アズカバンの囚人
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
これは流石にスキャバーズがクルックシャンクスにとって食われたとしか思えなかった。ナツキとハリーは状況証拠ではクルックシャンクスが犯人だと言ってしまった。
「いいわよ。ロンに味方しなさい。どうせそうすると思ってたわ!最初はファイアボルト、今度はスキャバーズ。みんな私が悪いってわけね!放っといて。私、とっても忙しいんだから!」
ハーマイオニーはヒステリー気味だし、ロンも相当にお冠だ。ナツキもハリーもお手上げ状態だった。
その日ナツキはマグル学の授業だった。授業終わりに時間があるから、サイラスに会いにいこうと大きな肉を手に持って1階を歩いていると、オレンジの毛が視界に入った。
「・・・クルックシャンクス・・・?」
どこに行くんだろうかとナツキが目でおうと、どんどんとホグワーツ城から離れていこうとしていた。そっちにあるのは、禁じられた森だ。
「ど、どうしよう。」
もしかしたら、クルックシャンクスが大事なものを森にしまっているかもしれない。そう、スキャバーズとか。というかそうであってほしい。
そう思って、ナツキは意を決し、こっそりクルックシャンクスの後を追うことを決めた。手には大きな骨つき肉を持っている。たとえ吸魂鬼がいたとしても、今の自分は少しだけ守護霊の呪文がつかえるのだと、自分に言い聞かせた。
誰にも見つからないように、ナツキは森に足を踏み入れた。幸いなことに、それほど深くないところに、オレンジの毛玉がいた。クルックシャンクスだ。
「・・・クルックシャンクス、森は危ないよ。」
ナツキがそういうと、潰れた不細工な顔面がこちらを向いて、「にゃあ」と鳴いた。
「クルックシャンクス・・・・そこにいるのは何?」
ナツキは左手に肉を持ち替えて、右手にグリフィンドールの杖を構えた。
「・・・・・何なの・・・・?」
ジリジリと近づくと、そこにいたのは、大きな黒い犬だった。
「あ、あの時のワンちゃん。」
クルックシャンクスと犬はナツキに見つかったことで狼狽えているように見えた。
「ハリーがあなたのことを死神犬だって勘違いしてるよ。森に住んでるの?」
危ないものではなさそうだと安心して、ナツキは杖を下ろした。そこにいるのは猫と犬だけで、スキャバーズはいない。
「ねえ、クルックシャンクス。あなた本当にスキャバーズを食べちゃったの?」
クルックシャンクスは相変わらず不細工な潰れ顔でナツキを見ただけだった。ナツキが呆れていると、黒い犬がそっと近づいてきた。
「お腹空いてる?痩せすぎじゃない?」
ナツキは左手の肉を犬にあげてみた。かなり痩せている。サイラス用だったが、しもべ妖精にまた貰えばいいだけなので、躊躇わずにそれを差し出した。
「クルックシャンクスのお友達なんだね。これ食べて。」
ナツキがしゃがんで犬に向かってそう言うと、犬はガブリと肉に噛み付いた。尻尾が大きく揺れている。
「・・・君、泣いてない?」
犬の目が潤んでいるように見えた。犬って、嬉しくて泣いちゃうことがあるんだろうか。
「君の目、灰色なんだね。私とおんなじだ・・・・・」
ガツガツと肉を食べていたのが一瞬止まり、またその犬は肉を食べ始めた。
「色も真っ黒。お揃いだね。」
ナツキは犬のちょっと汚い毛を撫でてみた。思ったよりゴワゴワはしていなかった。
「・・・気にしたことなんてなかったんだけど、今はこの色、好きじゃないの。私のお父さん、シリウス・ブラックなんだって。その人と、同じ色なんだって。」
肉をほとんど食べ終えた犬はナツキを見つめた。尻尾は下がっていた。ワン、と鳴いて、犬はナツキに擦り寄った。
「慰めてくれるんだね。まあわんちゃんとお揃いってのも悪くないか。」
