アズカバンの囚人
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ナツキは次の日の朝早く、西棟の秘密の部屋を訪れていた。昨日はなんだかんだ時間がなくて会えなかったサイラスに会うためだ。
「一体どうなっているんだ!!」
夏休み明けのサイラスはひどく不機嫌だった。
「うじゃうじゃ何か嫌なものが入り込んでると思ったら吸魂鬼だとは。校長は一体何を考えているのか・・・・」
「ダンブルドア先生もすごく嫌がっているみたいだよ。」
汽車で襲われたことを話すと、サイラスはカンカンだった。
「そもそもあいつらは闇に生きるものだ。信用してはならん。ナツキ、できるだけ近づかないように。」
鬣を逆立ててサイラスはそう言った。もっとたくさん話をしたかったが、ナツキはスリザリンと合同の「魔法薬学」があったので仕方なく地下牢教室へ向かった。
魔法薬学は散々だった。マルフォイが昼近くになってようやく現れたかと思ったら、大袈裟に包帯を巻いていた。絶対あの包帯の下に傷なんてない。
ハリーとロンはマルフォイの手伝いを無理矢理やらされる羽目になってた。ナツキの中のスリザリンの好感度(寮監含む)がまだこれ以上下がるのかと驚いた。
ナツキは不機嫌になりながらも淡々と作業を続けていた。そばを通ったスネイプ先生は何も言わなかった。問題がないからだろう。そんなナツキの耳に、ハリーたちの会話が聞こえてきた。
「ポッター、一人でブラックを捕まえようって思ってるのか?」
「そうだ、そのとおりだ。」
ハリーは無造作に答えた。
「言うまでもないけど、僕だったら、もうすでに何かやってるだろうなぁ。いい子ぶって学校にじっとしてたりしない。ブラックを探しに出かけるだろうなぁ。ポッター、知らないのか?」
マルフォイは薄青い目を細めて、囁くように言った。
「何を?」
マルフォイは嘲るように低く笑った。
「君はたぶん危ないことはしたくないんだろうなぁ。吸魂鬼に任せておきたいんだろう? 僕だったら、復讐してやりたい。僕なら、自分でブラックを追いつめる。それに、あいつとも仲良くしたくないねぇ。」
なぜかナツキとマルフォイの目があった。今聞こえた「あいつ」というのが自分のことなのかとナツキは眉を顰めた。
「いったい何のことだ?ナツキを悪く言ったら、許さないぞ。」
ハリーは怒っていた。本当に、一体何のことだろう。私とハリーが仲良くすることの何が悪いんだと、イライラしながら、ナツキは薬を作り続けた。
最悪の気分で授業を終えたその日の午後、ナツキたちは「闇の魔術に対する防衛術」の教室に来ていた。生徒より少し遅れて、ルーピン先生は現れた。
「やあ、みんな。教科書はカバンに戻してもらおうかな。今日は実地練習をすることにしよう。杖だけあればいいよ。」
こんな防衛術の先生は初めてだった。ナツキはワクワクと今年こそはと期待し始めていた。
教室を出てルーピン先生についていく。道中、あの嫌なピーブズをうまくあしらう姿に、ナツキだけでなく皆が感激した。先生は職員室のドアの真ん前で立ち止まった。
「さあ、お入り。」
がらんとした部屋に、たった一人、スネイプ先生が低い肘掛椅子に座っていた。
「ルーピン、たぶん誰も君に忠告していないと思うが、このクラスにはネビル・ロングボトムがいる。この子には難しい課題を与えないようご忠告申し上げておこう。ミス・グレンジャーが耳元でひそひそ指図を与えるなら別だがね。」
「実は術の最初の段階で、ネビルに僕のアシスタントを務めてもらいたいと思ってましてね。ネビルはきっと、とてもうまくやってくれると思いますよ。」
ルーピン先生がスネイプ先生にそう言い返すと。スネイプ先生は職員室を出ていった。ルーピン先生はみんなに部屋の奥まで来るように合図した。そこには先生方が着替え用のローブを入れる古い洋箪笥がポツンと置かれていた。ルーピン先生がその脇に立つと、箪笥が急にわなわなと揺れ、バーンと壁から離れた。
「中にまね妖怪、ボガートが入ってるんだ。それでは、最初の問題ですが、まね妖怪のボガートとはなんでしょう?」
ハーマイオニーが手を挙げた。
「形態模写妖怪です。私たちが一番怖いと思うのはこれだと判断すると、それに姿を変えることができます。」
