アズカバンの囚人
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ナツキはさらなる課題に直面していた。
「5階のかつらをつけた魔女の絵画の・・・・え?かつらって見てわかるもの???」
片手に「スペルマンのすっきり音節」と書かれた教科書を持ちながら、ナツキは5階をうろうろしていた。この教科も選択している生徒が少ないし、例によってハーマイオニーは神出鬼没で一人で教室に行くしかない。
「ナツキ、また教室がわからない?」
「うわ!」
突然声をかけられ振り向いた先には、セドリック・ディゴリーがいた。
「あの、古代ルーン語の教室がわからなくて・・・・」
「こっちだよ。」
セドリックは迷わずそう言って、ナツキの斜め前を歩いた。
「バブリング先生はいい人だよ。安心して授業を受けておいで。」
「セドリックもルーン語を選択してるの?」
「うん。成績も悪くないから、困ったことがあったら遠慮なく聞いて。」
いい人だ!セドリック・ディゴリー!!ハッフルパフの鑑だ!ナツキの心の中は大喝采であった。
「ほら、ここだよ。この絵画が目印。」
「かつらだ!」
今回も見事にパーシーに聞いてきたはずだが、そのアドバイスを生かしきれなかった。
「これが終わったら次の授業はある?」
「うん。防衛術があるよ。」
セドリックはニコッと笑って続けた。
「じゃあ、授業が終わる頃に迎えにくるからここで待っていて。この辺り複雑だろ?」
ナツキは顔を輝かせた。セドリックって!本当に!いい人だ!
「ありがとう!そうしてくれると嬉しいなって思ってたの!」
「お安い御用だよ。じゃあ、またね。」
「うん!」
セドリックはそう言って小走りでその場を去っていった。考えてみれば5年生の彼は授業がたくさんあるはずだ。
「・・・びっくりするくらい優しい・・・・・」
思わず口から驚きが飛び出した。超がつくお人好しだと聞いている祖父もあんな人だったのだろうかと思いながらナツキは教室に入っていった。
「うわっ」
また気づくと隣にハーマイオニーがいるという怪奇現象が起きた。
「どうかなさいましたか、ミス・ゴドリクソン。」
「い、いえ。すみません、バブリング先生・・・・」
授業が終わり、ナツキは結構宿題が大変そうだな、と気落ちしていた。西塔の秘密の部屋の本を読めるようになりたいから頑張りたいが、それはずいぶん先になりそうだ、と思った。
「ナツキ、防衛術の教室に行きましょう。」
「え!ハーマイオニー、一緒に行ってくれるの?実はね、」
この後セドリックが迎えにくると言っていたことをハーマイオニーに伝える。何はともあれ、この先は忙しそうなセドリックに頼まなくても済むのだ、とナツキは安心した。と、思ったが、ハーマイオニーは目をパチクリさせて微笑んだ。
「なら、私はお邪魔ね!今後もできるだけセドリックに頼むといいわ!彼、とってもハンサムで優しいし最高じゃない!」
「え?あ、でもわざわざきてもらうのは悪いし、ハーマイオニーがいるなら、」
「じゃあね、ナツキ。また授業で!」
「え〜〜〜!?」
ハーマイオニーはそう言い残してとっとと行ってしまったのだ。何たることだ。呆然としていると、数分後にセドリックがきた。少し、息が上がっている。きっと階段を走ってきたのだ。
「ナツキ、ごめん、待たせちゃったね。」
「そんなことより、セドリック今急いできたでしょ?わざわざごめんね・・・・。忙しい時は、ちゃんとそう言わないとダメだよ!」
「僕はしたいことをしてるだけだよ。」
セドリックはニコッと笑ってそう言ってのけた。ナツキの次の教室に二人で向かいながら会話を続ける。
「セドリック、この次って授業あるの?」
「あー、うん。」
「・・・・なんの?」