ナツキはまた犬を撫でてみた。おとなしいし、どうやらこっちの言っていることも理解しているらしい賢い犬だ。
のんびりしていると「にゃお」と不機嫌そうな声をクルックシャンクスがあげた。彼はホグワーツの城の方を見ていた。
「そろそろ戻らないとまずいか。・・・君のご飯どうしようね。私が毎日持ってくるのも難しいし、見つかって罰則受けるのも面倒だしな・・・・。私、去年罰則を受けて、しばらく温室でトンデモ植物の世話をさせられたの。あの時は先生に衝撃呪文かけたんだっけな・・・・。」
とりあえずクルックシャンクスなら罰則も受けないし、ちょっとした肉くらいなら彼でも運べそうだ。
「クルックシャンクスを見たらご飯預けてみるね。」
ナツキがそういうと、クルックシャンクスも犬もそれぞれ一鳴きした。返事をしてくれたらしい。
「じゃあまたね。名前つけていい?えーと・・・・スナッフルズにしよう。またね、スナッフルズ。」
ワンと返事が聞こえるとナツキはホグワーツ城へ向かってこっそり帰路に着いた。城は見えているし、一階はそれなりに覚えている方、方向音痴は発揮せずに無事帰ることができた。
数日後、レイブンクローとのクィディッチの試合の日が来た。ハリーはファイアボルトの護衛の大勢のグリフィンドール生に囲まれての朝食であった。
ナツキはいざハリーが吸魂鬼に襲われた時のために幸せな瞬間をすぐにイメージできるようにと集中していた。
ナツキはロンと共にスタンドの席についた。
「ハーマイオニー来ないのかな?」
「知るか!あんなやつ!!」
取り付く島もなかった。ナツキはひとまずハリーの試合に集中することにした。
「いけーー!ハリーー!!」
ファイアボルトは凄まじかった。ナツキもロンも一生懸命ハリーを応援した。
ハリーがスニッチを手にしよとしたその時、三人の吸魂鬼がいるように見えた。ここからは距離がある。
「なんてこと!!ロン、私、行ってくる!許せない!」
ナツキは急いだ。ピッチの反対側だ。ハリーが守護霊の呪文を打つのを確認した。吸魂鬼は離れていく。
そこでナツキは最悪なものを目にした。
「・・・・あいつら・・・・・!!!」
背後でグリフィンドール生の歓声が聞こえた。ハリーが勝ったんだ。しかし、ナツキは目の前の光景が許せなかった。
マルフォイ、クラッブ、ゴイル、それにスリザリン・チームのキャプテン、マーカス・フリントが、折り重なるようにして地面に転がっていた。頭巾のついた長い黒いローブを脱ごうとしてみんなバタバタしていた。マルフォイはゴイルに肩車されていたようだ。
ナツキはカッとなって杖を振り上げたが、その右腕を掴まれた。マクゴナガル先生だった。マルフォイたちを恐ろしい形相で見つめていた。
「あさましい悪戯です!グリフィンドールのシーカーに危害を加えようとは、下劣な卑しい行為です!みんな処罰します。さらに、スリザリン寮は五十点減点!このことはダンブルドア先生にお話しします。間違いなく!あぁ、噂をすればいらっしゃいました!」
グリフィンドールの勝利に完璧な落ちがつけられたとすれば、それはまさにこの場の光景だ。マルフォイがローブから脱出しようともたもたもがき、ゴイルの頭はまだローブに突っ込まれたままだ。
「全く許すまじ行為です。しかし、ゴドリクソン、カッとなって杖を振るのは感心いたしませんよ。」
「・・・はい。先生。」
「今回は無事未遂のようなので、不問にしましょう。」
マクゴナガル先生はそういうと小さくウインクをした。
「はい、先生。ありがとうございます。」
結果的にはナツキに呪文で吹っ飛ばされるより最悪の結果が彼らにもたらせられたのだから良いか、とナツキは気を取り直してハリーたちの方に向かった。ハリーとロンは大爆笑だ。
「ナツキ!そいつらなんて放っといてこっちこいよ!パーティーだ!」
