炎のゴブレット
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ナツキは早朝から談話室にいた。ハリーと話をするためだ。グリフィンドール生たちが次々と階段を降りてきては、昨夜の余韻そのままに浮かれた足取りで大広間へ向かっていく。どうやら、騒ぎの熱は一晩では冷めなかったらしい。
そんな中、階段を降りてくるロンの姿が目に入った。
「ロン、」
ナツキが声をかけると、ロンは少し驚いたような顔をして立ち止まり、そしてすぐにしかめっ面になった。
「・・・・おはよう、ナツキ。君、どうして言ってくれなかったんだい?」
「え?」
「ハリーに協力したんだろう?なんでそれを僕にも教えてくれなかったんだ。ジョージとフレッドにも。どうしてハリーだけに?」
ナツキは口をあんぐり開けた。
「えーと、ロン、知ってるだろうけど、私、ハリーには協力してない。それに、ハリーはゴブレットに名前を入れてない。」
ロンは目をそらして、鼻で笑った。
「ふぅん。まあ君がそう言うならいいよ。」
そのままナツキの横を通り過ぎ、感じの悪い足取りで談話室を出て行った。ナツキは唖然とし、その背中を見送った。
「・・・・なんなの、あれ?」
「多分、嫉妬してるのよ。」
ぽつりと呟いたナツキの隣に、いつのまにかハーマイオニーが立っていた。どうやら、一部始終を見ていたようだ。
「ねえ、ナツキ、ハリーが起きてくる前に、ハリーの分の朝食をとりに行かない?広間でも、ここでも、ハリーが落ち着いていられるとは思わないわ。」
ナツキは眉根を寄せて、頷いた。そして二人で大広間までいき、トーストを数枚かっぱらって、グリフィンドール塔へ向かった。
ちょうど談話室の入り口の肖像画が、開いた。ハリーだ。
「ナツキ、ハーマイオニー・・・・」
「ハリー、おはよう。」
「これ、ナツキと持ってきてあげたわ。ちょっと散歩しない?」
ハリーは困ったように「いいね」と言った。
できるだけ人目に触れないように、素早く三人は外に出た。肌寒い朝だ。
ハリーは昨夜、代表選手達の部屋でどんな話をされたのかを言った。ムーディ先生が闇の魔法使いの存在を疑っていると。
「ハリー、ハーマイオニー、私、昨夜少しだけダンブルドア先生と話をしたの。先生はハリーを信じていたよ。おそらく死喰い人がここに紛れ込んでるだろうって。用心するようにって。」
ナツキの言葉にハリーは暗い顔をした。
「・・・ロンを見かけた?」
話題を逸らすようにハリーが尋ねる。ナツキは答えに詰まり、代わりにハーマイオニーが小さくうなずいた。
「僕が自分の名前を入れたと、まだそう思ってる?」
「そうね・・・ううん。そうじゃないと思う・・・そう言うことじゃなくって・・・」
「そう言うことじゃないって、それ、どういう意味?」
ハリーが鋭く聞き返すと、ハーマイオニーはため息をついて答えた。
「嫉妬してるのよ!」
「「?」」
ナツキとハリーは怪訝な顔をした。ハーマイオニーはさっきもそう言っていたが、どういう意味なのだろうか。
「注目を浴びるのはいつだってあなただわ。そりゃ、何もあなたが頼んだわけじゃない。でも、あのね、ロンは家でもお兄さん達と比較されてばっかりだし、あなたはロンの一番の親友なんだけど、とっても有名だし・・・・、ロンはいつでも添え物扱いだわ。・・・・それに、」
ハーマイオニーはチラリとナツキを見た。
「あなた、何かあったときに真っ先にナツキを頼るでしょ。ロンじゃなくて・・・。それにハリーの相棒といえば、人気者のナツキだってみんながきっと口を揃えていうわ。そういうのも・・色々・・・気にしてるんだと思う。でもずっと耐えてきた。一度もそんなことを口にしないで。でも、多分、今度こそ限界だったんでしょうね・・・・・・」
ナツキは唖然とした。ハリーは、やりきれない思いを噛みしめるように口を開いた。
