アズカバンの囚人
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その夜、グリフィンドール塔では誰も眠れなかった。
「大丈夫さ、ナツキ。」
杖を握りしめて座るナツキの隣にジョージが腰を下ろした。
「・・・・なんでブラックはロンを狙ったんだろう。ハリーでも、私でもなくて・・・・」
「間違ったんだろ。何にせよ、今のところ犠牲者なしだ。すぐにダンブルドアが見つけるさ。」
ジョージがナツキの頭にポンと手を置いた。しかしマクゴナガル先生が明け方に戻ってきて、ブラックがまたもや逃げ遂せたと告げた。次の日、どこもかしこも警戒が厳しくなっているのがわかった。カドガン卿はクビになり、「太った婦人」が帰ってきた。「婦人」の警備に無愛想なトロールが数人雇われた。トロールは組になって廊下を往ったり来たりしてあたりを威嚇し、ブーブー唸りながら、互いの棍棒の太さを競っていた。
ロンはにわかに英雄になった。ハリーではなくロンのほうに注意が集まるのは、ロンにとって初めての経験だ。ロンがそれをかなり楽しんでいるのは明らかだった。
「だけど、どうしてかなぁ?」
怖がりながらもロンの話に聞きほれていた二年の女子学生がいなくなってから、ロンはナツキとハリーに向かって言った。
「どうしてとんずらしたんだろう?」
「私もそれが気になってた。間違えたんなら、すぐにハリーを探せばいいだけだったのに。それに部屋ごと吹き飛ばすって手もあるのにね。」
「ロンが叫んで、みんなを起こしてしまったら、城を出るのがひと苦労だってわかってたんじゃないかな。」
ナツキは「あ、」と思いついた。
「考えてみたら、ブラックは杖がないんじゃない?杖を持ったままアズカバンに入れられるわけがないし、その杖だって厳重に管理されるか、破壊されてるはずだよね。」
「確かに。そうなると一気に殺すのは難しいね。ロンがいう通り、ナイフしか武器がないのかもしれない。」
「ネビルが杖を落とさなきゃな。」
ロンのきつい冗談をナツキもハリーも否定することはできなかった。実際、ネビルは面目まるつぶれで、今後いっさいホグズミードに行くことを禁じられ、罰を与えられた。マクゴナガル先生はネビルには合言葉を教えてはならない、とみんなに言い渡した。哀れなネビルは毎晩誰かが一緒に入れてくれるまで、談話室の外で待つはめになり、その間、警備のトロールがじろっじろっと胡散臭そうに横目でネビルを見た。
ブラック侵入の二日後、朝食時にネビルは「吼えメール」を受け取った。それをみていて手紙に気づかなかったハリーの手首を噛んだ。
「アイタッ!あ、ヘドウィグ、ありがとう。」
封筒を破る間、ヘドウィグがネビルのコーンフレークを勝手についばみはじめた。メモが入っていた。
ーーーーーーーーーーーー
ハリー、ロン、元気か? 今日六時ごろ、茶でも飲みに来んか?俺が城まで迎えにいく。 玄関ホールで待つんだぞ。二人だけで出ちゃなんねえ。 そんじゃな。
ーーーーーーーーーーーー
「二人にだけ?あ、じゃあハリーこれ、ハグリッドに渡してくれる?」
ナツキががっかりしながら、ハリーにカバンから出した羊皮紙の束を渡した。
「何これ?」
「バックビークの裁判用の資料。1692年の判例があるの。ヒッポグリフではないけれど、グリフィンの事件。・・・イングランドカーンウォールにて、魔法使いのグレイ家に飼育されていたグリフィンのレオテュスが、地元の10歳の少年に襲いかかったとの告発を受けた。役人側はグリフィンは野蛮で制御不能と主張し、即時の処刑を求めたけど、少年が無断でグリフィンの飼育区域に入り、背後から魔法杖で突いた事実が証言された。結果グリフィンは無罪判決を受けた・・・・これ、使えそうだから、他にもこの裁判に関連することを色々調べたの。」
「・・・・あ、ウン。わかったよ。」
ナツキはハリーの返事と、ロンのボケっとした態度で察した。
「まさか忘れていたの!?」
「・・・・ううん。覚えているよ。もちろんさ。」
ハリーはそう返したがナツキは信じられずにいた。
「ハグリッド、今頃心細いはずだよ。しっかり慰めてきて。」
「うん。わかってる。」
今度のハリーの返事は信頼できるものだった。
ナツキが一人談話室にいくと、掲示板の周りに人だかりができていた。ホグズミード行きの連絡だった。
