アズカバンの囚人
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翌朝、ナツキ、ハリー、ロン、ハーマイオニーが朝食をとりに大広間に行くと、最初にドラコ・マルフォイが目に入った。側を通り過ぎる時、マルフォイはバカバカしい仕種で気絶するまねをした。どっと笑い声があがった。
ナツキはムカついたが、無視しようと思った。ハリーも同じみたいだ。二人はイライラしながらドサっとグリフィンドールの席についた。
するとジョージがナツキの脇に腰掛けた。向かいにはフレッドがいた。
「三年生の新学期の時間割だ。ナツキ、何かあったのか?」
ジョージの答えに返したのはロンだった。ジョージがスリザリンの席に目をやると、ちょうど、マルフォイが、またしても恐怖で気絶するまねをしているところだった。
「あの、ろくでなし野郎・・・。ナツキ、ハリー、楽しいことを教えてやる。奴さん、昨日の夜はあんなに気取っちゃいられなかったようだぜ。列車の中で吸魂鬼がこっちに近づいてきた時、俺たちのコンパートメントに駆け込んできたんだ。なぁ、フレッド?」
「ほとんどお漏らししかかってたぜ。」
ジョージが頬杖をついてナツキを見ながら話を続けた。
「俺だってうれしくはなかったさ。あいつら、恐ろしいよな。あの吸魂鬼ってやつらは。」
「なんだか体の内側を凍らせるんだ。そうだろ?」
「たまたまナツキとハリーに目をつけただけさ。気にすんな。」
ポンポンとジョージはナツキの頭を軽く叩いた。そしてまた話し出した。
「親父がいつだったかアズカバンに行かなきゃならなかった。帰ってきた時にゃ、すっかり弱って、震えてたな。やつらは幸福ってものをその場から吸い取ってしまうんだ。吸魂鬼ってやつは。あそこじゃ、囚人はだいたい気が狂っちまう。」
「ま、俺たちとのクィディッチ第一戦のあとでマルフォイがどのくらい幸せでいられるか、拝見しようじゃないか。」
ハリーや双子たちと時間割を見ながら朝食を食べていると、ハッフルパフの一人の生徒がこっちを向いて、手を軽く振っていた。セドリック・ディゴリーだ。ナツキは反射的に手を振って返した。
「ナツキ、誰に手を・・・・・・セドリック・ディゴリー?」
ジョージが突然不機嫌そうな声を出した。
「昨日、吸魂鬼に襲われたあと倒れてた私を運んでくれたみたいなの。」
「・・・・へー・・・・」
「彼って、有名人なの?」
ジョージは平坦な声で「いーや、全く」と即座に返した。目の前にいるフレッドは、なんだかとっても面白そうなものを見つけたような目をしていた。
「フレッド、なんか企んでるでしょ。」
「いーや、全く。」
ジョージの先ほどの言葉と完璧に同じ調子でフレッドはそう言ったのだった。
9時前になりナツキはマグル学の教室へと向かおうと意気込んだ。ロンとハリーは占い学だし、ハーマイオニーの時間割はめちゃくちゃだ。つまり、一人で行かなければならないのだ。
幸いにもマグル学の教室は1階にあるらしい。ナツキは無事に1階にやってきた。ここまでは大丈夫だ。
「えっと、最初が右・・・・・次も右・・・で・・・・左に行って・・・ここにドラゴンの像が・・・・・・」
ない。
「なんで!?」
一番信頼できそうなパーシーにちゃんと聞いてきたのに、とナツキは頭を抱えた。近くに他の人やゴーストはいないだろうかと辺りをキョロキョロと見回す。
「ゴドリクソン、どうかした?教室がわからない?」
後ろから声が聞こえて振り向くと、セドリック・ディゴリーがいた。
「あ、その、マグル学の教室に行きたくて。」
ナツキがそういうと、セドリックはニコッと笑った。
「僕は授業がないから、案内するよ。こっちだ。」
「え!そっち!?」
ナツキが思っていたのとは全く反対の方にセドリックは足を進めた。
「自己紹介してなかったね。僕、セドリック・ディゴリー。」
歩きながらまたニコッと微笑んで、セドリックはそう言った。ナツキは昨夜、お礼を言うだけ言って自己紹介も何もしなかった自分を恥ずかしく思った。
「あ、私は、ナツキ。」
「知ってる。君、有名だから。ナツキって呼んでいい?」
「うん。えっと、セドリックは何年生?」
「5年生だよ。」
5年生ということはつまり、ジョージとフレッドと同じだ。
「ほら、そこがマグル学の教室だよ。ここから、あっち側に向かうと大広間だ。」
「え・・・うわあ、そうなんだ・・・・。」
ナツキはパーシーに聞いたにもかかわらず頓珍漢なところを歩いていたらしいと言うことに気づいた。マグル学の教室の場所は思っていたよりずっと分かりやすかった。パーシーが間違っていたとは思えないから、きっと方向音痴をまた発揮してしまったのだろう。
「ありがとう。遅刻しないですみそう。」
「ならよかった。また困ったことがあったら遠慮なく言って。」
またニコッと笑みを浮かべて、セドリック・ディゴリーは去っていった。良い人だ!これが同じ年のウィーズリー家の双子だったら、一つや二つ、三つや四つはナツキを揶揄う一言を言ったに違いない。セドリックは一つも嫌味のない、良い人だ!