「私でもそんなにうまくは説明できなかったろう。だから、中の暗がりに座り込んでいるまね妖怪は、まだ何の姿にもなっていない。しかし、私が外に出してやると、たちまち、それぞれが一番怖いと思っているものに姿を変えるはずです。ということはつまり、初めっから私たちのほうがまね妖怪より大変有利な立場にありますが、ハリー、なぜだかわかるかな?」
「えーと――僕たち、人数がたくさんいるので、まね妖怪はどんな姿に変身すればいいかわからない?」
「そのとおり。・・・まね妖怪を退散させる呪文は簡単だ。しかし精神力が必要だ。こいつを本当にやっつけるのは、笑いなんだ。君たちは、まね妖怪に、君たちが滑稽だと思える姿をとらせる必要がある。初めは杖なしで練習しよう。私に続いて言ってみて。リディクラス!」
全員が一斉に「リディクラス」と唱えた。
「リディクラス、ばかばかしい!」全員がいっせいに唱えた。
「そう。とっても上手だ。でもここまでは簡単なんだけどね。呪文だけでは十分じゃないんだよ。そこで、ネビル、君の登場だ。」
ルーピン先生はネビルに怖いものを尋ねた。ネビルが「スネイプ先生」と答えると、みんなつい笑ってしまった。
「ネビル、まね妖怪が洋箪笥からウワーッと出てくるね、そして、君を見るね。そうすると、スネイプ先生の姿に変身するんだ。そしたら、君は杖を上げて、そして叫ぶんだ。『リディクラス』・・・そして、君のおばあさんの服装に精神を集中させる。すべてうまくいけば、ボガート・スネイプ先生はてっぺんにハゲタカのついた帽子をかぶって、緑のドレスを着て、赤いハンドバッグを持った姿になってしまう。」
クラスのみんなが大爆笑した。
「それ、見てみたいね。」
「ネビル!どうか成功して!」
ハリーとナツキがヒソヒソ声で笑い合った。
「ネビル、三つ数えてからだ。いーち、にー、さん、それ!」
スネイプ先生の姿をしたボガートが現れた。ネビルが「リディクラス!」と叫ぶと、ルーピン先生の思惑通り、スネイプ先生の蝙蝠のような服がネビルのお婆さんの格好に変わった。
ネビルの清光に触発されて、クラスのみんなが順々にボガートをおかしな姿に変えていく。
パーバティ、シェーマス、ディーン、が続くと、ボガートはナツキの前に現れた。
ナツキは以前ボガートに遭遇したことがある。その時、ボガートは箒に変わった。アバーフォースが杖を振って、ヘンテコなヤギに変えていたのを覚えている。
私も箒をあのヤギに変えてやろう、と思った。その時だった。
「・・・え・・・」
ボガートは箒の姿に変わらなかった。黒髪のハンサムな少年に変わったのだ。それは50年前のトム・リドルだった。
「・・・と・・・・」
小さな声でナツキは呟き、固まった。すぐ傍にいたハリーだけが、そのハンサムな少年の恐ろしさを知っていた。
ハリーは咄嗟にナツキのローブを引っ張り代わりに前に出た。ボガートがハリーの恐れるものに姿を変えようとした。ハリーが杖を構えた。
「こっちだ!」
急にルーピン先生がそう叫び、急いで前に出てきた。銀白色の玉が浮かんでいるのが見えた。
ルーピン先生が面倒くさそうに「リディクラス!」と唱えた。
「ネビル!前へ!やっつけるんだ!」
まね妖怪がゴキブリになって床に落ちたところでルーピンが叫んだ。パチン!スネイプが戻った。ネビルは今度は決然とした表情でぐいと前に出た。
「リディクラス!」
ほんの一瞬、レース飾りのドレスを着たスネイプの姿が見えたが、ネビルが大声で「ハハハ!」と笑うと、まね妖怪は破裂し、何千という細い煙の筋になって消え去った。
「よくやった!」
全員が拍手する中、ルーピン先生が大声を出した。
「ネビル、よくできた。みんな、よくやった。そうだな、まね妖怪と対決したグリフィンドール生一人につき五点をやろう。ネビルは十点だ。二回やったからね。ハーマイオニーとハリーも五点ずつだ。」
「でも、僕、何もしませんでした。それに、ナツキの邪魔をしてしまいました。」
「ハリー、君とハーマイオニーはクラスの最初に、私の質問に正しく答えてくれた。それに友人を思い遣ったことで減点はしないよ。よーし、みんな、いいクラスだった。宿題だ。ボガートに関する章を読んで、まとめを提出してくれ。月曜までだ。今日はこれでおしまい。」