セドリックが小さな声で「魔法薬学」と言った。つまり、地下牢教室だ。しかしナツキの次の教室は4階。地下牢教室とはだいぶ距離がある。
「ダメダメ!早く向かって!ここまできたらもう分かるから!遅れたらスネイプ先生に減点されちゃう!」
「間に合わせるから、大丈夫。ほら、こっち。」
結局、セドリックは防衛術の教室のすぐ近くまで送ってくれた。そして小走りで去っていったのだった。
申し訳ない気持ちで、教室に着席すると、ハーマイオニーが嬉しそうな声でコソコソと「たくさん話せた?」と聞いてきた。
「そんなわけないよ。セドリック、次は魔法薬学って言ってたよ!わざわざここまで送ってくれなくてもよかったのに、なんであんなにお人好しなのか・・・・」
「まあ、そんなの決まってるじゃない。」
「え?」
「こっちの話よ。」
ハーマイオニーの言っていることはわからなかったが、今日も防衛術の授業は楽しかった。
10月に入る頃には、さすがのナツキも一人で教室の行き来ができるようになった。
「だから、もう大丈夫だよ、セドリック。」
「そうかい?・・・じゃあ、えーと・・・困ったことがあったらすぐに教えて。フクロウ便をくれればいいから。宿題でも、なんでも・・・・あ、そうだ!そろそろホグズミードの知らせが来ると思うけど・・・・・その、一緒に行かない?」
ナツキは急に気持ちが沈んでしまった。ホグズミードのことをすっかり忘れていたのに、思い出してしまった。
「・・・私、許可証にサインしてもらえなかったの。今は危ないからダメだって。」
「え、あー、それはごめん。僕、知らなくて・・・・」
セドリックの顔がさっきは赤かったのに、真っ青になった。
「別にいいよ。誘ってくれてありがとう。またね、セドリック。」
その日の夜、談話室で宿題をしていると、ちょうどホグズミードの案内が来ていた。ナツキとハリーは沈んだ気持ちになった。
「ハリー、ナツキ、この次にはきっと行けるわ。ブラックはすぐ捕まるに決まってる。一度は目撃されてるし。」
「ハリー、ナツキ、マクゴナガルに聞けよ。今度行っていいかって。次なんて永遠に来ないぜ。」
「ロン!二人は学校内にいなきゃいけないのよ!」
ロンとハーマイオニーが争う傍らにクルックシャンクスが蜘蛛を咥えてやってきた。そのせいでロンはイライラしながら宿題に向かった。クィディッチの練習から帰ったばかりのハリーを手伝おうと、ナツキはハリーの脇で既に終わった自分の星座図を広げた。
「ありがとう。」
「ううん。練習お疲れ様。」
クルックシャンクスは、ぼさぼさの尻尾を振り振り、瞬きもせずにロンを見つめ続けていたが、出し抜けに跳んだ。 クルックシャンクスは四本脚の爪全部を、ロンのカバンに深々と食い込ませ、猛烈に引っ掻きだした。
「はなせ!この野郎!」
ロンはクルックシャンクスからカバンをもぎ取ろうとしたが、クルックシャンクスはシャーッシャーッと唸り、カバンを引き裂き、てこでも離れない。ロンはカバンを振り回したが、クルックシャンクスはぴったり張りついたままで、スキャバーズのほうがカバンからポーンと飛び出した。
「あの猫を捕まえろ!」
ロンが叫んだ。クルックシャンクスは抜け殻のカバンを離れ、テーブルに飛び移り、命からがら逃げるスキャバーズのあとを追った。
さんざん手こずったが、なんとかロンはスキャバーズを救い出した。
「見ろよ!こんなに骨と皮になって!その猫をスキャバーズに近づけるな!」
「クルックシャンクスにはそれが悪いことだってわからないのよ!ロン、猫はネズミを追っかけるもんだわ!」
ロンとハーマイオニーは言い争った。ロンは結局怒って部屋に行ってしまった。ナツキとハリーは、どうすべきかと悩んだが、結局宿題をすることに決めた。
「ナツキ、これは何?」
「ああ、この星は・・・」
