炎のゴブレット
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ウィーズリーおじさんは古びたブーツを拾い上げ、近くで手続きをしている魔法省の係員に手渡した。
「おはよう、バージル。」
「やあ、アーサー。非番なのか? まったく運がいいなあ。ちょっと待ってくれ、君たちのキャンプ場を探すから・・・ウィーズリー・・・ウィーズリーと・・・・」
バージルが魔法の羊皮紙をぱらぱらとめくっているあいだに、セドリックがナツキにそっと声をかけた。
「ねえ、ナツキ、ウィーズリー家と観戦するんだよね?」
「うん。ウィーズリーおじさんがチケットを取ってくれてて。」
ナツキが笑って答えると、セドリックはほんの少し視線を落とした。
「そっか。えっと、あのさ、夏休みは、ずっとウィーズリーのところにいるの?」
「うん。昨日からね。ホグワーツが始まるまでお世話になるつもり。」
ナツキがうなずくと、セドリックは少しだけ頬を染めて言った。
「じゃあさ、来年は、僕の家に来ない?・・・・夏休みのどこかでさ。」
「セドリックの家に?」
ナツキは一瞬戸惑った。セドリックはとても親切で、紳士的で、素敵な友人だけど、どうしても、彼の父親エイモスとの会話を思い出してしまう。
あのテンションで四六時中・・・いや、それはちょっと・・・
断りにくい雰囲気だが、優しいセドリックに対して、エイモスのことを悪く言うのも避けたい。
「えーっと・・・うーんと・・・ちょっと考えさせてくれる?」
ナツキが言うと、セドリックは残念そうな顔を一瞬して、すぐに「うん」と頷き、慌てて続けた。
「ごめん、急に言っちゃって。変なこと言ってたら気にしないで。試合、楽しもうね。」
「うん、ありがとう。」
ナツキが笑うと、セドリックも少し安心したように笑みを返した。
その様子を双子は少し離れた場所から見て、ナツキとセドリックのやりとりをじっと観察していた。
「みんな、こっちだ!」
ウィーズリーおじさんがそう声をかけた。
「じゃあね、セドリック。」
「あ、ああ。またね、ナツキ。」
一行は荒地を歩き始めた。
「ナツキってば、どうしてディゴリーの誘いを受けなかったの?」
ハーマイオニーが言った。
「聞いてたんだ・・・・。いや、セドリックはいいんだけど。というか、ハーマイオニー、本気で聞いてるの?エイモスさん、セドリックを持ち上げるためにハリーを落としたんだよ。私、ああいうのちょっと苦手。一緒にいたら、癇癪起こす自信があるよ。」
ナツキの言葉にハリーは笑った。
「ウィーズリーおじさんには誰も敵わないよ。」
「そうだね。」
ナツキも笑って頷いた。
そんなナツキの様子を後ろから眺めながら、フレッドがジョージの耳元でいたずらっぽく囁く。
「お前さんはどうやら、お父様に感謝せねばならんようだな。」
ジョージは答えなかったが、口元がわずかに緩んでいた。
しばらく歩くと、小さな石造りの小屋が見えてきた。その脇に門がある。その向こうには何百というテントが並んでいた。その小屋の戸口にはマグルがいた。
「おはよう!ロバーツさんですか?」
ウィーズリーおじさんが声をかけた。ロバーツさんはウィーズリー家のテントの場所を教えてくれた。ハリーが手伝いながら、おじさんはマグルのお金を支払った。ロバーツさんは初め外国人だと思っていたようだが、段々と違和感を覚え始めたらしい。
「お互いに知り合いみてえだし。大掛かりなパーティーかなんか・・・」
「オブリビエイト!」
「・・・キャンプ場の地図だ。」
魔法省の人に忘却呪文をかけられ、ロバーツさんはまた穏やかにそう言った。魔法省の役人も大変なんだなとナツキは思った。
一向がたどり着いた場所はキャンプ場の一番奥だった。立て札に「うーいづり」と書いてある。