「・・・・私、ホグズミードには行かないわ。」
掲示板を見ているナツキの脇でハーマイオニーがそう呟いた。
「土曜日ってことは、バックビークの裁判の次の日だよね。・・・ねぇ、ハーマイオニー、大丈夫?寝てるの?」
「大丈夫よ。」
ハーマイオニーはそうは言ったが、大丈夫には見えなかった。その上、ハグリッドの小屋から戻ってきたロンとまた言い合いをしてしまったのだ。
ナツキは流石に自分もホグズミードについていく、とは言えなかった。
土曜日が来て、ナツキはサイラスの元を訪れていた。
「シリウス・ブラックが本当にホグワーツにいるのかってわかる?」
「いや、吸魂鬼の気配だらけでさっぱりわからん。」
サイラスに色々聞いてみると、ナツキが1年の時のクィレルの気配もほとんどわからなかったらしい。彼はヴォルデモートの気配をうまく隠したようだ。
「じゃあ実際に出てこないとわからないわけなんだ。」
「そうなる。ただ、シリウスという名前は昔、何度かアルバから聞いたことはある。アルバが教師をやっていた頃だからその頃の日記に何か書いてないだろうか。」
「探してみる。」
何十冊もある日記の中から、20年くらい前の日付の日記をパラパラ眺める。しばらく探していると、「シリウス」という名前を見つけた。
「あった。」
1971年9月8日(水)
入学式からまだ一週間しか経っていないのに、グリフィンドール寮の1年生、ジェームズ・ポッターとシリウス・ブラックの名前は、既に教師陣の議題に何度も上がっている。昨日の夜も、彼らの実験が寮の寝室のカーテンを一瞬でトカゲの皮のような質感に変えてしまったらしいわ。ああ、今もミネルバの怒鳴り声が聞こえる。今度は何をやったのかしら。
なんだかすぐにその光景が浮かんでしまった。カンカンに怒るマクゴナガル先生と、悪びれない二人の少年。この時のシリウス・ブラックは、多分、普通の魔法使いだったのだろう。
ナツキはまたパラパラとページをめくり、次は別の年の日記帳を手にとった。
1973年9月12日(水)
今日の3年生の初回講義は、今年から私の「古代ルーン文字」を選択した生徒たちとの顔合わせ。私は初めて、問題児シリウス・ブラックとジェームズ・ポッターと会話をしたわ。私は彼らがとってもいい子だと思う。
1974年2月14日(木)
今日はバレンタインデー。明日の授業の準備をしていたら、思いがけないお客様が。女の子達から逃げてきた男前のシリウスだったわ。避難先を提供してあげたら、彼が珍しく弱気で「先生は自分の家名を嫌だと思ったことはありますか?」って。ブラック家は闇の魔法使いを多く輩出してしまっているから、それが気になるんでしょうね。「シリウスをシリウスたらしめるのは家名ではなくあなたの選択よ」と教師らしいことを言ってみたわ。
「ブラック家・・・・・それが、嫌だったんだ・・・。じゃあ、どうしてヴォルデモートについたんだろう。どうして、その選択をしちゃったんだろう。」
ナツキはまた別の日記を手にとってみた。
1975年10月15日(水)
シリウスとジェームズがスリザリン生にタチの悪い悪戯をしていた。どうしてグリフィンドールとスリザリンはうまくいかないのかしらね。もっと悪いことに、その悪戯にルーン文字が使われていたわ。とっても悲しい。悲しいことよ。シリウスに「それがあなたの選択なのね」ってキツく言ってしまったわ。
1975年10月16日(木)
今朝早く、シリウスが私の部屋に謝罪しにきたわ。珍しいことに、本当に反省していたみたい。本当に謝るべき相手は私ではないのだけれど、シリウスにしては及第点ね。特別に紅茶を淹れてあげたわ。渋いって文句を言われたけどね。
「・・・・シリウス・ブラックは、お祖母さんの事、信頼してたんだね。」
ナツキは複雑な気持ちになった。どうやら相当ヤンチャな生徒らしいが、ここまでみる限り、とても邪悪な魔法使いとは思えなかった。
1976年11月8日(月)
どうやら、またブラックとポッターが騒ぎを起こしたみたい。今回は「ポルターガイストと意気投合して授業を中断させた」のですって。ミネルバは怒り心頭だったけれど、私は、正直笑いを堪えるのに必死だったわ。ただ、どうにも最近気になるのは、エリザベスね。シリウスと廊下でよく一緒にいるところを何度か見かけたわ。寮も違うのに、いつの間に仲良くなったのかしら。あの子が笑うのは久しぶりに見たわ。
