アズカバンの囚人
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その日は結局全校生徒が大広間で眠ることになった。ダンブルドア先生が出した寝袋を四人はそれぞれ手に取って隅の方へ向かった。
「ナツキ、大丈夫?」
ナツキは大広間の扉を見つめていた。
「ナツキ、」
「・・・・え?」
そこでようやくナツキにハリーの声が届いた。
「パーシーが怒ってる。とりあえず、寝袋に入ろう。」
「あ、うん。」
ナツキは自分の右手がローブのポケットの中で、普段使っている杖ではなくグリフィンドールの杖を握りしめていたことに気づいた。
寝袋に入り、ナツキは端っこで、その隣にハリーが場所をとった。部屋が暗くなり、ハリーが小さな声でナツキを呼んだ。
「ナツキ、一人で行こうとしちゃダメだ。ナツキは僕をいつも守ろうとしてくれる。でも、僕も、君に何かあったら嫌だよ。」
「・・・・うん。ありがとう、ハリー。」
燃えていた怒りの炎が、静かになっていくのをナツキは感じた。
一時間ごとに先生が一人ずつ大広間に入ってきて、何事もないかどうか確かめた。やっとみんなが寝静まった朝の三時ごろ、ダンブルドア校長が入ってきた。ナツキとハリーはダンブルドア先生とパーシーの話を盗み聞いた。
「それで、『太った婦人』は?」
「三階のアーガイルシャーの地図の絵に隠れておる。合言葉を言わないブラックを通すのを拒んだらしいのう。それでブラックが襲った。『婦人』はまだ非常に動転しておるが、落ち着いてきたらフィルチに言って『婦人』を修復させようぞ。」
ナツキとハリーの耳に大広間の扉がまた開く音が聞こえ、別の足音が聞こえた。スネイプ先生だ。
「四階はくまなく捜しました。ヤツはおりません。さらにフィルチが地下牢を捜しましたが、そこにも何もなしです。」
「天文台の塔はどうかね?トレローニー先生の部屋は?ふくろう小屋は?」
「すべて捜しましたが・・・・・」
「セブルス、ご苦労じゃった。わしも、ブラックがいつまでもぐずぐず残っているとは思っておらなかった」
「校長、ヤツがどうやって入ったか、何か思い当たることがおありですか?」
「セブルス、いろいろとあるが、どれもこれも皆ありえないことでな。」
スネイプ先生は何かをいいたそうにしていた。
「どうも・・・内部の者の手引きなしには、ブラックが本校に入るのは・・・ほとんど不可能かと。我輩は、しかとご忠告申し上げました。校長が任命を・・・ 」
「この城の内部の者がブラックの手引きをしたとは、わしは考えておらん。」
ダンブルドア先生はそこですっぱりその話を切り上げた。
「わしは吸魂鬼たちに会いにいかねばならん。捜索が終わったら知らせると言ってあるのでな。」
「先生、吸魂鬼は手伝おうとは言わなかったのですか?」
「おお、言ったとも。わしが校長職にあるかぎり、吸魂鬼にはこの城の敷居は跨せん。」
ナツキたちは横目で互いを見た。スネイプ先生は誰かを疑っていたんだろうか。
それから数日、ホグワーツ城内はシリウス・ブラックの話題で持ちきりだった。最初のクィディッチの試合が近づいていた。天気はだんだんと悪くなっていった。
「やあ、ナツキ。宿題?手伝おうか?」
ナツキが図書室で古代ルーン文字と睨めっこをしていると、セドリックがいた。少し久しぶりな気がした。
「じ、自分で頑張らせて・・・・う〜ん・・・え〜と・・う〜ん」
辞書を片手に長文にメモを書きながら戦っているナツキを、セドリックはクスクス笑った。
「隣で自分の宿題をするのはいい?」
「え?うん。もちろんだよ。」
「じゃあ失礼。」