キリのいいところまで行くとハリーは黙々と作業をし始め、ナツキは手持ち無沙汰になった。
もう寝ようかな、と思ったところで、ジョージとフレッドがナツキを取り囲んでいた。
「え、何?」
フレッドがやたらとニヤニヤしている。この双子のニヤニヤは怖い。だがジョージは、正反対の顔をしていた。
「ナツキ、ホグズミード行かないのか?」
「・・・・ブラックが捕まればいけるよ。」
ジョージの質問にしょんぼり答えると、一方のフレッドがニヤニヤしながら口を開いた。
「ああ、ナツキを誘おうと思っていたのに!それで俺はナツキを見倣って迷子になる予定だったのに!ああ、残念だ・・・・あいたっ!」
ジョージが突然フレッドの頭にゴツんと拳を当てた。痛そうだ。フレッドの言いたいことは分からないが、馬鹿にされていることだけは伝わった。
「もう今年の教室覚えたもん。」
ナツキがそういうと、フレッドもジョージも驚いたように瞬きをした。失礼な人たちだ。
「ロンたちと違う教科選択してなかったか?一人で行けたのか?」
ジョージが不思議そうに聞いてきた。失礼だ。いや、一人では行けていないな、とナツキは思い直した。
「・・・・9月の間はセドリックが面倒を見てくれたの。でも、もう覚えたよ。」
ナツキは恥ずかしくて、目を逸らしながらそういった。「覚えたよ」のところは強調して言った。
「「ハッフルパフのセドリック・ディゴリー?」」
「うん。」
ナツキが息ぴったりな双子たちにそう返すと、ジョージは口を開けてポカンとし、フレッドは「なんてこった」と頭を抱えた。
「9月の間って・・・一回きりとかではなく?」
「うん。セドリックも授業があるから、大丈夫だよって言ったけど、心配だからってついてきてくれてたの。優しい人だよね。一回も私の方向音痴を馬鹿にしなかったし。」
ナツキが二人を半目で見つめてそういうと、双子は顔を合わせ適当に誤魔化した。そして何か二人でコソコソと会話をし、ジョージがこっちを向いた。耳が赤いような気がする。小さなひそひそ声で、ジョージは口を開いた。
「行けるようになったら、最初に俺と行かない?その、ハリーたちとじゃなくて。」
「え?」
ナツキはちょっと悩んだ。行けるようになったら、ハリーと行くことしか考えていなかったからだ。でも、必ずハリーと行かなければいけない決まりはない。
「わかった。いいよ。」
「本当か?」
ジョージは嬉しそうだ。フレッドも嬉しそうにはしゃいでいる。
リー・ジョーダンもいるのかな?ゾンコの店に行くんだろうな。
ナツキはこの時、ジョージが「俺たちと」ではなく「俺と」と言ったことに気づいていなかった。
ハロウィーンの朝、ナツキとハリーはホグズミードに行くみんなを見送った。
「図書室で宿題でもする?」
「うーん・・・・」
二人ですることもなくなんとなく図書室に向かうと、フィルチに出くわしてしまった。談話室に行けと言われたが、二人ともそんな気になれなかった。
「レオーネとヘドウィグのところに行かない?」
ナツキはハリーの提案に頷いた。廊下をいくつか歩いていると、ルーピン先生に出会い、先生がお茶に誘ってくれた。
ルーピン先生の部屋には届いたばかりの水魔がいた。先生が杖で叩くと、たちまちヤカンの口から湯気が噴き出した。
「お座り。すまないが、ティー・バッグしかないんだ。しかし、お茶の葉はうんざりだろう?」
ナツキはクスッと笑った。先生はハリーが占い学で酷い目に遭わされたことを聞いていたらしい。
「心配事があるのかい、ハリー?」
「いいえ。・・・はい、あります。」
ハリーは紅茶を置いて、なぜ自分とボガートを戦わせなかったのかを尋ねた。
「まね妖怪が君に立ち向かったら、ヴォルデモート卿の姿になるだろうと思った。」
ハリーもナツキも目を見開いた。先生はヴォルデモートの名前を口にした。