ジョージの声が聞こえた。
談話室ではまるで優勝したかのような騒ぎだった。
「ナツキ、ホグズミードに行かないか?パーティーの買い出しをしようぜ!」
「行きたい!あ、でも待って。変装か何かをしないと・・・ちょっと待っててね。」
ジョージからの誘いを受けてナツキは部屋から大きめのローブを持ってきた。フード付きだ。これならわざわざ覗き込まなければナツキだとはわからないはずだ。
「よし、いこう。」
「フレッドは?」
談話室を出たのがジョージだけだったので、ナツキはそう尋ねた。
「ナツキ、最初は俺とホグズミードに行く約束したろ。まあすっぽかされたけどな。」
「あ・・・・・ごめんね。」
そうだ。ジョージと一緒に行こう、という約束をしていたのだ。ブラックが父親という衝撃が大きすぎて、その約束のことなどすっぱ抜けていた。
「いいさ。それどころじゃなかったみたいだし。だから穴埋めの機会を特別に差し上げよう。」
そう言ってジョージはニヤッと笑った。
隻眼の魔女の像から二人でホグズミードに向かう。
「ハニーデュークスのお菓子と、バタービールも欲しいな。ナツキは?」
「かぼちゃフィズが飲みたい!」
「ナツキはかぼちゃのドリンク好きだよな。」
フードを目深にナツキは被った。
「それなしでもうろつけるといいんだけどな。そうすれば、もっと色んなとこ行きやすいだろ。ほら、フレッドとは行きにくいとことか・・・・」
「フレッドと行きにくいところ?」
ハニーデュークスの倉庫につき、何食わぬ顔で店内に紛れ込む。
「フレッドがいても行きにくいところ?・・・あ、蛙ミント。」
「ほら、その、女子ばっかりのところとかさ。・・・俺、カゴもつよ。」
蛙ミントがたくさん詰まったカゴをジョージはひょいとナツキから取り上げた。
「女子ばっかりのところなんて興味あるの?」
「マダム・パディフットの店とか?」
ナツキはその店のことを知らない。多分、ナツキがホグズミードを出てからできた店だろう。
グリフィンドール生からの集金で会計を済ませ、「三本の箒」へ向かう。
「一杯飲んでくか?」
「うん。マダム・ロスメルタは私のこと知ってるから、見えにくいところでなら。」
「オーケー!」
隅の方でマダムから顔が見えない位置にナツキが席をとり、ジョージがバタービールを2瓶持ってきた。
「「乾杯!」」
暖かいバタービールを一口飲むと、身体中がぽかぽかになった。試合の勝利についてしばらく話をした後に、ジョージがおもむろに口を開いた。
「答えられないなら無理に聞かないんだけどさ、」
「うん。」
「あのライオンってナツキのペット?」
「ぺ・・・いや、友達?かな。」
そうか。ジョージはサイラスを見たんだ。見てしまったならば、色々と教えてもいいような気もするけれどどうなんだろうか。
「そのライオンがサイラスで、危険はないんだけど、どんなに信頼している人にも部屋のことは言うなって。だから、ハリー達にも話していないの。ジョージにもどこまで話していいのか・・・・・。だから、まだ内緒ね。」
「おう。」
ジョージはナツキが一度も「フレッドに話していないか」とか「ちゃんと秘密にしているのか」と尋ねないことが嬉しかった。ナツキがジョージを信頼してのことか、単にナツキがボケっとしていることが原因かはわからないが、それでも嬉しかった。
帰り際にたくさんのバタービールとかぼちゃフィズを検知不可能拡大呪文がかけられた鞄に詰め込む。
「そろそろ行くか。」
「うん。」
帰り道、ナツキは無意識に細い路地に目を向けた。
「そっちに気になるのがあるのか?」
「え?あー、いや、なんでもないの。行こう。みんな、待ってるよ!」
「・・・ああ、そうだな。行くか!」
その路地はホッグズヘッドに続く道だ。なぜだか無性にアバーフォースに会いたいと思ってしまった。でも許可証を持たない自分が会いに行ったら、確実に怒られるだろう。
