炎のゴブレット
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ホグワーツ城の重たい扉をくぐり抜けると、濡れた靴が石の床に音を立てた。ナツキは大広間の奥へと向かった。グリフィンドールのテーブル――赤と金の旗が揺れる中、ハリーたちと四人で座れそうな場所を探す。目に留まったのは、グリフィンドールのゴースト、サー・ニコラスのまわりだった。
「久しぶり。サー・ニコラス。」
「やあ、我が友たち。素敵な夕べだね。」
そう言いながら、そっと杖を振る。ハリーのローブから水分が抜け、すぐに温かな乾いた布地に戻る。同じように、ロンの袖口や裾からも水滴が消えていった。
「ナツキ、俺らにも!」
ナツキとハリーがサー・ニコラスを挟んで席に着くと、背後から声がした。振り返ると、フレッドとジョージがびしょ濡れのまま立っていた。
ナツキは「はいはい」と呟きながら、もう一度杖を振った。ふたりの服がふわりと乾いていく。
「ありがと。」
ジョージがナツキの右隣に腰を下ろし、肩が少し触れた。
やがてびしょ濡れで震えている一年生がぞろぞろやってきて組み分けの儀式が始まった。ホグワーツの四つの寮へと新入生を振り分ける「組み分けの儀式」が始まる。今年も組み分け帽子は、中央に置かれたスツールの上で高らかに歌い上げていた。
組み分けが徐々に進んでいく。ハリー狂のコリン・クリービーの弟、デニス・クリービーがグリフィンドールに分けられ、嬉しそうにグリフィンドールのテーブルについた。ハリーは複雑な顔をしている。ロンは空腹でイライラしていた。
いよいよ組み分けが終わり、ダンブルドア先生の「掻っ込め!」と言う深い声が広間に響いた。すると、目の前の空っぽの皿が魔法でいっぱいになる。
「今年はご馳走が出ただけでも運がよかったのですよ。さっき、厨房で問題が起きましてね。」
サー・ニコラスがいうには、ピーブズが宴会に参加したいと癇癪を起こして暴れたらしい。
「屋敷しもべ妖精がここにもいるっていうの?このホグワーツに?」
ハーマイオニーの何かに火がついた。そして食べるのをやめてしまって、ロンが何かを食べさせようと必死に誘惑していた。
「さて!」
みんなが食べ終わる頃、ダンブルドア先生が立ち上がった。
「いくつか知らせることがある。もう一度耳を傾けてもらおうかの。管理人のフィルチさんから皆に伝えるようにとのことじゃが・・・・・」
ナツキは隣に座るジョージたちを見た。にやにやと悪戯っぽい笑みを浮かべている。きっと持ち込み禁止品があのトランクにいっぱい詰まっているのだろう。
「いつもの通り、校庭内にある森は、生徒立ち入り禁止。ホグズミード村も、3年生になるまでは禁止じゃ。」
隣のジョージがダンブルドア先生から、こちらにチラッと視線を向けた。すぐに言いたいことを察したナツキは笑みを返した。
ジョージとホグズミードに一緒に行く約束があるのだ。
去年はシリウス・ブラック騒動のせいでホグズミードにいく(公の)許可が出なくて、(あまり堂々とは)行けなかったが、今年はバッチリ許可証にサインをもらっている。
「寮対抗クィディッチ試合は今年は取りやめじゃ。これを知らせるのはわしの辛い役目でのう。」
ハリーの「エーッ」という絶叫が聞こえた。右のジョージとフレッドは、あまりのことにいつもの余裕は消え、口をパクパクさせていた。
「これは10月に始まり、今学年の終わりまで続くイベントのためじゃ。先生方もほとんどの時間とエネルギーをこの行事のために費やすことになる。しかしじゃ、わしは、みんながこの行事を大いに楽しむであろうと確信しておる。」
ダンブルドア先生は一呼吸置き、言葉に重みを込めた。
「ここに大いなる喜びを持って発表しよう。今年、ホグワーツで、」