みんな興奮してぺちゃくちゃ言いながら職員室を出た。ハリーとナツキくらい顔で、その集団から逸れた。
「ナツキ、僕、余計なこと・・・・」
「ううん、私、箒が出てくるとばっかり思ってて・・・・多分、無理だったから、正直助かった・・・・」
ハリーが辛い顔でナツキを見た。
「ナツキ、去年、僕がバジリスクと戦っている時、君に何があったのか聞いてなかった・・・・・。今更思い出すなんて、僕、最低だ。」
「ハリーが最低なんてことない!!!私が、言いにくくて言わなかったから・・・・。あのね、」
ナツキは話した。祖母がヴォルデモートに執着されていたこと、その矛先が今は自分に向かっている可能性があること。トム・リドルのねっとりした視線が恐ろしくてたまらなかったこと。1年の時に感じたヴォルデモートへの恐怖とは全く違っていたこと。
「次は、大丈夫。だってあれは本物じゃない。本物にだって、私は立ち向かうんだ・・・・・!」
「ナツキは強いよ。勇敢で、かっこいい。たくさん呪文も知ってる。いつも、僕のために色んなことをしてくれる。」
ハリーは一生懸命ナツキを励まそうとした。ナツキはさっきの恐怖が吹き飛んで、ポカポカした気持ちになった。
「それはハリーが最高の友達だからだよ!」
「そんなことないよ。さっきだって・・・・ルーピン先生はなんで僕のことを止めたんだろう。僕のこと・・・・弱いって思ったのかな。汽車で倒れたから・・・・あ、待って。今のは忘れて。」
ナツキはさっきのルーピン先生の振る舞いがハリーを傷つけてしまっていたと気づいた。そして一生懸命考えた。
「多分だけどヴォルデモートに変わると思ったんじゃないかな。・・・・変わったのは私の時だったけど。」
「ああ・・・だったら納得できるけど・・・・。でも僕、吸魂鬼を想像したんだ。だから吸魂鬼に変わると思うんだけどな。」
「吸魂鬼!確かにあれは嫌だね。なんでそれを思い出さなかったんだろう。昔、箒に変わったことなんて忘れてしまえたらよかったのに。」
ハリーは少し呆れて口を開いた。
「ナツキはもう箒、怖くないだろ?」
「・・・・それもそうだ。下手くそに変わりはないけれど・・・・・」
「一体どうなっているんだ!!」
夏休み明けのサイラスはひどく不機嫌だった。
「うじゃうじゃ何か嫌なものが入り込んでると思ったら吸魂鬼だとは。校長は一体何を考えているのか・・・・」
「ダンブルドア先生もすごく嫌がっているみたいだよ。」
汽車で襲われたことを話すと、サイラスはカンカンだった。
「そもそもあいつらは闇に生きるものだ。信用してはならん。ナツキ、できるだけ近づかないように。」
鬣を逆立ててサイラスはそう言った。もっとたくさん話をしたかったが、ナツキはスリザリンと合同の「魔法薬学」があったので仕方なく地下牢教室へ向かった。
魔法薬学は散々だった。マルフォイが昼近くになってようやく現れたかと思ったら、大袈裟に包帯を巻いていた。絶対あの包帯の下に傷なんてない。
ハリーとロンはマルフォイの手伝いを無理矢理やらされる羽目になってた。ナツキの中のスリザリンの好感度(寮監含む)がまだこれ以上下がるのかと驚いた。
ナツキは不機嫌になりながらも淡々と作業を続けていた。そばを通ったスネイプ先生は何も言わなかった。問題がないからだろう。そんなナツキの耳に、ハリーたちの会話が聞こえてきた。
「ポッター、一人でブラックを捕まえようって思ってるのか?」
「そうだ、そのとおりだ。」
ハリーは無造作に答えた。
「言うまでもないけど、僕だったら、もうすでに何かやってるだろうなぁ。いい子ぶって学校にじっとしてたりしない。ブラックを探しに出かけるだろうなぁ。ポッター、知らないのか?」
マルフォイは薄青い目を細めて、囁くように言った。
「何を?」
マルフォイは嘲るように低く笑った。
「君はたぶん危ないことはしたくないんだろうなぁ。吸魂鬼に任せておきたいんだろう? 僕だったら、復讐してやりたい。僕なら、自分でブラックを追いつめる。それに、あいつとも仲良くしたくないねぇ。」
なぜかナツキとマルフォイの目があった。今聞こえた「あいつ」というのが自分のことなのかとナツキは眉を顰めた。