ナツキとジョージは無事にホグワーツに戻り、グリフィンドール生達に飲み物とお菓子を配った。だというのに、なんとハーマイオニーは宿題をしているじゃないか。ナツキはハリーと目を合わせた。このお祭り騒ぎに乗じて、ロンとハーマイオニーが仲直りすれば良いと思ったのだ。
しかし、それは失敗におわった。ロンがスキャバーズの話を持ち出して、ハーマイオニーは泣いてしまったのだ。しかしだからと言ってナツキはロンを怒る気にもなれなかった。スキャバーズが気の毒なことに変わりはないからだ。
深夜までお祭り騒ぎは続き、25時を過ぎてナツキはようやくベッドに入った。夢の世界にいる時だった。
「ああああああああああああああアアアアアアァァァァァァっっっッッッッッ!やめてえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
突然悲鳴が聞こえた。ロンだ。
「な、何!?」
同室のハーマイオニーやラベンダー達も目を覚まして何事かという顔をしている。
「・・・私、ちょっと見てくる。何かあったのかもしれない。」
「ナツキ、大袈裟よ。変な夢でも見たんだわ。きっと。」
パーバティはそう言って再び眠りについた。他の女の子達も一緒だ。ハーマイオニーでさえも。
それでもナツキは杖を持って、男子部屋の方へ向かおうとしたが、どうやらみんな談話室に行ったようなので方向転換をした。談話室には真っ青な顔のロンがいた。他にも数名の様子を見にきたグリフィンドール生もいた。ナツキはハリーのすぐそばに立った。
「ハリー、一体どうしたの?」
「ナツキ・・・ロンが・・・・・」
「パース・・・シリウス・ブラックだ!僕たちの寝室に!ナイフを持って!僕、起こされた!」
ロンがパーシーに向かって行った言葉に談話室がしーんとなった。
「おやめなさい!まったく、いい加減になさい!」
マクゴナガル先生が戻ってきた。肖像画の扉をバタンといわせて談話室に入ってくると、怖い顔でみんなを睨みつけた。
「グリフィンドールが勝ったのは、私もうれしいです。でもこれでは、はしゃぎすぎです。パーシー、あなたがもっとしっかりしなければ!」
「先生、僕はこんなこと、許可していません。僕はみんなに寮に戻るように言っていただけです。弟のロンが悪い夢にうなされて・・・・」
「悪い夢なんかじゃない!先生、僕、目が覚めたら、シリウス・ブラックが、ナイフを持って、僕の上に立ってたんです。」
マクゴナガル先生はロンをじっと見据えた。
「ウィーズリー、冗談はおよしなさい。肖像画の穴をどうやって通過できたというんです?」
「あの人に聞いてください!」
ロンは太った婦人に代わってグリフィンドールの合言葉番をしているカドガン卿の絵の裏側を、震える指で示した。
「あの人が見たかどうか聞いてください・・・」
ロンを疑わしそうな目で睨みながら、マクゴナガル先生は肖像画を裏から押して、外に出ていった。談話室にいた全員が、息を殺して耳をそばだてた。
「カドガン卿、いましがた、グリフィンドール塔に男を一人通しましたか?」
「通しましたぞ。ご婦人!」
カドガン卿が叫んだ。 談話室の外と中とが、同時に愕然として沈黙した。
「と・・・・通した?あ、合言葉は!」
「持っておりましたぞ!」
「ご婦人、一週間分全部持っておりました。小さな紙切れを読み上げておりました!」
マクゴナガル先生は肖像画の穴から戻り、みんなの前に立った。驚いて声もないみんなの前で、先生は血の気の引いた蝋のような顔だった。
「誰ですか。今週の合言葉を書き出して、その辺に放っておいた底抜けの愚か者は、誰です?」
ナツキはその人物に心当たりがあった。つい、その人物、ネビル・ロングボトムに目を向けてしまった。