「最高のスポットだ!競技場はちょうどこの森の反対側だから、こんなに近いところはないよ。」
とおじさんは嬉しそうに言った。
広々とした場所にテントを張る作業が始まった。ハリーとハーマイオニーが中心になってロープを張ったり、杭を打ったりしている。ナツキは黙ってそれを手伝いながら、内心では(お願いだから魔法を使って)と何度も念じていた。
だが、おじさんは一向に杖を抜く様子はなく、むしろ汗だくになって杭を打っていた。
しかし、手作業で立てたテントにはみんな大満足だった。どう見てもマグル用だ。
おじさんに促されて、ナツキ達はテントに入った。検知不可能拡大呪文が架けられており、中は見た目より広い。ナツキにとっては不思議ではないが、ハリーとハーマイオニーは目を丸くしていた。
「水がいるな。」
おじさんがつぶやいた。ロンが、地図を広げながら答えた。
「マグルがくれた地図に、水道の印があるよ。キャンプ場の向こう端だ。」
「よし、それじゃ、ロン、お前はハリー達と水を汲みに行ってくれないか?」
そう言っておじさんはヤカンとソース鍋を3つよこした。
「ナツキの分が足りないな・・・。よし、じゃあナツキとフレッド、ジョージは薪集めた。私も行くよ。ジニーは留守番をしていてくれ。」
釜戸があるから呪文を使えば一発なのに、ウィーズリーおじさんはどうしてもマグルの方法でやってみたいらしい。その気持ちはわからないでもないけど、でもそれってすごく大変だ、とナツキは思った。
木々の葉が風に揺れ、木漏れ日がところどころ地面を照らしている。ナツキは手に小枝の束を抱えながら、落ちている薪になりそうな太さの枝を探していた。
「これくらいで足りますか?」
そう言ってナツキはウィーズリーおじさんに見せた。
「おお、ナツキ。たくさん拾ったね。不安だから、もう少しだけ拾っておこうか。」
「はい。」
ナツキはなんだかんだで薪集めを楽しんでいた。森の中は静かで、空気が澄んでいて、何よりみんなと一緒に何かをするのが楽しかった。
その時、フレッドが少し離れた場所で何かを見つけたように声を上げた。
「おーい、パパ!ちょっとこっちに来て!このキノコ、マグルがよく食ってるやつじゃないか?」
ウィーズリーおじさんは興味津々で向かっていった。
「ああ、それは面白そうだな・・・よし、少し見てみよう。」
フレッドはおじさんと並んで森の奥へ歩き出したが、振り返りざま、ジョージに片目をつぶって見せた。
「あいつ、わざとだな。」
「え?」
「いや、なんでもない。フレッド達は放っておいて、もう少しだけゆっくりしようぜ。」
ナツキは再びしゃがんで枝を拾おうとして、ふと足元を気にして立ち止まった。
「うーん、スカートは失敗だったな。動きにくいし、泥もつくし。」
ナツキが枝を払いながら苦笑いを浮かべると、ジョージが気まずそうに言った。
「でも、似合ってるよ。その服。ごめん、最初から思ってたんだけど、タイミング逃してた。」
「え?・・あ・・そう。」
ナツキはなんだか猛烈に恥ずかしくなった気がした。ウィーズリーおじさんやセドリックに褒められた時は、ちょっと照れくさいだけだったのに、なぜだろう。
「あ、ありがとう。」
声が上ずったのを誤魔化すように、ナツキは黙々と枝を拾い続けた。ナツキは、自分の中で何かがふわっと膨らんだ気がして、それが何かをはっきりと掴めないまま、そっと口元をゆるめた。
風が木々をゆらし、どこからか鳥の鳴き声が聞こえてくる。それでも、ナツキの耳には、自分の心臓の音の方が大きく響いていた。
その後こんもりと枝を拾い集めた四人は、テントに戻り釜戸の前に座った。ウィーズリーおじさんは「まっち」という火をつけるマグルの道具と一生懸命格闘していた。ハーマイオニーが来て、マッチがついても、料理ができる準備が整うにはもう少しかかった。