セドリックはナツキの脇でいくつか教科書を積み上げて、羊皮紙に何かを書き始めた。ナツキがチラッと横目で見ると、彼はナツキが苦戦している古代ルーン文字を読むどころか、サラサラと書いていた。ナツキにはまだ、彼が何を書いているのかすらもわからない。初めて知ったが、きっとセドリックは勉強が得意なのだろう。
「えっと・・狼の・・・目玉・・違うな、眉?・・・狼に眉毛なんて・・・あ、まつ毛?」
「・・っ・・・ふふ・・ナツキ、絶対間違ってるよ。」
セドリックが隣でプルプルと肩を震わせていた。
「・・・さっきはああ言ったけど、ちょっとだけ教えて。でも、答えは言わないで!」
実は談話室でハーマイオニーと宿題をやっていたのだが、彼女は答えをポンと言ってしまうのだ。秘密の部屋のルーン文字をスラスラ読めるようになりたいナツキにとっては、悪魔の所業だったため、図書館で一人黙々と課題と向き合っていたのだった。
「ああ。わかったよ。でもこれだけは言わせて。ナツキは多分、辞書の使い方を間違ってる。」
「え!?・・・・ど、どおりで・・・・」
「時代ごとに辞書のクセが違うんだよ。ほら、ナツキのは5世紀用で・・・」
その後も少しずつセドリックに教えてもらって、ナツキはなんとか苦戦していた古代ルーン文字の宿題を終えた。
「ありがとう。セドリック。教えるのが上手だね。ルーン文字の宿題をこんなに順調にできたの初めて!」
「ナツキが自分でいっぱい頑張ったからだよ。」
ナツキが宿題を終えてセドリックと図書館を出ると、マクゴナガル先生がいた。ナツキはマクゴナガル先生のことは好きだったが、ちょっぴり気が沈んでしまった。なぜなら、
「ああ、ゴドリクソン。図書室にいたのですね。まさか、談話室からここまで一人で歩いてきたのですか?」
「・・・・はい。そうです。」
これだ。「太った婦人」の騒動の後、先生方はハリーとナツキを一人にすまいと、至る所についてきたがる。お陰でナツキは、しばらくサイラスに会いにいけていない。ハリーもうんざりしているようだった。
「図書館ではディゴリーといたのですか?」
「はい、そうです。」
ナツキがそう返すとマクゴナガル先生はホッとした表情を見せた。
「ならばまあ良いでしょう。ディゴリー、夕食に行くようでしたら、ナツキを大広間に連れて行きなさい。一人にしないように。」
セドリックは不思議そうにしていたが、「はい」と返事をした。そしてマクゴナガル先生はセドリックにナツキを任せ、どこかに行った。
「マクゴナガル先生、どうかしたの?」
「・・・・過保護な気分みたい。」
自分がブラックに狙われているらしいから、とはなんとなく言えなかった。
「それより、今度のクィディッチはうちとグリフィンドールの試合に変更になったんだよ。もう聞いてた?」
「そうなの?知らなかった。でもなんで?」
ナツキが何気なく尋ねると、マルフォイの怪我が原因だとセドリックは言った。
「そんなの嘘だよ!!!」
ナツキが怒ってそう言うと、セドリックは困ったように微笑んだ。ナツキはセドリックは人を悪く言わないのだと気づいた。
「ナツキはどっちを応援してくれる?」
「え?そんなのグリフィンドールに決まってるよ!」
「そうなんだ。残念だな。僕、今年からキャプテンなんだ。応援してくれたら嬉しかったんだけど。」
セドリックはそう冗談を言った。ナツキがグリフィンドール以外を応援することはないと知っていたからだ。
「セドリックってば、クィディッチの選手だったの!?」
驚愕の新事実だ。ナツキは口をあんぐり開けた。
「あれ、知らなかったんだ。恥ずかしいな。今までもグリフィンドールとの試合に出てたんだけどね。僕、シーカーなんだよ。」