「たしかに、私の思い違いだった。しかし、あの職員室でヴォルデモート卿の姿が現れるのはよくないと思った。みんなが恐怖にかられるだろうからね。」
先生の言葉にナツキはびくりと肩を揺らした。
「最初はたしかにヴォルデモートを思い浮かべました。でも、僕、僕は吸魂鬼のことを思い出したんです。」
ハリーのその発言を聞いて、ルーピン先生はハリーを誉めた。そのことで、ナツキは気が沈んだ。
「先生、すみません・・・・。私・・・私が出してしまいました。ヴォルデモート・・・トム・リドルを。・・・・私、ハリーのように勇敢でいられなかったんです。」
ルーピン先生はにこりと微笑んだ。
「ダンブルドア先生から、君たちの冒険のことを少し聞いているよ。ナツキ、君は十分すぎるほどに勇敢だ。でも、君が一番すごいところは、その勇敢さを発揮するのが、友達のためだということだ。謝る必要なんて何もないよ。」
ナツキはルーピン先生がますます好きになった。
「ルーピン先生。あの、吸魂鬼のことですが、」
ハリーが別の話をしようとした時、ちょうどスネイプ先生が変な薬を持ってやってきた。
「ルーピン、すぐ飲みたまえ。」
「はい、はい。そうします。」
なんかやばそうな薬だけど、大丈夫なのかと、ナツキはハリーと目を合わせた。ハリーも不安そうな顔をしている。スネイプ先生が出て行った室内で、ルーピン先生はそれに口をつけた。
「せ、先生、その薬は必要なものなんですか?飲まない方が・・・・」
「スネイプ先生が私のためにわざわざ薬を調合してくださった。このごろどうも調子がおかしくてね。この薬しか効かないんだ。スネイプ先生と同じ職場で仕事ができるのは本当にラッキーだ。これを調合できる魔法使いは少ない。」
ルーピン先生はまたひと口飲んだ。
「スネイプ先生は闇の魔術にとっても関心があるんです。」
ハリーが思わず口走った。その勢いで、その薬が毒かなんかじゃないかと遠回しに言ったがルーピン先生はそれを飲み干して、「後で宴会で会おう」と言った。
その後ホグズミードから帰ってきたロンとハーマイオニーからお土産をもらい、四人でハロウィーンの宴に行った。
「ルーピン先生、元気そうだよ。」
ナツキが先生たちのテーブルを見てハリーにそう言うと、ハリーも安心したようだった。
「うう、去年とは全然違う・・・・!!」
ナツキが去年の絶命日パーティーを思い出しながら美味しいお菓子を食べていると、ロンが食べ物で口を膨らませながら、「ナツキは去年食べるどころか吐いてたもんな」と余計なことを言った。
「ロニー坊やのばか。」
そんなこともあったが、宴は楽しく終えた。四人でお腹をいっぱいに膨らませて談話室へ向かう。しかし、途中でグリフィンドール生がすし詰め状態になった。
「どうしたんだろう?レディが飲み歩いてるのかな?」
ナツキが呑気にそんなことを言ってハリーたちと話をして待っていたが、事態はダンブルドア先生が来るほど深刻だった。なんだろうかと、ハリーたちと前の方の様子を見に行くと、ナツキは絶句した。
太った婦人の肖像画はめった切りにされて、キャンバスの一部が床に散らばっていた。他の先生たちも続々と駆けつけた。
「『婦人』を探さなければならん」
ダンブルドア先生が言った。
「見つかったらお慰み!」
ピーブズの甲高いしわがれ声がした。
「校長閣下、恥ずかしかったのですよ。見られたくなかったのですよ。あの女はズタズタでしたよ。五階の風景画の中を走ってゆくのを見ました。木にぶつからないようにしながら走ってゆきました。ひどく泣き叫びながらね」
「『婦人』は誰がやったか話したかね?」
「ええ、たしかに。校長閣下。そいつは、『婦人』が入れてやらないんでひどく怒っていましたねえ。あいつは癇癪持ちだねえ。あのシリウス・ブラックは。」