その時、轟くような雷鳴が大広間を震わせ、その直後、重たい扉がバンッと音を立てて開いた。
広間中の視線が一斉に扉へと注がれる。雨風を背に、黒い旅行マントをまとった男がゆっくりと足を踏み入れてきた。杖をついて歩くその足取りは重く、片足を引きずるようだ。靴の底が石床を叩き、コツ、コツと鈍い音を響かせる。
男の顔は、傷だらけで歪み、片方の目は不自然な角度でぎょろぎょろと動いていた。人間の“形”をギリギリ保っている。そんな印象を受けるような恐ろしい顔立ちだ。
ナツキは数拍遅れて、その姿に「あっ」と小さく声を漏らした。彼は、マッドアイ・ムーディーだ。
かつてホッグズ・ヘッドでほんの一瞬目にした、あの日の記憶が、にわかに鮮明に甦る。あのときよりさらに人間離れした容姿に変わってはいるが、間違いない。
「ウィーズリーおじさんが迎えに行ったのかな?」
ナツキは今朝の隠れ穴でのドタバタを思い出し、ジョージにこそっと耳打ちした。
「さあな。でもパパはムーディを気に入ってるみたいだよ。今年の授業も期待できるかもな。」
でも、ルーピン先生がよかった。
そう喉元まで出かけた言葉を、ナツキは呑み込んだ。声に出したら、きっともっと寂しくなると思ったからだ。
「先ほど言いかけていたのじゃが、これから数ヶ月に渡り、我が校は誠に心躍るイベントを主催するという光栄に浴する。」
ダンブルドア先生の声が、静まり返った大広間に朗々と響いた。
「この催しはここ百年以上行われていない。この開催を発表するのは、わしとしても大いに嬉しい。今年、ホグワーツで三大魔法学校対抗試合を行う!」
「ご冗談でしょう!」
フレッドが大声を上げた。
「ミスター・ウィーズリー、わしは決して冗談など言っておらんよ。・・・さて、この試合が如何なるものか、知らない諸君もおろう。」
ダンブルドア先生が続けた。
「三大魔法学校対抗試合はおよそ七百年前、ヨーロッパの三大魔法学校の親善試合として始まったものじゃ。ホグワーツ、ボーバトン、ダームストラングの3校でのう。各校から代表選手が一人ずつ選ばれ、3人が3つの魔法競技を争った。」
しかしかなりの死者が出たことで中止になったのだという。しかし、「国際魔法協力部」と「魔法ゲーム・スポーツ部」が再開を決めたらしい。
ナツキは、気分が高揚していくのを感じた。
「ボーバトンとダームストラングの校長が代表選手の最終候補生を連れて10月に来校し、ハロウィーンの日に学校代表選手3人の選考が行われる。優勝杯、学校の栄誉、そして選手個人に与えられる賞金一千ガリオンをかけて戦うのに、誰が最もふさわしいかを公明正大なる審査員が決めるのじゃ。」
一千ガリオンと聞いてフレッドの目が変わり、「立候補するぞ」と息巻いている。
ちょっと出てみたいかも・・・
ナツキもそんな気持ちで目を輝かせていた。
「すべての諸君が優勝杯をホグワーツ校にもたらそうという熱意に満ちておると承知しておる。しかし、参加三校の校長、並びに魔法症として、今年の選手に年齢制限を設けることで合意した。ある一定年齢に達した生徒だけが、つまり、17歳以上だが、代表候補として名乗りを挙げることを許される。」
どよめきが広間に走り、ナツキはがっかりした。だがその隣で、もっと露骨に表情を険しくしていたのはジョージとフレッドだった。二人は10月時点でまだ16歳。あと数か月足りない。
説明を終えると、ダンブルドア先生は宴の終わりを告げた。
「そりゃあ、ないぜ!俺たち、4月には17歳だぜ。なんで参加できないんだ?」
ジョージが棒立ちになってダンブルドア先生を睨みつけていた。
「俺はエントリーするぞ。止められるもんなら止めてみろ。」
フレッドもしかめっ面を教職員テーブルに向けて、頑固にそういった。
「どうやって17歳未満のエントリーを阻止すると思う?」
ハリーたちと玄関ホールへ向かいながら歩いていると、フレッドがそうナツキに尋ねた。
