賢者の石
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ある朝、ナツキは掲示を見て愕然とした。
『飛行訓練は木曜日に始まります。』
ついにナツキが恐れていた授業が始まってしまうのだ。ハリーとロンはスリザリンとの合同授業ということを気にしていたがナツキにとってはどうだっていいことだった。
「ナツキ、どうした?」
「顔色が悪いぜ。」
来る木曜日の朝、真っ青な顔で談話室にいるナツキにフレッドとジョージが声をかけた。
「今日から飛行訓練が始まるの。私・・・箒が・・・すごく苦手なの・・・・」
小さい頃は箒に乗ることに憧れていた。でもいざ乗ってみたら、あっちこっち飛んで、最後は高いところから落ちて、参事になりかけたことがあった。それ以来、箒を握るのも嫌になっていたのだ。
「苦手な奴はいっぱいいるけどみんな進級してるから心配いらないさ。美味いものを食べればそんな不安も吹っ飛ぶだろ!飯食いに行こうぜ。」
フレッドはそう言ってナツキを朝食に誘った。ナツキは不安な顔のまま2人について行った。おいしいはずのトーストを食べても、ナツキの不安はなくならなかった。
「ナツキ、」
フレッドが向かいの席で、後から着席したリー・ジョーダンと話に花を咲かせていると、隣に座っていたジョージがこそっと声をかけてきた。
「高いところが苦手?」
「・・・・・昔、箒に乗って落ちたことがあるの。それ以来、怖くて・・・」
トラウマになったのだとジョージは察した。つまり、フレッドがいうような進級の心配をナツキがしているわけではない。ナツキは箒に乗るのが、とにかく怖いのだ。
「じゃあフレッドの励ましは的外れだったんだな。ナツキ、マダム・フーチは最初にグラウンドに箒を並べて待っているはずだ。誰よりも早く行って、穂先の枝が2本だけ変な方向に飛び出している箒を探すんだ。」
「2本、飛び出てる箒・・・?」
「そうさ。その箒がきっと一番怖くない。」
「・・・・わかった。ありがとう。」
ナツキの不安は消えないが、ジョージ(だと気づいたのは彼がフレッドの話をしたから)の言葉を信じてみることにした。
その日の午後、ナツキは自覚ある方向音痴のため、かなり早く校庭へ向かった。途中、運のいいことに、ゴーストのニコラスと出会い、校庭まで一緒についてきてもらった。校庭では、マダム・フーチが箒を出そうとしていたところだった。
「先生!早く着いたので手伝います!あ、私、グリフィンドールのナツキ・ゴドリクソンです。」
「あら、ありがとう。じゃあ、お願いしましょう。」
マダム・フーチの手伝いをしながらナツキは穂先を一生懸命観察した。5本目の箒を整列させようと手に取った時、その穂先から2本枝が飛び出ていることに気づいた。ジョージが言っていたのはこれだ。
その箒を並べた場所を忘れないようにして、ナツキは手伝いを続けた。
他の生徒が来る前に2人は箒を並べ終え、ナツキは例の箒のそばに立った。するとすぐにスリザリンの生徒たちが現れた。
「おや、ゴドリクソン。ひとりかい?」
ニヤニヤしながらドラコ・マルフォイが声をかけてきた。ハリーとロンは彼を毛嫌いしているが、ナツキはまだそこまでではなかった。もちろん好感を持っているわけではない。
「うん。緊張しちゃって、早く来すぎちゃった。」
「それはそれは。さぞ素晴らしい飛行を見せてくれるんだろう。君は、クィディッチのメンバーを狙っているのか?」
嫌味ったらしくマルフォイはクラップとゴイルと顔を見合わせながらナツキにそう突っかかった。だがナツキはそこで張り合うような気質ではなかった。
「ううん。逆。私、箒に乗るのがすごく苦手なの。クィディッチなんて到底無理。」
「・・・・ふん、そうかい。」
ヘラヘラ返すナツキにマルフォイはつまらないと思ったのか関心を無くしたようで、クラップとゴイルを連れて離れていった。