「・・・ごめんね。私、ハリー以外はあんまり見てないの。」
ナツキとしては、試合でしょっちゅうハリーが命の危機に陥るため注意して見ているだけではあるのだが、セドリックはいつものようににっこりはしてくれなかった。いつもよりキリッとして「じゃあ僕も見てもらえるように頑張らなきゃ」と言った。
試合当日の朝、談話室でナツキに声をかけたのはフレッドだった。
「おはよう、フレッド。頑張ってね!」
「おう、ナツキ、ありがとな。」
「ジョージは?」
「相棒はもうすぐ降りてくるぜ。あ、そうだ、ナツキ。相棒が来たら、」
フレッドはそう言ってコソコソとナツキに耳打ちした。
「それでジョージが元気出るの?」
「ああ、今あいつの中ではブームが巻き起こってるんだ。土砂降りでも元気爆発間違いなしだぜ。」
フレッドが談話室を出ていってすぐ、ジョージが寝室から降りてきた。
「ジョージ!」
「ナツキ、おは・・・」
ナツキが挨拶兼応援の意味を込めて、ジョージにハグをすると、ジョージは固まってしまった。
「試合、頑張ってね!」
「お、おーう。」
ポケっとしながら、ジョージは朝食を食べに大広間に行ってしまった。「ちょいとハグしてやれば元気爆発だ」というフレッドの言葉が嘘だったんじゃないかとナツキは訝しげにその背中を見送った。
試合が始まり、ナツキはロンとハーマイオニーとスタンドでハリーを探す。土砂降りだ。正直この雨では、誰が誰だかもよくわからない。
「ねえ、ハリー、スニッチ探せるかな?」
「どうかしら・・・。眼鏡に防水の・・・あ、それがいいわね!私、ちょっと行ってくるわ。」
ハーマイオニーはそう言って、ピッチの方へと降りていった。多分、ハリーの眼鏡に魔法をかけに行くんだろう。
「寒いね。雷もすごい。」
「そうだな。うう〜、震えちまう。」
ロンはガタガタと震えていた。本当に寒そうだ。
「あったかい飲み物もらってくるから、ここで場所取ってて。」
「オーケー!」
スタンドの後ろの方にドリンクの移動販売があるので、ナツキはそちらに向かって階段を登っていった。
「ん?」
少し離れた観客がまばらなところに、真っ黒な毛の塊のようなものがあった。
「なんだろ?・・・・あ、犬?」
よく目を凝らしてみると、大きな犬のようだった。気のせいだろうか。目があったような気がした。
「ハグリッドのかな。あ、すみません、ホットココアを・・・・・え?」
なぜだか突然全身が凍えるように寒くなった。反射的に上をみると、百体以上の吸魂鬼がピッチ上空にいた。そしてそのうちの何体かが、ナツキを見た。
「え・・・」
訳もわからず立ち尽くしていると、そのうち数体がナツキに向かってきた。体中の血が氷水に変わったようだ。
また、悲鳴が聞こえた。
『アバダ・ケダブラ』
『キャアアアア!!』
殺さないで。ダメ・・・・ダメ・・・・・。
『このガキさえいれば・・・・』
『ナツキを放せ!!』
助けて・・・助けて・・・・
「助けて・・・お父さん・・・・」
ワン、と犬の鳴き声が聞こえた気がした。
「ナツキ!」
「・・・・・ジョージ・・・・?」
ナツキが目を開けるとそこは医務室だった。隣のベッドにはハリーがいて、同じように目を覚ましたらしい。周りには泥だらけのクィディッチの選手と、びしょ濡れのロンとハーマイオニーがいた。
そうか。吸魂鬼に襲われたんだ。隣にハリーがいるということは、ハリーも同じ目にあったんだろう。
「どうなったの?」
ハリーが試合のことを選手たちに聞いた。どうやらグリフィンドールは負けたらしい。ジョージが説明を続けた。