「いくらでも方法はあると思う。生年月日検出呪文とか、『年齢を偽ってません』って魔法契約に署名させて、破ったら・・・うーん、眉毛が全部抜けるとか。あとは年齢線とかもあるし・・・。」
「いいねぇ。どんどん出してくれ。」
ナツキは少し肩をすくめた。
「ねえ、それなら私よりハーマイオニーのほうが詳しいと思う。」
「知ってても教えてくれるかは別だろ?」
フレッドはわざとらしく、ハーマイオニーに聞こえるような声で言った。案の定、前方を歩くハーマイオニーがちらりと振り返って呆れた目をした。まあ、確かにハーマイオニーは悪事には加担しないだろう。
「だけどダンブルドアは二人が17歳未満だって知ってるよ。」
ロンが現実的な指摘を挟んだ。もっともだ。だがフレッドは肩をすくめ、まるで読み切っていたかのように答えた。
「ああ、でも、ダンブルドアが代表選手を決めるわけじゃないだろ?俺の見るとこじゃ、審査員なんて誰が立候補したかさえわかったら、あとは各校からベストな選手を選ぶだけで、歳なんて気にしにしないと思うな。」
彼らは本気だ。
ナツキはそう思った。バグマンが賭けの配当金を正当に支払わないままになっている今、二人にとってこの大会の賞金は、かなり切実な意味を持っているのだ。
談話室に着いて、ハーマイオニーに続いてナツキも女子寮に向かおうとしたとき、不意に肩をつかまれた。
「悪い、ナツキ。ちょっといいか?」
フレッドは真剣な声でそう言った。
「うん。」
談話室の隅。暖炉の明かりが揺れる静かな場所で、ナツキは双子と向かい合った。
「ナツキ、本気で協力してくれると助かる。俺ら。賞金が欲しいんだ。」
フレッドがいった。ジョージがそれに続けた。
「年下のナツキに頼るなんて情けないけどな。」
「情けなくなんてないよ!」
ナツキは即座にジョージの言葉を否定した。
「私、いつも二人に助けられてる。協力するに決まってるよ!10月までに、立候補できるよう計画しよう!」
「ナツキー!最高だぜ!」
「わっ、」
フレッドがナツキとジョージの肩をがしっと抱き込んだ。
「最強の共犯者を手に入れたぜ。俺たちゃ今から三つ子のウィーズリーだ!」
「それは違う!」
ジョージが即座に突っ込み、フレッドは「しまった!」という顔をして、ニヤニヤジョージを見た。
「私も二人と兄弟は、なんか違うかな。」
ナツキがそういうと、フレッドがさらにニヤニヤした。
「兄弟じゃなければなんなんだい?」
「え?ともだちよりは親しいから・・うーん、でも親友は・・・ハリー、いや、ハリーとは兄弟みたいなもので、親友がロンとハーマイオニーだから二人は・・・・」
ジョージはごくりと生唾を呑んだ。
「うーん・・・やっぱり共犯者以外に最適な言葉が見つからないね。」
「じゃあ俺とジョージ、片方ずつだったら?それでも共犯者か?」
フレッドの問いに、ナツキは一瞬ぽかんとしてから言った。
「え?」
片方ずつ、って。
「うーんと、フレッドは、“共犯者”で、“頼れる友達”で、“親友のお兄ちゃん”で・・・」
言葉に詰まったナツキは、ジョージの方へ視線を向ける。
「ジョージは・・・」
同じ、と言い切れない。なぜだか、言葉が出てこなかった。
その時ふと生みの親シリウス・ブラックが自分を見つめたときの優しい瞳を思い出した。
「・・・・・・お父さん・・・・?」
「「は?」」
フレッドとジョージの声が、完全にハモった。
一拍の沈黙のあと、
「それはないだろ!!」
フレッドが大声で笑い出した。膝を叩きながら腹を抱えて笑っている。ジョージは、笑うこともできず、なんとも言えない顔でナツキを見つめていた。
ナツキも、自分の口から出た言葉にじわじわと赤面しはじめ、両手で顔を隠す。
「ち、違うの!そういう意味じゃ、ないんだけど・・・たぶん・・・・・!」