ネビルは頭のてっぺんから、ふわふわのスリッパに包まれた足の爪先まで、ガタガタ震えながら、そろそろと手を挙げていた。
「いいわよ。ロンに味方しなさい。どうせそうすると思ってたわ!最初はファイアボルト、今度はスキャバーズ。みんな私が悪いってわけね!放っといて。私、とっても忙しいんだから!」
ハーマイオニーはヒステリー気味だし、ロンも相当にお冠だ。ナツキもハリーもお手上げ状態だった。
その日ナツキはマグル学の授業だった。授業終わりに時間があるから、サイラスに会いにいこうと大きな肉を手に持って1階を歩いていると、オレンジの毛が視界に入った。
「・・・クルックシャンクス・・・?」
どこに行くんだろうかとナツキが目でおうと、どんどんとホグワーツ城から離れていこうとしていた。そっちにあるのは、禁じられた森だ。
「ど、どうしよう。」
もしかしたら、クルックシャンクスが大事なものを森にしまっているかもしれない。そう、スキャバーズとか。というかそうであってほしい。
そう思って、ナツキは意を決し、こっそりクルックシャンクスの後を追うことを決めた。手には大きな骨つき肉を持っている。たとえ吸魂鬼がいたとしても、今の自分は少しだけ守護霊の呪文がつかえるのだと、自分に言い聞かせた。
誰にも見つからないように、ナツキは森に足を踏み入れた。幸いなことに、それほど深くないところに、オレンジの毛玉がいた。クルックシャンクスだ。
「・・・クルックシャンクス、森は危ないよ。」
ナツキがそういうと、潰れた不細工な顔面がこちらを向いて、「にゃあ」と鳴いた。
「クルックシャンクス・・・・そこにいるのは何?」
ナツキは左手に肉を持ち替えて、右手にグリフィンドールの杖を構えた。
「・・・・・何なの・・・・?」
ジリジリと近づくと、そこにいたのは、大きな黒い犬だった。
「あ、あの時のワンちゃん。」
クルックシャンクスと犬はナツキに見つかったことで狼狽えているように見えた。
「ハリーがあなたのことを死神犬だって勘違いしてるよ。森に住んでるの?」
危ないものではなさそうだと安心して、ナツキは杖を下ろした。そこにいるのは猫と犬だけで、スキャバーズはいない。
「ねえ、クルックシャンクス。あなた本当にスキャバーズを食べちゃったの?」
クルックシャンクスは相変わらず不細工な潰れ顔でナツキを見ただけだった。ナツキが呆れていると、黒い犬がそっと近づいてきた。
「お腹空いてる?痩せすぎじゃない?」
ナツキは左手の肉を犬にあげてみた。かなり痩せている。サイラス用だったが、しもべ妖精にまた貰えばいいだけなので、躊躇わずにそれを差し出した。
「クルックシャンクスのお友達なんだね。これ食べて。」
ナツキがしゃがんで犬に向かってそう言うと、犬はガブリと肉に噛み付いた。尻尾が大きく揺れている。
「・・・君、泣いてない?」
犬の目が潤んでいるように見えた。犬って、嬉しくて泣いちゃうことがあるんだろうか。
「君の目、灰色なんだね。私とおんなじだ・・・・・」
ガツガツと肉を食べていたのが一瞬止まり、またその犬は肉を食べ始めた。
「色も真っ黒。お揃いだね。」
ナツキは犬のちょっと汚い毛を撫でてみた。思ったよりゴワゴワはしていなかった。
「・・・気にしたことなんてなかったんだけど、今はこの色、好きじゃないの。私のお父さん、シリウス・ブラックなんだって。その人と、同じ色なんだって。」
肉をほとんど食べ終えた犬はナツキを見つめた。尻尾は下がっていた。ワン、と鳴いて、犬はナツキに擦り寄った。
「慰めてくれるんだね。まあわんちゃんとお揃いってのも悪くないか。」
ナツキはまた犬を撫でてみた。おとなしいし、どうやらこっちの言っていることも理解しているらしい賢い犬だ。
