炎のゴブレット
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日曜の朝食後、ナツキたちはシリウスに言われた通り、パーシーへ手紙を送った。
そしてドビーへ靴下をプレゼントするために、厨房へ向かった。
「ハリー・ポッターはドビーに優しすぎます!」
プレゼントを手にしたドビーは、目をうるうるさせながら跳ねるように喜んだ。
ナツキは目の前でぴょんぴょん跳ねるドビーを、まじまじと見つめた。確かに、服装は奇抜だったが、どこか憎めない。すぐに気に入ってしまった。
「うちの屋敷もしもべ妖精がいたら綺麗になるなぁ。」
ナツキはふと、長らく放っておいているゴドリクソン邸を思い出した。するとすぐさま隣からハーマイオニーの剣呑な声がした。
「ナツキ、あなたってば・・・・!!」
「おっと、」
ナツキは慌てて口を両手で押さえた。そこへロンが助け舟を出した。
「ナツキとハーマイオニーはそのことで意見は合わないよ。それより、ウィンキーに会いに行こうぜ。」
渋々ハーマイオニーはウィンキーが気になるのか、暖炉のそばのウィンキーの元へ向かった。
ナツキも後に続こうとしたとき、ドビーとは別のキーキーとした高い声で話しかけられた。
「ナツキ・ゴドリクソン様は、屋敷しもべ妖精をお探しなのですか?」
振り返ると。厨房のしもべ妖精のうちの一人がこちらを見上げていた。この子は、ナツキによく食べ物を運んできてくれる、少し小さなしもべ妖精だ。
「うーん、そのうちかなぁ?今すぐってわけじゃないけど。でもどうして?」
ナツキが答えると、妖精はぱっと顔を輝かせた。
「ピブルのお母様は、ゴドリクソン家に仕えていたのです!」
ピブルと名乗る妖精は胸を張ってそう答えた。ナツキは驚いて、思わず聞き返した。
「えっ、本当に?」
「はいっ!お母様までは、代々ゴドリクソン家に支えていたのです。ピブルも、いつかきっとと、お母様に言われておりました!」
でも、とピブルは声を暗くした。
「アルバ様が亡くなられて、エリザベス様は屋敷も、ピブルのお母様も手放したのです・・・・だからピブルはホグワーツにいるのです・・・でも本当は、ずっとずっと、またゴドリクソン様に仕える日を夢見ていたのです・・・・」
そこまで言うと、ピブルは少しだけ顔を上げた。しかしその瞳には迷いの色が浮かんでいた。
「でも今のご主人様は、ダンブルドア様なのです」
ナツキは胸がぎゅっと締めつけられるような気持ちになった。ナツキはそっとしゃがみこみ、あたりを気にして、特にハーマイオニーに聞かれないように声を落とすと、やさしく微笑んで言った。
「ありがとう。じゃあ、ダンブルドア先生に相談してみるよ。」
「本当ですか!」
ピブルの目がぱっと見開かれ、耳がぴんと立つ。
「でも、私、邸を使うことはあんまりないから、今はあまりピブルの仕事がないの。私がホグワーツを卒業したらかな?」
ピブルは感極まったように、胸に手を当ててぺこりと頭を下げた。
「ピブルは・・・ピブルは、何年でも待ちます!ゴドリクソン様のおそばに仕えるその日まで・・・・!」
ナツキがピブルを可愛く思って、その頭を撫でると、ピブルは目を細めて、うれしそうに小さく鼻を鳴らした。
そのとき、奥のほうからなにやら騒がしい気配がした。
ふと振り返ると、ハリーたちがしもべ妖精たちに両脇を固められ、半ば押し出されるようにして扉の方へと追いやられていた。
「どうしたんだろ、まあいいや、ピブル、またね。」
「はいです!」
追い出されたハリー達に続き、ナツキも厨房の外へ出た。
どうやら、ハーマイオニーがしもべ妖精の自由と権利について熱弁をふるった結果、妖精たちがざわざわと騒ぎはじめ、ついには厨房から全員を追い出す騒動になったらしい。
そのことでロンとハーマイオニーはまた喧嘩を始めてしまい、言い合う二人の声がだんだん大きくなっていく中、ナツキはそっとハリーと目を合わせた。その視線は、互いに何も言わずともすべてを語っていた。
今日はきっと、仲裁に振り回されてヘトヘトになる一日だ。
ハリーも、ほんの少しだけ肩を落としながら、同じ思いでナツキに小さくうなずいた。