ウィーズリーおじさんはテントの前を通る魔法省の役人達をひっきりなしに解説していた。そしてしばらくして、ようやく卵とソーセージを料理し始めることができた。
時刻は昼で、パーシー達が姿現しでやってきた。昼食を食べているとルード・バグマンもきた。目立つクィディッチ用のローブを着ている。陽気な人だった。
「みんな、こちらはルード・バグマンさんだ。誰だか知ってるね。この人のおかげでいい席が手に入ったんだ。」
「試合にかける気はないかね、アーサー?」
バグマンは金貨をチャラつかせ、熱心に誘った。おじさんは1ガリオンしかかけなかったが、ジョージとフレッドが大穴で大金をかけてしまったのだ。おじさんは明らかに微妙な顔をした。
「いいの?そんなにかけて・・・」
ナツキはジョージの顔をのぞきこむようにして小声で言った。
「どうしても金がいるんだ。」
ジョージがこそっとナツキに耳打ちした。ナツキはなんとも言えない気持ちだ。
「お茶がまだだったな。バーティ・クラウチをずっと探しているんだが。ブルガリア側の責任者がゴネていて俺には一言もわからん。」
バーティ・クラウチの名前を聞いてパーシーの目が輝いた。なるほど、これは重症だ、とナツキは思った。
「バーサ・ジョーキンズのことは何か消息があったかね、ルード?」
「なしのつぶてだ。だがそのうち現れるさ。旅の途中で迷ってるんだろう。」
「そろそろ捜索人を出したほうがいいんじゃないのか?」
バグマンは捜索に本腰を入れる気はなさそうだ。そしてそこに、バーティ・クラウチも現れた。ものすごくぴっちりしている。
「クラウチさん!よろしければお茶はいかがですか?」
クラウチ狂のパーシーがそういうと、クラウチ氏は驚いた様子でパーシーの方を見た。
「いただこう。ありがとう、ウェーザビー君。」
ナツキ、フレッド、ジョージは飲み掛けのお茶にむせて、カップの中にゲホゲホやってしまった。
「げ、ゲホッ・・・ウェー、うえざ、ふふっ!」
ナツキは口元を押さえたが、笑いが止まらなかった。フレッドとジョージも肩を震わせて笑っている。
その後バグマンがなんだか思わせぶりなことを言い、二人はさっていった。
「パパ、ホグワーツで何があるの?」
フレッドがきいた。
「すぐにわかるよ。」
「魔法省が解禁する時までは機密情報だ。クラウチさんが明かさなかったのは正しいことなんだ。」
パーシーが得意げに補足した。
「おい、黙れよ、ウェーザビー。」
「ぶふっ・・・」
ナツキはまたお茶を吹きこぼしたのだった。
夕方が近づくにつれ、キャンプ場の空気はますます高揚し始めた。行商人たちが次々と店を広げ、カラフルな旗やロゼット、チームグッズがあちこちに並び始めた。
「夏休み中ずっとこの日のために小遣い貯めてたんだ。」
ロンが言いながら目を輝かせている。ナツキも、ハリーやハーマイオニーと並んで土産物を眺めていた。
「わあ、これみてよ。」
ハリーが指さした先には、レンズの周りにダイヤルがついた双眼鏡が山積みにされている。
「万眼鏡だよ。アクション再生ができる。スローモーションで。必要ならプレイを・・・・」
近くにいたセールスマンが得意げに説明を続ける。一つ10ガリオン。ロンは喉が鳴りそうな顔で見つめていたが、どうやら金銭的には厳しいらしい。
「「2個ください。」」
ハリーとナツキの声が重なった。同じことを思ったらしい。だが、ちょうどここには四人いることだし、と思って、ナツキとハリーは二つずつ万眼鏡を購入した。
「クリスマスプレゼントはなしだよ。しかも、これから10年くらいはね。」
ロンに気を遣わせないように、ハリーがそういった。ナツキは自分が購入したものをハーマイオニーに手渡した。
「あ、すみません、やっぱりもう2つ買います。」
ナツキはそう言って、さらに買い足した。万眼鏡を3つも抱えているのを見て、ハリーたちは驚いた表情を浮かべた。