ナツキは忘れかけてた怒りの炎が胸をジリジリと焼き焦がすのを感じた。
「5階のかつらをつけた魔女の絵画の・・・・え?かつらって見てわかるもの???」
片手に「スペルマンのすっきり音節」と書かれた教科書を持ちながら、ナツキは5階をうろうろしていた。この教科も選択している生徒が少ないし、例によってハーマイオニーは神出鬼没で一人で教室に行くしかない。
「ナツキ、また教室がわからない?」
「うわ!」
突然声をかけられ振り向いた先には、セドリック・ディゴリーがいた。
「あの、古代ルーン語の教室がわからなくて・・・・」
「こっちだよ。」
セドリックは迷わずそう言って、ナツキの斜め前を歩いた。
「バブリング先生はいい人だよ。安心して授業を受けておいで。」
「セドリックもルーン語を選択してるの?」
「うん。成績も悪くないから、困ったことがあったら遠慮なく聞いて。」
いい人だ!セドリック・ディゴリー!!ハッフルパフの鑑だ!ナツキの心の中は大喝采であった。
「ほら、ここだよ。この絵画が目印。」
「かつらだ!」
今回も見事にパーシーに聞いてきたはずだが、そのアドバイスを生かしきれなかった。
「これが終わったら次の授業はある?」
「うん。防衛術があるよ。」
セドリックはニコッと笑って続けた。
「じゃあ、授業が終わる頃に迎えにくるからここで待っていて。この辺り複雑だろ?」
ナツキは顔を輝かせた。セドリックって!本当に!いい人だ!
「ありがとう!そうしてくれると嬉しいなって思ってたの!」
「お安い御用だよ。じゃあ、またね。」
「うん!」
セドリックはそう言って小走りでその場を去っていった。考えてみれば5年生の彼は授業がたくさんあるはずだ。
「・・・びっくりするくらい優しい・・・・・」
思わず口から驚きが飛び出した。超がつくお人好しだと聞いている祖父もあんな人だったのだろうかと思いながらナツキは教室に入っていった。
「うわっ」
また気づくと隣にハーマイオニーがいるという怪奇現象が起きた。
「どうかなさいましたか、ミス・ゴドリクソン。」
「い、いえ。すみません、バブリング先生・・・・」
授業が終わり、ナツキは結構宿題が大変そうだな、と気落ちしていた。西塔の秘密の部屋の本を読めるようになりたいから頑張りたいが、それはずいぶん先になりそうだ、と思った。
「ナツキ、防衛術の教室に行きましょう。」
「え!ハーマイオニー、一緒に行ってくれるの?実はね、」
この後セドリックが迎えにくると言っていたことをハーマイオニーに伝える。何はともあれ、この先は忙しそうなセドリックに頼まなくても済むのだ、とナツキは安心した。と、思ったが、ハーマイオニーは目をパチクリさせて微笑んだ。
「なら、私はお邪魔ね!今後もできるだけセドリックに頼むといいわ!彼、とってもハンサムで優しいし最高じゃない!」
「え?あ、でもわざわざきてもらうのは悪いし、ハーマイオニーがいるなら、」
「じゃあね、ナツキ。また授業で!」
「え〜〜〜!?」
ハーマイオニーはそう言い残してとっとと行ってしまったのだ。何たることだ。呆然としていると、数分後にセドリックがきた。少し、息が上がっている。きっと階段を走ってきたのだ。
「ナツキ、ごめん、待たせちゃったね。」
「そんなことより、セドリック今急いできたでしょ?わざわざごめんね・・・・。忙しい時は、ちゃんとそう言わないとダメだよ!」
「僕はしたいことをしてるだけだよ。」
セドリックはニコッと笑ってそう言ってのけた。ナツキの次の教室に二人で向かいながら会話を続ける。
「セドリック、この次って授業あるの?」
「あー、うん。」
「・・・・なんの?」
セドリックが小さな声で「魔法薬学」と言った。つまり、地下牢教室だ。しかしナツキの次の教室は4階。地下牢教室とはだいぶ距離がある。