「そりゃ傑作だ。」
ハリーの口調は、皮肉めいていた。
「ロンに僕からの伝言だって、伝えてくれ。いつでもお好きな時に入れ替わってやるって。そしたらナツキだって、迷わず君の力になろうとするだろうって。・・・・僕がいつでもどうぞって言ってたって、伝えてくれ・・・。どこに行っても、みんなが僕の額をジロジロ見るんだ・・・・」
「私は何も言わないわ。」
ハーマイオニーはキッパリいった。
「自分でロンに言いなさい。それしか解決の道はないわ。」
「僕、あいつが大人になる手助けをするなんて真っ平だ!」
ハリーが声を荒げた。
「僕が首根っこでもへし折られれば、楽しんでたわけじゃないってことを、ロンも信じるだろう・・・・」
「そんなことない!」
ナツキが強い口調で言い、そっとハリーの手を握った。
「冗談だとしても、聞きたくない。ハリー、そんなこと言わないで。悲しくなっちゃうよ。」
ナツキはそう言いながらハリーの手を握った。ハリーは、深呼吸をして、心を落ち着けようとしていた。
ハーマイオニーがハリーを見た。
「ハリー、私たちが何をしなきゃならないか、わかってるわね?」
「ああ、ロンを思いっきり蹴っ飛ばして・・・」
「シリウスに手紙を書くの。」
ハリーは眉をひそめ、不満げに顔をしかめた。
「シリウスは、僕の傷跡が少しちくちくしたというだけで、こっちに戻ってきたんだ。誰かが『三校対抗試合』に僕の名前を入れただなんて言ったら、それこそ城に乗り込んできちゃう。」
「ああ、ハリー、大丈夫だよ。」
ナツキは昨夜、ダンブルドア先生にシリウスの安全確保をお願いしたことを二人に伝えた。
ハリーはそれでようやく手紙を書くことを承知した。三人はフクロウ小屋へと向かった。
ハリーはハーマイオニーの貸した羽ペンとインクで手紙を書いた。彼の筆先は何度か紙の上で止まり、言葉を選ぶように慎重に動いた。
手紙を書き終えたころ、上から白い影が舞い降りてきた。ヘドウィグだった。
しかし、他のフクロウを使うようにと言われているので、ハリーはそれをヘドウィグに伝えた。ハリーは手を伸ばしてヘドウィグを撫でようとしたが、彼女は激しく嘴を鳴らし、ハリーの手が届かないところへと舞い上がった。
「最初はロン、今度はお前もか。僕が悪いんじゃないのに。」
ハリーは確実に苛立っていた。
授業が始まり、ハリーが代表に選ばれたことをみんながどう思っていたのかがはっきりした。
ハッフルパフとの合同の『薬草学』では、彼らの寮が誇るセドリック・ディゴリーの栄養をハリーが掠め取ろうとしてるとでも思っているかのように、ハリーと口を聞こうとしなかった。
しかもその授業で、ロンはハリーと口を聞こうとはしなかった。しかも、驚いたことに、ロンはナツキをも避け始めたのだ。
ナツキはこれには流石に呆れてしまった。
ハッフルパフでこれなら、スリザリンは言わずもがなだ。合同の「魔法生物飼育学」では楽しそうにマルフォイがこちらをチラチラ見ては嘲っているのがわかった。
しかし、ハグリッドが現れ、「尻尾爆発スクリュート」との散歩を指示すると、その余裕も無くなった。
「こいつに散歩?」
「あー、ドラゴン革の手袋をした方がええな。何、まあ、用心のためだ。ハリー、ナツキ、こっちきて、このおっきいやつを手伝ってくれ。」
ハグリッドはどうやらみんなから離れたところで話をしたいようだった。二人がハグリッドの元に寄ると、彼は小声で、周囲に聞こえないように言った。
「ハリー、試合に出るんだな。代表選手で。」
「選手の一人だよ。」
ハグリッドはひどく心配そうにハリーを見ていた。
「ハリー、誰がお前の名前を入れたのか、わかんねぇのか?」
「一体誰なのか、僕が知りたいよ。」
ハグリッドは暴れるスクリュートを見ながら満足そうに「みんな楽しそうだ」と言った。そしてまた心配そうにハリーを見て、次にナツキを見た。