新しい友達ができたことに浮かれてマグル学の教室に入ったナツキ。受講生はあまり多くない。グリフィンドール生は他にいないようだ。とりあえず真ん中あたりの席に座った。
「マグル学担当のチャリティ・バーベッジです。」
大広間の先生たちのテーブルで見たことはあったが、この人がマグル学の先生だったんだ、と思いながら先生の自己紹介を聞いていると、右側に誰かいることに気づいた。
あれ、誰か座ってたっけ?
そう思ってナツキは横目でそちらを見た。
「ぅえっ!?」
ハーマイオニーが座っていた。数占いの教室の方に向かっていくような雰囲気があったのに。いつの間に来たのだ。というか、こっちに来るなら一緒に来てくれたらよかったのに!
「ゴドリクソン?どうかしましたか?」
「い、いえ。なんでもないです、すみません、先生・・・・・」
ハーマイオニーが突然現れたという異常を除けば、マグル学は良い授業だった。先生も優しいし、授業の内容もワクワクすることばかりでとっても楽しかった。
「ハーマイオニー、次は変身術・・・あれ?ハーマイオニー?」
授業が終わり、次の変身術の教室に行こうとしたら、隣にいたはずのハーマイオニーがもう席を立っていた。
「ええ〜?」
セドリックのおかげで、戻り道もしっかり把握したナツキは無事変身術の教室へとついた。去年までと教室が変わっていたが、運よくサー・ニコラスがいたのだ。
ナツキが席に着くと、少ししてハリー、ロン、ハーマイオニーが現れて、ナツキの隣に座った。
「あれ、ハーマイオニー、今きたの?先に行ってたんじゃなかったんだ。」
ハーマイオニーがその答えを返す前に、マクゴナガル先生の変身術の授業が始まり、アニメーガスについて教えてくれた。
「では実際にお見せしましょう。」
そう言ってマクゴナガル先生がトラ猫に変身した。
「わっ!!」
ナツキは思わず拍手をした。しかし、そんな大きなリアクションをしたのは、クラスでナツキただ一人だった。
「え!?み、みんなどうかしたの?」
「ゴドリクソンの言う通りです。まったく、今日はみんなでどうしたのですか?」
マクゴナガル先生はポンという軽い音とともに元の姿に戻るなり、クラス中を見回した。
「別にかまいませんが、私の変身がクラスの拍手をたった一人からしか浴びなかったのはこれが初めてです。」
みんながいっせいにハリーのほうを振り向いたが、誰もしゃべらない。するとハーマイオニーが手を挙げた。
「先生、私たち、『占い学』の最初のクラスを受けてきたばかりなんです。お茶の葉を読んで、それで・・・・」
「ああ、そういうことですか。ミス・グレンジャー、それ以上は言わなくて結構です。今年はいったい誰が死ぬことになったのですか?」
ナツキは話がついていけなく、ポケッとマクゴナガル先生の方を眺めていた。ハリーが「僕です」と言った。
「わかりました。では、ポッター、教えておきましょう。シビル・トレローニーは本校に着任してからというもの、一年に一人の生徒の死を予言してきました。いまだに誰一人として死んではいません。死の前兆を予言するのは、新しいクラスを迎えるときのあの方のお気に入りの流儀です。」
マクゴナガル先生はここで一瞬言葉を切りmごく当たり前の調子で言葉を続けた。
「ポッター、私の見るところ、あなたは健康そのものです。ですから、今日の宿題を免除したりいたしませんからそのつもりで。ただし、もしあなたが死んだら、提出しなくても結構です。」
ハーマイオニーが吹き出した。今のやりとりで、ナツキは大体の出来事を察した。
「変身術」の授業が終わり、ナツキたちは大広間で昼食を食べていた。しかしなんだかロンは浮かない顔だ。どうやらハリーが死神犬を見たと思っているらしい。黒くて大きな犬なんて別に珍しくもないのに、とナツキは適当にその話を聞いていた。
ナツキは「それより、」と続けた。
「私は死神犬よりも怖いことにさっきから気づいてるんだけど、ハーマイオニー、『占い学』に出たってどういうこと?」
「そんなことよりも『占い学』で優秀だってことが、お茶の葉の塊に死の予兆を読むふりをすることなんだったら、私、この学科といつまでおつき合いできるか自信がないわ!あの授業は『数占い』のクラスに比べたら、まったくのクズよ!」