ナツキはマルフォイの言葉はハリーとロンのように反抗するのではなく、適当に受け流すのが良いと学んだ。もっとも、それを頭でわかっていても、ハリーたちがそうするとは思えなかったが。
その後グリフィンドール生も来て、飛行訓練が始まった。ナツキが恐る恐る「上がれ」と何度かいうと、ジョージおすすめのその箒はふよふよと力なく浮き、ナツキの手に収まった。
「あがっちゃったよ・・・・」
周りを見ても箒が手に収まっているのは数人しかいない。ハリーはあっという間にできていたようだ。
飛行訓練は次の段階へ進み、ナツキは箒にまたがった。以前箒を手にした時は腕が震えたが、今日は震えなかった。箒がなんだかのんびりしている気がしたからだ。
しかし箒にまたがって宙に浮く機会は訪れなかった。ネビルが事故ってしまったのだ。
「あいつの顔を見たか、あの大間抜けの。」
先生がネビルを医務室へ送るため不在にした瞬間、マルフォイが彼の落とした思い出し玉を手にしながら侮辱した。それを皮切りにグリフィンドール対スリザリンの構図が出来上がる。
あろうことかハリーが挑発に乗って、箒に乗ってしまった。先生に乗らずに待っていろと言われたにも拘らずだ。
「ハリー・ポッター!!」
マルフォイから思い出し玉を華麗に取り返したハリーであったが、そこに響いたのはマクゴナガル先生の声だった。先生は真剣な顔でハリーを連れて行ってしまった。
「ど、どうしよう!退学になんてならないよね!?」
「ぼ、僕にもわからないよ!
ナツキとロンは青ざめた。そして夕食時になってようやく、その心配がないことをハリーから聞かされた。ハリーが特例でクィディッチの選手に選ばれるらしい。
「来週から練習が始まるそうだ。」
広間に双子がやってきてそう言った。ナツキの隣に、片割れが座った。
「飛行訓練はうまく行った?」
ナツキは彼がジョージの方だとわかった。
「うまくいく前に色々あって、結局今日は飛んでいないの。でも、『上がれ』って言ったら、ゆっくり上がったよ。あの箒なら、怖くないかもしれない。」
ナツキがそう言うと、ジョージはにっこり笑った。
「よかった。あれ、ノロすぎて不評の箒なんだけど、ナツキにいいかもって思ったんだ。ノロいけど、結構言うことは聞いてくれるよ。」
「ありがとう!本当に!」
双子はその後ハリーと少し言葉を交わして、その場からいなくなった。その代わりというべきか、マルフォイが近づいてきた。いつものように、ハリーとロンとの対立が始まった。
「僕一人でいつだって相手になろうじゃないか。ご所望なら今夜だっていい。魔法使いの決闘だ。杖だけだ。相手には触れない。どうしたんだい? 魔法使いの決闘なんて聞いたこともないんじゃないの?」
マルフォイの突然の申し出にナツキはしまった、と思った。間違いなく彼らは挑発に乗るだろう。案の定、ロンが介添人を申し出てしまった。
マルフォイが去り、ロンがハリーに魔法使いの決闘について説明していると、ハーマイオニーがそんなことはしてはいけないと注意をして去って行った。
「ねえハリー、それってマルフォイが規則を破るってことでしょ?誰か先生にそのことを密告すればいいんじゃないかな。」
こちらがわざわざ規則を破って、決闘をしなくてもそれでスリザリンは痛い目を見る。ナツキは妙案だと思ったが、ロンは唖然とした顔で告げた。
「ナツキって案外ワルだったんだな。そんなことを考えつくなんて・・・。」
「確かにいい案だけど、僕、そんな逃げるような恥ずかしい真似はしたくない。」
ハリーに却下されてしまった。そういうものなのか、とナツキは思った。どうせ実際に死ぬような決闘ではないだろうし、ハリーたちがしたいようにすればいいと思っていた。
「ナツキも行く?無理にとは言わないけど。」