「ナツキ、ハリーを頼むぞ。力になっとってくれ。」
ナツキはハグリッドに向かって、力強く微笑んだ。
「もちろんだよ。誰に言ってるの?」
その言葉に、ハグリッドは安心したように深く頷いた。
それからの数日、ハリーにとって地獄のような日々だった。レイブンクロー生すらもハリーに冷たかった。しかもレイブンクロー生の一部はナツキへの当たりが強かった。そのことに気付いたのは、ハリーが占い学の授業中、授業がなかったナツキはひとり図書室で宿題をしていた時だ。
「・・・ほら・・あの子よ・・・ゴドリクソンの・・・・」
離れたところから聞こえるひそひそ声に気づいて、ナツキは眉を顰めた。どうせなら聞こえないようにするべきなのに、あれはわざとなのだろうかと思わざるを得ない。
「双子のウィーズリーには嘘を教えて、大好きなハリー・ポッターにだけアドバイスしたんだわ。」
「えーっ、そういう子だったんだ!いやらしい子ね。」
何それ。
ナツキは思わず机の上の本を勢いよく閉じかけた。怒りがこみ上げ、投げつけてやりたい衝動が頭をよぎる。
だが、深く息を吸い込んで、すんでのところで踏みとどまった。
放っておけばいい。こういうのに構うだけ時間の無駄だ。
フン、と鼻を鳴らし、肩をひとつすくめるとナツキは再び羽ペンを取った。しかしその話はそれだけでは終わらなかったのだ。
ナツキは図書室から戻る途中、誰もいないベンチで気持ちを落ち着けようと回廊を通った。だが、その途中で、ふと足を止める。
廊下の曲がり角の先から、数人のレイブンクローの女子たちのひそひそ声がかすかに聞こえてきた。
「あのゴドリクソンの子・・・彼女、双子には協力するフリして、ハリーにはだけ方法を教えたんだって。」
「ハリーにだけ好かれようとしたのよ。あざとい子。」
「ふーん。まあ私はそんな子だとは思ってたけどね。」
ナツキは息を呑み、その場に足を固定されたように動けなくなった。なぜこんな噂が広まってるの?
ナツキは彼女たちから姿を隠そうと、曲がるのをやめ、壁際に潜んだ。
「俺ら抜きで俺らの話するなんて。」
「もっと良く聞かせてくれよ。」
その声はフレッドとジョージのものだった。彼らは明らかに冷ややかな口調で問いかけた。普段おちゃらけてばかりの二人の怒りを感じ取ったレイブンクローの女の子たちは二人から目を逸らした。
「えっ、あの、それは・・・」
女子たちが口ごもる。
「ナツキが、俺らを出し抜いて、ハリーにだけ年齢線の抜け道を教えた?そんなバカな話、よく思いつくよな。」
フレッドが鼻で笑った。
「ナツキは俺ら以上に俺らのことを想って、寝る間も惜しんで努力したんだ。何も知らないくせに、あいつの名前を口に出すなよ。」
ジョージの声には、はっきりと怒気がにじんでいた。
「そ、そんなに本気で怒らなくても、私たち、ただ聞いただけで・・・・」
「だったら、よく覚えておけ。ナツキは俺の大事な友達だ。」
フレッドが短く言い切ると、双子はその場を離れたようだった。
おかしな噂がどうでも良く感じた。嬉しくて、ちょっとだけ泣きたくなった。
しかし11月に入って、二度目の「魔法薬学」は最悪だった。地下牢教室に入ろうとすると、スリザリン生が外で待っていた。一人残らず、大きなバッジをつけている。
ナツキがそのバッジを凝視すると、そこに「セドリック・ディゴリーを応援しよう。ホグワーツの真のチャンピオンを!」と書かれていた。
「素敵なバッジですこと!」
ナツキが皮肉たっぷりにそう言って、ハリーの手を取り、スリザリン生を押し退けて教室へ入ろうとした時、マルフォイがまた声を上げた。
「だろう。これだけじゃないんだ、ほら!」
彼がバッジを胸に押しつけると、先ほどの文字が消え、別の文字が現れた。「汚いぞ、ポッター!」という文字が趣味悪くギラギラと輝いた。
さてなんの呪いをお見舞いしてやろうかとナツキは逡巡を始めた。