ハーマイオニーはカバンを引っつかみ、つんつんしながら去っていった。ロンはその後ろ姿にしかめっ面をした。
「あいつ、いったい何言ってんだよ!あいつ、まだ一度も『数占い』の授業に出てないんだぜ。」
「・・・・ねえ、マグル学で私が見たのってハーマイオニーの幽霊とかじゃないよね?」
ナツキはぶるっと肩を震わせた。その後四人で「魔法生物飼育学」のために外に出た。運の悪いことにスリザリンとの共同授業だ。またマルフォイたちはこっちを見て気絶したふりをしたゲラゲラ笑っていた。
「今日はみんなにいいもんがあるぞ!すごい授業だぞ!みんな来たか?よーし。ついてこいや!」
ハグリッドについていくと放牧場のようなところだったが、そこには何もいなかった。教科書を開けという指示が出て、ナツキは紐でぐるぐる巻になったあの教科書は、撫でれば開くことができると知った。
「僕たちの手を噛み切ろうとする本を持たせるなんて、まったくユーモアたっぷりだ!」
「黙れ、マルフォイ。」
ハリーが静かに言った。ハグリッドはうなだれていた。
「こ、この教科書、よく見るとかわいいかもね!!!」
ナツキは大きな声でそう言った。ハリーもナツキもハグリッドの最初の授業をなんとか成功させてやりたかった。
「そんで、えーと、教科書はある、と。そいで、えーと、こんだぁ、魔法生物が必要だ。ウン。そんじゃ、俺が連れてくる。待っとれよ・・・・」
ハグリッドは大股で森へと入り、姿が見えなくなった。
「まったく、この学校はどうなってるんだろうねぇ。」
マルフォイが声を張りあげた。なんとしてもハグリッドを辱めたいらしい。ナツキは虫の居所が悪くなったが、それよりもハグリッドに気持ちよく授業をさせてやりたかった。
ハグリッドが奥から連れてきたのは十数頭のヒッポグリフだった。鷲の頭と馬の体を持つ魔法生物だ。
「まんず、イッチ番先にヒッポグリフについて知らなければなんねえことは、こいつらは誇り高い。すぐ怒るぞ、ヒッポグリフは。絶対、侮辱してはなんねぇ。そんなことをしてみろ、それがおまえさんたちの最後の仕業になるかもしんねぇぞ。」
マルフォイ、クラッブ、ゴイルは、聞いてもいなかった。何やらひそひそ話している。ナツキはまたイライラしたが、一生懸命ハグリッドの話に耳を傾けた。
「かならず、ヒッポグリフのほうが先に動くのを待つんだぞ。それが礼儀ってもんだろう。な?こいつのそばまで歩いてゆく。そんでもってお辞儀する。そんで、待つんだ。こいつがお辞儀を返したら、触ってもいいっちゅうこった。もしお辞儀を返さなんだら、素早く離れろ。こいつの鉤爪は痛いからな。よーし誰が一番乗りだ?」
答える代わりに、ほとんどの生徒がますます後ずさりした。ヒッポグリフは猛々しい首を振りたて、たくましい羽をばたつかせていた。つながれているのが気に入らない様子だ。
「誰もおらんのか?」
「僕やるよ」「私やるよ」
ナツキとハリーが同時に答えた。
「偉いぞ、ハリー、ナツキ!じゃあ、ハリーから。バックビークとやってみよう。」
ハリーは、ドキドキしながらバックビークと向き合った。お辞儀をして、お辞儀を返された。最後には、バックビークの背に乗ったのだ。
「よーくできた、ハリー。じゃあ、ナツキもほれ、やってみい!こいつがよかろう。ソーウィンだ。」
「う、うん!」
ハリーの成功に後押しされ、ナツキはソーウィンと呼ばれたヒッポグリフの前に立って、お辞儀をしようとした。その時、ナツキがお辞儀をする前に、ソーウィンは前足を曲げ、低く頭を下げたのだ。
「お?んー、ソーウィンは気が早いんだな。ナツキ、触ってええぞ。」
「あ、うん。」
ナツキはソーウィンに触れてみた。鷲部分はモコモコだ。サイラスやレオーネともまた違った不思議な感触だった。
ハリーやナツキをみて、他の生徒たちも放牧場に入り、それぞれヒッポグリフに近づいていった。
マルフォイ、クラッブ、ゴイルは、ハリーのあとにバックビークに向かった。バックビークがお辞儀したので、マルフォイは尊大な態度でその嘴を撫でていた。
「簡単じゃぁないか。ポッターにできるんだ、簡単に違いないと思ったよ。おまえ、全然危険なんかじゃないなぁ?そうだろう?醜いデカブツの野獣君。」