その日はやっぱり刺々しい1日になり、ナツキとハリーはぐったりしながら談話室のソファに座っていた。
「・・・・ナツキ、スナッフルズに食べ物を贈りに行こう。」
「ああ、そうだね。」
ナツキは小さな袋を部屋から持ってきて、それに検知不可能拡大呪文をかけた。
「これならピッグウィジョンも持てるかな?」
「うーん、ちょっと心配だ。」
ハリーが笑いながら立ち上がり、二人でフクロウ小屋へと向かった。
案の定、ピッグウィジョンの小さな体にはその袋も重すぎたようだった。ぶんぶん羽ばたきながらも、明らかにバランスを崩している。結局学校のメンフクロウに介助役を頼んだ。
「寮に戻る?」
ナツキは一応ハリーに聞いてみた。
「少し、ゆっくりない?僕、今日はもうロンとハーマイオニーの板挟みになるの嫌だよ。」
その言葉にナツキも笑ってうなずき、ハリーがもたれていた窓枠の隣に腰を下ろした。
ナツキがふと、視線の先を指さした。
「ねえあれ、ハグリッドだ。・・・畑でも耕してるのかな?」
「うーん、どうだろ。・・・・・あ、見てあれ。マダム・マクシームだ。」
マダム・マクシームはハグリッドの方に歩いて行った。二人は数言、言葉を交わしたようにも見えたが、その雰囲気に以前のような親しさは感じられなかった。
ナツキとハリーは、特に言葉を交わすでもなく、しばらくその様子を眺めていた。
気がつけば、二人はずいぶん長くその窓辺で話をしていた。とりとめのないことを、ぽつぽつと。
気疲れした一日の終わりに、ようやく訪れた静かな時間だった。
翌朝の朝食時、昨日の険悪な空気はすっかり燃え尽きたようで、ロンとハーマイオニーの間にもようやく会話が戻っていた。やがて、天井からフクロウたちが続々と舞い降りてくる、郵便配達の時間になった。
ナツキのもとには、特に便りは届かない。
「『日刊預言者新聞』を新しく購読予約したの。何もかもスリザリン生から聞かされるのは、もううんざりよ。」
そう言ったハーマイオニーの前に一羽、二羽とフクロウがどんどん舞い降りた。
「一体何部申し込んだの?」
ハリーがハーマイオニーのゴブレットがフクロウに倒されないよう押さえながらそう尋ねた。
しかしハーマイオニーも次々に着地するフクロウに面食らっていた。
「一体何の騒ぎ?」
ハーマイオニーは一羽のフクロウから手紙を外し、開けて読み始めた。すると、彼女の顔がみるみる赤くなった。
「何の手紙?」
ナツキが心配そうに声をかけると、ハーマイオニーは震える手で紙を押しつけてきた。
「これ!全く!なんてばかな!!」
それは手紙ではなく、新聞の文字を切り抜いて貼り付けてあった。
「これ、脅迫文!?」
ナツキはほとんど悲鳴をあげていた。そこには、ハーマイオニーにハリーに付き纏うなという趣旨のことが、ナツキには思い付かないようなひどい言葉で書かれていた。
「みんなおんなじような物だわ!アイタッ!」
次々と手紙を開けていたハーマイオニーが叫んだ。強烈な石油の匂いがする黄緑色の液体が封筒から噴き出していて、ハーマイオニーの両手に黄色い腫物が膨れ上がった。
「それ『腫れ草』の膿だよ!ハーマイオニー、今すぐ医務室に行って!」
ナツキが青ざめながら叫ぶと、ハーマイオニーは痛みに顔をゆがめながらも、涙をにじませて大広間を出て行った。
「だから言ったんだ!リータ・スキーターには構うなって、忠告しただろ!」
ハーマイオニーは結局、『薬草学』にも『魔法生物飼育学』にも出てこなかった。
「今日なんだろうね?」
ナツキがため息まじりに言うと、隣のハリーが顔をしかめて答えた。
「スクリュートじゃないといいんだけど、うわあ、ハグリッド、木箱を置いてる。まさか新しいのが孵ったんじゃないよね?」
ナツキとハリーがそんな会話をしているとは知らないだろうハグリッドは、生徒に前に来るように指示した。
恐る恐るその箱の中を見てみると、ふわふわとした黒い毛に覆われた、小さな生き物たちが箱の中でうごめいている。まん丸な目をパチパチと瞬かせながら、こちらを好奇心たっぷりに見上げていた。
「ニフラーだ。光るものが好きだ。ほれ、見てみろ。」
