賢者の石
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ホグワーツ城に入ると、エメラルド色のローブのマクゴナガル先生が現れ、組み分けが始まると告げた。
一体どうやって決めるのだろうかと、ナツキたちはひどく緊張した。
「ナツキはグリフィンドールだろ?」
ロンがそう言った。ナツキは彼が当然のようにそう思っていることに驚いた。
「え・・・と、そうなると嬉しいなって思うけど、私のお祖父さんとお母さんはハッフルパフだったんだって。だから、どうなるかわかんないや。」
「じゃあやっぱり血は関係ないんだ・・・・!!」
ロンは他の兄弟はグリフィンドールだからと自分に言い聞かせていたが、ナツキのその発言でみるみる不安に煽られた。スリザリンだったらどうしよう!
「さあ行きますよ。組み分け儀式がまもなく始まります。」
そう言うマクゴナガル先生に続いて、新入生たちはお広間に入った。
「わあ・・・・・!!」
ナツキは先ほどまでの組み分けへの緊張が一気に吹き飛んだ。夜空のような天井、美味しそうな大量のご馳走。今まで見たことないくらい、キラキラした空間だった。
マクゴナガル先生が先導した先には、ボロボロのとんがり帽子が置かれていた。静寂ののち、帽子は歌を歌い始めた。
「かぶってごらん!恐れずに!興奮せずに、お任せを!君を私の手にゆだね(私は手なんかないけれど)!だって私は考える帽子!」
大広間が拍手でいっぱいになった。どうやらナツキたちは帽子を被りさえすれば良いらしい。
ファミリーネームのアルファベット順で呼ばれるらしい。ナツキのゴドリクソンは真ん中くらいだ。
アボット、ボーンズ、ブート・・・・徐々に名前が呼ばれ、寮が決まっていく。
フィネガン・シェーマスの名が呼ばれた。おそらく、そろそろナツキが呼ばれる。
「ゴドリクソン・ナツキ!」
ナツキの名が呼ばれると、グリフィンドール生がざわついた。
やめて!グリフィンドールって決まったわけじゃないのに!
どうしてみんながいる前で組み分けをするのだろう。1人ずつ個室ではダメなのだろうかと思いながら、ナツキは恐る恐るスツールに腰をかけ、帽子を被った・・・と、思った。
「グリフィンドーーール!!」
完全に被る前に、組み分け帽子は高らかにそう告げた。グリフィンドールのテーブルでは大喝采である。
「ナツキ!」
「こっちに来いよ!」
ナツキに向かってそう言ってくれたのは、ロンの兄のフレッドとジョージだった。ハリーもロンも自分より順番はあとだ。そもそもどの寮に入るかも分からない。そんな状況で声をかけてくれたのはとても嬉しかった。
「ありがとう!」
ひとまずホッとして並んでいる双子のその脇に座る。隣に座っている片割れがフレッドかジョージかは分からない。
「えっと、失礼かもしれないんだけど、あなたはジョージ?フレッド?」
隣に座っている方に小さな声で尋ねてみる。彼はくすくすと笑って、同じくらい小さな声で「ジョージだよ」と答えてくれた。普段ならはぐらかして揶揄うのだが、失礼かも、なんて前置きをされたのが新鮮で、ジョージはつい正直になってしまった。
それから何人かの組み分けが終わり、ついにハリーの番がやってきた。帽子はなかなか結論を教えてくれない。
ハリーと一緒がいい・・・!!お願いします!どうかハリーをグリフィンドールに!!