「いったい何のことだ?ナツキを悪く言ったら、許さないぞ。」
ハリーは怒っていた。本当に、一体何のことだろう。私とハリーが仲良くすることの何が悪いんだと、イライラしながら、ナツキは薬を作り続けた。
最悪の気分で授業を終えたその日の午後、ナツキたちは「闇の魔術に対する防衛術」の教室に来ていた。生徒より少し遅れて、ルーピン先生は現れた。
「やあ、みんな。教科書はカバンに戻してもらおうかな。今日は実地練習をすることにしよう。杖だけあればいいよ。」
こんな防衛術の先生は初めてだった。ナツキはワクワクと今年こそはと期待し始めていた。
教室を出てルーピン先生についていく。道中、あの嫌なピーブズをうまくあしらう姿に、ナツキだけでなく皆が感激した。先生は職員室のドアの真ん前で立ち止まった。
「さあ、お入り。」
がらんとした部屋に、たった一人、スネイプ先生が低い肘掛椅子に座っていた。
「ルーピン、たぶん誰も君に忠告していないと思うが、このクラスにはネビル・ロングボトムがいる。この子には難しい課題を与えないようご忠告申し上げておこう。ミス・グレンジャーが耳元でひそひそ指図を与えるなら別だがね。」
「実は術の最初の段階で、ネビルに僕のアシスタントを務めてもらいたいと思ってましてね。ネビルはきっと、とてもうまくやってくれると思いますよ。」
ルーピン先生がスネイプ先生にそう言い返すと。スネイプ先生は職員室を出ていった。ルーピン先生はみんなに部屋の奥まで来るように合図した。そこには先生方が着替え用のローブを入れる古い洋箪笥がポツンと置かれていた。ルーピン先生がその脇に立つと、箪笥が急にわなわなと揺れ、バーンと壁から離れた。
「中にまね妖怪、ボガートが入ってるんだ。それでは、最初の問題ですが、まね妖怪のボガートとはなんでしょう?」
ハーマイオニーが手を挙げた。
「形態模写妖怪です。私たちが一番怖いと思うのはこれだと判断すると、それに姿を変えることができます。」
「私でもそんなにうまくは説明できなかったろう。だから、中の暗がりに座り込んでいるまね妖怪は、まだ何の姿にもなっていない。しかし、私が外に出してやると、たちまち、それぞれが一番怖いと思っているものに姿を変えるはずです。ということはつまり、初めっから私たちのほうがまね妖怪より大変有利な立場にありますが、ハリー、なぜだかわかるかな?」
「えーと――僕たち、人数がたくさんいるので、まね妖怪はどんな姿に変身すればいいかわからない?」
「そのとおり。・・・まね妖怪を退散させる呪文は簡単だ。しかし精神力が必要だ。こいつを本当にやっつけるのは、笑いなんだ。君たちは、まね妖怪に、君たちが滑稽だと思える姿をとらせる必要がある。初めは杖なしで練習しよう。私に続いて言ってみて。リディクラス!」
全員が一斉に「リディクラス」と唱えた。
「リディクラス、ばかばかしい!」全員がいっせいに唱えた。
「そう。とっても上手だ。でもここまでは簡単なんだけどね。呪文だけでは十分じゃないんだよ。そこで、ネビル、君の登場だ。」
ルーピン先生はネビルに怖いものを尋ねた。ネビルが「スネイプ先生」と答えると、みんなつい笑ってしまった。
「ネビル、まね妖怪が洋箪笥からウワーッと出てくるね、そして、君を見るね。そうすると、スネイプ先生の姿に変身するんだ。そしたら、君は杖を上げて、そして叫ぶんだ。『リディクラス』・・・そして、君のおばあさんの服装に精神を集中させる。すべてうまくいけば、ボガート・スネイプ先生はてっぺんにハゲタカのついた帽子をかぶって、緑のドレスを着て、赤いハンドバッグを持った姿になってしまう。」
クラスのみんなが大爆笑した。
「それ、見てみたいね。」
「ネビル!どうか成功して!」
ハリーとナツキがヒソヒソ声で笑い合った。
「ネビル、三つ数えてからだ。いーち、にー、さん、それ!」
スネイプ先生の姿をしたボガートが現れた。ネビルが「リディクラス!」と叫ぶと、ルーピン先生の思惑通り、スネイプ先生の蝙蝠のような服がネビルのお婆さんの格好に変わった。
ネビルの清光に触発されて、クラスのみんなが順々にボガートをおかしな姿に変えていく。