けれどフレッドの笑いは止まらず、ジョージの表情は微妙なままで、ナツキの困惑だけが膨らんでいく。
こうして、笑いと沈黙と少しの混乱を残したまま、ホグワーツの新しい一年が幕を開けたのだった。
「久しぶり。サー・ニコラス。」
「やあ、我が友たち。素敵な夕べだね。」
そう言いながら、そっと杖を振る。ハリーのローブから水分が抜け、すぐに温かな乾いた布地に戻る。同じように、ロンの袖口や裾からも水滴が消えていった。
「ナツキ、俺らにも!」
ナツキとハリーがサー・ニコラスを挟んで席に着くと、背後から声がした。振り返ると、フレッドとジョージがびしょ濡れのまま立っていた。
ナツキは「はいはい」と呟きながら、もう一度杖を振った。ふたりの服がふわりと乾いていく。
「ありがと。」
ジョージがナツキの右隣に腰を下ろし、肩が少し触れた。
やがてびしょ濡れで震えている一年生がぞろぞろやってきて組み分けの儀式が始まった。ホグワーツの四つの寮へと新入生を振り分ける「組み分けの儀式」が始まる。今年も組み分け帽子は、中央に置かれたスツールの上で高らかに歌い上げていた。
組み分けが徐々に進んでいく。ハリー狂のコリン・クリービーの弟、デニス・クリービーがグリフィンドールに分けられ、嬉しそうにグリフィンドールのテーブルについた。ハリーは複雑な顔をしている。ロンは空腹でイライラしていた。
いよいよ組み分けが終わり、ダンブルドア先生の「掻っ込め!」と言う深い声が広間に響いた。すると、目の前の空っぽの皿が魔法でいっぱいになる。
「今年はご馳走が出ただけでも運がよかったのですよ。さっき、厨房で問題が起きましてね。」
サー・ニコラスがいうには、ピーブズが宴会に参加したいと癇癪を起こして暴れたらしい。
「屋敷しもべ妖精がここにもいるっていうの?このホグワーツに?」
ハーマイオニーの何かに火がついた。そして食べるのをやめてしまって、ロンが何かを食べさせようと必死に誘惑していた。
「さて!」
みんなが食べ終わる頃、ダンブルドア先生が立ち上がった。
「いくつか知らせることがある。もう一度耳を傾けてもらおうかの。管理人のフィルチさんから皆に伝えるようにとのことじゃが・・・・・」
ナツキは隣に座るジョージたちを見た。にやにやと悪戯っぽい笑みを浮かべている。きっと持ち込み禁止品があのトランクにいっぱい詰まっているのだろう。
「いつもの通り、校庭内にある森は、生徒立ち入り禁止。ホグズミード村も、3年生になるまでは禁止じゃ。」
隣のジョージがダンブルドア先生から、こちらにチラッと視線を向けた。すぐに言いたいことを察したナツキは笑みを返した。
ジョージとホグズミードに一緒に行く約束があるのだ。
去年はシリウス・ブラック騒動のせいでホグズミードにいく(公の)許可が出なくて、(あまり堂々とは)行けなかったが、今年はバッチリ許可証にサインをもらっている。
「寮対抗クィディッチ試合は今年は取りやめじゃ。これを知らせるのはわしの辛い役目でのう。」
ハリーの「エーッ」という絶叫が聞こえた。右のジョージとフレッドは、あまりのことにいつもの余裕は消え、口をパクパクさせていた。
「これは10月に始まり、今学年の終わりまで続くイベントのためじゃ。先生方もほとんどの時間とエネルギーをこの行事のために費やすことになる。しかしじゃ、わしは、みんながこの行事を大いに楽しむであろうと確信しておる。」
ダンブルドア先生は一呼吸置き、言葉に重みを込めた。
「ここに大いなる喜びを持って発表しよう。今年、ホグワーツで、」
その時、轟くような雷鳴が大広間を震わせ、その直後、重たい扉がバンッと音を立てて開いた。
広間中の視線が一斉に扉へと注がれる。雨風を背に、黒い旅行マントをまとった男がゆっくりと足を踏み入れてきた。杖をついて歩くその足取りは重く、片足を引きずるようだ。靴の底が石床を叩き、コツ、コツと鈍い音を響かせる。