「お母さんだ。」
ナツキはまた別の日記から「シリウス」という名を一生懸命探した。
1978年1月26日(木)
エリックが死喰い人の強襲でいなくなってから1年半。エリザベスは私を見向きもしなくなった。またあの子がシリウスと並んでいるのを見かけたわ。あの子が寄りかかるのは母の私ではなくシリウスなのね。シリウスはいい子だけど、母としては情けないわ。
あの子は私が、トムを見捨てきれないことに、気づいているのかもしれないわね。でもこれで、憂いは無くなった。シリウスがあの子を支えてくれるなら、きっと大丈夫ね。何があっても思い残すことはない。
日記はその年のものが最後であった。きっとこの後に、アルバはヴォルデモートの目の前で自害したのだ。
「・・・・お祖母さんはシリウス・ブラックにお母さんを託そうとしたんだ。それくらい・・・信用していたってこと・・・・・?サイラス、何か覚えてる?」
「少なくとも、アルバはずっと可愛がっていた。アルバが知っている限りでは、闇の陣営に与するような少年ではなかったはずだ。」
「じゃあその後ってことか・・・・・」
「少し気にかかるのは、アルバは勘が鋭かったということだ。」
不思議そうな表情をするナツキにサイラスは続けた。
「ダンブルドア以外が気づいていなかった、トム・リドルの内面の闇に真っ先に気づいた。そのアルバが気付けなかったということがあるのだろうか・・・・」
「認めたくないけど、お祖母さんはトム・リドルと親友だったんでしょ。親友と一生徒じゃ、わけが違うと思う。」
「うーん、そうだな・・・それもそうだ・・・・」
少し納得がいかない様子でサイラスはそう言った。ナツキはそろそろホグズミードからみんなが帰ってくる頃だと気づき、談話室に戻った。
「ナツキ!ナツキ!」
談話室には1・2年生とハーマイオニーだけがいたが、ナツキの顔を見るなりハーマイオニーが泣きながら胸に飛び込んできた。
「ハーマイオニー?」
「・・・・ハグリッドが・・・・負けたわ!」
ナツキは目の前が真っ白になった。
「大丈夫さ、ナツキ。」
杖を握りしめて座るナツキの隣にジョージが腰を下ろした。
「・・・・なんでブラックはロンを狙ったんだろう。ハリーでも、私でもなくて・・・・」
「間違ったんだろ。何にせよ、今のところ犠牲者なしだ。すぐにダンブルドアが見つけるさ。」
ジョージがナツキの頭にポンと手を置いた。しかしマクゴナガル先生が明け方に戻ってきて、ブラックがまたもや逃げ遂せたと告げた。次の日、どこもかしこも警戒が厳しくなっているのがわかった。カドガン卿はクビになり、「太った婦人」が帰ってきた。「婦人」の警備に無愛想なトロールが数人雇われた。トロールは組になって廊下を往ったり来たりしてあたりを威嚇し、ブーブー唸りながら、互いの棍棒の太さを競っていた。
ロンはにわかに英雄になった。ハリーではなくロンのほうに注意が集まるのは、ロンにとって初めての経験だ。ロンがそれをかなり楽しんでいるのは明らかだった。
「だけど、どうしてかなぁ?」
怖がりながらもロンの話に聞きほれていた二年の女子学生がいなくなってから、ロンはナツキとハリーに向かって言った。
「どうしてとんずらしたんだろう?」
「私もそれが気になってた。間違えたんなら、すぐにハリーを探せばいいだけだったのに。それに部屋ごと吹き飛ばすって手もあるのにね。」
「ロンが叫んで、みんなを起こしてしまったら、城を出るのがひと苦労だってわかってたんじゃないかな。」
ナツキは「あ、」と思いついた。
「考えてみたら、ブラックは杖がないんじゃない?杖を持ったままアズカバンに入れられるわけがないし、その杖だって厳重に管理されるか、破壊されてるはずだよね。」
「確かに。そうなると一気に殺すのは難しいね。ロンがいう通り、ナイフしか武器がないのかもしれない。」
「ネビルが杖を落とさなきゃな。」
ロンのきつい冗談をナツキもハリーも否定することはできなかった。実際、ネビルは面目まるつぶれで、今後いっさいホグズミードに行くことを禁じられ、罰を与えられた。マクゴナガル先生はネビルには合言葉を教えてはならない、とみんなに言い渡した。哀れなネビルは毎晩誰かが一緒に入れてくれるまで、談話室の外で待つはめになり、その間、警備のトロールがじろっじろっと胡散臭そうに横目でネビルを見た。
