賢者の石
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クリスマス休暇が近づいてきた。 ナツキたちは図書館でニコラス・フラメルについて書かれているを探していた。しかし四人のうち誰も見つけることができずにいた。
「ふぅ、」
聞いたことがあるような気がするのに思い出せない。ネビルの思い出し玉を借りたら、きっと真っ赤に染まるだろう。もしかすると、ホグワーツではなく、家にある本に書いてあったのだろうか。
ナツキは煮詰まっていた。煮詰まっていて、ついボーッと城内を歩いてしまった。
「・・・・えーと、ここは・・・・・?」
見たことがない場所に来てしまって、ナツキはサーっと青ざめた。周りには人もゴーストも誰もいない。来た道を戻ろうとしてみるが、余計に迷うばかりだった。
「どうしようどうしよう・・・!!!」
自分の方向音痴を自覚してからはとても気をつけていた。一人で歩くときも、教室移動(これは流石に覚えた)以外は最低限にとどめたし、人気のないところにも行かないようにしていた。それが、ここにきてやってしまった。
こういうときに役立つ魔法を調べておくべきだったとナツキは後悔する。それはニコラス・フラメルよりも先に調べるべきことだったのに!
動かないで誰かが通りかかるのを待っていた方がいいかも、と思い、近くの座れそうなところで待ってみる。10分が経ち、20分、30分経っても誰も来ない。幸いにもこの後授業はないけれど、心細さはピークに達しそうだ。
「・・・よし、」
やっぱり動いた方がいいかもしれない、そう思ってナツキが立ち上がったときだった。
「ナツキ?こんなとこで何してるんだ?」
燃えるような赤毛の男の子が現れた。
「ジョージ!!」
「ナツキってば、もう完全に区別がつくようになったんだな。」
ジョージは嬉しそうな、つまらないような複雑な顔をした。
「実はその、迷っちゃって・・・・」
ナツキは頬をぽっと赤くしながらそう告げた。多分、ハリー達以外にもバレているだろうが、それでも自己申告するには恥ずかしい欠点だった。
「ああ、やっぱり。ナツキがこの辺をうろうろして、人が来るのを30分くらい待っていそうな、そんな気がしたんだ。」
「どうして知ってるの!?」
「勘さ!」
もしかして最初から見ていたのだろうか。いや、そんなわけはない。ナツキは一生懸命周りに人がいないか細心の注意を払っていたのだ。
真実は、ジョージがたまたま自室で忍びの地図を眺めていたというものだ。ナツキの名前を見つけたと思ったら、授業には関係のない変なところに一人でいた。初めは、フレッドとしばらく下らない話をしながら、なんとなくその名前を目で追っていた。しばらくウロウロしたと思ったら、今度は動かなくなったのだ。迷っているんだな、と確信した。枕元に置いてあるナツキお手製のサシェの礼代わりに助けてやるか、と思ってここまで来たのだ。
「まあでも来てくれてよかった。ありがとう、ジョージ。」
「おうおう。感謝するがいいさ。」
ナツキは心から安堵した。すると、お腹がグーと音を立てた。ジョージがニヤニヤしながらナツキの顔を見る。ナツキは顔が真っ赤になった。
「安心したら、お腹が減ったみたい・・・・。」
「じゃあ寮に行く前に腹ごしらえだな。」
「でもまだ夕食の時間じゃないよ。」
「いいからついてくるがいいぜ。迷子の子猫ちゃん。」
ジョージはナツキを揶揄いながら楽しそうにどこかへナツキを案内する。次第に他にも人が通っている道になり、ナツキは安心した。なんであんなところに行っちゃったんだろう。
「あそこってどこだったの?」
「西棟の方だ。ふくろう小屋が近いぜ。なんで用がないのにあんなとこ行ったんだよ。」
ジョージは笑ってそういった。その「なんで」が分かればナツキは苦労しないのだ。
気づけばジョージは果物の絵の前で止まった。
「見とけよ。」
ジョージは絵の中の梨に手を伸ばし、梨をくすぐり始めた。梨はくすくすと身よじる。すると梨が緑色のドアノブに変わったのだ。
ジョージがドアになった絵を開けると、大きな厨房があり、大勢の屋敷しもべ妖精達が忙しくしていた。
ジョージが彼らに軽食が欲しいと伝えると、そのうちの一匹が嬉しそうにサンドイッチとフルーツが乗ったお皿を渡してきた。
「ここは大広間の真下なんだ。腹が減ったら来るといいよ。」
「あの食事って屋敷しもべ妖精が作ってたんだね。私、初めて見た。」
皿を持って、ジョージは中庭が見える廊下のベンチに腰をかけた。中庭には雪が積もっていた。
「寒い?中の方良かったか?」
「ううん。着込んでるから大丈夫。」
チラチラ降る雪を眺めながらナツキはのんびりとサンドイッチを口にした。
「クリスマスは帰るのか?」
「うん。そのつもり。ジョージは残るんだよね?ロンが言ってた。」
ウィーズリー家の両親が旅行に行くため、兄弟達はホグワーツに残るらしい。
「休暇は何して過ごすんだ?」
「特別な予定は何も・・・あ、みんなにあげるクリスマスプレゼントを買いに行くのは楽しみかな。ジョージにもフレッドにも何か送るからね!」
「ああ。楽しみにしてる。俺のも楽しみに待っててくれ!」
「・・・変なの送ってこないでね。フレッドにもそう言っておいて。」