「ディゴリーがスニッチを取った。君が落ちた直後にね。何が起こったのか、あいつは気がつかなかったんだ。振り返って君が地面に落ちているのを見て、ディゴリーは試合中止にしようとした。やり直しを望んだんだ。でも、向こうが勝ったんだ。フェアにクリーンに・・・・ウッドでさえ認めたよ。」
セドリックなら確かにそう言うだろう。そういう優しい人だ。
いずれにせよグリフィンドールが優勝するには他の2寮に勝つことに加えて、ハッフルパフがレイブンクローに200点差で負けるという奇跡が必要みたいだった。
「また見舞いに来るよ。なんか欲しいのはあるか?」
「え、っと・・・あ、じゃあカボチャジュース・・・」
「わかった。ナツキ、それ好きだよな。じゃあゆっくり休めよ。」
ジョージがナツキの頭にポンと手を置いたのを最後に、選手たちはハリーとナツキに挨拶をして医務室を出ていった。
「兄貴たち、ナツキには甘いよな。」
ロンの言葉に、「フレッドはそうでもない」と言おうとしたが、それはやめておいた。
「ダンブルドアは本気で怒ってたわ。」
ハーマイオニーが震え声で言った。
「あんなに怒っていらっしゃるのを見たことがない。ハリーが落ちた時、ピッチに駆け込んで、杖を振って、そしたら、あなたが地面にぶつかる前に、少しスピードが遅くなったのよ。それからダンブルドアは杖を吸魂鬼に向けて回したの。あいつらに向かって何か銀色のものが飛び出したわ。あいつら、すぐに競技場を出ていった・・・・。ダンブルドアはあいつらが学校の敷地内に入ってきたことでカンカンだったわ。そう言っているのが聞こえた・・・・・」
「それからダンブルドアは魔法で担架を出してハリーとスタンドで倒れていたナツキを乗せた。浮かぶ担架につき添って、ダンブルドアが学校まで君達を運んだんだ。みんな二人が・・・・」
ロンの声が弱々しく途中で消えた。
「誰か僕のニンバスつかまえてくれた?」
そのハリーの質問に対する答えは最悪だった。ハリーの大切で忠実なニンバス2000は粉々になっていた。
「ナツキ、大丈夫?」
ナツキは大広間の扉を見つめていた。
「ナツキ、」
「・・・・え?」
そこでようやくナツキにハリーの声が届いた。
「パーシーが怒ってる。とりあえず、寝袋に入ろう。」
「あ、うん。」
ナツキは自分の右手がローブのポケットの中で、普段使っている杖ではなくグリフィンドールの杖を握りしめていたことに気づいた。
寝袋に入り、ナツキは端っこで、その隣にハリーが場所をとった。部屋が暗くなり、ハリーが小さな声でナツキを呼んだ。
「ナツキ、一人で行こうとしちゃダメだ。ナツキは僕をいつも守ろうとしてくれる。でも、僕も、君に何かあったら嫌だよ。」
「・・・・うん。ありがとう、ハリー。」
燃えていた怒りの炎が、静かになっていくのをナツキは感じた。
一時間ごとに先生が一人ずつ大広間に入ってきて、何事もないかどうか確かめた。やっとみんなが寝静まった朝の三時ごろ、ダンブルドア校長が入ってきた。ナツキとハリーはダンブルドア先生とパーシーの話を盗み聞いた。
「それで、『太った婦人』は?」
「三階のアーガイルシャーの地図の絵に隠れておる。合言葉を言わないブラックを通すのを拒んだらしいのう。それでブラックが襲った。『婦人』はまだ非常に動転しておるが、落ち着いてきたらフィルチに言って『婦人』を修復させようぞ。」
ナツキとハリーの耳に大広間の扉がまた開く音が聞こえ、別の足音が聞こえた。スネイプ先生だ。
「四階はくまなく捜しました。ヤツはおりません。さらにフィルチが地下牢を捜しましたが、そこにも何もなしです。」
「天文台の塔はどうかね?トレローニー先生の部屋は?ふくろう小屋は?」
「すべて捜しましたが・・・・・」