一瞬、鋼色の鉤爪が光った。マルフォイがヒッーと悲鳴をあげ、次の瞬間ハグリッドがバックビークに首輪をつけようと格闘していた。バックビークはマルフォイを襲おうともがき、マルフォイのほうはローブが見る見る血に染まり、草の上で身を丸めていた。
「バックビーク!ダメ!」
偶然なのか、ナツキが叫ぶと、バックビークはぴたりと大人しくなった。ハグリッドが慌てて首輪をつけマルフォイからバックビークを離した。
「死んじゃう!」
マルフォイが喚いた。クラス中がパニックに陥っていた。
「僕、死んじゃう。見てよ! あいつ、僕を殺した!」
「死にゃせん!」
ハグリッドは蒼白になっていた。ナツキはイライラしながらマルフォイに近づいた。
「自業自得のくせに騒がないで!エピスキー!」
ナツキが怒りながら呪文を唱えると、マルフォイの腕の血が止まっていった。
「すまん、ナツキ。ああ、誰か、手伝ってくれ。この子をこっから連れ出さにゃー。」
ハグリッドがマルフォイを軽々と抱え上げ、ハーマイオニーが走っていってゲートを開けた。ハグリッドはマルフォイを抱え、城に向かって坂を駆け上がっていった。
「魔法生物飼育学」の生徒たちは大ショックを受けてそのあとをついていった。スリザリン生は全員ハグリッドを罵倒していた。
「ハグリッドの最初の授業であんなことが起こったのは、まずいよな?」
ロンは心配そうにそう言った。
「あんな怪我、大したことないよ。私程度の呪文でほとんど治ってたよ!本当にあの人、最低!!!」
夕食の時、ハグリッドは大広間にいなかった。
夜、グリフィンドールの談話室からハグリッドの小屋に灯がついているのが見えた。
ロンが腕時計を見た。
「急げば、ハグリッドに会いにいけるかもしれない。まだ時間も早いし。」
「そうだね。行こうか。」
ロンとナツキがそういうと、ハーマイオニーが「それはどうかしら」 と言った。
「僕もナツキも、校内を歩くのは許されてるんだ。シリウス・ブラックは、ここではまだ吸魂鬼を出し抜いてないだろ?」
結局四人でハグリッドの小屋にたどり着き、ドアをノックすると、中から「入ってくれ」と呻くような声がした。ひと目見ただけで、ハグリッドが相当深酒していたことがわかった。
「こいつぁ新記録だ。一日しかもたねえ先生なんざ、これまでいなかったろう。」
その言葉でハグリッドがクビを宣告されたのかと四人は息を呑んだが、まだそんなことは言われていないらしい。しかし、マルフォイが傷が疼くと喚いているらしい。絶対に嘘だ。
「俺がはじめっから飛ばしすぎたって、理事たちが言うとる。ヒッポグリフはもっとあとにすべきだった。・・・・レタス食い虫かなんかっから始めていりゃ・・・イッチ番の授業にはあいつが最高だと思ったんだがな・・・みんな俺が悪い・・・」
「ハグリッド、悪いのはマルフォイのほうよ!」
ハーマイオニーが真剣に言った。
「僕たちが証人だ。侮辱したりするとヒッポグリフが攻撃するって、ハグリッドはそう言った。聞いてなかったマルフォイが悪いんだ。ダンブルドアに何が起こったのかちゃんと話すよ。」
「そうだよ。ハグリッド、心配しないで。僕たちがついてる。」
ハリーとロンが言った。
「そうだよ。それに、他のグリフィンドールの子もマルフォイが話を聞いてなかったって証言してくれる。最高の授業だったよ!」
ハグリッドの真っ黒なコガネムシのような目から、涙がポロポロこぼれ落ちた。ハリーとロンを抱きしめた後、ハグリッドは酔い覚ましのためか水を浴びて、ビシャビシャになって戻ってきた。
「なあ、会いにきてくれて、ありがとうよ。ほんとに俺・・・・おまえたち、いったい何しちょる。えっ?」
ハグリッドがあまりに急に大声を出したので、四人とも三十センチも跳び上がった。
「ハリー、ナツキ!暗くなってからうろうろしちゃいかん!俺が学校まで送っていく。もう二度と、暗くなってから歩いて俺に会いにきたりするんじゃねえ。俺にはそんな価値はねえ。」
ナツキはムカついたが、無視しようと思った。ハリーも同じみたいだ。二人はイライラしながらドサっとグリフィンドールの席についた。
するとジョージがナツキの脇に腰掛けた。向かいにはフレッドがいた。
「三年生の新学期の時間割だ。ナツキ、何かあったのか?」
ジョージの答えに返したのはロンだった。ジョージがスリザリンの席に目をやると、ちょうど、マルフォイが、またしても恐怖で気絶するまねをしているところだった。
