秘密の部屋
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
螺旋階段が止まり、金のグリフィン像が静かに脇へ移動した。マクゴナガル先生が先に一歩踏み出し、振り返らずに一言「入りなさい」とナツキに告げた。後ろからは、泥まみれになったロックハート先生が、嬉しそうにしている。先ほどナツキにビビってグリフィンドールから減点できなかったことが挽回できると踏んでいるのだろう。
ナツキは校長室へ初めて入った。
そこではダンブルドア校長が穏やかな笑みを浮かべていた。
「おや、ナツキ、クィディッチの試合はグリフィンドールが勝ったようじゃな。おめでとう!」
そう言って、ダンブルドア先生はナツキとロックハート先生の泥んこになったローブを綺麗にする呪文を使った。
「して、ナツキ、君は何をしてここに呼ばれたのかな?」
キラキラした目でダンブルドア先生はナツキに質問した。
マクゴナガル先生が軽く咳払いをして前に出た。声は冷静だが、わずかに言葉を選んでいるのが伝わってくる。
「ミス・ゴドリクソンが、クィディッチの試合終了後、デパルソの呪文を使用し、ロックハート先生を吹き飛ばしました。ただし、その前に先生が、ハリー・ポッターの怪我を治癒しようと呪文を放ったことは申し添えておきます。」
「そうなのです。私としては最善を尽くしました。しかし、彼の腕は随分と調子が悪かったようですね。」
ナツキはキッとロックハートを睨んだ。何をぬけぬけと言っているんだ!
ロックハートは一瞬口を閉じたが、すぐに「とにかく彼女の魔法は私に対して・・・」と再び話し始める。
それを遮るように、ダンブルドアが手を軽く上げた。
「ミス・ゴドリクソンが本気でロックハート先生を害そうとしたならば、先生は大怪我を負っていたことじゃろう。」
そのダンブルドア先生の言葉でロックハートの顔がサーっと青くなった。
「ナツキはただ、ハリーを思うあまり、先生が良からぬことをするのではと勘違いしてしまった。違うかね?」
「そうです!」
ナツキは勢いよく首肯した。
「しかし、先生を攻撃してはならん。ナツキには罰則を課そう。ロックハート先生、それで良いかね?」
「ええ。ええ。構いませんよ。」
その後退出を促されたロックハート先生はナツキから逃げるようにそそくさと校長室を後にした。
残されたナツキはダンブルドア先生に目を向けた。
「あの、ダンブルドア先生、罰則ってなんですか?」
ハリーやロンから聞いたようなのは嫌だなとナツキはビクビクしてその時をまった。
「スプラウト先生がマンドレイクの世話を手伝ってくれる者を探しとってな。ナツキにしばらく頼みたいんじゃ。本当はスネイプ先生あたりが良いのだが、断られてしまってな。ナツキなら薬草学の成績も良いし問題ないじゃろう。」
「わかりました。」
ナツキは安心した。それなら気をつければ危険なことはない。マンドレイクの世話はものすごく疲れるだろうが、先生を吹っ飛ばした罰則と思えばマシな方だろう。何より興味深い。
罰則を言い渡されて、ナツキはマクゴナガル先生と共に校長室を後にしようとした。その時ダンブルドア先生が、「おっと、」と声を上げたので、二人は振り返った。
「そうじゃ、ミネルバ。ナツキのフカフカ耕し魔法は見事であったな。いやはや、二人とも今日は疲れたじゃろう。ゆっくりおやすみ。」
そう言われ、ナツキたちは今度こそ校長室を後にした。
「校長先生の言うとおりですね。ミス・ゴドリクソン。」
「はい?」
「落下したハリー・ポッターを助けようと耕し呪文を使ったのは素晴らしい選択でした。グリフィンドールに10点差し上げましょう。」
マクゴナガル先生はそう言ってにっこり微笑んだ。
翌日、ナツキはハーマイオニーとロンと共に朝食を食べ、再び寮へ戻ろうとしていた。
「・・・リン・・・ービーが・・・」
ナツキは立ち止まった。妖精の呪文の教室前でマクゴナガル先生とフリットウィック先生の話し声が微かに聞こえた。「コリン・クリービー」と言っていたような気がした。