「セブルス、ご苦労じゃった。わしも、ブラックがいつまでもぐずぐず残っているとは思っておらなかった」
「校長、ヤツがどうやって入ったか、何か思い当たることがおありですか?」
「セブルス、いろいろとあるが、どれもこれも皆ありえないことでな。」
スネイプ先生は何かをいいたそうにしていた。
「どうも・・・内部の者の手引きなしには、ブラックが本校に入るのは・・・ほとんど不可能かと。我輩は、しかとご忠告申し上げました。校長が任命を・・・ 」
「この城の内部の者がブラックの手引きをしたとは、わしは考えておらん。」
ダンブルドア先生はそこですっぱりその話を切り上げた。
「わしは吸魂鬼たちに会いにいかねばならん。捜索が終わったら知らせると言ってあるのでな。」
「先生、吸魂鬼は手伝おうとは言わなかったのですか?」
「おお、言ったとも。わしが校長職にあるかぎり、吸魂鬼にはこの城の敷居は跨せん。」
ナツキたちは横目で互いを見た。スネイプ先生は誰かを疑っていたんだろうか。
それから数日、ホグワーツ城内はシリウス・ブラックの話題で持ちきりだった。最初のクィディッチの試合が近づいていた。天気はだんだんと悪くなっていった。
「やあ、ナツキ。宿題?手伝おうか?」
ナツキが図書室で古代ルーン文字と睨めっこをしていると、セドリックがいた。少し久しぶりな気がした。
「じ、自分で頑張らせて・・・・う〜ん・・・え〜と・・う〜ん」
辞書を片手に長文にメモを書きながら戦っているナツキを、セドリックはクスクス笑った。
「隣で自分の宿題をするのはいい?」
「え?うん。もちろんだよ。」
「じゃあ失礼。」
セドリックはナツキの脇でいくつか教科書を積み上げて、羊皮紙に何かを書き始めた。ナツキがチラッと横目で見ると、彼はナツキが苦戦している古代ルーン文字を読むどころか、サラサラと書いていた。ナツキにはまだ、彼が何を書いているのかすらもわからない。初めて知ったが、きっとセドリックは勉強が得意なのだろう。
「えっと・・狼の・・・目玉・・違うな、眉?・・・狼に眉毛なんて・・・あ、まつ毛?」
「・・っ・・・ふふ・・ナツキ、絶対間違ってるよ。」
セドリックが隣でプルプルと肩を震わせていた。
「・・・さっきはああ言ったけど、ちょっとだけ教えて。でも、答えは言わないで!」
実は談話室でハーマイオニーと宿題をやっていたのだが、彼女は答えをポンと言ってしまうのだ。秘密の部屋のルーン文字をスラスラ読めるようになりたいナツキにとっては、悪魔の所業だったため、図書館で一人黙々と課題と向き合っていたのだった。
「ああ。わかったよ。でもこれだけは言わせて。ナツキは多分、辞書の使い方を間違ってる。」
「え!?・・・・ど、どおりで・・・・」
「時代ごとに辞書のクセが違うんだよ。ほら、ナツキのは5世紀用で・・・」
その後も少しずつセドリックに教えてもらって、ナツキはなんとか苦戦していた古代ルーン文字の宿題を終えた。
「ありがとう。セドリック。教えるのが上手だね。ルーン文字の宿題をこんなに順調にできたの初めて!」
「ナツキが自分でいっぱい頑張ったからだよ。」
ナツキが宿題を終えてセドリックと図書館を出ると、マクゴナガル先生がいた。ナツキはマクゴナガル先生のことは好きだったが、ちょっぴり気が沈んでしまった。なぜなら、
「ああ、ゴドリクソン。図書室にいたのですね。まさか、談話室からここまで一人で歩いてきたのですか?」
「・・・・はい。そうです。」
これだ。「太った婦人」の騒動の後、先生方はハリーとナツキを一人にすまいと、至る所についてきたがる。お陰でナツキは、しばらくサイラスに会いにいけていない。ハリーもうんざりしているようだった。