ハリーの誘いにナツキは「じゃあ行こうかな」と返した。もしかしたらマルフォイが卑怯なことをするかもしれないし、中立の審判として行こうと思った。アバーフォースの教育の賜物だろう。ナツキは規則を破ることにあまり抵抗がなかったのだった。
そして夜23時半、ナツキは女子部屋の子を起こさないようにそっと談話室へ向かった。ちょうど同じタイミングでハリーとロンも男子部屋から出てきたところだった。
顔を見合わせて談話室を出ようとした時だった。
「ハリー、ナツキも。まさかこんなことをするとは思わなかったわ。」
しかめ面をしたハーマイオニーが現れたのだ。ロンが「またか」とカンカンに怒っている。
「行くぞ。」
ハリーがハーマイオニーを無視してナツキとロンにそう告げた。
「ごめんね、ハーマイオニー。心配だから私もついていくの。また明日。」
「ナツキ!・・・いいわ。ちゃんと忠告しましたからね。」
肖像画を出たところまでハーマイオニーはついて来て、ハーマイオニーはガミガミ怒っていた。そこで彼女にとって最悪の事態が発生する。
太ったレディが肖像画からいなくなっていたのだ。これではハーマイオニーは寮に戻れない。結果、ハーマイオニーは3人についてくることにしたようだ。
さらに、道中、ネビル・ロングボトムがいた。合言葉を忘れて締め出されたらしい。仕方なくネビルも連れて、まあまあの大所帯になった。
5人でそーっと決闘場所であるトロフィー室へ向かう。しかし、そこにマルフォイの姿はなかった。それどころか近くに管理人のフィルチがいる。
ナツキは自分が思いついた案を、そっくりそのままマルフォイが実行したことに気づいた。彼はハリーたちに規則を破らせたかったのだ。
「戻ろっか。」
ナツキが呆れながらそう言うと、みんなそれに同意した。しかしそう上手くはいかなかった。ポルターガイストのピーブズに見つかったのだ。
「生徒がベッドから逃げ出した!!!」
大声で叫ばれ、ナツキたちはがむしゃらに駆け出した。逃げ出した先に、鍵のかかった扉があったが、ハーマイオニーの呪文で一行はなんとかそこに隠れることに成功した。
ナツキはハリーたちと共にドアに耳を当て、外の様子を探る。このままいけばフィルチは撒けそうだ。
「?」
ナツキはそこで異変に気づいた。ハリーが振り向いて部屋の中を見た瞬間、固まったのだ。ナツキもつられて振り返ると、そこには目があった。6つもだ。頭が3つもある巨大な犬の怪獣がそこにいた。
「っ!!?」
ナツキとハリーの意思は一致した。たとえフィルチに捕まろうが死ぬよりはマシに決まっている。一目散に駆け出した。
「まあ一体どこに行っていたの?」
ナツキが気づいたときには、グリフィンドール寮の目の前に来ていた。驚いた太ったレディに声をかけられて、もう大丈夫だと気がついた。
肖像画をくぐって談話室へ入っても、まだ心臓の鼓動は鳴り止まない。あの犬は一体なんだったんだろう。なんであんなのが学校にいるんだろう。
「あの犬、仕掛け扉の上に立ってたのよ。何かを守ってるに違いないわ。」
「よくそんなの見る余裕あったね・・・・・」
ハーマイオニーの胆力にナツキはちょっと引いてしまった。
「あなたたち、さぞかしご満足でしょうよ。もしかしたらみんな殺されてたかもしれないのに。もっと悪いことに、退学になったかもしれないのよ。では、皆さん、お差し支えなければ、休ませていただくわ。」
ハーマイオニーはハリーたちだけではなく、ナツキにも怒りを向けながらそう言って部屋に戻っていった。友達になれたと思っていたが、どうやら嫌われてしまったらしい。
「おさしつかえなんかあるわけないよな。あれじゃ、まるで僕たちがあいつを引っ張り込んだみたいに聞こえるじゃないか、ねえ?」
「今、ハーマイオニー、退学より死ぬ方がマシって言わなかった?」