一匹が突然飛び上がって、パンジー・パーキンソンの腕時計を噛み切ろうとした。
「今日はこいつらで遊ぼうと思ってな。あそこが見えるか?」
ハグリッドは昨夜耕していた場所を指差した。あれは授業の準備をしていたのか。
「金貨を何枚か埋めておいたからな。自分のニフラーに金貨を一番たくさん見つけさせた者に褒美をやろう。自分の貴重品は外しておけ。」
ナツキは急いでジョージにもらったブレスレットとネックレスを外し、ローブの内ポケットに大事にしまい込んだ。
そのあとで、そっとニフラーの中から一匹を選んだ。ふわふわの毛と、きらきらした目がたまらなく愛らしい。
「うわあ!かわいい!」
そこでニフラーが余ったことで、ハグリッドはハーマイオニーがいないことに気づいた。しかしスリザリン生の前で理由を言うのは嫌だったので、後で説明することにした。
宝探しで大活躍したのは、ロンのニフラーだった。
「こいつら、ペットとして買えるのかな、ハグリッド?」
ロンが目を輝かせて尋ねる。ナツキはいい質問だと思った。自分もすっかりこの毛玉の魅力にやられていたからだ。
「おふくろさんは喜ばねえぞ、ロン。家の中を掘り返すからな。」
ハグリッドの言葉にナツキは項垂れた。最初は可愛くても、そんなのだんだんと嫌になるかもと思ったからだ。
授業が終わりに近づいた頃、ようやく、ぐるぐるに包帯を巻いた手を抱えたハーマイオニーが姿を現した。
「ハーマイオニー!」
ナツキはすぐに駆け寄り、ニフラーを抱き上げて見せた。
「見て、ニフラーだよ。すっごくかわいいの。今日の課題、宝探しなんだよ」
そう言いながら、ちらりと彼女の包帯の巻かれた手に目をやる。ハーマイオニーは少し疲れた顔で微笑んだ。
「ええ、大丈夫。マダム・ポンフリーが言ってたわ。ちゃんと元に戻るって。」
その声には、少しだけ強がりも混じっていたが、それでもナツキはほっとしたようにうなずいた。
ニフラーも、まるで空気を読んだかのように、ハーマイオニーの足元にちょこんと座り込み、金貨を取り落としてころんと寝転がった。
「あら。たしかに、かわいいわ。」
授業が終わり、ナツキ、ハリー、ロン、ハーマイオニーはニフラーを箱に入れるのを手伝った。
「手をどうした?」
ハグリッドがハーマイオニーに心配そうに聞いたので、ハーマイオニーはフクロウ便の手紙のことを話した。
「あぁ、心配するな。俺もリータ・スキーターがお袋のことを書いた後にな、そんな手紙だの何だの、きたもんだ。」
そう言いながら、ハグリッドはニフラーの入った重い木箱をひょいと抱え上げ、運び出しながら続けた。
「奴らは頭がおかしいんだ。ハーマイオニー、また来るようだったら、もう開けるな。すぐ暖炉に放り込め。」
ハグリッドはそう言って、怒りを抑えるように唸りながらニフラーの木箱を運び去っていった。
ハグリッドの手伝いも終わり、四人は城へ戻ることにした。
ナツキとハーマイオニーが歩く少し後ろで、ロンがむすっとした顔で歩いているのに、ハリーが気づき、どうしたのかと尋ねた。
「金貨のこと、どうして話してくれなかったんだ?」
「何の金貨?」
ハリーは思わず足を止めた。
「クィディッチ・ワールドカップで僕が君にやった金貨さ。万眼鏡の代わりに君にやったレプラコーンの金貨。あれが消えちゃったって、どうして言ってくれなかったんだ?」
ハリーはしばらく考えた後にようやく「ああ」と言った。
「なくなった事にちっとも気が付かなかった。杖のことばっかり心配してたから。」
「あの時、大変だったもんね。いいんじゃない?ロン。ハリーは何も気にしてないみたいだし。」
ナツキもそっとロンをなだめるように言葉を添えた。
昼食のために大広間の席に着いたとき、ロンは小さくため息をつきながらつぶやいた。
「ポケットいっぱいのガリオン金貨が消えた事にも気づかないぐらいお金をたくさん持ってるなんて。」
「あの晩は、他のことで頭がいっぱいだったんだって、そう言っただろ!僕たち全員そうだった、そうだろう?」
ハリーはイライラしたように立ち上がって言った。ナツキは静かにハリーのローブを引っ張って、座るよう促した。