「そんなにどうするの?」
とロンが訊ねるが、ナツキはにっこり笑ってごまかした。
「じゃあ、私はみんなのプログラムを買うわ。ほら、あれ、」
ハーマイオニーが嬉しそうに言って、隣の店へと駆けていった。
テントへ戻る頃には、ナツキの財布はぺたんこになっていた。ビル、チャーリー、ジニーの三人はすでにロゼットを胸につけていたが、フレッドとジョージは全財産をバグマンに渡したので何も持っていない。
「ジョージ、フレッド、」
クィディッチの試合の話をしていた二人の側にナツキは駆け寄った。
「二人にプレゼント。いつも楽しませてくれるお礼にね。」
ナツキはそう言って、二人に万眼鏡を手渡した。
「え!?いいのか?これ10ガリオンもするやつだろ!?」
フレッドは目を丸くしながらも、嬉しそうに受け取った。一方でジョージは、一瞬、表情が固まった。
気を遣わせてしまったかな、と思ったナツキは、軽く肩をすくめて明るく言った。
「お返しは出世払いでいいよ。」
その言葉に、ジョージはようやく口元をゆるめて、いたずらっぽくニヤリと笑った。
「な〜るほど、ナツキは俺が思ってるより、欲深いんだな。」
「そうかもね。」
ナツキは笑って言い、軽やかな足取りでハリーたちの元へ戻っていった。
残された双子はしばらくその背中を見送ってから、顔を見合わせた。
「なんとしても成功しないとな。」
フレッドが真顔で言った。
「そうだな。」
「じゃないとお前、ナツキに食わせてもらう情けない旦那になるだろうぜ。」
その言葉を聞いてジョージは耳を赤くした。
「・・・・気が早すぎる。俺たち、恋人ですらないんだぞ。」
「それは相棒、お前次第だぜ。」
フレッドが意味深にニヤリと笑った。そのとき、向こうからナツキの笑い声が聞こえてきた。ジョージはその声に、無意識に目を細めた。
その時、森の向こうからゴーンと響く音が聞こえた。
「いよいよだ!さあ行こう!」
ウィーズリーおじさんは、興奮してそういった。
「おはよう、バージル。」
「やあ、アーサー。非番なのか? まったく運がいいなあ。ちょっと待ってくれ、君たちのキャンプ場を探すから・・・ウィーズリー・・・ウィーズリーと・・・・」
バージルが魔法の羊皮紙をぱらぱらとめくっているあいだに、セドリックがナツキにそっと声をかけた。
「ねえ、ナツキ、ウィーズリー家と観戦するんだよね?」
「うん。ウィーズリーおじさんがチケットを取ってくれてて。」
ナツキが笑って答えると、セドリックはほんの少し視線を落とした。
「そっか。えっと、あのさ、夏休みは、ずっとウィーズリーのところにいるの?」
「うん。昨日からね。ホグワーツが始まるまでお世話になるつもり。」
ナツキがうなずくと、セドリックは少しだけ頬を染めて言った。
「じゃあさ、来年は、僕の家に来ない?・・・・夏休みのどこかでさ。」
「セドリックの家に?」
ナツキは一瞬戸惑った。セドリックはとても親切で、紳士的で、素敵な友人だけど、どうしても、彼の父親エイモスとの会話を思い出してしまう。
あのテンションで四六時中・・・いや、それはちょっと・・・
断りにくい雰囲気だが、優しいセドリックに対して、エイモスのことを悪く言うのも避けたい。
「えーっと・・・うーんと・・・ちょっと考えさせてくれる?」
ナツキが言うと、セドリックは残念そうな顔を一瞬して、すぐに「うん」と頷き、慌てて続けた。
「ごめん、急に言っちゃって。変なこと言ってたら気にしないで。試合、楽しもうね。」
「うん、ありがとう。」
ナツキが笑うと、セドリックも少し安心したように笑みを返した。
その様子を双子は少し離れた場所から見て、ナツキとセドリックのやりとりをじっと観察していた。
「みんな、こっちだ!」
ウィーズリーおじさんがそう声をかけた。