「あの、ろくでなし野郎・・・。ナツキ、ハリー、楽しいことを教えてやる。奴さん、昨日の夜はあんなに気取っちゃいられなかったようだぜ。列車の中で吸魂鬼がこっちに近づいてきた時、俺たちのコンパートメントに駆け込んできたんだ。なぁ、フレッド?」
「ほとんどお漏らししかかってたぜ。」
ジョージが頬杖をついてナツキを見ながら話を続けた。
「俺だってうれしくはなかったさ。あいつら、恐ろしいよな。あの吸魂鬼ってやつらは。」
「なんだか体の内側を凍らせるんだ。そうだろ?」
「たまたまナツキとハリーに目をつけただけさ。気にすんな。」
ポンポンとジョージはナツキの頭を軽く叩いた。そしてまた話し出した。
「親父がいつだったかアズカバンに行かなきゃならなかった。帰ってきた時にゃ、すっかり弱って、震えてたな。やつらは幸福ってものをその場から吸い取ってしまうんだ。吸魂鬼ってやつは。あそこじゃ、囚人はだいたい気が狂っちまう。」
「ま、俺たちとのクィディッチ第一戦のあとでマルフォイがどのくらい幸せでいられるか、拝見しようじゃないか。」
ハリーや双子たちと時間割を見ながら朝食を食べていると、ハッフルパフの一人の生徒がこっちを向いて、手を軽く振っていた。セドリック・ディゴリーだ。ナツキは反射的に手を振って返した。
「ナツキ、誰に手を・・・・・・セドリック・ディゴリー?」
ジョージが突然不機嫌そうな声を出した。
「昨日、吸魂鬼に襲われたあと倒れてた私を運んでくれたみたいなの。」
「・・・・へー・・・・」
「彼って、有名人なの?」
ジョージは平坦な声で「いーや、全く」と即座に返した。目の前にいるフレッドは、なんだかとっても面白そうなものを見つけたような目をしていた。
「フレッド、なんか企んでるでしょ。」
「いーや、全く。」
ジョージの先ほどの言葉と完璧に同じ調子でフレッドはそう言ったのだった。
9時前になりナツキはマグル学の教室へと向かおうと意気込んだ。ロンとハリーは占い学だし、ハーマイオニーの時間割はめちゃくちゃだ。つまり、一人で行かなければならないのだ。
幸いにもマグル学の教室は1階にあるらしい。ナツキは無事に1階にやってきた。ここまでは大丈夫だ。
「えっと、最初が右・・・・・次も右・・・で・・・・左に行って・・・ここにドラゴンの像が・・・・・・」
ない。
「なんで!?」
一番信頼できそうなパーシーにちゃんと聞いてきたのに、とナツキは頭を抱えた。近くに他の人やゴーストはいないだろうかと辺りをキョロキョロと見回す。
「ゴドリクソン、どうかした?教室がわからない?」
後ろから声が聞こえて振り向くと、セドリック・ディゴリーがいた。
「あ、その、マグル学の教室に行きたくて。」
ナツキがそういうと、セドリックはニコッと笑った。
「僕は授業がないから、案内するよ。こっちだ。」
「え!そっち!?」
ナツキが思っていたのとは全く反対の方にセドリックは足を進めた。
「自己紹介してなかったね。僕、セドリック・ディゴリー。」
歩きながらまたニコッと微笑んで、セドリックはそう言った。ナツキは昨夜、お礼を言うだけ言って自己紹介も何もしなかった自分を恥ずかしく思った。
「あ、私は、ナツキ。」
「知ってる。君、有名だから。ナツキって呼んでいい?」
「うん。えっと、セドリックは何年生?」
「5年生だよ。」
5年生ということはつまり、ジョージとフレッドと同じだ。
「ほら、そこがマグル学の教室だよ。ここから、あっち側に向かうと大広間だ。」
「え・・・うわあ、そうなんだ・・・・。」
ナツキはパーシーに聞いたにもかかわらず頓珍漢なところを歩いていたらしいと言うことに気づいた。マグル学の教室の場所は思っていたよりずっと分かりやすかった。パーシーが間違っていたとは思えないから、きっと方向音痴をまた発揮してしまったのだろう。
「ありがとう。遅刻しないですみそう。」
「ならよかった。また困ったことがあったら遠慮なく言って。」
またニコッと笑みを浮かべて、セドリック・ディゴリーは去っていった。良い人だ!これが同じ年のウィーズリー家の双子だったら、一つや二つ、三つや四つはナツキを揶揄う一言を言ったに違いない。セドリックは一つも嫌味のない、良い人だ!