「図書館ではディゴリーといたのですか?」
「はい、そうです。」
ナツキがそう返すとマクゴナガル先生はホッとした表情を見せた。
「ならばまあ良いでしょう。ディゴリー、夕食に行くようでしたら、ナツキを大広間に連れて行きなさい。一人にしないように。」
セドリックは不思議そうにしていたが、「はい」と返事をした。そしてマクゴナガル先生はセドリックにナツキを任せ、どこかに行った。
「マクゴナガル先生、どうかしたの?」
「・・・・過保護な気分みたい。」
自分がブラックに狙われているらしいから、とはなんとなく言えなかった。
「それより、今度のクィディッチはうちとグリフィンドールの試合に変更になったんだよ。もう聞いてた?」
「そうなの?知らなかった。でもなんで?」
ナツキが何気なく尋ねると、マルフォイの怪我が原因だとセドリックは言った。
「そんなの嘘だよ!!!」
ナツキが怒ってそう言うと、セドリックは困ったように微笑んだ。ナツキはセドリックは人を悪く言わないのだと気づいた。
「ナツキはどっちを応援してくれる?」
「え?そんなのグリフィンドールに決まってるよ!」
「そうなんだ。残念だな。僕、今年からキャプテンなんだ。応援してくれたら嬉しかったんだけど。」
セドリックはそう冗談を言った。ナツキがグリフィンドール以外を応援することはないと知っていたからだ。
「セドリックってば、クィディッチの選手だったの!?」
驚愕の新事実だ。ナツキは口をあんぐり開けた。
「あれ、知らなかったんだ。恥ずかしいな。今までもグリフィンドールとの試合に出てたんだけどね。僕、シーカーなんだよ。」
「・・・ごめんね。私、ハリー以外はあんまり見てないの。」
ナツキとしては、試合でしょっちゅうハリーが命の危機に陥るため注意して見ているだけではあるのだが、セドリックはいつものようににっこりはしてくれなかった。いつもよりキリッとして「じゃあ僕も見てもらえるように頑張らなきゃ」と言った。
試合当日の朝、談話室でナツキに声をかけたのはフレッドだった。
「おはよう、フレッド。頑張ってね!」
「おう、ナツキ、ありがとな。」
「ジョージは?」
「相棒はもうすぐ降りてくるぜ。あ、そうだ、ナツキ。相棒が来たら、」
フレッドはそう言ってコソコソとナツキに耳打ちした。
「それでジョージが元気出るの?」
「ああ、今あいつの中ではブームが巻き起こってるんだ。土砂降りでも元気爆発間違いなしだぜ。」
フレッドが談話室を出ていってすぐ、ジョージが寝室から降りてきた。
「ジョージ!」
「ナツキ、おは・・・」
ナツキが挨拶兼応援の意味を込めて、ジョージにハグをすると、ジョージは固まってしまった。
「試合、頑張ってね!」
「お、おーう。」
ポケっとしながら、ジョージは朝食を食べに大広間に行ってしまった。「ちょいとハグしてやれば元気爆発だ」というフレッドの言葉が嘘だったんじゃないかとナツキは訝しげにその背中を見送った。
試合が始まり、ナツキはロンとハーマイオニーとスタンドでハリーを探す。土砂降りだ。正直この雨では、誰が誰だかもよくわからない。
「ねえ、ハリー、スニッチ探せるかな?」
「どうかしら・・・。眼鏡に防水の・・・あ、それがいいわね!私、ちょっと行ってくるわ。」
ハーマイオニーはそう言って、ピッチの方へと降りていった。多分、ハリーの眼鏡に魔法をかけに行くんだろう。
「寒いね。雷もすごい。」
「そうだな。うう〜、震えちまう。」
ロンはガタガタと震えていた。本当に寒そうだ。
「あったかい飲み物もらってくるから、ここで場所取ってて。」
「オーケー!」