「ダメダメ!早く向かって!ここまできたらもう分かるから!遅れたらスネイプ先生に減点されちゃう!」
「間に合わせるから、大丈夫。ほら、こっち。」
結局、セドリックは防衛術の教室のすぐ近くまで送ってくれた。そして小走りで去っていったのだった。
申し訳ない気持ちで、教室に着席すると、ハーマイオニーが嬉しそうな声でコソコソと「たくさん話せた?」と聞いてきた。
「そんなわけないよ。セドリック、次は魔法薬学って言ってたよ!わざわざここまで送ってくれなくてもよかったのに、なんであんなにお人好しなのか・・・・」
「まあ、そんなの決まってるじゃない。」
「え?」
「こっちの話よ。」
ハーマイオニーの言っていることはわからなかったが、今日も防衛術の授業は楽しかった。
10月に入る頃には、さすがのナツキも一人で教室の行き来ができるようになった。
「だから、もう大丈夫だよ、セドリック。」
「そうかい?・・・じゃあ、えーと・・・困ったことがあったらすぐに教えて。フクロウ便をくれればいいから。宿題でも、なんでも・・・・あ、そうだ!そろそろホグズミードの知らせが来ると思うけど・・・・・その、一緒に行かない?」
ナツキは急に気持ちが沈んでしまった。ホグズミードのことをすっかり忘れていたのに、思い出してしまった。
「・・・私、許可証にサインしてもらえなかったの。今は危ないからダメだって。」
「え、あー、それはごめん。僕、知らなくて・・・・」
セドリックの顔がさっきは赤かったのに、真っ青になった。
「別にいいよ。誘ってくれてありがとう。またね、セドリック。」
その日の夜、談話室で宿題をしていると、ちょうどホグズミードの案内が来ていた。ナツキとハリーは沈んだ気持ちになった。
「ハリー、ナツキ、この次にはきっと行けるわ。ブラックはすぐ捕まるに決まってる。一度は目撃されてるし。」
「ハリー、ナツキ、マクゴナガルに聞けよ。今度行っていいかって。次なんて永遠に来ないぜ。」
「ロン!二人は学校内にいなきゃいけないのよ!」
ロンとハーマイオニーが争う傍らにクルックシャンクスが蜘蛛を咥えてやってきた。そのせいでロンはイライラしながら宿題に向かった。クィディッチの練習から帰ったばかりのハリーを手伝おうと、ナツキはハリーの脇で既に終わった自分の星座図を広げた。
「ありがとう。」
「ううん。練習お疲れ様。」
クルックシャンクスは、ぼさぼさの尻尾を振り振り、瞬きもせずにロンを見つめ続けていたが、出し抜けに跳んだ。 クルックシャンクスは四本脚の爪全部を、ロンのカバンに深々と食い込ませ、猛烈に引っ掻きだした。
「はなせ!この野郎!」
ロンはクルックシャンクスからカバンをもぎ取ろうとしたが、クルックシャンクスはシャーッシャーッと唸り、カバンを引き裂き、てこでも離れない。ロンはカバンを振り回したが、クルックシャンクスはぴったり張りついたままで、スキャバーズのほうがカバンからポーンと飛び出した。
「あの猫を捕まえろ!」
ロンが叫んだ。クルックシャンクスは抜け殻のカバンを離れ、テーブルに飛び移り、命からがら逃げるスキャバーズのあとを追った。
さんざん手こずったが、なんとかロンはスキャバーズを救い出した。
「見ろよ!こんなに骨と皮になって!その猫をスキャバーズに近づけるな!」
「クルックシャンクスにはそれが悪いことだってわからないのよ!ロン、猫はネズミを追っかけるもんだわ!」
ロンとハーマイオニーは言い争った。ロンは結局怒って部屋に行ってしまった。ナツキとハリーは、どうすべきかと悩んだが、結局宿題をすることに決めた。
「ナツキ、これは何?」
「ああ、この星は・・・」
キリのいいところまで行くとハリーは黙々と作業をし始め、ナツキは手持ち無沙汰になった。