新しい友達ができたことに浮かれてマグル学の教室に入ったナツキ。受講生はあまり多くない。グリフィンドール生は他にいないようだ。とりあえず真ん中あたりの席に座った。
「マグル学担当のチャリティ・バーベッジです。」
大広間の先生たちのテーブルで見たことはあったが、この人がマグル学の先生だったんだ、と思いながら先生の自己紹介を聞いていると、右側に誰かいることに気づいた。
あれ、誰か座ってたっけ?
そう思ってナツキは横目でそちらを見た。
「ぅえっ!?」
ハーマイオニーが座っていた。数占いの教室の方に向かっていくような雰囲気があったのに。いつの間に来たのだ。というか、こっちに来るなら一緒に来てくれたらよかったのに!
「ゴドリクソン?どうかしましたか?」
「い、いえ。なんでもないです、すみません、先生・・・・・」
ハーマイオニーが突然現れたという異常を除けば、マグル学は良い授業だった。先生も優しいし、授業の内容もワクワクすることばかりでとっても楽しかった。
「ハーマイオニー、次は変身術・・・あれ?ハーマイオニー?」
授業が終わり、次の変身術の教室に行こうとしたら、隣にいたはずのハーマイオニーがもう席を立っていた。
「ええ〜?」
セドリックのおかげで、戻り道もしっかり把握したナツキは無事変身術の教室へとついた。去年までと教室が変わっていたが、運よくサー・ニコラスがいたのだ。
ナツキが席に着くと、少ししてハリー、ロン、ハーマイオニーが現れて、ナツキの隣に座った。
「あれ、ハーマイオニー、今きたの?先に行ってたんじゃなかったんだ。」
ハーマイオニーがその答えを返す前に、マクゴナガル先生の変身術の授業が始まり、アニメーガスについて教えてくれた。
「では実際にお見せしましょう。」
そう言ってマクゴナガル先生がトラ猫に変身した。
「わっ!!」
ナツキは思わず拍手をした。しかし、そんな大きなリアクションをしたのは、クラスでナツキただ一人だった。
「え!?み、みんなどうかしたの?」
「ゴドリクソンの言う通りです。まったく、今日はみんなでどうしたのですか?」
マクゴナガル先生はポンという軽い音とともに元の姿に戻るなり、クラス中を見回した。
「別にかまいませんが、私の変身がクラスの拍手をたった一人からしか浴びなかったのはこれが初めてです。」
みんながいっせいにハリーのほうを振り向いたが、誰もしゃべらない。するとハーマイオニーが手を挙げた。
「先生、私たち、『占い学』の最初のクラスを受けてきたばかりなんです。お茶の葉を読んで、それで・・・・」
「ああ、そういうことですか。ミス・グレンジャー、それ以上は言わなくて結構です。今年はいったい誰が死ぬことになったのですか?」
ナツキは話がついていけなく、ポケッとマクゴナガル先生の方を眺めていた。ハリーが「僕です」と言った。
「わかりました。では、ポッター、教えておきましょう。シビル・トレローニーは本校に着任してからというもの、一年に一人の生徒の死を予言してきました。いまだに誰一人として死んではいません。死の前兆を予言するのは、新しいクラスを迎えるときのあの方のお気に入りの流儀です。」
マクゴナガル先生はここで一瞬言葉を切りmごく当たり前の調子で言葉を続けた。
「ポッター、私の見るところ、あなたは健康そのものです。ですから、今日の宿題を免除したりいたしませんからそのつもりで。ただし、もしあなたが死んだら、提出しなくても結構です。」
ハーマイオニーが吹き出した。今のやりとりで、ナツキは大体の出来事を察した。
「変身術」の授業が終わり、ナツキたちは大広間で昼食を食べていた。しかしなんだかロンは浮かない顔だ。どうやらハリーが死神犬を見たと思っているらしい。黒くて大きな犬なんて別に珍しくもないのに、とナツキは適当にその話を聞いていた。
ナツキは「それより、」と続けた。
「私は死神犬よりも怖いことにさっきから気づいてるんだけど、ハーマイオニー、『占い学』に出たってどういうこと?」
「そんなことよりも『占い学』で優秀だってことが、お茶の葉の塊に死の予兆を読むふりをすることなんだったら、私、この学科といつまでおつき合いできるか自信がないわ!あの授業は『数占い』のクラスに比べたら、まったくのクズよ!」