「二人とも、少し待って。」
なんだか胸騒ぎがして、ナツキはドアに耳を寄せた。ハーマイオニーとロンもそれに倣った。
「彼が?」
「ええ。ポッターのお見舞いに行こうと思ったようで・・・。アルバスが石になったコリンを見つけたのです。」
「なんということだ・・・。生徒が・・・・・!」
その会話を盗み聞いて、三人は息を呑んだ。
その場からそっと立ち去ったところでハーマイオニーが口を開いた。
「ポリジュース薬を作りましょう。」
「そうだね。早い方がいい。」
「早くしないとマルフォイが全員石に変えちゃうぜ。」
ハーマイオニーの提案にナツキとロンも納得してそう返した。予定していたハリーのお見舞いは中止だ。急いで3階の女子トイレで製作を開始した。
しばらくすると、退院したハリーが女子トイレにやってきた。そこでどうやらドビーから秘密の部屋は以前にも開けられたことがあると聞いた、と教えられた。
十二月の第二週目に、例年のとおり、マクゴナガル先生がクリスマス休暇中、学校に残る生徒の名前を調べにきた。マルフォイも残ると聞いて、四人はますます怪しいと睨んだ。休暇中なら、ポリジュース薬を使って、マルフォイをうまく白状させるのに、絶好のチャンスだ。
しかしナツキは家に帰ることを選んだ。なぜならアバーフォースから手紙が届いたからだ。手紙には、『面倒ごとが起きた。手続きにはお前がいなければならない。クリスマス休暇は必ず帰るように。プラットフォームで待つ』と書かれていた。手続きとはなんのことだかわからないが、アバーフォースがこのような頼みをすることは非常に稀である。帰らないという選択肢はないのだろう。
煎じ薬は半分ほどしかできていなかった。成績優秀なハーマイオニーとナツキの手を持ってしても、やはり貴重な材料をスネイプの研究室から盗む必要があった。
「私が実行犯になるのがいいの。」
ハーマイオニーはそう言って覚悟を決め、ハリーがこっそり花火を打ち上げて阿鼻叫喚とかした教室を傍目に、材料を盗み出したのだった。
その数日後、ナツキは温室に来ていた。件の罰則だ。
「作業中は絶対に耳当てを外さないように!」
「はい。」
作業自体はただの水やりであった。植え替え作業と異なり、根の部分は土の中だが、時々手のようなものが見える株がある。
「嫌がったり泣き出しているような様子が見られたら、あやしてください。」
「あやす・・・・・・?」
「優しく声をかけてあげるのです!」
耳当てをつけ何も聞こえなくなったところで、スプラウト先生から受け取った如雨露を持ち、そっと水をかけた。水を注ぐたび、マンドレイクたちはうねうねと暴れたり、ふにゃっと黙ったり、泣き出したり。なだめながらの水やりは、思った以上に体力と忍耐が要った。
その日の作業が終わって、ナツキはクタクタになりながらポリジュース薬のために3階の女子トイレに向かって歩いていた。
まさかこんなにきついだなんて思っていなかった。マンドレイクを実際に育てるなんてなかなかできない体験ではあるけれども体力的にきつい。しかも一回きりの罰則ではない!ダンブルドア先生が「しばらく」といったときにどれくらいか聞いておけばよかったとナツキは大いに後悔した。
ぐるぐると考えているうちに、ナツキは足を止めた。
「・・・・嘘でしょ・・・・・。」
それはナツキが昨年度、迷子の末になぜか2階も漂着してしまった西棟の景色だった。これでまさかの3回目である。
「私ったらなんでまた・・・・何か惹きつける呪いでもかかってるのかな・・・・」
ハーっとため息を吐く。しかし前回までと違うのは、今は帰り道を把握しているということだ。2回目に迷った時、ダンブルドア先生と歩きながら、一生懸命道を覚えようとしたことが幸いした。
「確かこっち・・・」
うろ覚えではあったが、なんとか見慣れた景色が見えてきた。そしてナツキは女子トイレへ向かって、その日のポリジュース薬作成作業を終えたのであった。