「ハリー、ロンは申し訳なく思ってるだけだよ。そんなに声を張り上げないであげて。ロンも、ハリーは気にしないって言ってるんだからさ。」
「・・・うん、そうだね。」
ハリーは申し訳なさそうに再び座った。ロンはフォークの先で突き刺したローストポテトを睨みつけた。
「・・・貧乏って嫌だな。惨めだよ・・・・」
その言葉に、ナツキもハリーもハーマイオニーも、何と言っていいかわからなかった。
「フレッドやジョージが少しでもお金を稼ごうとしてる気持ち、わかるよ。ガールフレンドの方がずっとお金持ちだなんて情けないってフレッドがジョージに言ってたのちょっと聞いちゃったんだ。」
「え?」
ナツキは、まるで頭を何かで殴られたような衝撃を受けた。そんなふうに思われていたなんて、これっぽっちも知らなかった。いや、考えたことすらなかった。
ナツキのそんな動揺には気づかず、ロンは続けた。
「僕も稼げたらいいのに。僕、ニフラーが欲しい。」
そうぼやいたロンに、ハーマイオニーが少しわざとらしく明るい声で返した。
「じゃあ、次のクリスマスプレゼントは決まったわね。さあ、ロン、あなたなんか、まだいい方よ。大体指が膿だらけじゃないだけマシじゃない。」
ハーマイオニーはナイフとフォークを使うのに苦労していた。
「食べさせようか?」
ナツキがフォークを手に取りながら言うと、ハーマイオニーはきっぱりと首を横に振った。
「それはジョージにでもしてあげて。私は恥ずかしいからやめておくわ。」
ナツキは思わずポンと顔を赤らめた。ハーマイオニーはそんなナツキのことは露知らず、腹立たしげにいった。
「あのスキーターって女、憎たらしい!何が何でもこの仕返しはさせていただくわ!」
それから1週間、途切れることなくハーマイオニーに嫌がらせの手紙が届いた。ハーマイオニーのスキーターに対する疑念と怒りは、日に日に過熱していった。
「他にも心配することがたくさんあるだろ?」
ロンが気遣いの意味でそう言うと、ハーマイオニーは顔を上げ、きっぱりと言い放った。
「何も手伝ってくれなんて言ってないわ!一人でやります。」
どうやら復讐をする気満々のようだ。
そんな中、気がつけばイースター休暇がやってきた。ヘドウィグはウィーズリーおばさん手製のチョコレートを運んできた。その中にパーシーの手紙があった。
「え?ハーマイオニーのそれ?」
ナツキは肩を落とすハーマイオニーの手に、鶏の卵より小さなイースターエッグがあるのを見つけてしまった。一方、ナツキ、ハリー、ロンの手には、それぞれドラゴンの卵ほどもある見事なイースターエッグがあった。中には手の込んだヌガーぎっしりが詰まっている。
ウィーズリーおばさんは「週刊魔女」に載っていたハーマイオニーのスキャンダルを信じてしまっているようだった。
「パーシーはなんて?」
ナツキは話題を逸らすべく、ハリーにそう尋ねた。
「クラウチさんはフクロウ便で仕事の指示をくれるんだって。休暇中に。」
「休暇中なら、休んでおけばいいのにねぇ。」
ナツキは予想通り大した情報が得られなかったことに肩透かしを食った気分になりながら、ぼんやりとそう呟いて、スクランブルエッグをひと口頬張った。
そしてその日の夜、ハリーは第3の課題の説明を聞くため、城の外へでていった。
「ナツキ、チェスして待ってようぜ。」
「いいけど、そんな上手じゃないよ。」
談話室の隅にあるチェス盤を囲み、二人はしばらく黙々と駒を動かしていた。静かな時間が流れるなか、ナツキの隣では、ハーマイオニーがひたすら教科書に目を通していた。
そんな空気を破るように、談話室の入り口からハリーが飛び込んできた。息を切らし、焦った様子で真っ直ぐ三人の元へ向かってくる。
「課題、そんなに大変そうなの?」
ナツキが心配してそう尋ねると、ハリーは首を横に振った。
「そっちじゃない。クラムと二人で話してた時に、クラウチが森に現れたんだ・・・・。様子が変だった。完全に狂ってた。」
息を切らしながら、ハリーは早口で続けた。
「それで、僕、ダンブルドアに知らせようとしたんだ。だから、クラムに任せて、ダンブルドアに知らせた。でも戻ったら、クラウチはもういなかった。クラムは地面に倒れてて、失神呪文を受けたみたいだった。」