ハーマイオニーはカバンを引っつかみ、つんつんしながら去っていった。ロンはその後ろ姿にしかめっ面をした。
「あいつ、いったい何言ってんだよ!あいつ、まだ一度も『数占い』の授業に出てないんだぜ。」
「・・・・ねえ、マグル学で私が見たのってハーマイオニーの幽霊とかじゃないよね?」
ナツキはぶるっと肩を震わせた。その後四人で「魔法生物飼育学」のために外に出た。運の悪いことにスリザリンとの共同授業だ。またマルフォイたちはこっちを見て気絶したふりをしたゲラゲラ笑っていた。
「今日はみんなにいいもんがあるぞ!すごい授業だぞ!みんな来たか?よーし。ついてこいや!」
ハグリッドについていくと放牧場のようなところだったが、そこには何もいなかった。教科書を開けという指示が出て、ナツキは紐でぐるぐる巻になったあの教科書は、撫でれば開くことができると知った。
「僕たちの手を噛み切ろうとする本を持たせるなんて、まったくユーモアたっぷりだ!」
「黙れ、マルフォイ。」
ハリーが静かに言った。ハグリッドはうなだれていた。
「こ、この教科書、よく見るとかわいいかもね!!!」
ナツキは大きな声でそう言った。ハリーもナツキもハグリッドの最初の授業をなんとか成功させてやりたかった。
「そんで、えーと、教科書はある、と。そいで、えーと、こんだぁ、魔法生物が必要だ。ウン。そんじゃ、俺が連れてくる。待っとれよ・・・・」
ハグリッドは大股で森へと入り、姿が見えなくなった。
「まったく、この学校はどうなってるんだろうねぇ。」
マルフォイが声を張りあげた。なんとしてもハグリッドを辱めたいらしい。ナツキは虫の居所が悪くなったが、それよりもハグリッドに気持ちよく授業をさせてやりたかった。
ハグリッドが奥から連れてきたのは十数頭のヒッポグリフだった。鷲の頭と馬の体を持つ魔法生物だ。
「まんず、イッチ番先にヒッポグリフについて知らなければなんねえことは、こいつらは誇り高い。すぐ怒るぞ、ヒッポグリフは。絶対、侮辱してはなんねぇ。そんなことをしてみろ、それがおまえさんたちの最後の仕業になるかもしんねぇぞ。」
マルフォイ、クラッブ、ゴイルは、聞いてもいなかった。何やらひそひそ話している。ナツキはまたイライラしたが、一生懸命ハグリッドの話に耳を傾けた。
「かならず、ヒッポグリフのほうが先に動くのを待つんだぞ。それが礼儀ってもんだろう。な?こいつのそばまで歩いてゆく。そんでもってお辞儀する。そんで、待つんだ。こいつがお辞儀を返したら、触ってもいいっちゅうこった。もしお辞儀を返さなんだら、素早く離れろ。こいつの鉤爪は痛いからな。よーし誰が一番乗りだ?」
答える代わりに、ほとんどの生徒がますます後ずさりした。ヒッポグリフは猛々しい首を振りたて、たくましい羽をばたつかせていた。つながれているのが気に入らない様子だ。
「誰もおらんのか?」
「僕やるよ」「私やるよ」
ナツキとハリーが同時に答えた。
「偉いぞ、ハリー、ナツキ!じゃあ、ハリーから。バックビークとやってみよう。」
ハリーは、ドキドキしながらバックビークと向き合った。お辞儀をして、お辞儀を返された。最後には、バックビークの背に乗ったのだ。
「よーくできた、ハリー。じゃあ、ナツキもほれ、やってみい!こいつがよかろう。ソーウィンだ。」
「う、うん!」
ハリーの成功に後押しされ、ナツキはソーウィンと呼ばれたヒッポグリフの前に立って、お辞儀をしようとした。その時、ナツキがお辞儀をする前に、ソーウィンは前足を曲げ、低く頭を下げたのだ。
「お?んー、ソーウィンは気が早いんだな。ナツキ、触ってええぞ。」
「あ、うん。」
ナツキはソーウィンに触れてみた。鷲部分はモコモコだ。サイラスやレオーネともまた違った不思議な感触だった。
ハリーやナツキをみて、他の生徒たちも放牧場に入り、それぞれヒッポグリフに近づいていった。
マルフォイ、クラッブ、ゴイルは、ハリーのあとにバックビークに向かった。バックビークがお辞儀したので、マルフォイは尊大な態度でその嘴を撫でていた。