スタンドの後ろの方にドリンクの移動販売があるので、ナツキはそちらに向かって階段を登っていった。
「ん?」
少し離れた観客がまばらなところに、真っ黒な毛の塊のようなものがあった。
「なんだろ?・・・・あ、犬?」
よく目を凝らしてみると、大きな犬のようだった。気のせいだろうか。目があったような気がした。
「ハグリッドのかな。あ、すみません、ホットココアを・・・・・え?」
なぜだか突然全身が凍えるように寒くなった。反射的に上をみると、百体以上の吸魂鬼がピッチ上空にいた。そしてそのうちの何体かが、ナツキを見た。
「え・・・」
訳もわからず立ち尽くしていると、そのうち数体がナツキに向かってきた。体中の血が氷水に変わったようだ。
また、悲鳴が聞こえた。
『アバダ・ケダブラ』
『キャアアアア!!』
殺さないで。ダメ・・・・ダメ・・・・・。
『このガキさえいれば・・・・』
『ナツキを放せ!!』
助けて・・・助けて・・・・
「助けて・・・お父さん・・・・」
ワン、と犬の鳴き声が聞こえた気がした。
「ナツキ!」
「・・・・・ジョージ・・・・?」
ナツキが目を開けるとそこは医務室だった。隣のベッドにはハリーがいて、同じように目を覚ましたらしい。周りには泥だらけのクィディッチの選手と、びしょ濡れのロンとハーマイオニーがいた。
そうか。吸魂鬼に襲われたんだ。隣にハリーがいるということは、ハリーも同じ目にあったんだろう。
「どうなったの?」
ハリーが試合のことを選手たちに聞いた。どうやらグリフィンドールは負けたらしい。ジョージが説明を続けた。
「ディゴリーがスニッチを取った。君が落ちた直後にね。何が起こったのか、あいつは気がつかなかったんだ。振り返って君が地面に落ちているのを見て、ディゴリーは試合中止にしようとした。やり直しを望んだんだ。でも、向こうが勝ったんだ。フェアにクリーンに・・・・ウッドでさえ認めたよ。」
セドリックなら確かにそう言うだろう。そういう優しい人だ。
いずれにせよグリフィンドールが優勝するには他の2寮に勝つことに加えて、ハッフルパフがレイブンクローに200点差で負けるという奇跡が必要みたいだった。
「また見舞いに来るよ。なんか欲しいのはあるか?」
「え、っと・・・あ、じゃあカボチャジュース・・・」
「わかった。ナツキ、それ好きだよな。じゃあゆっくり休めよ。」
ジョージがナツキの頭にポンと手を置いたのを最後に、選手たちはハリーとナツキに挨拶をして医務室を出ていった。
「兄貴たち、ナツキには甘いよな。」
ロンの言葉に、「フレッドはそうでもない」と言おうとしたが、それはやめておいた。
「ダンブルドアは本気で怒ってたわ。」
ハーマイオニーが震え声で言った。
「あんなに怒っていらっしゃるのを見たことがない。ハリーが落ちた時、ピッチに駆け込んで、杖を振って、そしたら、あなたが地面にぶつかる前に、少しスピードが遅くなったのよ。それからダンブルドアは杖を吸魂鬼に向けて回したの。あいつらに向かって何か銀色のものが飛び出したわ。あいつら、すぐに競技場を出ていった・・・・。ダンブルドアはあいつらが学校の敷地内に入ってきたことでカンカンだったわ。そう言っているのが聞こえた・・・・・」
「それからダンブルドアは魔法で担架を出してハリーとスタンドで倒れていたナツキを乗せた。浮かぶ担架につき添って、ダンブルドアが学校まで君達を運んだんだ。みんな二人が・・・・」
ロンの声が弱々しく途中で消えた。
「誰か僕のニンバスつかまえてくれた?」
そのハリーの質問に対する答えは最悪だった。ハリーの大切で忠実なニンバス2000は粉々になっていた。