三人は顔を見合わせ、事の重大さに息を呑んだ。談話室の空気が、一気に張り詰めたものへと変わっていった。
そしてドビーへ靴下をプレゼントするために、厨房へ向かった。
「ハリー・ポッターはドビーに優しすぎます!」
プレゼントを手にしたドビーは、目をうるうるさせながら跳ねるように喜んだ。
ナツキは目の前でぴょんぴょん跳ねるドビーを、まじまじと見つめた。確かに、服装は奇抜だったが、どこか憎めない。すぐに気に入ってしまった。
「うちの屋敷もしもべ妖精がいたら綺麗になるなぁ。」
ナツキはふと、長らく放っておいているゴドリクソン邸を思い出した。するとすぐさま隣からハーマイオニーの剣呑な声がした。
「ナツキ、あなたってば・・・・!!」
「おっと、」
ナツキは慌てて口を両手で押さえた。そこへロンが助け舟を出した。
「ナツキとハーマイオニーはそのことで意見は合わないよ。それより、ウィンキーに会いに行こうぜ。」
渋々ハーマイオニーはウィンキーが気になるのか、暖炉のそばのウィンキーの元へ向かった。
ナツキも後に続こうとしたとき、ドビーとは別のキーキーとした高い声で話しかけられた。
「ナツキ・ゴドリクソン様は、屋敷しもべ妖精をお探しなのですか?」
振り返ると。厨房のしもべ妖精のうちの一人がこちらを見上げていた。この子は、ナツキによく食べ物を運んできてくれる、少し小さなしもべ妖精だ。
「うーん、そのうちかなぁ?今すぐってわけじゃないけど。でもどうして?」
ナツキが答えると、妖精はぱっと顔を輝かせた。
「ピブルのお母様は、ゴドリクソン家に仕えていたのです!」
ピブルと名乗る妖精は胸を張ってそう答えた。ナツキは驚いて、思わず聞き返した。
「えっ、本当に?」
「はいっ!お母様までは、代々ゴドリクソン家に支えていたのです。ピブルも、いつかきっとと、お母様に言われておりました!」
でも、とピブルは声を暗くした。
「アルバ様が亡くなられて、エリザベス様は屋敷も、ピブルのお母様も手放したのです・・・・だからピブルはホグワーツにいるのです・・・でも本当は、ずっとずっと、またゴドリクソン様に仕える日を夢見ていたのです・・・・」
そこまで言うと、ピブルは少しだけ顔を上げた。しかしその瞳には迷いの色が浮かんでいた。
「でも今のご主人様は、ダンブルドア様なのです」
ナツキは胸がぎゅっと締めつけられるような気持ちになった。ナツキはそっとしゃがみこみ、あたりを気にして、特にハーマイオニーに聞かれないように声を落とすと、やさしく微笑んで言った。
「ありがとう。じゃあ、ダンブルドア先生に相談してみるよ。」
「本当ですか!」
ピブルの目がぱっと見開かれ、耳がぴんと立つ。
「でも、私、邸を使うことはあんまりないから、今はあまりピブルの仕事がないの。私がホグワーツを卒業したらかな?」
ピブルは感極まったように、胸に手を当ててぺこりと頭を下げた。
「ピブルは・・・ピブルは、何年でも待ちます!ゴドリクソン様のおそばに仕えるその日まで・・・・!」
ナツキがピブルを可愛く思って、その頭を撫でると、ピブルは目を細めて、うれしそうに小さく鼻を鳴らした。
そのとき、奥のほうからなにやら騒がしい気配がした。
ふと振り返ると、ハリーたちがしもべ妖精たちに両脇を固められ、半ば押し出されるようにして扉の方へと追いやられていた。
「どうしたんだろ、まあいいや、ピブル、またね。」
「はいです!」
追い出されたハリー達に続き、ナツキも厨房の外へ出た。
どうやら、ハーマイオニーがしもべ妖精の自由と権利について熱弁をふるった結果、妖精たちがざわざわと騒ぎはじめ、ついには厨房から全員を追い出す騒動になったらしい。
そのことでロンとハーマイオニーはまた喧嘩を始めてしまい、言い合う二人の声がだんだん大きくなっていく中、ナツキはそっとハリーと目を合わせた。その視線は、互いに何も言わずともすべてを語っていた。
今日はきっと、仲裁に振り回されてヘトヘトになる一日だ。
ハリーも、ほんの少しだけ肩を落としながら、同じ思いでナツキに小さくうなずいた。
その日はやっぱり刺々しい1日になり、ナツキとハリーはぐったりしながら談話室のソファに座っていた。