それからまた数日後、ナツキ、ハリー、ロン、ハーマイオニーが玄関ホールを歩いていると、掲示板の前にちょっとした人集りができていて、貼り出されたばかりの羊皮紙を読んでいた。シェーマス・フィネガンとディーン・トーマスが、興奮した顔で四人を手招きした。
「『決闘クラブ』を始めるんだって!」
「今夜が第一回目だ。」
ハリー、ロン、ハーマイオニーも興味を持ったらしい。ナツキもそうだった。
「僕たちも行こうか。」
ハリーの言葉にロンとハーマイオニーは賛成した。しかしナツキはどんよりとした表情でそれを断った。
「・・・今夜、また温室に行かないといけないの。寒くなってきたから、防寒しないとってスプラウト先生が・・・・」
ナツキの言葉を聞いてハリーは申し訳なさそうな顔をした。しかしナツキが罰則を受けるのはハリーのせいではない。
「ロックハートがまともな先生なら私も一緒に行けたのに!」
その夜、ナツキは温室で耳当てをつけながらバタバタもがくマンドラゴラに靴下とマフラーを身に付けさせた。寒くなってきたというのに、ナツキは汗まみれである。
作業があらかた終わり、寮に向かったナツキはシャワーを浴びた。その後女子部屋でハーマイオニーがナツキに声をかけ、決闘クラブで起こったことを教えてくれた。
「ハリーがパーセルマウス!?でも、ハリーはグリフィンドールだし、スリザリンとは関係ないよ。」
「でも関係があるかどうかはわからないじゃない。もちろん私はハリーが悪いことをしたとは思っていないわよ。でも、スリザリンの血が入っていないとは限らないわ。1000年前の人なんだから。」
「それはそうだけど・・・そしたらスリザリンの血に関しては皆に言えることだよ。スリザリンがパーセルマウスだからって、パーセルマウスすなわちスリザリンの継承者とも限らないでしょ。」
「私やナツキがそう思っても、他のみんなはそうは思わないのよ。」
ハーマイオニーの指摘はその通りで、翌日の談話室での皆のハリーへの風当たりは強かった。しかしナツキは昨夜に引き続き、スプラウト先生の作業を朝から手伝っており、作業が終わってからは疲れて寮に戻るのも億劫だったので、誰もいない廊下のベンチでボーッと雪を眺めていた。
そろそろ次の「変身術」の授業の教科書を取りに行かねば。そう思って、思い腰を上げ、寮へ向かった。その途中でクシャクシャ頭の後ろ姿を見つけた。
「ハリー、」
「ナツキ、・・・お疲れ様・・・」
ハリーは午前中なのにクタクタになっているナツキに思わずそういった。そして、ハッフルパフ生に怖がられていることをナツキに漏らした。
「犯人が明るみに出てきたときに謝ってもらおう!全く、ちょっと珍しいことができたからってすぐに除け者にするなんて信じられない!」
「うん。そうだね。ナツキに話してみてよかったよ。」
ハリーは少しだけ気持ちが軽くなった。暗い廊下に差し掛かった時、ハリーは何かにつまずいた。
「ハリー、だいじょ・・・」
ナツキは言葉を失った。ジャスティン・フィンチ‐フレッチリーが転がっていた。冷たく、ガチガチに硬直し、恐怖の跡が顔に凍りつき、虚ろな目は天井を凝視している。その隣にもう一つ、サー・ニコラスも、床から十五センチほど上に、真横にじっと動かずに浮いていた。首は半分落ち、顔にはジャスティンと同じ恐怖が貼りついていた。
ハリーとナツキはその場に立ち尽くした。きっとこの場を離れた方が、自分達にとって良いことをもたらす。しかし、放っておくのも気が引ける。
「せ、先生を呼びに行こう。」
ナツキが声を振り絞りそう言うと、ハリーも頷いた。しかし、二人が歩こうとした時、最悪なことにピーブズが現れ、大声で叫んだ。
「襲われた!襲われた!またまた襲われた!生きてても死んでても、みんな危ないぞ!命からがら逃げろ!おーそーわーれーたー!」
続々と生徒が廊下に集まってきて、その光景を目にした。
ナツキとハリーは壁際で、息を殺すように、その光景を見ていた。すると、マクゴナガル先生がやってきた。