のんびりしていると「にゃお」と不機嫌そうな声をクルックシャンクスがあげた。彼はホグワーツの城の方を見ていた。
「そろそろ戻らないとまずいか。・・・君のご飯どうしようね。私が毎日持ってくるのも難しいし、見つかって罰則受けるのも面倒だしな・・・・。私、去年罰則を受けて、しばらく温室でトンデモ植物の世話をさせられたの。あの時は先生に衝撃呪文かけたんだっけな・・・・。」
とりあえずクルックシャンクスなら罰則も受けないし、ちょっとした肉くらいなら彼でも運べそうだ。
「クルックシャンクスを見たらご飯預けてみるね。」
ナツキがそういうと、クルックシャンクスも犬もそれぞれ一鳴きした。返事をしてくれたらしい。
「じゃあまたね。名前つけていい?えーと・・・・スナッフルズにしよう。またね、スナッフルズ。」
ワンと返事が聞こえるとナツキはホグワーツ城へ向かってこっそり帰路に着いた。城は見えているし、一階はそれなりに覚えている方、方向音痴は発揮せずに無事帰ることができた。
数日後、レイブンクローとのクィディッチの試合の日が来た。ハリーはファイアボルトの護衛の大勢のグリフィンドール生に囲まれての朝食であった。
ナツキはいざハリーが吸魂鬼に襲われた時のために幸せな瞬間をすぐにイメージできるようにと集中していた。
ナツキはロンと共にスタンドの席についた。
「ハーマイオニー来ないのかな?」
「知るか!あんなやつ!!」
取り付く島もなかった。ナツキはひとまずハリーの試合に集中することにした。
「いけーー!ハリーー!!」
ファイアボルトは凄まじかった。ナツキもロンも一生懸命ハリーを応援した。
ハリーがスニッチを手にしよとしたその時、三人の吸魂鬼がいるように見えた。ここからは距離がある。
「なんてこと!!ロン、私、行ってくる!許せない!」
ナツキは急いだ。ピッチの反対側だ。ハリーが守護霊の呪文を打つのを確認した。吸魂鬼は離れていく。
そこでナツキは最悪なものを目にした。
「・・・・あいつら・・・・・!!!」
背後でグリフィンドール生の歓声が聞こえた。ハリーが勝ったんだ。しかし、ナツキは目の前の光景が許せなかった。
マルフォイ、クラッブ、ゴイル、それにスリザリン・チームのキャプテン、マーカス・フリントが、折り重なるようにして地面に転がっていた。頭巾のついた長い黒いローブを脱ごうとしてみんなバタバタしていた。マルフォイはゴイルに肩車されていたようだ。
ナツキはカッとなって杖を振り上げたが、その右腕を掴まれた。マクゴナガル先生だった。マルフォイたちを恐ろしい形相で見つめていた。
「あさましい悪戯です!グリフィンドールのシーカーに危害を加えようとは、下劣な卑しい行為です!みんな処罰します。さらに、スリザリン寮は五十点減点!このことはダンブルドア先生にお話しします。間違いなく!あぁ、噂をすればいらっしゃいました!」
グリフィンドールの勝利に完璧な落ちがつけられたとすれば、それはまさにこの場の光景だ。マルフォイがローブから脱出しようともたもたもがき、ゴイルの頭はまだローブに突っ込まれたままだ。
「全く許すまじ行為です。しかし、ゴドリクソン、カッとなって杖を振るのは感心いたしませんよ。」
「・・・はい。先生。」
「今回は無事未遂のようなので、不問にしましょう。」
マクゴナガル先生はそういうと小さくウインクをした。
「はい、先生。ありがとうございます。」
結果的にはナツキに呪文で吹っ飛ばされるより最悪の結果が彼らにもたらせられたのだから良いか、とナツキは気を取り直してハリーたちの方に向かった。ハリーとロンは大爆笑だ。
「ナツキ!そいつらなんて放っといてこっちこいよ!パーティーだ!」
ジョージの声が聞こえた。
談話室ではまるで優勝したかのような騒ぎだった。
「ナツキ、ホグズミードに行かないか?パーティーの買い出しをしようぜ!」