ロンとナツキがハーマイオニーの態度に驚愕しているそのとき、ハリーの頭の中にはある考えが浮かんでいたのだった。
『飛行訓練は木曜日に始まります。』
ついにナツキが恐れていた授業が始まってしまうのだ。ハリーとロンはスリザリンとの合同授業ということを気にしていたがナツキにとってはどうだっていいことだった。
「ナツキ、どうした?」
「顔色が悪いぜ。」
来る木曜日の朝、真っ青な顔で談話室にいるナツキにフレッドとジョージが声をかけた。
「今日から飛行訓練が始まるの。私・・・箒が・・・すごく苦手なの・・・・」
小さい頃は箒に乗ることに憧れていた。でもいざ乗ってみたら、あっちこっち飛んで、最後は高いところから落ちて、参事になりかけたことがあった。それ以来、箒を握るのも嫌になっていたのだ。
「苦手な奴はいっぱいいるけどみんな進級してるから心配いらないさ。美味いものを食べればそんな不安も吹っ飛ぶだろ!飯食いに行こうぜ。」
フレッドはそう言ってナツキを朝食に誘った。ナツキは不安な顔のまま2人について行った。おいしいはずのトーストを食べても、ナツキの不安はなくならなかった。
「ナツキ、」
フレッドが向かいの席で、後から着席したリー・ジョーダンと話に花を咲かせていると、隣に座っていたジョージがこそっと声をかけてきた。
「高いところが苦手?」
「・・・・・昔、箒に乗って落ちたことがあるの。それ以来、怖くて・・・」
トラウマになったのだとジョージは察した。つまり、フレッドがいうような進級の心配をナツキがしているわけではない。ナツキは箒に乗るのが、とにかく怖いのだ。
「じゃあフレッドの励ましは的外れだったんだな。ナツキ、マダム・フーチは最初にグラウンドに箒を並べて待っているはずだ。誰よりも早く行って、穂先の枝が2本だけ変な方向に飛び出している箒を探すんだ。」
「2本、飛び出てる箒・・・?」
「そうさ。その箒がきっと一番怖くない。」
「・・・・わかった。ありがとう。」
ナツキの不安は消えないが、ジョージ(だと気づいたのは彼がフレッドの話をしたから)の言葉を信じてみることにした。
その日の午後、ナツキは自覚ある方向音痴のため、かなり早く校庭へ向かった。途中、運のいいことに、ゴーストのニコラスと出会い、校庭まで一緒についてきてもらった。校庭では、マダム・フーチが箒を出そうとしていたところだった。
「先生!早く着いたので手伝います!あ、私、グリフィンドールのナツキ・ゴドリクソンです。」
「あら、ありがとう。じゃあ、お願いしましょう。」
マダム・フーチの手伝いをしながらナツキは穂先を一生懸命観察した。5本目の箒を整列させようと手に取った時、その穂先から2本枝が飛び出ていることに気づいた。ジョージが言っていたのはこれだ。
その箒を並べた場所を忘れないようにして、ナツキは手伝いを続けた。
他の生徒が来る前に2人は箒を並べ終え、ナツキは例の箒のそばに立った。するとすぐにスリザリンの生徒たちが現れた。
「おや、ゴドリクソン。ひとりかい?」
ニヤニヤしながらドラコ・マルフォイが声をかけてきた。ハリーとロンは彼を毛嫌いしているが、ナツキはまだそこまでではなかった。もちろん好感を持っているわけではない。
「うん。緊張しちゃって、早く来すぎちゃった。」
「それはそれは。さぞ素晴らしい飛行を見せてくれるんだろう。君は、クィディッチのメンバーを狙っているのか?」
嫌味ったらしくマルフォイはクラップとゴイルと顔を見合わせながらナツキにそう突っかかった。だがナツキはそこで張り合うような気質ではなかった。
「ううん。逆。私、箒に乗るのがすごく苦手なの。クィディッチなんて到底無理。」
「・・・・ふん、そうかい。」
ヘラヘラ返すナツキにマルフォイはつまらないと思ったのか関心を無くしたようで、クラップとゴイルを連れて離れていった。