「じゃあね、セドリック。」
「あ、ああ。またね、ナツキ。」
一行は荒地を歩き始めた。
「ナツキってば、どうしてディゴリーの誘いを受けなかったの?」
ハーマイオニーが言った。
「聞いてたんだ・・・・。いや、セドリックはいいんだけど。というか、ハーマイオニー、本気で聞いてるの?エイモスさん、セドリックを持ち上げるためにハリーを落としたんだよ。私、ああいうのちょっと苦手。一緒にいたら、癇癪起こす自信があるよ。」
ナツキの言葉にハリーは笑った。
「ウィーズリーおじさんには誰も敵わないよ。」
「そうだね。」
ナツキも笑って頷いた。
そんなナツキの様子を後ろから眺めながら、フレッドがジョージの耳元でいたずらっぽく囁く。
「お前さんはどうやら、お父様に感謝せねばならんようだな。」
ジョージは答えなかったが、口元がわずかに緩んでいた。
しばらく歩くと、小さな石造りの小屋が見えてきた。その脇に門がある。その向こうには何百というテントが並んでいた。その小屋の戸口にはマグルがいた。
「おはよう!ロバーツさんですか?」
ウィーズリーおじさんが声をかけた。ロバーツさんはウィーズリー家のテントの場所を教えてくれた。ハリーが手伝いながら、おじさんはマグルのお金を支払った。ロバーツさんは初め外国人だと思っていたようだが、段々と違和感を覚え始めたらしい。
「お互いに知り合いみてえだし。大掛かりなパーティーかなんか・・・」
「オブリビエイト!」
「・・・キャンプ場の地図だ。」
魔法省の人に忘却呪文をかけられ、ロバーツさんはまた穏やかにそう言った。魔法省の役人も大変なんだなとナツキは思った。
一向がたどり着いた場所はキャンプ場の一番奥だった。立て札に「うーいづり」と書いてある。
「最高のスポットだ!競技場はちょうどこの森の反対側だから、こんなに近いところはないよ。」
とおじさんは嬉しそうに言った。
広々とした場所にテントを張る作業が始まった。ハリーとハーマイオニーが中心になってロープを張ったり、杭を打ったりしている。ナツキは黙ってそれを手伝いながら、内心では(お願いだから魔法を使って)と何度も念じていた。
だが、おじさんは一向に杖を抜く様子はなく、むしろ汗だくになって杭を打っていた。
しかし、手作業で立てたテントにはみんな大満足だった。どう見てもマグル用だ。
おじさんに促されて、ナツキ達はテントに入った。検知不可能拡大呪文が架けられており、中は見た目より広い。ナツキにとっては不思議ではないが、ハリーとハーマイオニーは目を丸くしていた。
「水がいるな。」
おじさんがつぶやいた。ロンが、地図を広げながら答えた。
「マグルがくれた地図に、水道の印があるよ。キャンプ場の向こう端だ。」
「よし、それじゃ、ロン、お前はハリー達と水を汲みに行ってくれないか?」
そう言っておじさんはヤカンとソース鍋を3つよこした。
「ナツキの分が足りないな・・・。よし、じゃあナツキとフレッド、ジョージは薪集めた。私も行くよ。ジニーは留守番をしていてくれ。」
釜戸があるから呪文を使えば一発なのに、ウィーズリーおじさんはどうしてもマグルの方法でやってみたいらしい。その気持ちはわからないでもないけど、でもそれってすごく大変だ、とナツキは思った。
木々の葉が風に揺れ、木漏れ日がところどころ地面を照らしている。ナツキは手に小枝の束を抱えながら、落ちている薪になりそうな太さの枝を探していた。
「これくらいで足りますか?」
そう言ってナツキはウィーズリーおじさんに見せた。
「おお、ナツキ。たくさん拾ったね。不安だから、もう少しだけ拾っておこうか。」
「はい。」
ナツキはなんだかんだで薪集めを楽しんでいた。森の中は静かで、空気が澄んでいて、何よりみんなと一緒に何かをするのが楽しかった。