「・・・・ナツキ、スナッフルズに食べ物を贈りに行こう。」
「ああ、そうだね。」
ナツキは小さな袋を部屋から持ってきて、それに検知不可能拡大呪文をかけた。
「これならピッグウィジョンも持てるかな?」
「うーん、ちょっと心配だ。」
ハリーが笑いながら立ち上がり、二人でフクロウ小屋へと向かった。
案の定、ピッグウィジョンの小さな体にはその袋も重すぎたようだった。ぶんぶん羽ばたきながらも、明らかにバランスを崩している。結局学校のメンフクロウに介助役を頼んだ。
「寮に戻る?」
ナツキは一応ハリーに聞いてみた。
「少し、ゆっくりない?僕、今日はもうロンとハーマイオニーの板挟みになるの嫌だよ。」
その言葉にナツキも笑ってうなずき、ハリーがもたれていた窓枠の隣に腰を下ろした。
ナツキがふと、視線の先を指さした。
「ねえあれ、ハグリッドだ。・・・畑でも耕してるのかな?」
「うーん、どうだろ。・・・・・あ、見てあれ。マダム・マクシームだ。」
マダム・マクシームはハグリッドの方に歩いて行った。二人は数言、言葉を交わしたようにも見えたが、その雰囲気に以前のような親しさは感じられなかった。
ナツキとハリーは、特に言葉を交わすでもなく、しばらくその様子を眺めていた。
気がつけば、二人はずいぶん長くその窓辺で話をしていた。とりとめのないことを、ぽつぽつと。
気疲れした一日の終わりに、ようやく訪れた静かな時間だった。
翌朝の朝食時、昨日の険悪な空気はすっかり燃え尽きたようで、ロンとハーマイオニーの間にもようやく会話が戻っていた。やがて、天井からフクロウたちが続々と舞い降りてくる、郵便配達の時間になった。
ナツキのもとには、特に便りは届かない。
「『日刊預言者新聞』を新しく購読予約したの。何もかもスリザリン生から聞かされるのは、もううんざりよ。」
そう言ったハーマイオニーの前に一羽、二羽とフクロウがどんどん舞い降りた。
「一体何部申し込んだの?」
ハリーがハーマイオニーのゴブレットがフクロウに倒されないよう押さえながらそう尋ねた。
しかしハーマイオニーも次々に着地するフクロウに面食らっていた。
「一体何の騒ぎ?」
ハーマイオニーは一羽のフクロウから手紙を外し、開けて読み始めた。すると、彼女の顔がみるみる赤くなった。
「何の手紙?」
ナツキが心配そうに声をかけると、ハーマイオニーは震える手で紙を押しつけてきた。
「これ!全く!なんてばかな!!」
それは手紙ではなく、新聞の文字を切り抜いて貼り付けてあった。
「これ、脅迫文!?」
ナツキはほとんど悲鳴をあげていた。そこには、ハーマイオニーにハリーに付き纏うなという趣旨のことが、ナツキには思い付かないようなひどい言葉で書かれていた。
「みんなおんなじような物だわ!アイタッ!」
次々と手紙を開けていたハーマイオニーが叫んだ。強烈な石油の匂いがする黄緑色の液体が封筒から噴き出していて、ハーマイオニーの両手に黄色い腫物が膨れ上がった。
「それ『腫れ草』の膿だよ!ハーマイオニー、今すぐ医務室に行って!」
ナツキが青ざめながら叫ぶと、ハーマイオニーは痛みに顔をゆがめながらも、涙をにじませて大広間を出て行った。
「だから言ったんだ!リータ・スキーターには構うなって、忠告しただろ!」
ハーマイオニーは結局、『薬草学』にも『魔法生物飼育学』にも出てこなかった。
「今日なんだろうね?」
ナツキがため息まじりに言うと、隣のハリーが顔をしかめて答えた。
「スクリュートじゃないといいんだけど、うわあ、ハグリッド、木箱を置いてる。まさか新しいのが孵ったんじゃないよね?」
ナツキとハリーがそんな会話をしているとは知らないだろうハグリッドは、生徒に前に来るように指示した。
恐る恐るその箱の中を見てみると、ふわふわとした黒い毛に覆われた、小さな生き物たちが箱の中でうごめいている。まん丸な目をパチパチと瞬かせながら、こちらを好奇心たっぷりに見上げていた。
「ニフラーだ。光るものが好きだ。ほれ、見てみろ。」
一匹が突然飛び上がって、パンジー・パーキンソンの腕時計を噛み切ろうとした。
「今日はこいつらで遊ぼうと思ってな。あそこが見えるか?」