ナツキはマルフォイの言葉はハリーとロンのように反抗するのではなく、適当に受け流すのが良いと学んだ。もっとも、それを頭でわかっていても、ハリーたちがそうするとは思えなかったが。
その後グリフィンドール生も来て、飛行訓練が始まった。ナツキが恐る恐る「上がれ」と何度かいうと、ジョージおすすめのその箒はふよふよと力なく浮き、ナツキの手に収まった。
「あがっちゃったよ・・・・」
周りを見ても箒が手に収まっているのは数人しかいない。ハリーはあっという間にできていたようだ。
飛行訓練は次の段階へ進み、ナツキは箒にまたがった。以前箒を手にした時は腕が震えたが、今日は震えなかった。箒がなんだかのんびりしている気がしたからだ。
しかし箒にまたがって宙に浮く機会は訪れなかった。ネビルが事故ってしまったのだ。
「あいつの顔を見たか、あの大間抜けの。」
先生がネビルを医務室へ送るため不在にした瞬間、マルフォイが彼の落とした思い出し玉を手にしながら侮辱した。それを皮切りにグリフィンドール対スリザリンの構図が出来上がる。
あろうことかハリーが挑発に乗って、箒に乗ってしまった。先生に乗らずに待っていろと言われたにも拘らずだ。
「ハリー・ポッター!!」
マルフォイから思い出し玉を華麗に取り返したハリーであったが、そこに響いたのはマクゴナガル先生の声だった。先生は真剣な顔でハリーを連れて行ってしまった。
「ど、どうしよう!退学になんてならないよね!?」
「ぼ、僕にもわからないよ!
ナツキとロンは青ざめた。そして夕食時になってようやく、その心配がないことをハリーから聞かされた。ハリーが特例でクィディッチの選手に選ばれるらしい。
「来週から練習が始まるそうだ。」
広間に双子がやってきてそう言った。ナツキの隣に、片割れが座った。
「飛行訓練はうまく行った?」
ナツキは彼がジョージの方だとわかった。
「うまくいく前に色々あって、結局今日は飛んでいないの。でも、『上がれ』って言ったら、ゆっくり上がったよ。あの箒なら、怖くないかもしれない。」
ナツキがそう言うと、ジョージはにっこり笑った。
「よかった。あれ、ノロすぎて不評の箒なんだけど、ナツキにいいかもって思ったんだ。ノロいけど、結構言うことは聞いてくれるよ。」
「ありがとう!本当に!」
双子はその後ハリーと少し言葉を交わして、その場からいなくなった。その代わりというべきか、マルフォイが近づいてきた。いつものように、ハリーとロンとの対立が始まった。
「僕一人でいつだって相手になろうじゃないか。ご所望なら今夜だっていい。魔法使いの決闘だ。杖だけだ。相手には触れない。どうしたんだい? 魔法使いの決闘なんて聞いたこともないんじゃないの?」
マルフォイの突然の申し出にナツキはしまった、と思った。間違いなく彼らは挑発に乗るだろう。案の定、ロンが介添人を申し出てしまった。
マルフォイが去り、ロンがハリーに魔法使いの決闘について説明していると、ハーマイオニーがそんなことはしてはいけないと注意をして去って行った。
「ねえハリー、それってマルフォイが規則を破るってことでしょ?誰か先生にそのことを密告すればいいんじゃないかな。」
こちらがわざわざ規則を破って、決闘をしなくてもそれでスリザリンは痛い目を見る。ナツキは妙案だと思ったが、ロンは唖然とした顔で告げた。
「ナツキって案外ワルだったんだな。そんなことを考えつくなんて・・・。」
「確かにいい案だけど、僕、そんな逃げるような恥ずかしい真似はしたくない。」
ハリーに却下されてしまった。そういうものなのか、とナツキは思った。どうせ実際に死ぬような決闘ではないだろうし、ハリーたちがしたいようにすればいいと思っていた。
「ナツキも行く?無理にとは言わないけど。」