「簡単じゃぁないか。ポッターにできるんだ、簡単に違いないと思ったよ。おまえ、全然危険なんかじゃないなぁ?そうだろう?醜いデカブツの野獣君。」
一瞬、鋼色の鉤爪が光った。マルフォイがヒッーと悲鳴をあげ、次の瞬間ハグリッドがバックビークに首輪をつけようと格闘していた。バックビークはマルフォイを襲おうともがき、マルフォイのほうはローブが見る見る血に染まり、草の上で身を丸めていた。
「バックビーク!ダメ!」
偶然なのか、ナツキが叫ぶと、バックビークはぴたりと大人しくなった。ハグリッドが慌てて首輪をつけマルフォイからバックビークを離した。
「死んじゃう!」
マルフォイが喚いた。クラス中がパニックに陥っていた。
「僕、死んじゃう。見てよ! あいつ、僕を殺した!」
「死にゃせん!」
ハグリッドは蒼白になっていた。ナツキはイライラしながらマルフォイに近づいた。
「自業自得のくせに騒がないで!エピスキー!」
ナツキが怒りながら呪文を唱えると、マルフォイの腕の血が止まっていった。
「すまん、ナツキ。ああ、誰か、手伝ってくれ。この子をこっから連れ出さにゃー。」
ハグリッドがマルフォイを軽々と抱え上げ、ハーマイオニーが走っていってゲートを開けた。ハグリッドはマルフォイを抱え、城に向かって坂を駆け上がっていった。
「魔法生物飼育学」の生徒たちは大ショックを受けてそのあとをついていった。スリザリン生は全員ハグリッドを罵倒していた。
「ハグリッドの最初の授業であんなことが起こったのは、まずいよな?」
ロンは心配そうにそう言った。
「あんな怪我、大したことないよ。私程度の呪文でほとんど治ってたよ!本当にあの人、最低!!!」
夕食の時、ハグリッドは大広間にいなかった。
夜、グリフィンドールの談話室からハグリッドの小屋に灯がついているのが見えた。
ロンが腕時計を見た。
「急げば、ハグリッドに会いにいけるかもしれない。まだ時間も早いし。」
「そうだね。行こうか。」
ロンとナツキがそういうと、ハーマイオニーが「それはどうかしら」 と言った。
「僕もナツキも、校内を歩くのは許されてるんだ。シリウス・ブラックは、ここではまだ吸魂鬼を出し抜いてないだろ?」
結局四人でハグリッドの小屋にたどり着き、ドアをノックすると、中から「入ってくれ」と呻くような声がした。ひと目見ただけで、ハグリッドが相当深酒していたことがわかった。
「こいつぁ新記録だ。一日しかもたねえ先生なんざ、これまでいなかったろう。」
その言葉でハグリッドがクビを宣告されたのかと四人は息を呑んだが、まだそんなことは言われていないらしい。しかし、マルフォイが傷が疼くと喚いているらしい。絶対に嘘だ。
「俺がはじめっから飛ばしすぎたって、理事たちが言うとる。ヒッポグリフはもっとあとにすべきだった。・・・・レタス食い虫かなんかっから始めていりゃ・・・イッチ番の授業にはあいつが最高だと思ったんだがな・・・みんな俺が悪い・・・」
「ハグリッド、悪いのはマルフォイのほうよ!」
ハーマイオニーが真剣に言った。
「僕たちが証人だ。侮辱したりするとヒッポグリフが攻撃するって、ハグリッドはそう言った。聞いてなかったマルフォイが悪いんだ。ダンブルドアに何が起こったのかちゃんと話すよ。」
「そうだよ。ハグリッド、心配しないで。僕たちがついてる。」
ハリーとロンが言った。
「そうだよ。それに、他のグリフィンドールの子もマルフォイが話を聞いてなかったって証言してくれる。最高の授業だったよ!」
ハグリッドの真っ黒なコガネムシのような目から、涙がポロポロこぼれ落ちた。ハリーとロンを抱きしめた後、ハグリッドは酔い覚ましのためか水を浴びて、ビシャビシャになって戻ってきた。
「なあ、会いにきてくれて、ありがとうよ。ほんとに俺・・・・おまえたち、いったい何しちょる。えっ?」
ハグリッドがあまりに急に大声を出したので、四人とも三十センチも跳び上がった。
「ハリー、ナツキ!暗くなってからうろうろしちゃいかん!俺が学校まで送っていく。もう二度と、暗くなってから歩いて俺に会いにきたりするんじゃねえ。俺にはそんな価値はねえ。」