ハグリッドは昨夜耕していた場所を指差した。あれは授業の準備をしていたのか。
「金貨を何枚か埋めておいたからな。自分のニフラーに金貨を一番たくさん見つけさせた者に褒美をやろう。自分の貴重品は外しておけ。」
ナツキは急いでジョージにもらったブレスレットとネックレスを外し、ローブの内ポケットに大事にしまい込んだ。
そのあとで、そっとニフラーの中から一匹を選んだ。ふわふわの毛と、きらきらした目がたまらなく愛らしい。
「うわあ!かわいい!」
そこでニフラーが余ったことで、ハグリッドはハーマイオニーがいないことに気づいた。しかしスリザリン生の前で理由を言うのは嫌だったので、後で説明することにした。
宝探しで大活躍したのは、ロンのニフラーだった。
「こいつら、ペットとして買えるのかな、ハグリッド?」
ロンが目を輝かせて尋ねる。ナツキはいい質問だと思った。自分もすっかりこの毛玉の魅力にやられていたからだ。
「おふくろさんは喜ばねえぞ、ロン。家の中を掘り返すからな。」
ハグリッドの言葉にナツキは項垂れた。最初は可愛くても、そんなのだんだんと嫌になるかもと思ったからだ。
授業が終わりに近づいた頃、ようやく、ぐるぐるに包帯を巻いた手を抱えたハーマイオニーが姿を現した。
「ハーマイオニー!」
ナツキはすぐに駆け寄り、ニフラーを抱き上げて見せた。
「見て、ニフラーだよ。すっごくかわいいの。今日の課題、宝探しなんだよ」
そう言いながら、ちらりと彼女の包帯の巻かれた手に目をやる。ハーマイオニーは少し疲れた顔で微笑んだ。
「ええ、大丈夫。マダム・ポンフリーが言ってたわ。ちゃんと元に戻るって。」
その声には、少しだけ強がりも混じっていたが、それでもナツキはほっとしたようにうなずいた。
ニフラーも、まるで空気を読んだかのように、ハーマイオニーの足元にちょこんと座り込み、金貨を取り落としてころんと寝転がった。
「あら。たしかに、かわいいわ。」
授業が終わり、ナツキ、ハリー、ロン、ハーマイオニーはニフラーを箱に入れるのを手伝った。
「手をどうした?」
ハグリッドがハーマイオニーに心配そうに聞いたので、ハーマイオニーはフクロウ便の手紙のことを話した。
「あぁ、心配するな。俺もリータ・スキーターがお袋のことを書いた後にな、そんな手紙だの何だの、きたもんだ。」
そう言いながら、ハグリッドはニフラーの入った重い木箱をひょいと抱え上げ、運び出しながら続けた。
「奴らは頭がおかしいんだ。ハーマイオニー、また来るようだったら、もう開けるな。すぐ暖炉に放り込め。」
ハグリッドはそう言って、怒りを抑えるように唸りながらニフラーの木箱を運び去っていった。
ハグリッドの手伝いも終わり、四人は城へ戻ることにした。
ナツキとハーマイオニーが歩く少し後ろで、ロンがむすっとした顔で歩いているのに、ハリーが気づき、どうしたのかと尋ねた。
「金貨のこと、どうして話してくれなかったんだ?」
「何の金貨?」
ハリーは思わず足を止めた。
「クィディッチ・ワールドカップで僕が君にやった金貨さ。万眼鏡の代わりに君にやったレプラコーンの金貨。あれが消えちゃったって、どうして言ってくれなかったんだ?」
ハリーはしばらく考えた後にようやく「ああ」と言った。
「なくなった事にちっとも気が付かなかった。杖のことばっかり心配してたから。」
「あの時、大変だったもんね。いいんじゃない?ロン。ハリーは何も気にしてないみたいだし。」
ナツキもそっとロンをなだめるように言葉を添えた。
昼食のために大広間の席に着いたとき、ロンは小さくため息をつきながらつぶやいた。
「ポケットいっぱいのガリオン金貨が消えた事にも気づかないぐらいお金をたくさん持ってるなんて。」
「あの晩は、他のことで頭がいっぱいだったんだって、そう言っただろ!僕たち全員そうだった、そうだろう?」
ハリーはイライラしたように立ち上がって言った。ナツキは静かにハリーのローブを引っ張って、座るよう促した。
「ハリー、ロンは申し訳なく思ってるだけだよ。そんなに声を張り上げないであげて。ロンも、ハリーは気にしないって言ってるんだからさ。」
「・・・うん、そうだね。」