「行きたい!あ、でも待って。変装か何かをしないと・・・ちょっと待っててね。」
ジョージからの誘いを受けてナツキは部屋から大きめのローブを持ってきた。フード付きだ。これならわざわざ覗き込まなければナツキだとはわからないはずだ。
「よし、いこう。」
「フレッドは?」
談話室を出たのがジョージだけだったので、ナツキはそう尋ねた。
「ナツキ、最初は俺とホグズミードに行く約束したろ。まあすっぽかされたけどな。」
「あ・・・・・ごめんね。」
そうだ。ジョージと一緒に行こう、という約束をしていたのだ。ブラックが父親という衝撃が大きすぎて、その約束のことなどすっぱ抜けていた。
「いいさ。それどころじゃなかったみたいだし。だから穴埋めの機会を特別に差し上げよう。」
そう言ってジョージはニヤッと笑った。
隻眼の魔女の像から二人でホグズミードに向かう。
「ハニーデュークスのお菓子と、バタービールも欲しいな。ナツキは?」
「かぼちゃフィズが飲みたい!」
「ナツキはかぼちゃのドリンク好きだよな。」
フードを目深にナツキは被った。
「それなしでもうろつけるといいんだけどな。そうすれば、もっと色んなとこ行きやすいだろ。ほら、フレッドとは行きにくいとことか・・・・」
「フレッドと行きにくいところ?」
ハニーデュークスの倉庫につき、何食わぬ顔で店内に紛れ込む。
「フレッドがいても行きにくいところ?・・・あ、蛙ミント。」
「ほら、その、女子ばっかりのところとかさ。・・・俺、カゴもつよ。」
蛙ミントがたくさん詰まったカゴをジョージはひょいとナツキから取り上げた。
「女子ばっかりのところなんて興味あるの?」
「マダム・パディフットの店とか?」
ナツキはその店のことを知らない。多分、ナツキがホグズミードを出てからできた店だろう。
グリフィンドール生からの集金で会計を済ませ、「三本の箒」へ向かう。
「一杯飲んでくか?」
「うん。マダム・ロスメルタは私のこと知ってるから、見えにくいところでなら。」
「オーケー!」
隅の方でマダムから顔が見えない位置にナツキが席をとり、ジョージがバタービールを2瓶持ってきた。
「「乾杯!」」
暖かいバタービールを一口飲むと、身体中がぽかぽかになった。試合の勝利についてしばらく話をした後に、ジョージがおもむろに口を開いた。
「答えられないなら無理に聞かないんだけどさ、」
「うん。」
「あのライオンってナツキのペット?」
「ぺ・・・いや、友達?かな。」
そうか。ジョージはサイラスを見たんだ。見てしまったならば、色々と教えてもいいような気もするけれどどうなんだろうか。
「そのライオンがサイラスで、危険はないんだけど、どんなに信頼している人にも部屋のことは言うなって。だから、ハリー達にも話していないの。ジョージにもどこまで話していいのか・・・・・。だから、まだ内緒ね。」
「おう。」
ジョージはナツキが一度も「フレッドに話していないか」とか「ちゃんと秘密にしているのか」と尋ねないことが嬉しかった。ナツキがジョージを信頼してのことか、単にナツキがボケっとしていることが原因かはわからないが、それでも嬉しかった。
帰り際にたくさんのバタービールとかぼちゃフィズを検知不可能拡大呪文がかけられた鞄に詰め込む。
「そろそろ行くか。」
「うん。」
帰り道、ナツキは無意識に細い路地に目を向けた。
「そっちに気になるのがあるのか?」
「え?あー、いや、なんでもないの。行こう。みんな、待ってるよ!」
「・・・ああ、そうだな。行くか!」
その路地はホッグズヘッドに続く道だ。なぜだか無性にアバーフォースに会いたいと思ってしまった。でも許可証を持たない自分が会いに行ったら、確実に怒られるだろう。