ブラック侵入の二日後、朝食時にネビルは「吼えメール」を受け取った。それをみていて手紙に気づかなかったハリーの手首を噛んだ。
「アイタッ!あ、ヘドウィグ、ありがとう。」
封筒を破る間、ヘドウィグがネビルのコーンフレークを勝手についばみはじめた。メモが入っていた。
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ハリー、ロン、元気か? 今日六時ごろ、茶でも飲みに来んか?俺が城まで迎えにいく。 玄関ホールで待つんだぞ。二人だけで出ちゃなんねえ。 そんじゃな。
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「二人にだけ?あ、じゃあハリーこれ、ハグリッドに渡してくれる?」
ナツキががっかりしながら、ハリーにカバンから出した羊皮紙の束を渡した。
「何これ?」
「バックビークの裁判用の資料。1692年の判例があるの。ヒッポグリフではないけれど、グリフィンの事件。・・・イングランドカーンウォールにて、魔法使いのグレイ家に飼育されていたグリフィンのレオテュスが、地元の10歳の少年に襲いかかったとの告発を受けた。役人側はグリフィンは野蛮で制御不能と主張し、即時の処刑を求めたけど、少年が無断でグリフィンの飼育区域に入り、背後から魔法杖で突いた事実が証言された。結果グリフィンは無罪判決を受けた・・・・これ、使えそうだから、他にもこの裁判に関連することを色々調べたの。」
「・・・・あ、ウン。わかったよ。」
ナツキはハリーの返事と、ロンのボケっとした態度で察した。
「まさか忘れていたの!?」
「・・・・ううん。覚えているよ。もちろんさ。」
ハリーはそう返したがナツキは信じられずにいた。
「ハグリッド、今頃心細いはずだよ。しっかり慰めてきて。」
「うん。わかってる。」
今度のハリーの返事は信頼できるものだった。
ナツキが一人談話室にいくと、掲示板の周りに人だかりができていた。ホグズミード行きの連絡だった。
「・・・・私、ホグズミードには行かないわ。」
掲示板を見ているナツキの脇でハーマイオニーがそう呟いた。
「土曜日ってことは、バックビークの裁判の次の日だよね。・・・ねぇ、ハーマイオニー、大丈夫?寝てるの?」
「大丈夫よ。」
ハーマイオニーはそうは言ったが、大丈夫には見えなかった。その上、ハグリッドの小屋から戻ってきたロンとまた言い合いをしてしまったのだ。
ナツキは流石に自分もホグズミードについていく、とは言えなかった。
土曜日が来て、ナツキはサイラスの元を訪れていた。
「シリウス・ブラックが本当にホグワーツにいるのかってわかる?」
「いや、吸魂鬼の気配だらけでさっぱりわからん。」
サイラスに色々聞いてみると、ナツキが1年の時のクィレルの気配もほとんどわからなかったらしい。彼はヴォルデモートの気配をうまく隠したようだ。
「じゃあ実際に出てこないとわからないわけなんだ。」
「そうなる。ただ、シリウスという名前は昔、何度かアルバから聞いたことはある。アルバが教師をやっていた頃だからその頃の日記に何か書いてないだろうか。」
「探してみる。」
何十冊もある日記の中から、20年くらい前の日付の日記をパラパラ眺める。しばらく探していると、「シリウス」という名前を見つけた。
「あった。」
1971年9月8日(水)
入学式からまだ一週間しか経っていないのに、グリフィンドール寮の1年生、ジェームズ・ポッターとシリウス・ブラックの名前は、既に教師陣の議題に何度も上がっている。昨日の夜も、彼らの実験が寮の寝室のカーテンを一瞬でトカゲの皮のような質感に変えてしまったらしいわ。ああ、今もミネルバの怒鳴り声が聞こえる。今度は何をやったのかしら。
なんだかすぐにその光景が浮かんでしまった。カンカンに怒るマクゴナガル先生と、悪びれない二人の少年。この時のシリウス・ブラックは、多分、普通の魔法使いだったのだろう。
ナツキはまたパラパラとページをめくり、次は別の年の日記帳を手にとった。
1973年9月12日(水)
