
「……この鬼寺から九尾村まで約1時間半かかる。
けど、この事件が起きてから30分後に、鬼風は九尾村に現れた。
鬼風が白山さんを殺害して、九尾村に現れるのは距離的に不可能なんだよ。」
「もしかしたら、犯行時刻がもっと前だったのではないですか?」
ゆめみが怖々と自分の考えを口にした。
「本当の犯行時刻は3時ぐらいで、私たちが来た4時半頃に銃声と錯覚させるために遠隔操作で爆竹を使ったかもしれないです。」
「それはない!あれは銃声だった!アメリカでも聞いたから間違いないよ!」
「……だそうだよ。」
オドロキがゆめみに目を向ける。
「俺もあれが爆竹だったとは思ってないよ。」
「もしかして……オドロキ先輩は、犯人がこのお寺に残ってる人たちだと考えてるんですか?」
「ええええ!?」
ココネの推測に、ゆめみが驚愕の声をあげた。
オドロキが静かにココネの言葉に頷く。
「死体解剖がされてないから、正確な死亡時刻はわからないけど
死体の状態を見る限り、俺たちが発見したときは死亡してから時間はそれほど経っていなかった。
死亡してしばらく時間が経っていたなら、血が固まっているはずだからね」
ココネが腰に手を当てながら、オドロキに尋ねた。
「でも、犯人がこのお寺の中にいる人だと考えた根拠はなんですか?オドロキ先輩」
オドロキはキュッと左の二の腕を握る。
「……あの三人が証言していたときなんだ。」
それは今野がまだ寺にいて、事情聴取をしているときのことだった。
…………
「それでは、あなたたちのお名前と職業。
あなたたちが現場に駆けつけるまでどこでなにをしていたか答えていただけますか?」
大柄な甚兵衛姿の男が野太い声で答える。
「私は不藤 明王(フドウ ミョウオウ)と言います。白川先生の弟子になりたいと志願し続け、ここに住み込んでおりました。
現場に来る前は母屋の方で夕食の準備をしていました。」
甚兵衛姿の細い男が話し始めた。
「僕は実緑 菩薩(ミロク ボサツ)と申します。不藤と同じく白川先生の弟子になりたいとこの寺に住み込み、住職様の手伝いをしておりました。現場に来る前は母屋の方で掃除をしていました。」
ハンカチで目元を抑えながら、和装姿の女中が答えた。
「私は冥土野 美焼(メイドノ ミヤケ)と申します。ここに居候していた白川様の身の回りの世話をしておりました。私は母屋で洗濯をしている最中でした。」
グズっと鼻を鳴らし、涙声でつづける。
「鬼切り像は白川様が大事に仏壇に飾られていたんです。まさか鬼風に白山様だけでなく、像まで奪われるなんて」
ドックン
オドロキは左手首が締め付けられる痛みを感じた。
「……」
オドロキは黒い瞳でじっと見つめながら、冥土野の言葉に耳を澄ましていた。
……………。
オドロキの話を聞き、ココネがはっとした。
「センパイ!もしかして!」
「……あぁ。あの女中さん。嘘を吐いてるんだ。」
ゆめみが大きく目を見開く。
ココネは興奮したように早口で結論を言う。
「じゃっじゃあ、白川さんを殺したのは、冥土野さん!?」
「まだ彼女がやったっていう証拠がない」
「あっ!でも、さっき私が彼女の身体検査をしましたけど、拳銃も像もでてきませんでしたよ」
「ということは、まだこの家に隠してあるってことだな。」
「あのっ調査するなら早く調べた方が良いと思います。冥土野さんたちは住職様に事情を説明しに行ってますから。」
ゆめみが恐る恐るそう言うと、心音が頷く。
「それもそうだね。今野さんには悪いけど、ちょっとお家を調査させてもらいます!」
「この家を手当たりしだい探してみよう。」