パーバティ、シェーマス、ディーン、が続くと、ボガートはナツキの前に現れた。
ナツキは以前ボガートに遭遇したことがある。その時、ボガートは箒に変わった。アバーフォースが杖を振って、ヘンテコなヤギに変えていたのを覚えている。
私も箒をあのヤギに変えてやろう、と思った。その時だった。
「・・・え・・・」
ボガートは箒の姿に変わらなかった。黒髪のハンサムな少年に変わったのだ。それは50年前のトム・リドルだった。
「・・・と・・・・」
小さな声でナツキは呟き、固まった。すぐ傍にいたハリーだけが、そのハンサムな少年の恐ろしさを知っていた。
ハリーは咄嗟にナツキのローブを引っ張り代わりに前に出た。ボガートがハリーの恐れるものに姿を変えようとした。ハリーが杖を構えた。
「こっちだ!」
急にルーピン先生がそう叫び、急いで前に出てきた。銀白色の玉が浮かんでいるのが見えた。
ルーピン先生が面倒くさそうに「リディクラス!」と唱えた。
「ネビル!前へ!やっつけるんだ!」
まね妖怪がゴキブリになって床に落ちたところでルーピンが叫んだ。パチン!スネイプが戻った。ネビルは今度は決然とした表情でぐいと前に出た。
「リディクラス!」
ほんの一瞬、レース飾りのドレスを着たスネイプの姿が見えたが、ネビルが大声で「ハハハ!」と笑うと、まね妖怪は破裂し、何千という細い煙の筋になって消え去った。
「よくやった!」
全員が拍手する中、ルーピン先生が大声を出した。
「ネビル、よくできた。みんな、よくやった。そうだな、まね妖怪と対決したグリフィンドール生一人につき五点をやろう。ネビルは十点だ。二回やったからね。ハーマイオニーとハリーも五点ずつだ。」
「でも、僕、何もしませんでした。それに、ナツキの邪魔をしてしまいました。」
「ハリー、君とハーマイオニーはクラスの最初に、私の質問に正しく答えてくれた。それに友人を思い遣ったことで減点はしないよ。よーし、みんな、いいクラスだった。宿題だ。ボガートに関する章を読んで、まとめを提出してくれ。月曜までだ。今日はこれでおしまい。」
みんな興奮してぺちゃくちゃ言いながら職員室を出た。ハリーとナツキくらい顔で、その集団から逸れた。
「ナツキ、僕、余計なこと・・・・」
「ううん、私、箒が出てくるとばっかり思ってて・・・・多分、無理だったから、正直助かった・・・・」
ハリーが辛い顔でナツキを見た。
「ナツキ、去年、僕がバジリスクと戦っている時、君に何があったのか聞いてなかった・・・・・。今更思い出すなんて、僕、最低だ。」
「ハリーが最低なんてことない!!!私が、言いにくくて言わなかったから・・・・。あのね、」
ナツキは話した。祖母がヴォルデモートに執着されていたこと、その矛先が今は自分に向かっている可能性があること。トム・リドルのねっとりした視線が恐ろしくてたまらなかったこと。1年の時に感じたヴォルデモートへの恐怖とは全く違っていたこと。
「次は、大丈夫。だってあれは本物じゃない。本物にだって、私は立ち向かうんだ・・・・・!」
「ナツキは強いよ。勇敢で、かっこいい。たくさん呪文も知ってる。いつも、僕のために色んなことをしてくれる。」
ハリーは一生懸命ナツキを励まそうとした。ナツキはさっきの恐怖が吹き飛んで、ポカポカした気持ちになった。
「それはハリーが最高の友達だからだよ!」
「そんなことないよ。さっきだって・・・・ルーピン先生はなんで僕のことを止めたんだろう。僕のこと・・・・弱いって思ったのかな。汽車で倒れたから・・・・あ、待って。今のは忘れて。」
ナツキはさっきのルーピン先生の振る舞いがハリーを傷つけてしまっていたと気づいた。そして一生懸命考えた。
「多分だけどヴォルデモートに変わると思ったんじゃないかな。・・・・変わったのは私の時だったけど。」
「ああ・・・だったら納得できるけど・・・・。でも僕、吸魂鬼を想像したんだ。だから吸魂鬼に変わると思うんだけどな。」
「吸魂鬼!確かにあれは嫌だね。なんでそれを思い出さなかったんだろう。昔、箒に変わったことなんて忘れてしまえたらよかったのに。」
ハリーは少し呆れて口を開いた。
「ナツキはもう箒、怖くないだろ?」
「・・・・それもそうだ。下手くそに変わりはないけれど・・・・・」