第一話:嘘吐きは泥棒のはじまり
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真っ暗な視界の中央から白い物が見える。
ぬるま湯に浸るような心地よい温さを感じながら、暗闇の意識から抜け出す。
意識がハッキリしてくるのと同時に、ぼやけた視界の中で白っぽい物が見える。
それが天井だとわかり、正方形の模様が描かれている中に、白く輝く蛍光灯の形が微かに見えた。
布団の中で伸びをしようとして、体に激痛が走る。
痛みに顔をしかめながら、体を丸める。
薬品特有のスースーする匂い、体にある痛み、異様に白い部屋。
そのキーワードから直感的に、自分が病院にいることを理解した。
とりあえず、上半身を起こして、周囲をきょろきょろと見回す。
……近くにあるといいんだけど。
お目当ての物が見つかり、手を伸ばす。
目にかけると、世界が鮮明になる。
ふと、首を回し、横の壁を眺めた。
『11月15日』
壁に掛けられた日めくりカレンダーの日付にはそう書かれていた。
……七五三か。
窓からは太陽が見える。
西寄りに傾いてるから、たぶんお昼を過ぎて数時間は経っているだろう。
ボーッと青い空を流れていく白い雲を眺める。
背後でガチャッという音が聞こえ、ビクッとしながら後ろを振り返った。
「目が覚めた?」
部屋に入ってきたのは30代半ばの女医さんだった。
ふわふわとした柔らかい髪の編み込みが、肩に垂れている。
暖かい春の日差しのような雰囲気を持つ女性だ。
声を出そうとして、掠れた声しか出なかったので、一度咳をして、声が出るか確認してから尋ねた。
「あの、先生?私、どうして病院なんかにいるんですか?」
フレームのないメガネの向こうで、パッチリとした猫目がこちらを見ていた。
釣り目だが、きつい印象にならないのは、その人から出る人柄のおかげかもしれない。
目尻が下がり、フルートのように綺麗な声が聞こえてくる。
「バイクの衝突事故で、一ヶ月ほど眠ったままだったんですよ」
「バイク?」
そういえば、確かにバイクに乗ってた記憶がある。
一ヶ月?
「あぁああああ!」
思い出した!
「なにか思い出されたんですか?」
突然叫んだ私を先生は心配気に顔を覗き込んできた。
「はいっ。事故のことを思い出し……」
そう言いかけて、胸の奥に冷え冷えとした空気が吹き込む。
胸の冷気が身体全体に伝わっていき、やがて指先が震える。
そういえば、精神的に荒れてたから、乱暴な運転をして帰ったんだっけ。
だから……あんな夢を見たんだな。
暗い海の底でもがく……そんな夢を。
気持ちがドン底に沈んでいくが、表面上は平静でいようと下唇を噛んだ。
「目が覚めたのなら、とりあえず着替えましょうか。」
「あっはい。」
ぐーきゅるきゅると腹の虫が鳴った。
「それだけ胃が活動しているなら大丈夫そうだね」
「……私の腹時計が正確なら、12時のはずですが」
「二時間半はズレてるみたいだね」
……どうやら、今は午後二時半らしい。
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真っ暗な視界の中央から白い物が見える。
ぬるま湯に浸るような心地よい温さを感じながら、暗闇の意識から抜け出す。
意識がハッキリしてくるのと同時に、ぼやけた視界の中で白っぽい物が見える。
それが天井だとわかり、正方形の模様が描かれている中に、白く輝く蛍光灯の形が微かに見えた。
布団の中で伸びをしようとして、体に激痛が走る。
痛みに顔をしかめながら、体を丸める。
薬品特有のスースーする匂い、体にある痛み、異様に白い部屋。
そのキーワードから直感的に、自分が病院にいることを理解した。
とりあえず、上半身を起こして、周囲をきょろきょろと見回す。
……近くにあるといいんだけど。
お目当ての物が見つかり、手を伸ばす。
目にかけると、世界が鮮明になる。
ふと、首を回し、横の壁を眺めた。
『11月15日』
壁に掛けられた日めくりカレンダーの日付にはそう書かれていた。
……七五三か。
窓からは太陽が見える。
西寄りに傾いてるから、たぶんお昼を過ぎて数時間は経っているだろう。
ボーッと青い空を流れていく白い雲を眺める。
背後でガチャッという音が聞こえ、ビクッとしながら後ろを振り返った。
「目が覚めた?」
部屋に入ってきたのは30代半ばの女医さんだった。
ふわふわとした柔らかい髪の編み込みが、肩に垂れている。
暖かい春の日差しのような雰囲気を持つ女性だ。
声を出そうとして、掠れた声しか出なかったので、一度咳をして、声が出るか確認してから尋ねた。
「あの、先生?私、どうして病院なんかにいるんですか?」
フレームのないメガネの向こうで、パッチリとした猫目がこちらを見ていた。
釣り目だが、きつい印象にならないのは、その人から出る人柄のおかげかもしれない。
目尻が下がり、フルートのように綺麗な声が聞こえてくる。
「バイクの衝突事故で、一ヶ月ほど眠ったままだったんですよ」
「バイク?」
そういえば、確かにバイクに乗ってた記憶がある。
一ヶ月?
「あぁああああ!」
思い出した!
「なにか思い出されたんですか?」
突然叫んだ私を先生は心配気に顔を覗き込んできた。
「はいっ。事故のことを思い出し……」
そう言いかけて、胸の奥に冷え冷えとした空気が吹き込む。
胸の冷気が身体全体に伝わっていき、やがて指先が震える。
そういえば、精神的に荒れてたから、乱暴な運転をして帰ったんだっけ。
だから……あんな夢を見たんだな。
暗い海の底でもがく……そんな夢を。
気持ちがドン底に沈んでいくが、表面上は平静でいようと下唇を噛んだ。
「目が覚めたのなら、とりあえず着替えましょうか。」
「あっはい。」
ぐーきゅるきゅると腹の虫が鳴った。
「それだけ胃が活動しているなら大丈夫そうだね」
「……私の腹時計が正確なら、12時のはずですが」
「二時間半はズレてるみたいだね」
……どうやら、今は午後二時半らしい。