ハリーは申し訳なさそうに再び座った。ロンはフォークの先で突き刺したローストポテトを睨みつけた。
「・・・貧乏って嫌だな。惨めだよ・・・・」
その言葉に、ナツキもハリーもハーマイオニーも、何と言っていいかわからなかった。
「フレッドやジョージが少しでもお金を稼ごうとしてる気持ち、わかるよ。ガールフレンドの方がずっとお金持ちだなんて情けないってフレッドがジョージに言ってたのちょっと聞いちゃったんだ。」
「え?」
ナツキは、まるで頭を何かで殴られたような衝撃を受けた。そんなふうに思われていたなんて、これっぽっちも知らなかった。いや、考えたことすらなかった。
ナツキのそんな動揺には気づかず、ロンは続けた。
「僕も稼げたらいいのに。僕、ニフラーが欲しい。」
そうぼやいたロンに、ハーマイオニーが少しわざとらしく明るい声で返した。
「じゃあ、次のクリスマスプレゼントは決まったわね。さあ、ロン、あなたなんか、まだいい方よ。大体指が膿だらけじゃないだけマシじゃない。」
ハーマイオニーはナイフとフォークを使うのに苦労していた。
「食べさせようか?」
ナツキがフォークを手に取りながら言うと、ハーマイオニーはきっぱりと首を横に振った。
「それはジョージにでもしてあげて。私は恥ずかしいからやめておくわ。」
ナツキは思わずポンと顔を赤らめた。ハーマイオニーはそんなナツキのことは露知らず、腹立たしげにいった。
「あのスキーターって女、憎たらしい!何が何でもこの仕返しはさせていただくわ!」
それから1週間、途切れることなくハーマイオニーに嫌がらせの手紙が届いた。ハーマイオニーのスキーターに対する疑念と怒りは、日に日に過熱していった。
「他にも心配することがたくさんあるだろ?」
ロンが気遣いの意味でそう言うと、ハーマイオニーは顔を上げ、きっぱりと言い放った。
「何も手伝ってくれなんて言ってないわ!一人でやります。」
どうやら復讐をする気満々のようだ。
そんな中、気がつけばイースター休暇がやってきた。ヘドウィグはウィーズリーおばさん手製のチョコレートを運んできた。その中にパーシーの手紙があった。
「え?ハーマイオニーのそれ?」
ナツキは肩を落とすハーマイオニーの手に、鶏の卵より小さなイースターエッグがあるのを見つけてしまった。一方、ナツキ、ハリー、ロンの手には、それぞれドラゴンの卵ほどもある見事なイースターエッグがあった。中には手の込んだヌガーぎっしりが詰まっている。
ウィーズリーおばさんは「週刊魔女」に載っていたハーマイオニーのスキャンダルを信じてしまっているようだった。
「パーシーはなんて?」
ナツキは話題を逸らすべく、ハリーにそう尋ねた。
「クラウチさんはフクロウ便で仕事の指示をくれるんだって。休暇中に。」
「休暇中なら、休んでおけばいいのにねぇ。」
ナツキは予想通り大した情報が得られなかったことに肩透かしを食った気分になりながら、ぼんやりとそう呟いて、スクランブルエッグをひと口頬張った。
そしてその日の夜、ハリーは第3の課題の説明を聞くため、城の外へでていった。
「ナツキ、チェスして待ってようぜ。」
「いいけど、そんな上手じゃないよ。」
談話室の隅にあるチェス盤を囲み、二人はしばらく黙々と駒を動かしていた。静かな時間が流れるなか、ナツキの隣では、ハーマイオニーがひたすら教科書に目を通していた。
そんな空気を破るように、談話室の入り口からハリーが飛び込んできた。息を切らし、焦った様子で真っ直ぐ三人の元へ向かってくる。
「課題、そんなに大変そうなの?」
ナツキが心配してそう尋ねると、ハリーは首を横に振った。
「そっちじゃない。クラムと二人で話してた時に、クラウチが森に現れたんだ・・・・。様子が変だった。完全に狂ってた。」
息を切らしながら、ハリーは早口で続けた。
「それで、僕、ダンブルドアに知らせようとしたんだ。だから、クラムに任せて、ダンブルドアに知らせた。でも戻ったら、クラウチはもういなかった。クラムは地面に倒れてて、失神呪文を受けたみたいだった。」
三人は顔を見合わせ、事の重大さに息を呑んだ。談話室の空気が、一気に張り詰めたものへと変わっていった。