ハリーの誘いにナツキは「じゃあ行こうかな」と返した。もしかしたらマルフォイが卑怯なことをするかもしれないし、中立の審判として行こうと思った。アバーフォースの教育の賜物だろう。ナツキは規則を破ることにあまり抵抗がなかったのだった。
そして夜23時半、ナツキは女子部屋の子を起こさないようにそっと談話室へ向かった。ちょうど同じタイミングでハリーとロンも男子部屋から出てきたところだった。
顔を見合わせて談話室を出ようとした時だった。
「ハリー、ナツキも。まさかこんなことをするとは思わなかったわ。」
しかめ面をしたハーマイオニーが現れたのだ。ロンが「またか」とカンカンに怒っている。
「行くぞ。」
ハリーがハーマイオニーを無視してナツキとロンにそう告げた。
「ごめんね、ハーマイオニー。心配だから私もついていくの。また明日。」
「ナツキ!・・・いいわ。ちゃんと忠告しましたからね。」
肖像画を出たところまでハーマイオニーはついて来て、ハーマイオニーはガミガミ怒っていた。そこで彼女にとって最悪の事態が発生する。
太ったレディが肖像画からいなくなっていたのだ。これではハーマイオニーは寮に戻れない。結果、ハーマイオニーは3人についてくることにしたようだ。
さらに、道中、ネビル・ロングボトムがいた。合言葉を忘れて締め出されたらしい。仕方なくネビルも連れて、まあまあの大所帯になった。
5人でそーっと決闘場所であるトロフィー室へ向かう。しかし、そこにマルフォイの姿はなかった。それどころか近くに管理人のフィルチがいる。
ナツキは自分が思いついた案を、そっくりそのままマルフォイが実行したことに気づいた。彼はハリーたちに規則を破らせたかったのだ。
「戻ろっか。」
ナツキが呆れながらそう言うと、みんなそれに同意した。しかしそう上手くはいかなかった。ポルターガイストのピーブズに見つかったのだ。
「生徒がベッドから逃げ出した!!!」
大声で叫ばれ、ナツキたちはがむしゃらに駆け出した。逃げ出した先に、鍵のかかった扉があったが、ハーマイオニーの呪文で一行はなんとかそこに隠れることに成功した。
ナツキはハリーたちと共にドアに耳を当て、外の様子を探る。このままいけばフィルチは撒けそうだ。
「?」
ナツキはそこで異変に気づいた。ハリーが振り向いて部屋の中を見た瞬間、固まったのだ。ナツキもつられて振り返ると、そこには目があった。6つもだ。頭が3つもある巨大な犬の怪獣がそこにいた。
「っ!!?」
ナツキとハリーの意思は一致した。たとえフィルチに捕まろうが死ぬよりはマシに決まっている。一目散に駆け出した。
「まあ一体どこに行っていたの?」
ナツキが気づいたときには、グリフィンドール寮の目の前に来ていた。驚いた太ったレディに声をかけられて、もう大丈夫だと気がついた。
肖像画をくぐって談話室へ入っても、まだ心臓の鼓動は鳴り止まない。あの犬は一体なんだったんだろう。なんであんなのが学校にいるんだろう。
「あの犬、仕掛け扉の上に立ってたのよ。何かを守ってるに違いないわ。」
「よくそんなの見る余裕あったね・・・・・」
ハーマイオニーの胆力にナツキはちょっと引いてしまった。
「あなたたち、さぞかしご満足でしょうよ。もしかしたらみんな殺されてたかもしれないのに。もっと悪いことに、退学になったかもしれないのよ。では、皆さん、お差し支えなければ、休ませていただくわ。」
ハーマイオニーはハリーたちだけではなく、ナツキにも怒りを向けながらそう言って部屋に戻っていった。友達になれたと思っていたが、どうやら嫌われてしまったらしい。
「おさしつかえなんかあるわけないよな。あれじゃ、まるで僕たちがあいつを引っ張り込んだみたいに聞こえるじゃないか、ねえ?」
「今、ハーマイオニー、退学より死ぬ方がマシって言わなかった?」
ロンとナツキがハーマイオニーの態度に驚愕しているそのとき、ハリーの頭の中にはある考えが浮かんでいたのだった。