もう寝ようかな、と思ったところで、ジョージとフレッドがナツキを取り囲んでいた。
「え、何?」
フレッドがやたらとニヤニヤしている。この双子のニヤニヤは怖い。だがジョージは、正反対の顔をしていた。
「ナツキ、ホグズミード行かないのか?」
「・・・・ブラックが捕まればいけるよ。」
ジョージの質問にしょんぼり答えると、一方のフレッドがニヤニヤしながら口を開いた。
「ああ、ナツキを誘おうと思っていたのに!それで俺はナツキを見倣って迷子になる予定だったのに!ああ、残念だ・・・・あいたっ!」
ジョージが突然フレッドの頭にゴツんと拳を当てた。痛そうだ。フレッドの言いたいことは分からないが、馬鹿にされていることだけは伝わった。
「もう今年の教室覚えたもん。」
ナツキがそういうと、フレッドもジョージも驚いたように瞬きをした。失礼な人たちだ。
「ロンたちと違う教科選択してなかったか?一人で行けたのか?」
ジョージが不思議そうに聞いてきた。失礼だ。いや、一人では行けていないな、とナツキは思い直した。
「・・・・9月の間はセドリックが面倒を見てくれたの。でも、もう覚えたよ。」
ナツキは恥ずかしくて、目を逸らしながらそういった。「覚えたよ」のところは強調して言った。
「「ハッフルパフのセドリック・ディゴリー?」」
「うん。」
ナツキが息ぴったりな双子たちにそう返すと、ジョージは口を開けてポカンとし、フレッドは「なんてこった」と頭を抱えた。
「9月の間って・・・一回きりとかではなく?」
「うん。セドリックも授業があるから、大丈夫だよって言ったけど、心配だからってついてきてくれてたの。優しい人だよね。一回も私の方向音痴を馬鹿にしなかったし。」
ナツキが二人を半目で見つめてそういうと、双子は顔を合わせ適当に誤魔化した。そして何か二人でコソコソと会話をし、ジョージがこっちを向いた。耳が赤いような気がする。小さなひそひそ声で、ジョージは口を開いた。
「行けるようになったら、最初に俺と行かない?その、ハリーたちとじゃなくて。」
「え?」
ナツキはちょっと悩んだ。行けるようになったら、ハリーと行くことしか考えていなかったからだ。でも、必ずハリーと行かなければいけない決まりはない。
「わかった。いいよ。」
「本当か?」
ジョージは嬉しそうだ。フレッドも嬉しそうにはしゃいでいる。
リー・ジョーダンもいるのかな?ゾンコの店に行くんだろうな。
ナツキはこの時、ジョージが「俺たちと」ではなく「俺と」と言ったことに気づいていなかった。
ハロウィーンの朝、ナツキとハリーはホグズミードに行くみんなを見送った。
「図書室で宿題でもする?」
「うーん・・・・」
二人ですることもなくなんとなく図書室に向かうと、フィルチに出くわしてしまった。談話室に行けと言われたが、二人ともそんな気になれなかった。
「レオーネとヘドウィグのところに行かない?」
ナツキはハリーの提案に頷いた。廊下をいくつか歩いていると、ルーピン先生に出会い、先生がお茶に誘ってくれた。
ルーピン先生の部屋には届いたばかりの水魔がいた。先生が杖で叩くと、たちまちヤカンの口から湯気が噴き出した。
「お座り。すまないが、ティー・バッグしかないんだ。しかし、お茶の葉はうんざりだろう?」
ナツキはクスッと笑った。先生はハリーが占い学で酷い目に遭わされたことを聞いていたらしい。
「心配事があるのかい、ハリー?」
「いいえ。・・・はい、あります。」
ハリーは紅茶を置いて、なぜ自分とボガートを戦わせなかったのかを尋ねた。
「まね妖怪が君に立ち向かったら、ヴォルデモート卿の姿になるだろうと思った。」
ハリーもナツキも目を見開いた。先生はヴォルデモートの名前を口にした。