その時、フレッドが少し離れた場所で何かを見つけたように声を上げた。
「おーい、パパ!ちょっとこっちに来て!このキノコ、マグルがよく食ってるやつじゃないか?」
ウィーズリーおじさんは興味津々で向かっていった。
「ああ、それは面白そうだな・・・よし、少し見てみよう。」
フレッドはおじさんと並んで森の奥へ歩き出したが、振り返りざま、ジョージに片目をつぶって見せた。
「あいつ、わざとだな。」
「え?」
「いや、なんでもない。フレッド達は放っておいて、もう少しだけゆっくりしようぜ。」
ナツキは再びしゃがんで枝を拾おうとして、ふと足元を気にして立ち止まった。
「うーん、スカートは失敗だったな。動きにくいし、泥もつくし。」
ナツキが枝を払いながら苦笑いを浮かべると、ジョージが気まずそうに言った。
「でも、似合ってるよ。その服。ごめん、最初から思ってたんだけど、タイミング逃してた。」
「え?・・あ・・そう。」
ナツキはなんだか猛烈に恥ずかしくなった気がした。ウィーズリーおじさんやセドリックに褒められた時は、ちょっと照れくさいだけだったのに、なぜだろう。
「あ、ありがとう。」
声が上ずったのを誤魔化すように、ナツキは黙々と枝を拾い続けた。ナツキは、自分の中で何かがふわっと膨らんだ気がして、それが何かをはっきりと掴めないまま、そっと口元をゆるめた。
風が木々をゆらし、どこからか鳥の鳴き声が聞こえてくる。それでも、ナツキの耳には、自分の心臓の音の方が大きく響いていた。
その後こんもりと枝を拾い集めた四人は、テントに戻り釜戸の前に座った。ウィーズリーおじさんは「まっち」という火をつけるマグルの道具と一生懸命格闘していた。ハーマイオニーが来て、マッチがついても、料理ができる準備が整うにはもう少しかかった。
ウィーズリーおじさんはテントの前を通る魔法省の役人達をひっきりなしに解説していた。そしてしばらくして、ようやく卵とソーセージを料理し始めることができた。
時刻は昼で、パーシー達が姿現しでやってきた。昼食を食べているとルード・バグマンもきた。目立つクィディッチ用のローブを着ている。陽気な人だった。
「みんな、こちらはルード・バグマンさんだ。誰だか知ってるね。この人のおかげでいい席が手に入ったんだ。」
「試合にかける気はないかね、アーサー?」
バグマンは金貨をチャラつかせ、熱心に誘った。おじさんは1ガリオンしかかけなかったが、ジョージとフレッドが大穴で大金をかけてしまったのだ。おじさんは明らかに微妙な顔をした。
「いいの?そんなにかけて・・・」
ナツキはジョージの顔をのぞきこむようにして小声で言った。
「どうしても金がいるんだ。」
ジョージがこそっとナツキに耳打ちした。ナツキはなんとも言えない気持ちだ。
「お茶がまだだったな。バーティ・クラウチをずっと探しているんだが。ブルガリア側の責任者がゴネていて俺には一言もわからん。」
バーティ・クラウチの名前を聞いてパーシーの目が輝いた。なるほど、これは重症だ、とナツキは思った。
「バーサ・ジョーキンズのことは何か消息があったかね、ルード?」
「なしのつぶてだ。だがそのうち現れるさ。旅の途中で迷ってるんだろう。」
「そろそろ捜索人を出したほうがいいんじゃないのか?」
バグマンは捜索に本腰を入れる気はなさそうだ。そしてそこに、バーティ・クラウチも現れた。ものすごくぴっちりしている。
「クラウチさん!よろしければお茶はいかがですか?」
クラウチ狂のパーシーがそういうと、クラウチ氏は驚いた様子でパーシーの方を見た。
「いただこう。ありがとう、ウェーザビー君。」
ナツキ、フレッド、ジョージは飲み掛けのお茶にむせて、カップの中にゲホゲホやってしまった。
「げ、ゲホッ・・・ウェー、うえざ、ふふっ!」
ナツキは口元を押さえたが、笑いが止まらなかった。フレッドとジョージも肩を震わせて笑っている。