男の顔は、傷だらけで歪み、片方の目は不自然な角度でぎょろぎょろと動いていた。人間の“形”をギリギリ保っている。そんな印象を受けるような恐ろしい顔立ちだ。
ナツキは数拍遅れて、その姿に「あっ」と小さく声を漏らした。彼は、マッドアイ・ムーディーだ。
かつてホッグズ・ヘッドでほんの一瞬目にした、あの日の記憶が、にわかに鮮明に甦る。あのときよりさらに人間離れした容姿に変わってはいるが、間違いない。
「ウィーズリーおじさんが迎えに行ったのかな?」
ナツキは今朝の隠れ穴でのドタバタを思い出し、ジョージにこそっと耳打ちした。
「さあな。でもパパはムーディを気に入ってるみたいだよ。今年の授業も期待できるかもな。」
でも、ルーピン先生がよかった。
そう喉元まで出かけた言葉を、ナツキは呑み込んだ。声に出したら、きっともっと寂しくなると思ったからだ。
「先ほど言いかけていたのじゃが、これから数ヶ月に渡り、我が校は誠に心躍るイベントを主催するという光栄に浴する。」
ダンブルドア先生の声が、静まり返った大広間に朗々と響いた。
「この催しはここ百年以上行われていない。この開催を発表するのは、わしとしても大いに嬉しい。今年、ホグワーツで三大魔法学校対抗試合を行う!」
「ご冗談でしょう!」
フレッドが大声を上げた。
「ミスター・ウィーズリー、わしは決して冗談など言っておらんよ。・・・さて、この試合が如何なるものか、知らない諸君もおろう。」
ダンブルドア先生が続けた。
「三大魔法学校対抗試合はおよそ七百年前、ヨーロッパの三大魔法学校の親善試合として始まったものじゃ。ホグワーツ、ボーバトン、ダームストラングの3校でのう。各校から代表選手が一人ずつ選ばれ、3人が3つの魔法競技を争った。」
しかしかなりの死者が出たことで中止になったのだという。しかし、「国際魔法協力部」と「魔法ゲーム・スポーツ部」が再開を決めたらしい。
ナツキは、気分が高揚していくのを感じた。
「ボーバトンとダームストラングの校長が代表選手の最終候補生を連れて10月に来校し、ハロウィーンの日に学校代表選手3人の選考が行われる。優勝杯、学校の栄誉、そして選手個人に与えられる賞金一千ガリオンをかけて戦うのに、誰が最もふさわしいかを公明正大なる審査員が決めるのじゃ。」
一千ガリオンと聞いてフレッドの目が変わり、「立候補するぞ」と息巻いている。
ちょっと出てみたいかも・・・
ナツキもそんな気持ちで目を輝かせていた。
「すべての諸君が優勝杯をホグワーツ校にもたらそうという熱意に満ちておると承知しておる。しかし、参加三校の校長、並びに魔法症として、今年の選手に年齢制限を設けることで合意した。ある一定年齢に達した生徒だけが、つまり、17歳以上だが、代表候補として名乗りを挙げることを許される。」
どよめきが広間に走り、ナツキはがっかりした。だがその隣で、もっと露骨に表情を険しくしていたのはジョージとフレッドだった。二人は10月時点でまだ16歳。あと数か月足りない。
説明を終えると、ダンブルドア先生は宴の終わりを告げた。
「そりゃあ、ないぜ!俺たち、4月には17歳だぜ。なんで参加できないんだ?」
ジョージが棒立ちになってダンブルドア先生を睨みつけていた。
「俺はエントリーするぞ。止められるもんなら止めてみろ。」
フレッドもしかめっ面を教職員テーブルに向けて、頑固にそういった。
「どうやって17歳未満のエントリーを阻止すると思う?」
ハリーたちと玄関ホールへ向かいながら歩いていると、フレッドがそうナツキに尋ねた。
「いくらでも方法はあると思う。生年月日検出呪文とか、『年齢を偽ってません』って魔法契約に署名させて、破ったら・・・うーん、眉毛が全部抜けるとか。あとは年齢線とかもあるし・・・。」