「現行犯だ!」
顔面蒼白のアーニーが、芝居の仕種のようにハリーを指差した。
「おやめなさい、マクミラン!」
マクゴナガル先生が厳しくたしなめた。
「おいでなさい、ポッター。ゴドリクソンも。」
そしてナツキは今学期2度目の校長室だな、とどこか遠くを見てそう思った。
ナツキは校長室へ初めて入った。
そこではダンブルドア校長が穏やかな笑みを浮かべていた。
「おや、ナツキ、クィディッチの試合はグリフィンドールが勝ったようじゃな。おめでとう!」
そう言って、ダンブルドア先生はナツキとロックハート先生の泥んこになったローブを綺麗にする呪文を使った。
「して、ナツキ、君は何をしてここに呼ばれたのかな?」
キラキラした目でダンブルドア先生はナツキに質問した。
マクゴナガル先生が軽く咳払いをして前に出た。声は冷静だが、わずかに言葉を選んでいるのが伝わってくる。
「ミス・ゴドリクソンが、クィディッチの試合終了後、デパルソの呪文を使用し、ロックハート先生を吹き飛ばしました。ただし、その前に先生が、ハリー・ポッターの怪我を治癒しようと呪文を放ったことは申し添えておきます。」
「そうなのです。私としては最善を尽くしました。しかし、彼の腕は随分と調子が悪かったようですね。」
ナツキはキッとロックハートを睨んだ。何をぬけぬけと言っているんだ!
ロックハートは一瞬口を閉じたが、すぐに「とにかく彼女の魔法は私に対して・・・」と再び話し始める。
それを遮るように、ダンブルドアが手を軽く上げた。
「ミス・ゴドリクソンが本気でロックハート先生を害そうとしたならば、先生は大怪我を負っていたことじゃろう。」
そのダンブルドア先生の言葉でロックハートの顔がサーっと青くなった。
「ナツキはただ、ハリーを思うあまり、先生が良からぬことをするのではと勘違いしてしまった。違うかね?」
「そうです!」
ナツキは勢いよく首肯した。
「しかし、先生を攻撃してはならん。ナツキには罰則を課そう。ロックハート先生、それで良いかね?」
「ええ。ええ。構いませんよ。」
その後退出を促されたロックハート先生はナツキから逃げるようにそそくさと校長室を後にした。
残されたナツキはダンブルドア先生に目を向けた。
「あの、ダンブルドア先生、罰則ってなんですか?」
ハリーやロンから聞いたようなのは嫌だなとナツキはビクビクしてその時をまった。
「スプラウト先生がマンドレイクの世話を手伝ってくれる者を探しとってな。ナツキにしばらく頼みたいんじゃ。本当はスネイプ先生あたりが良いのだが、断られてしまってな。ナツキなら薬草学の成績も良いし問題ないじゃろう。」
「わかりました。」
ナツキは安心した。それなら気をつければ危険なことはない。マンドレイクの世話はものすごく疲れるだろうが、先生を吹っ飛ばした罰則と思えばマシな方だろう。何より興味深い。
罰則を言い渡されて、ナツキはマクゴナガル先生と共に校長室を後にしようとした。その時ダンブルドア先生が、「おっと、」と声を上げたので、二人は振り返った。
「そうじゃ、ミネルバ。ナツキのフカフカ耕し魔法は見事であったな。いやはや、二人とも今日は疲れたじゃろう。ゆっくりおやすみ。」
そう言われ、ナツキたちは今度こそ校長室を後にした。
「校長先生の言うとおりですね。ミス・ゴドリクソン。」
「はい?」
「落下したハリー・ポッターを助けようと耕し呪文を使ったのは素晴らしい選択でした。グリフィンドールに10点差し上げましょう。」
マクゴナガル先生はそう言ってにっこり微笑んだ。
翌日、ナツキはハーマイオニーとロンと共に朝食を食べ、再び寮へ戻ろうとしていた。
「・・・リン・・・ービーが・・・」
ナツキは立ち止まった。妖精の呪文の教室前でマクゴナガル先生とフリットウィック先生の話し声が微かに聞こえた。「コリン・クリービー」と言っていたような気がした。
「二人とも、少し待って。」
なんだか胸騒ぎがして、ナツキはドアに耳を寄せた。ハーマイオニーとロンもそれに倣った。