今日の3年生の初回講義は、今年から私の「古代ルーン文字」を選択した生徒たちとの顔合わせ。私は初めて、問題児シリウス・ブラックとジェームズ・ポッターと会話をしたわ。私は彼らがとってもいい子だと思う。
1974年2月14日(木)
今日はバレンタインデー。明日の授業の準備をしていたら、思いがけないお客様が。女の子達から逃げてきた男前のシリウスだったわ。避難先を提供してあげたら、彼が珍しく弱気で「先生は自分の家名を嫌だと思ったことはありますか?」って。ブラック家は闇の魔法使いを多く輩出してしまっているから、それが気になるんでしょうね。「シリウスをシリウスたらしめるのは家名ではなくあなたの選択よ」と教師らしいことを言ってみたわ。
「ブラック家・・・・・それが、嫌だったんだ・・・。じゃあ、どうしてヴォルデモートについたんだろう。どうして、その選択をしちゃったんだろう。」
ナツキはまた別の日記を手にとってみた。
1975年10月15日(水)
シリウスとジェームズがスリザリン生にタチの悪い悪戯をしていた。どうしてグリフィンドールとスリザリンはうまくいかないのかしらね。もっと悪いことに、その悪戯にルーン文字が使われていたわ。とっても悲しい。悲しいことよ。シリウスに「それがあなたの選択なのね」ってキツく言ってしまったわ。
1975年10月16日(木)
今朝早く、シリウスが私の部屋に謝罪しにきたわ。珍しいことに、本当に反省していたみたい。本当に謝るべき相手は私ではないのだけれど、シリウスにしては及第点ね。特別に紅茶を淹れてあげたわ。渋いって文句を言われたけどね。
「・・・・シリウス・ブラックは、お祖母さんの事、信頼してたんだね。」
ナツキは複雑な気持ちになった。どうやら相当ヤンチャな生徒らしいが、ここまでみる限り、とても邪悪な魔法使いとは思えなかった。
1976年11月8日(月)
どうやら、またブラックとポッターが騒ぎを起こしたみたい。今回は「ポルターガイストと意気投合して授業を中断させた」のですって。ミネルバは怒り心頭だったけれど、私は、正直笑いを堪えるのに必死だったわ。ただ、どうにも最近気になるのは、エリザベスね。シリウスと廊下でよく一緒にいるところを何度か見かけたわ。寮も違うのに、いつの間に仲良くなったのかしら。あの子が笑うのは久しぶりに見たわ。
「お母さんだ。」
ナツキはまた別の日記から「シリウス」という名を一生懸命探した。
1978年1月26日(木)
エリックが死喰い人の強襲でいなくなってから1年半。エリザベスは私を見向きもしなくなった。またあの子がシリウスと並んでいるのを見かけたわ。あの子が寄りかかるのは母の私ではなくシリウスなのね。シリウスはいい子だけど、母としては情けないわ。
あの子は私が、トムを見捨てきれないことに、気づいているのかもしれないわね。でもこれで、憂いは無くなった。シリウスがあの子を支えてくれるなら、きっと大丈夫ね。何があっても思い残すことはない。
日記はその年のものが最後であった。きっとこの後に、アルバはヴォルデモートの目の前で自害したのだ。
「・・・・お祖母さんはシリウス・ブラックにお母さんを託そうとしたんだ。それくらい・・・信用していたってこと・・・・・?サイラス、何か覚えてる?」
「少なくとも、アルバはずっと可愛がっていた。アルバが知っている限りでは、闇の陣営に与するような少年ではなかったはずだ。」
「じゃあその後ってことか・・・・・」
「少し気にかかるのは、アルバは勘が鋭かったということだ。」
不思議そうな表情をするナツキにサイラスは続けた。
「ダンブルドア以外が気づいていなかった、トム・リドルの内面の闇に真っ先に気づいた。そのアルバが気付けなかったということがあるのだろうか・・・・」
「認めたくないけど、お祖母さんはトム・リドルと親友だったんでしょ。親友と一生徒じゃ、わけが違うと思う。」
「うーん、そうだな・・・それもそうだ・・・・」
少し納得がいかない様子でサイラスはそう言った。ナツキはそろそろホグズミードからみんなが帰ってくる頃だと気づき、談話室に戻った。
「ナツキ!ナツキ!」
談話室には1・2年生とハーマイオニーだけがいたが、ナツキの顔を見るなりハーマイオニーが泣きながら胸に飛び込んできた。
「ハーマイオニー?」
「・・・・ハグリッドが・・・・負けたわ!」
ナツキは目の前が真っ白になった。