「ひとつあげようか?グレンジャー?たくさんあるんだ。だけど、僕の手に今触らないでくれ。手を洗ったばかりなんだ。『穢れた血』でべっとりにされたくないんだよ。」
このところイライラしっぱなしだったハリーがついに切れて、杖をマルフォイに向けた。もちろんナツキもそれを止めようだなんて気は起きなかった。
「ファーナンキュラス!」
ハリーの叫びと同時に、マルフォイも咄嗟に反撃した。
「デンソージオ!」
二人の杖から飛び出した光が空中でぶつかり折れ曲がって跳ね返った。ハリーの光線はゴイルの顔を直撃し、マルフォイのはハーマイオニーに命中した。
「ハーマイオニー!!」
離れたところから見ていたロンが、彼女に駆け寄った。なんとハーマイオニーの前歯が驚くほどの勢いで成長していた。ナツキは慌てて駆け寄り、杖を振った。
「フィニート!!!」
ハーマイオニーの前歯は下顎に迫る長さで止まった。ナツキの呪文で成長は止まったが、元には戻らない。
「すぐにマダム・ポンフリーのところに・・・・」
ナツキがそう言いかけたとき、「この騒ぎは何事だ?」という低いスネイプ先生の声が響いた。
「先生、ポッターが僕を襲ったんです。」
「僕たち同時にお互いを攻撃したんです。」
「ポッターがゴイルをやっったんです!見てください!」
マルフォイとハリーが口々に叫んだ。
「医務室へ。ゴイル。」
「マルフォイがハーマイオニーをやったんです!見てください!」
ロンが必死に抗議した。ハーマイオニーは見せることを嫌がっていたがその歯はもう隠しようがなく、スリザリンのやつらがクスクス笑っていた。
「いつもと変わりない。」
スネイプ先生はハーマイオニーに冷たくそう言った。ハーマイオニーは目に涙を溜めて、背を向けて走り出した。
途端にロンとハリーがスネイプ先生をひどく罵った。
「グリフィンドール、50点減点。ポッターとウィーズリーはそれぞれ居残り罰だ。さあ、教室に入りたまえ。」
ナツキは、抑えがたい怒りを感じながら、教室の重い扉をくぐった。不幸中の幸いだろうか。授業の途中でハリーは対抗試合のためだと、呼び出されたのだ。
ならばあとは自分が怒りをしずめればいいだけだ、と思い、ナツキは無心で魔法薬の調合をしたのだった。
そんな中、階段を降りてくるロンの姿が目に入った。
「ロン、」
ナツキが声をかけると、ロンは少し驚いたような顔をして立ち止まり、そしてすぐにしかめっ面になった。
「・・・・おはよう、ナツキ。君、どうして言ってくれなかったんだい?」
「え?」
「ハリーに協力したんだろう?なんでそれを僕にも教えてくれなかったんだ。ジョージとフレッドにも。どうしてハリーだけに?」
ナツキは口をあんぐり開けた。
「えーと、ロン、知ってるだろうけど、私、ハリーには協力してない。それに、ハリーはゴブレットに名前を入れてない。」
ロンは目をそらして、鼻で笑った。
「ふぅん。まあ君がそう言うならいいよ。」
そのままナツキの横を通り過ぎ、感じの悪い足取りで談話室を出て行った。ナツキは唖然とし、その背中を見送った。
「・・・・なんなの、あれ?」
「多分、嫉妬してるのよ。」
ぽつりと呟いたナツキの隣に、いつのまにかハーマイオニーが立っていた。どうやら、一部始終を見ていたようだ。
「ねえ、ナツキ、ハリーが起きてくる前に、ハリーの分の朝食をとりに行かない?広間でも、ここでも、ハリーが落ち着いていられるとは思わないわ。」
ナツキは眉根を寄せて、頷いた。そして二人で大広間までいき、トーストを数枚かっぱらって、グリフィンドール塔へ向かった。
ちょうど談話室の入り口の肖像画が、開いた。ハリーだ。
「ナツキ、ハーマイオニー・・・・」
「ハリー、おはよう。」
「これ、ナツキと持ってきてあげたわ。ちょっと散歩しない?」
ハリーは困ったように「いいね」と言った。