ナツキの祈りが通じたのかどうかは分からないが、帽子は広間全体に向かって「グリフィンドール!」と叫んだ。
隣ではフレッドとジョージが「ポッターを取った!」と歓声を上げていた。
「ハリー!!」
ナツキの声を聞いてハリーは彼女の正面に座った。嬉しくて笑顔でお互い向き合う。すぐ後にロンもグリフィンドールに分けられ、彼はハリーの脇の席をとった。
全員分の組み分けが終わると、校長のアルバス・ダンブルドアがニコニコと立ち上がった。ナツキは彼がアバーフォースの兄だとは知っているが、仲は良くないらしく、実際に会うのはこれが初めてだった。長髪に長い髭は共通していて見た目は似ているが、雰囲気はあまり似ている感じはしない。
「おめでとう!ホグワーツの新入生、おめでとう!歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。そーれ!わっしょい!こらしょい!どっこらしょい!以上!」
似てないどころではなかった。血のつながりを疑うレベルでダンブルドア先生は陽気でお茶目な人だった。アバーフォースとウマが合わないのも納得だ。
「おや驚いた!あなたに瓜二つのお嬢さんを知っていますよ!」
宴が始まってすぐ、ナツキにそう声をかけたのはグリフィンドールのゴースト、ニコラスであった。
「それは祖母のアルバね。よく言われるけど、そんなに似てるの?」
「目と髪の色は違いますが、他は全くと言っていいほどおんなじですよ。」
ナツキはローストビーフを食べながら、それは初めて聞いた情報だと思った。具体的にどこが似てるだとかは、そういえばあまり言われたことがなかった。
「私は黒髪に灰色の目だけど、お祖母さんは違うんだ。何色だったの?」
「金髪にエメラルドのような綺麗な瞳のお嬢さんでした。」
そうなんだ、とナツキは思った。アバーフォースが持っていた白黒の古い写真に小さく写った祖母の姿しか見たことがなかった。自分の家族がどんな見た目なのか気になったことはあった。だがいつからか、アバーフォースにそれをいうのは失礼なことではないかと遠慮する気持ちが芽生えていて、あまり家族について彼に聞くことは無くなっていた。
「母の、エリザベス・ゴドリクソンのことは知ってる?」
「エリザベス・・・・ああ!ハッフルパフの子ですね。グリフィンドール生とも仲良くて・・・・ええ。ええ、そうでした。気の良い、穏やかな子でした。」
ニコラスが悲しい顔をした。ナツキは、家族のことを元から知らないから、あまり悲しいと思ったことは実はなかった。でも、自分の死んでしまった家族を思い出して、悲しんでくれる人がいることに悪い気はしなかった。
「ありがとう。えっと、ニコラス・ド、ミムジー?・・・・えーっと、」
先ほどロンにフルネームで呼んでほしいようなことを言いかけていたので、思い出そうとするが、ナツキは思い出せない。
「サー・ニコラスで構いません。」
「ありがとう、サー・ニコラス。」
首無しニックことニコラスはナツキが本人の名前で呼ばれたいという意志を尊重してくれたことに笑顔になった。そういえば、エリザベス・ゴドリクソンも、サー・ニコラスと呼んでいたなと思い出した。
「ナツキは誰と住んでるんだ?」
ニコラスが別のグリフィンドール生達と話に向かってすぐ、ジョージがナツキにそう尋ねた。ハリーとロンもこちらをみている。
「経緯は知らないんだけど、アバーフォース・ダンブルドアと2人で暮らしているの。校長先生の弟らしいけど、校長先生には今日初めて会ったよ。全然似てなくてびっくりしちゃった。」
「へー!ダンブルドア先生、弟がいるんだな。知らなかった。」
「私の手がかからなくなってからは、寝る時以外は仕事であまり家にいないから、ほとんど一人暮らしみたいなものかもしれないけど。ロンとジョージとフレッドは兄弟がたくさんいるんでしょ?賑やかで羨ましいな。」
ウィーズリーの兄弟達はこのナツキの発言を聞いて、同じ考えが頭に浮かんだ。
「じゃあ休暇中にうちに来ればいいさ!」
「狭いけどな。賑やかなのは間違いないぜ。」
ジョージとフレッドに続いて、ロンも名案だとばかりに「ハリーも来ればいいんだ!」と言った。近くにいたパーシーもどうそと言わんばかりにニコニコしている。
ナツキとハリーは目を輝かせながら顔を見合わせた。そんな素晴らしすぎる休暇があるのだろうか。2人は入学したばかりだというのに、休暇が早く来ないかな、と思ってしまった。
「イタッ!」
「ハリー?」
「ああ、ナツキ、なんでもないよ。あそこでクィレル先生と話してるのはどなたですか?」
ハリーがパーシーにそう尋ねた。ナツキは広間の前方にいる先生方を見た。ターバンを巻いているのが確かクィレル先生だと思って見ていると、クィレル先生と目があった。
「わっ、」
驚いて声を出してしまった。すかさず隣のジョージが「どうした?」と尋ねる。
「クィレル先生と目があって驚いちゃっただけ。・・・あの先生ってどういう人?」
「いつもおどおどしてどもってる。スネイプ先生に目をつけられてて、多分苦手なんだと思う。俺が1年の頃まではマグル学を教えてたけど、その時は吃ったりしない普通の先生だったよ。」
「そうなんだ。ありがとう。」
いろいろな話をして、宴は終わった。宴の最後では、ダンブルドア先生が森と、4階の右側の廊下には行かないようにと厳重注意をした。ナツキには、先生がジョージとフレッドに向かって言っているような気がしてならなかった。