「いいねぇ。どんどん出してくれ。」
ナツキは少し肩をすくめた。
「ねえ、それなら私よりハーマイオニーのほうが詳しいと思う。」
「知ってても教えてくれるかは別だろ?」
フレッドはわざとらしく、ハーマイオニーに聞こえるような声で言った。案の定、前方を歩くハーマイオニーがちらりと振り返って呆れた目をした。まあ、確かにハーマイオニーは悪事には加担しないだろう。
「だけどダンブルドアは二人が17歳未満だって知ってるよ。」
ロンが現実的な指摘を挟んだ。もっともだ。だがフレッドは肩をすくめ、まるで読み切っていたかのように答えた。
「ああ、でも、ダンブルドアが代表選手を決めるわけじゃないだろ?俺の見るとこじゃ、審査員なんて誰が立候補したかさえわかったら、あとは各校からベストな選手を選ぶだけで、歳なんて気にしにしないと思うな。」
彼らは本気だ。
ナツキはそう思った。バグマンが賭けの配当金を正当に支払わないままになっている今、二人にとってこの大会の賞金は、かなり切実な意味を持っているのだ。
談話室に着いて、ハーマイオニーに続いてナツキも女子寮に向かおうとしたとき、不意に肩をつかまれた。
「悪い、ナツキ。ちょっといいか?」
フレッドは真剣な声でそう言った。
「うん。」
談話室の隅。暖炉の明かりが揺れる静かな場所で、ナツキは双子と向かい合った。
「ナツキ、本気で協力してくれると助かる。俺ら。賞金が欲しいんだ。」
フレッドがいった。ジョージがそれに続けた。
「年下のナツキに頼るなんて情けないけどな。」
「情けなくなんてないよ!」
ナツキは即座にジョージの言葉を否定した。
「私、いつも二人に助けられてる。協力するに決まってるよ!10月までに、立候補できるよう計画しよう!」
「ナツキー!最高だぜ!」
「わっ、」
フレッドがナツキとジョージの肩をがしっと抱き込んだ。
「最強の共犯者を手に入れたぜ。俺たちゃ今から三つ子のウィーズリーだ!」
「それは違う!」
ジョージが即座に突っ込み、フレッドは「しまった!」という顔をして、ニヤニヤジョージを見た。
「私も二人と兄弟は、なんか違うかな。」
ナツキがそういうと、フレッドがさらにニヤニヤした。
「兄弟じゃなければなんなんだい?」
「え?ともだちよりは親しいから・・うーん、でも親友は・・・ハリー、いや、ハリーとは兄弟みたいなもので、親友がロンとハーマイオニーだから二人は・・・・」
ジョージはごくりと生唾を呑んだ。
「うーん・・・やっぱり共犯者以外に最適な言葉が見つからないね。」
「じゃあ俺とジョージ、片方ずつだったら?それでも共犯者か?」
フレッドの問いに、ナツキは一瞬ぽかんとしてから言った。
「え?」
片方ずつ、って。
「うーんと、フレッドは、“共犯者”で、“頼れる友達”で、“親友のお兄ちゃん”で・・・」
言葉に詰まったナツキは、ジョージの方へ視線を向ける。
「ジョージは・・・」
同じ、と言い切れない。なぜだか、言葉が出てこなかった。
その時ふと生みの親シリウス・ブラックが自分を見つめたときの優しい瞳を思い出した。
「・・・・・・お父さん・・・・?」
「「は?」」
フレッドとジョージの声が、完全にハモった。
一拍の沈黙のあと、
「それはないだろ!!」
フレッドが大声で笑い出した。膝を叩きながら腹を抱えて笑っている。ジョージは、笑うこともできず、なんとも言えない顔でナツキを見つめていた。
ナツキも、自分の口から出た言葉にじわじわと赤面しはじめ、両手で顔を隠す。
「ち、違うの!そういう意味じゃ、ないんだけど・・・たぶん・・・・・!」
けれどフレッドの笑いは止まらず、ジョージの表情は微妙なままで、ナツキの困惑だけが膨らんでいく。
こうして、笑いと沈黙と少しの混乱を残したまま、ホグワーツの新しい一年が幕を開けたのだった。