ナツキとジョージは無事にホグワーツに戻り、グリフィンドール生達に飲み物とお菓子を配った。だというのに、なんとハーマイオニーは宿題をしているじゃないか。ナツキはハリーと目を合わせた。このお祭り騒ぎに乗じて、ロンとハーマイオニーが仲直りすれば良いと思ったのだ。
しかし、それは失敗におわった。ロンがスキャバーズの話を持ち出して、ハーマイオニーは泣いてしまったのだ。しかしだからと言ってナツキはロンを怒る気にもなれなかった。スキャバーズが気の毒なことに変わりはないからだ。
深夜までお祭り騒ぎは続き、25時を過ぎてナツキはようやくベッドに入った。夢の世界にいる時だった。
「ああああああああああああああアアアアアアァァァァァァっっっッッッッッ!やめてえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
突然悲鳴が聞こえた。ロンだ。
「な、何!?」
同室のハーマイオニーやラベンダー達も目を覚まして何事かという顔をしている。
「・・・私、ちょっと見てくる。何かあったのかもしれない。」
「ナツキ、大袈裟よ。変な夢でも見たんだわ。きっと。」
パーバティはそう言って再び眠りについた。他の女の子達も一緒だ。ハーマイオニーでさえも。
それでもナツキは杖を持って、男子部屋の方へ向かおうとしたが、どうやらみんな談話室に行ったようなので方向転換をした。談話室には真っ青な顔のロンがいた。他にも数名の様子を見にきたグリフィンドール生もいた。ナツキはハリーのすぐそばに立った。
「ハリー、一体どうしたの?」
「ナツキ・・・ロンが・・・・・」
「パース・・・シリウス・ブラックだ!僕たちの寝室に!ナイフを持って!僕、起こされた!」
ロンがパーシーに向かって行った言葉に談話室がしーんとなった。
「おやめなさい!まったく、いい加減になさい!」
マクゴナガル先生が戻ってきた。肖像画の扉をバタンといわせて談話室に入ってくると、怖い顔でみんなを睨みつけた。
「グリフィンドールが勝ったのは、私もうれしいです。でもこれでは、はしゃぎすぎです。パーシー、あなたがもっとしっかりしなければ!」
「先生、僕はこんなこと、許可していません。僕はみんなに寮に戻るように言っていただけです。弟のロンが悪い夢にうなされて・・・・」
「悪い夢なんかじゃない!先生、僕、目が覚めたら、シリウス・ブラックが、ナイフを持って、僕の上に立ってたんです。」
マクゴナガル先生はロンをじっと見据えた。
「ウィーズリー、冗談はおよしなさい。肖像画の穴をどうやって通過できたというんです?」
「あの人に聞いてください!」
ロンは太った婦人に代わってグリフィンドールの合言葉番をしているカドガン卿の絵の裏側を、震える指で示した。
「あの人が見たかどうか聞いてください・・・」
ロンを疑わしそうな目で睨みながら、マクゴナガル先生は肖像画を裏から押して、外に出ていった。談話室にいた全員が、息を殺して耳をそばだてた。
「カドガン卿、いましがた、グリフィンドール塔に男を一人通しましたか?」
「通しましたぞ。ご婦人!」
カドガン卿が叫んだ。 談話室の外と中とが、同時に愕然として沈黙した。
「と・・・・通した?あ、合言葉は!」
「持っておりましたぞ!」
「ご婦人、一週間分全部持っておりました。小さな紙切れを読み上げておりました!」
マクゴナガル先生は肖像画の穴から戻り、みんなの前に立った。驚いて声もないみんなの前で、先生は血の気の引いた蝋のような顔だった。
「誰ですか。今週の合言葉を書き出して、その辺に放っておいた底抜けの愚か者は、誰です?」
ナツキはその人物に心当たりがあった。つい、その人物、ネビル・ロングボトムに目を向けてしまった。
ネビルは頭のてっぺんから、ふわふわのスリッパに包まれた足の爪先まで、ガタガタ震えながら、そろそろと手を挙げていた。