できるだけ人目に触れないように、素早く三人は外に出た。肌寒い朝だ。
ハリーは昨夜、代表選手達の部屋でどんな話をされたのかを言った。ムーディ先生が闇の魔法使いの存在を疑っていると。
「ハリー、ハーマイオニー、私、昨夜少しだけダンブルドア先生と話をしたの。先生はハリーを信じていたよ。おそらく死喰い人がここに紛れ込んでるだろうって。用心するようにって。」
ナツキの言葉にハリーは暗い顔をした。
「・・・ロンを見かけた?」
話題を逸らすようにハリーが尋ねる。ナツキは答えに詰まり、代わりにハーマイオニーが小さくうなずいた。
「僕が自分の名前を入れたと、まだそう思ってる?」
「そうね・・・ううん。そうじゃないと思う・・・そう言うことじゃなくって・・・」
「そう言うことじゃないって、それ、どういう意味?」
ハリーが鋭く聞き返すと、ハーマイオニーはため息をついて答えた。
「嫉妬してるのよ!」
「「?」」
ナツキとハリーは怪訝な顔をした。ハーマイオニーはさっきもそう言っていたが、どういう意味なのだろうか。
「注目を浴びるのはいつだってあなただわ。そりゃ、何もあなたが頼んだわけじゃない。でも、あのね、ロンは家でもお兄さん達と比較されてばっかりだし、あなたはロンの一番の親友なんだけど、とっても有名だし・・・・、ロンはいつでも添え物扱いだわ。・・・・それに、」
ハーマイオニーはチラリとナツキを見た。
「あなた、何かあったときに真っ先にナツキを頼るでしょ。ロンじゃなくて・・・。それにハリーの相棒といえば、人気者のナツキだってみんながきっと口を揃えていうわ。そういうのも・・色々・・・気にしてるんだと思う。でもずっと耐えてきた。一度もそんなことを口にしないで。でも、多分、今度こそ限界だったんでしょうね・・・・・・」
ナツキは唖然とした。ハリーは、やりきれない思いを噛みしめるように口を開いた。
「そりゃ傑作だ。」
ハリーの口調は、皮肉めいていた。
「ロンに僕からの伝言だって、伝えてくれ。いつでもお好きな時に入れ替わってやるって。そしたらナツキだって、迷わず君の力になろうとするだろうって。・・・・僕がいつでもどうぞって言ってたって、伝えてくれ・・・。どこに行っても、みんなが僕の額をジロジロ見るんだ・・・・」
「私は何も言わないわ。」
ハーマイオニーはキッパリいった。
「自分でロンに言いなさい。それしか解決の道はないわ。」
「僕、あいつが大人になる手助けをするなんて真っ平だ!」
ハリーが声を荒げた。
「僕が首根っこでもへし折られれば、楽しんでたわけじゃないってことを、ロンも信じるだろう・・・・」
「そんなことない!」
ナツキが強い口調で言い、そっとハリーの手を握った。
「冗談だとしても、聞きたくない。ハリー、そんなこと言わないで。悲しくなっちゃうよ。」
ナツキはそう言いながらハリーの手を握った。ハリーは、深呼吸をして、心を落ち着けようとしていた。
ハーマイオニーがハリーを見た。
「ハリー、私たちが何をしなきゃならないか、わかってるわね?」
「ああ、ロンを思いっきり蹴っ飛ばして・・・」
「シリウスに手紙を書くの。」
ハリーは眉をひそめ、不満げに顔をしかめた。
「シリウスは、僕の傷跡が少しちくちくしたというだけで、こっちに戻ってきたんだ。誰かが『三校対抗試合』に僕の名前を入れただなんて言ったら、それこそ城に乗り込んできちゃう。」
「ああ、ハリー、大丈夫だよ。」
ナツキは昨夜、ダンブルドア先生にシリウスの安全確保をお願いしたことを二人に伝えた。
ハリーはそれでようやく手紙を書くことを承知した。三人はフクロウ小屋へと向かった。
ハリーはハーマイオニーの貸した羽ペンとインクで手紙を書いた。彼の筆先は何度か紙の上で止まり、言葉を選ぶように慎重に動いた。
手紙を書き終えたころ、上から白い影が舞い降りてきた。ヘドウィグだった。