ニマニマするジョージに嫌な予感がして一応事前にそう言っておく。彼らからのプレゼントを開けるときは、アブに付き合ってもらおうと決めた瞬間だった。
それからあっという間にクリスマス休暇が訪れた。駅にはアバーフォースが迎えにきていた。
「久しぶり。」
「いくぞ。」
腕を差し出す彼に掴まり、付き添い姿現しで見慣れた家の扉の前に飛ぶ。庭には雪が積もっていて、雪かきもしないと、とナツキは思った。
翌日にはアバーフォース付き添いの元、ダイアゴン横丁でクリスマスプレゼントを選んだ。友達がたくさんできたので、思いつく限りプレゼントを購入した。配達の手配をしているナツキを見て、アバーフォースは自分が安心していることに気づいた。
「アイスはいいのか?」
帰ろうとしたときに、彼はそんなことを言った。ナツキはそんなこと初めてだったので、驚きを隠せなかった。きっと入学前に、アイスを食べたいと言ったことを覚えてくれているのだろう。
「寒いからアイスじゃなくて、ホットチョコを飲みに行きたい。」
「ああ。」
漏れ鍋で一息ついてから、二人は帰路についた。
クリスマスの朝はあっという間に訪れた。ナツキの元にはたくさんのプレゼントが届いていた。
「わあ!!!こんなにたくさん!!!」
魔法のかかったチョコレートやキャンディ、可愛らしいクリスマスカード。ナツキはウキウキで一つ一つ開封し始めた。その様子を、クリスマスで宿を休みにしているアバーフォースは眺めていた。
ハリーからは『箒と仲良くなる93のコツ』という本が届いていた。どうやら子供向けの箒の教材らしいけど、私のことを一生懸命考えて選んでくれたに違いない。ハーマイオニーからは可愛い小物入れだ。ホグワーツの部屋で使おう。ロンからは靴下だ。ハーマイオニーとお揃いだとカードに書いてある。
次々と開封していくと、ナツキはフレッドからのプレゼントを見つけた。そのすぐ後にはジョージからのものを見つけた。
「あれ?別々で送ってきたんだ。」
何はともあれちょっと怖いので、アバフォースがいるテーブルの上で開ける。まずはフレッドのだ。厚みはそんなにない。ドキドキしながら開けると、耳が入っていた。
「うわ、何これ。」
カードには「聞き耳」という双子手作りのグッズだと書いてある。その名の通り、聞き耳を立てたいときに使えるらしい。まだ試作品だがよく聞こえるようになるとのメッセージ付きだ。もしかしたら使い所があるかも?と思いつつ、ひとまずホッと息をつく。次はジョージのだ。
「アブ、そこにいてね。次こそなんか飛んでくるかもしれない。」
「どんな友人なんだ。」
呆れながら、アバーフォースは念の為、杖を構えてみた。再びドキドキしながらナツキが開封してみると、綺麗な装飾が施された丸っこくて手のひらサイズの箱だった。
「小物入れ?」
ハーマイオニーがそうだったから、これもかな、と思いながら恐る恐る蓋を開ける。外見が綺麗でも安心はできない。しかし、そこには危険な爆発物ではなく、魔法で動く小さな黒猫がいた。さらにその箱は音楽を奏でた。
「オルゴールだ・・・・」
魔法の黒猫がメロディーに合わせてうろうろ動く。
『迷子の子猫ちゃん』
揶揄いながらそう言うフレッドのにやにや顔を思い出した。方向音痴を揶揄っているのかもしれないが、ちょっと、いや、すごく嬉しいプレゼントだった。
アバーフォースは杖を下ろして「普通のオルゴールだ」と言った。それはナツキにもわかっていた。でも意外すぎて、ついまじまじとその黒猫を目で追った。
「ナツキ、」
アバーフォースが名を呼んだので振り返ると、彼は何か包みを持っていた。ナツキへのクリスマスプレゼントだとすぐにわかった。
「ありがとう!!」
ナツキはすぐに封を開けた。中には毛糸の手袋が入っていた。
「わあ!・・・そうだ、私もプレゼントがあるの。ちょっと待ってて。」
バタバタと自室にアバーフォース宛のプレゼントを取りに行く。セーターを買ったのだ。シンプルでちょっと地味めで、アバーフォースもこれなら着てくれると思ってこっそり買っていたのだ。
「ああ、悪いな。」
嬉しそうにしないのは毎年のことだ。でも渡したものはいつも何だかんだそれなりに大事にしてくれることをナツキは知っていた。
それから年が明け、休暇も終わろうとした頃、ナツキはとんでもないことを思い出した。
「ニコラス・フラメル!!」
調べるのをすっかり忘れていた。ナツキの部屋中の本をひっくり返し、パラパラと読んだが見つからない。どうしよう。明日にはホグワーツに戻らないといけないのに!!
ドタバタとやっていると、仕事から帰ってきたアバーフォースがナツキの部屋に来て、「何をしている」と尋ねた。ナツキは、アバーフォースの顔を見てハッとした。
「アブは、ニコラス・フラメルって人知ってる?」
「ニコラス・フラメル?・・・・名前はな。有名人だ。」
ナツキはその返事を聞いて愕然とした。こんなにも頼れる魔法使いが身内にいるというのに、なぜその手を使わなかったのだろう。
「どんな人?」
「兄の友人の錬金術師で相当長いこと生きてる爺さんだ。あとは知らん。」
十分すぎる答えだった。明日ホグワーツに着いたら、すぐにハリーたちに知らせないと、とナツキは思った。