その後バグマンがなんだか思わせぶりなことを言い、二人はさっていった。
「パパ、ホグワーツで何があるの?」
フレッドがきいた。
「すぐにわかるよ。」
「魔法省が解禁する時までは機密情報だ。クラウチさんが明かさなかったのは正しいことなんだ。」
パーシーが得意げに補足した。
「おい、黙れよ、ウェーザビー。」
「ぶふっ・・・」
ナツキはまたお茶を吹きこぼしたのだった。
夕方が近づくにつれ、キャンプ場の空気はますます高揚し始めた。行商人たちが次々と店を広げ、カラフルな旗やロゼット、チームグッズがあちこちに並び始めた。
「夏休み中ずっとこの日のために小遣い貯めてたんだ。」
ロンが言いながら目を輝かせている。ナツキも、ハリーやハーマイオニーと並んで土産物を眺めていた。
「わあ、これみてよ。」
ハリーが指さした先には、レンズの周りにダイヤルがついた双眼鏡が山積みにされている。
「万眼鏡だよ。アクション再生ができる。スローモーションで。必要ならプレイを・・・・」
近くにいたセールスマンが得意げに説明を続ける。一つ10ガリオン。ロンは喉が鳴りそうな顔で見つめていたが、どうやら金銭的には厳しいらしい。
「「2個ください。」」
ハリーとナツキの声が重なった。同じことを思ったらしい。だが、ちょうどここには四人いることだし、と思って、ナツキとハリーは二つずつ万眼鏡を購入した。
「クリスマスプレゼントはなしだよ。しかも、これから10年くらいはね。」
ロンに気を遣わせないように、ハリーがそういった。ナツキは自分が購入したものをハーマイオニーに手渡した。
「あ、すみません、やっぱりもう2つ買います。」
ナツキはそう言って、さらに買い足した。万眼鏡を3つも抱えているのを見て、ハリーたちは驚いた表情を浮かべた。
「そんなにどうするの?」
とロンが訊ねるが、ナツキはにっこり笑ってごまかした。
「じゃあ、私はみんなのプログラムを買うわ。ほら、あれ、」
ハーマイオニーが嬉しそうに言って、隣の店へと駆けていった。
テントへ戻る頃には、ナツキの財布はぺたんこになっていた。ビル、チャーリー、ジニーの三人はすでにロゼットを胸につけていたが、フレッドとジョージは全財産をバグマンに渡したので何も持っていない。
「ジョージ、フレッド、」
クィディッチの試合の話をしていた二人の側にナツキは駆け寄った。
「二人にプレゼント。いつも楽しませてくれるお礼にね。」
ナツキはそう言って、二人に万眼鏡を手渡した。
「え!?いいのか?これ10ガリオンもするやつだろ!?」
フレッドは目を丸くしながらも、嬉しそうに受け取った。一方でジョージは、一瞬、表情が固まった。
気を遣わせてしまったかな、と思ったナツキは、軽く肩をすくめて明るく言った。
「お返しは出世払いでいいよ。」
その言葉に、ジョージはようやく口元をゆるめて、いたずらっぽくニヤリと笑った。
「な〜るほど、ナツキは俺が思ってるより、欲深いんだな。」
「そうかもね。」
ナツキは笑って言い、軽やかな足取りでハリーたちの元へ戻っていった。
残された双子はしばらくその背中を見送ってから、顔を見合わせた。
「なんとしても成功しないとな。」
フレッドが真顔で言った。
「そうだな。」
「じゃないとお前、ナツキに食わせてもらう情けない旦那になるだろうぜ。」
その言葉を聞いてジョージは耳を赤くした。
「・・・・気が早すぎる。俺たち、恋人ですらないんだぞ。」
「それは相棒、お前次第だぜ。」
フレッドが意味深にニヤリと笑った。そのとき、向こうからナツキの笑い声が聞こえてきた。ジョージはその声に、無意識に目を細めた。
その時、森の向こうからゴーンと響く音が聞こえた。
「いよいよだ!さあ行こう!」
ウィーズリーおじさんは、興奮してそういった。