しかし、他のフクロウを使うようにと言われているので、ハリーはそれをヘドウィグに伝えた。ハリーは手を伸ばしてヘドウィグを撫でようとしたが、彼女は激しく嘴を鳴らし、ハリーの手が届かないところへと舞い上がった。
「最初はロン、今度はお前もか。僕が悪いんじゃないのに。」
ハリーは確実に苛立っていた。
授業が始まり、ハリーが代表に選ばれたことをみんながどう思っていたのかがはっきりした。
ハッフルパフとの合同の『薬草学』では、彼らの寮が誇るセドリック・ディゴリーの栄養をハリーが掠め取ろうとしてるとでも思っているかのように、ハリーと口を聞こうとしなかった。
しかもその授業で、ロンはハリーと口を聞こうとはしなかった。しかも、驚いたことに、ロンはナツキをも避け始めたのだ。
ナツキはこれには流石に呆れてしまった。
ハッフルパフでこれなら、スリザリンは言わずもがなだ。合同の「魔法生物飼育学」では楽しそうにマルフォイがこちらをチラチラ見ては嘲っているのがわかった。
しかし、ハグリッドが現れ、「尻尾爆発スクリュート」との散歩を指示すると、その余裕も無くなった。
「こいつに散歩?」
「あー、ドラゴン革の手袋をした方がええな。何、まあ、用心のためだ。ハリー、ナツキ、こっちきて、このおっきいやつを手伝ってくれ。」
ハグリッドはどうやらみんなから離れたところで話をしたいようだった。二人がハグリッドの元に寄ると、彼は小声で、周囲に聞こえないように言った。
「ハリー、試合に出るんだな。代表選手で。」
「選手の一人だよ。」
ハグリッドはひどく心配そうにハリーを見ていた。
「ハリー、誰がお前の名前を入れたのか、わかんねぇのか?」
「一体誰なのか、僕が知りたいよ。」
ハグリッドは暴れるスクリュートを見ながら満足そうに「みんな楽しそうだ」と言った。そしてまた心配そうにハリーを見て、次にナツキを見た。
「ナツキ、ハリーを頼むぞ。力になっとってくれ。」
ナツキはハグリッドに向かって、力強く微笑んだ。
「もちろんだよ。誰に言ってるの?」
その言葉に、ハグリッドは安心したように深く頷いた。
それからの数日、ハリーにとって地獄のような日々だった。レイブンクロー生すらもハリーに冷たかった。しかもレイブンクロー生の一部はナツキへの当たりが強かった。そのことに気付いたのは、ハリーが占い学の授業中、授業がなかったナツキはひとり図書室で宿題をしていた時だ。
「・・・ほら・・あの子よ・・・ゴドリクソンの・・・・」
離れたところから聞こえるひそひそ声に気づいて、ナツキは眉を顰めた。どうせなら聞こえないようにするべきなのに、あれはわざとなのだろうかと思わざるを得ない。
「双子のウィーズリーには嘘を教えて、大好きなハリー・ポッターにだけアドバイスしたんだわ。」
「えーっ、そういう子だったんだ!いやらしい子ね。」
何それ。
ナツキは思わず机の上の本を勢いよく閉じかけた。怒りがこみ上げ、投げつけてやりたい衝動が頭をよぎる。
だが、深く息を吸い込んで、すんでのところで踏みとどまった。
放っておけばいい。こういうのに構うだけ時間の無駄だ。
フン、と鼻を鳴らし、肩をひとつすくめるとナツキは再び羽ペンを取った。しかしその話はそれだけでは終わらなかったのだ。
ナツキは図書室から戻る途中、誰もいないベンチで気持ちを落ち着けようと回廊を通った。だが、その途中で、ふと足を止める。
廊下の曲がり角の先から、数人のレイブンクローの女子たちのひそひそ声がかすかに聞こえてきた。
「あのゴドリクソンの子・・・彼女、双子には協力するフリして、ハリーにはだけ方法を教えたんだって。」
「ハリーにだけ好かれようとしたのよ。あざとい子。」
「ふーん。まあ私はそんな子だとは思ってたけどね。」
ナツキは息を呑み、その場に足を固定されたように動けなくなった。なぜこんな噂が広まってるの?