「たしかに、私の思い違いだった。しかし、あの職員室でヴォルデモート卿の姿が現れるのはよくないと思った。みんなが恐怖にかられるだろうからね。」
先生の言葉にナツキはびくりと肩を揺らした。
「最初はたしかにヴォルデモートを思い浮かべました。でも、僕、僕は吸魂鬼のことを思い出したんです。」
ハリーのその発言を聞いて、ルーピン先生はハリーを誉めた。そのことで、ナツキは気が沈んだ。
「先生、すみません・・・・。私・・・私が出してしまいました。ヴォルデモート・・・トム・リドルを。・・・・私、ハリーのように勇敢でいられなかったんです。」
ルーピン先生はにこりと微笑んだ。
「ダンブルドア先生から、君たちの冒険のことを少し聞いているよ。ナツキ、君は十分すぎるほどに勇敢だ。でも、君が一番すごいところは、その勇敢さを発揮するのが、友達のためだということだ。謝る必要なんて何もないよ。」
ナツキはルーピン先生がますます好きになった。
「ルーピン先生。あの、吸魂鬼のことですが、」
ハリーが別の話をしようとした時、ちょうどスネイプ先生が変な薬を持ってやってきた。
「ルーピン、すぐ飲みたまえ。」
「はい、はい。そうします。」
なんかやばそうな薬だけど、大丈夫なのかと、ナツキはハリーと目を合わせた。ハリーも不安そうな顔をしている。スネイプ先生が出て行った室内で、ルーピン先生はそれに口をつけた。
「せ、先生、その薬は必要なものなんですか?飲まない方が・・・・」
「スネイプ先生が私のためにわざわざ薬を調合してくださった。このごろどうも調子がおかしくてね。この薬しか効かないんだ。スネイプ先生と同じ職場で仕事ができるのは本当にラッキーだ。これを調合できる魔法使いは少ない。」
ルーピン先生はまたひと口飲んだ。
「スネイプ先生は闇の魔術にとっても関心があるんです。」
ハリーが思わず口走った。その勢いで、その薬が毒かなんかじゃないかと遠回しに言ったがルーピン先生はそれを飲み干して、「後で宴会で会おう」と言った。
その後ホグズミードから帰ってきたロンとハーマイオニーからお土産をもらい、四人でハロウィーンの宴に行った。
「ルーピン先生、元気そうだよ。」
ナツキが先生たちのテーブルを見てハリーにそう言うと、ハリーも安心したようだった。
「うう、去年とは全然違う・・・・!!」
ナツキが去年の絶命日パーティーを思い出しながら美味しいお菓子を食べていると、ロンが食べ物で口を膨らませながら、「ナツキは去年食べるどころか吐いてたもんな」と余計なことを言った。
「ロニー坊やのばか。」
そんなこともあったが、宴は楽しく終えた。四人でお腹をいっぱいに膨らませて談話室へ向かう。しかし、途中でグリフィンドール生がすし詰め状態になった。
「どうしたんだろう?レディが飲み歩いてるのかな?」
ナツキが呑気にそんなことを言ってハリーたちと話をして待っていたが、事態はダンブルドア先生が来るほど深刻だった。なんだろうかと、ハリーたちと前の方の様子を見に行くと、ナツキは絶句した。
太った婦人の肖像画はめった切りにされて、キャンバスの一部が床に散らばっていた。他の先生たちも続々と駆けつけた。
「『婦人』を探さなければならん」
ダンブルドア先生が言った。
「見つかったらお慰み!」
ピーブズの甲高いしわがれ声がした。
「校長閣下、恥ずかしかったのですよ。見られたくなかったのですよ。あの女はズタズタでしたよ。五階の風景画の中を走ってゆくのを見ました。木にぶつからないようにしながら走ってゆきました。ひどく泣き叫びながらね」
「『婦人』は誰がやったか話したかね?」
「ええ、たしかに。校長閣下。そいつは、『婦人』が入れてやらないんでひどく怒っていましたねえ。あいつは癇癪持ちだねえ。あのシリウス・ブラックは。」
ナツキは忘れかけてた怒りの炎が胸をジリジリと焼き焦がすのを感じた。