ナツキは彼女たちから姿を隠そうと、曲がるのをやめ、壁際に潜んだ。
「俺ら抜きで俺らの話するなんて。」
「もっと良く聞かせてくれよ。」
その声はフレッドとジョージのものだった。彼らは明らかに冷ややかな口調で問いかけた。普段おちゃらけてばかりの二人の怒りを感じ取ったレイブンクローの女の子たちは二人から目を逸らした。
「えっ、あの、それは・・・」
女子たちが口ごもる。
「ナツキが、俺らを出し抜いて、ハリーにだけ年齢線の抜け道を教えた?そんなバカな話、よく思いつくよな。」
フレッドが鼻で笑った。
「ナツキは俺ら以上に俺らのことを想って、寝る間も惜しんで努力したんだ。何も知らないくせに、あいつの名前を口に出すなよ。」
ジョージの声には、はっきりと怒気がにじんでいた。
「そ、そんなに本気で怒らなくても、私たち、ただ聞いただけで・・・・」
「だったら、よく覚えておけ。ナツキは俺の大事な友達だ。」
フレッドが短く言い切ると、双子はその場を離れたようだった。
おかしな噂がどうでも良く感じた。嬉しくて、ちょっとだけ泣きたくなった。
しかし11月に入って、二度目の「魔法薬学」は最悪だった。地下牢教室に入ろうとすると、スリザリン生が外で待っていた。一人残らず、大きなバッジをつけている。
ナツキがそのバッジを凝視すると、そこに「セドリック・ディゴリーを応援しよう。ホグワーツの真のチャンピオンを!」と書かれていた。
「素敵なバッジですこと!」
ナツキが皮肉たっぷりにそう言って、ハリーの手を取り、スリザリン生を押し退けて教室へ入ろうとした時、マルフォイがまた声を上げた。
「だろう。これだけじゃないんだ、ほら!」
彼がバッジを胸に押しつけると、先ほどの文字が消え、別の文字が現れた。「汚いぞ、ポッター!」という文字が趣味悪くギラギラと輝いた。
さてなんの呪いをお見舞いしてやろうかとナツキは逡巡を始めた。
「ひとつあげようか?グレンジャー?たくさんあるんだ。だけど、僕の手に今触らないでくれ。手を洗ったばかりなんだ。『穢れた血』でべっとりにされたくないんだよ。」
このところイライラしっぱなしだったハリーがついに切れて、杖をマルフォイに向けた。もちろんナツキもそれを止めようだなんて気は起きなかった。
「ファーナンキュラス!」
ハリーの叫びと同時に、マルフォイも咄嗟に反撃した。
「デンソージオ!」
二人の杖から飛び出した光が空中でぶつかり折れ曲がって跳ね返った。ハリーの光線はゴイルの顔を直撃し、マルフォイのはハーマイオニーに命中した。
「ハーマイオニー!!」
離れたところから見ていたロンが、彼女に駆け寄った。なんとハーマイオニーの前歯が驚くほどの勢いで成長していた。ナツキは慌てて駆け寄り、杖を振った。
「フィニート!!!」
ハーマイオニーの前歯は下顎に迫る長さで止まった。ナツキの呪文で成長は止まったが、元には戻らない。
「すぐにマダム・ポンフリーのところに・・・・」
ナツキがそう言いかけたとき、「この騒ぎは何事だ?」という低いスネイプ先生の声が響いた。
「先生、ポッターが僕を襲ったんです。」
「僕たち同時にお互いを攻撃したんです。」
「ポッターがゴイルをやっったんです!見てください!」
マルフォイとハリーが口々に叫んだ。
「医務室へ。ゴイル。」
「マルフォイがハーマイオニーをやったんです!見てください!」
ロンが必死に抗議した。ハーマイオニーは見せることを嫌がっていたがその歯はもう隠しようがなく、スリザリンのやつらがクスクス笑っていた。
「いつもと変わりない。」
スネイプ先生はハーマイオニーに冷たくそう言った。ハーマイオニーは目に涙を溜めて、背を向けて走り出した。
途端にロンとハリーがスネイプ先生をひどく罵った。
「グリフィンドール、50点減点。ポッターとウィーズリーはそれぞれ居残り罰だ。さあ、教室に入りたまえ。」
ナツキは、抑えがたい怒りを感じながら、教室の重い扉をくぐった。不幸中の幸いだろうか。授業の途中でハリーは対抗試合のためだと、呼び出されたのだ。
ならばあとは自分が怒りをしずめればいいだけだ、と思い、ナツキは無心で魔法薬の調合をしたのだった。