「彼が?」
「ええ。ポッターのお見舞いに行こうと思ったようで・・・。アルバスが石になったコリンを見つけたのです。」
「なんということだ・・・。生徒が・・・・・!」
その会話を盗み聞いて、三人は息を呑んだ。
その場からそっと立ち去ったところでハーマイオニーが口を開いた。
「ポリジュース薬を作りましょう。」
「そうだね。早い方がいい。」
「早くしないとマルフォイが全員石に変えちゃうぜ。」
ハーマイオニーの提案にナツキとロンも納得してそう返した。予定していたハリーのお見舞いは中止だ。急いで3階の女子トイレで製作を開始した。
しばらくすると、退院したハリーが女子トイレにやってきた。そこでどうやらドビーから秘密の部屋は以前にも開けられたことがあると聞いた、と教えられた。
十二月の第二週目に、例年のとおり、マクゴナガル先生がクリスマス休暇中、学校に残る生徒の名前を調べにきた。マルフォイも残ると聞いて、四人はますます怪しいと睨んだ。休暇中なら、ポリジュース薬を使って、マルフォイをうまく白状させるのに、絶好のチャンスだ。
しかしナツキは家に帰ることを選んだ。なぜならアバーフォースから手紙が届いたからだ。手紙には、『面倒ごとが起きた。手続きにはお前がいなければならない。クリスマス休暇は必ず帰るように。プラットフォームで待つ』と書かれていた。手続きとはなんのことだかわからないが、アバーフォースがこのような頼みをすることは非常に稀である。帰らないという選択肢はないのだろう。
煎じ薬は半分ほどしかできていなかった。成績優秀なハーマイオニーとナツキの手を持ってしても、やはり貴重な材料をスネイプの研究室から盗む必要があった。
「私が実行犯になるのがいいの。」
ハーマイオニーはそう言って覚悟を決め、ハリーがこっそり花火を打ち上げて阿鼻叫喚とかした教室を傍目に、材料を盗み出したのだった。
その数日後、ナツキは温室に来ていた。件の罰則だ。
「作業中は絶対に耳当てを外さないように!」
「はい。」
作業自体はただの水やりであった。植え替え作業と異なり、根の部分は土の中だが、時々手のようなものが見える株がある。
「嫌がったり泣き出しているような様子が見られたら、あやしてください。」
「あやす・・・・・・?」
「優しく声をかけてあげるのです!」
耳当てをつけ何も聞こえなくなったところで、スプラウト先生から受け取った如雨露を持ち、そっと水をかけた。水を注ぐたび、マンドレイクたちはうねうねと暴れたり、ふにゃっと黙ったり、泣き出したり。なだめながらの水やりは、思った以上に体力と忍耐が要った。
その日の作業が終わって、ナツキはクタクタになりながらポリジュース薬のために3階の女子トイレに向かって歩いていた。
まさかこんなにきついだなんて思っていなかった。マンドレイクを実際に育てるなんてなかなかできない体験ではあるけれども体力的にきつい。しかも一回きりの罰則ではない!ダンブルドア先生が「しばらく」といったときにどれくらいか聞いておけばよかったとナツキは大いに後悔した。
ぐるぐると考えているうちに、ナツキは足を止めた。
「・・・・嘘でしょ・・・・・。」
それはナツキが昨年度、迷子の末になぜか2階も漂着してしまった西棟の景色だった。これでまさかの3回目である。
「私ったらなんでまた・・・・何か惹きつける呪いでもかかってるのかな・・・・」
ハーっとため息を吐く。しかし前回までと違うのは、今は帰り道を把握しているということだ。2回目に迷った時、ダンブルドア先生と歩きながら、一生懸命道を覚えようとしたことが幸いした。
「確かこっち・・・」
うろ覚えではあったが、なんとか見慣れた景色が見えてきた。そしてナツキは女子トイレへ向かって、その日のポリジュース薬作成作業を終えたのであった。
それからまた数日後、ナツキ、ハリー、ロン、ハーマイオニーが玄関ホールを歩いていると、掲示板の前にちょっとした人集りができていて、貼り出されたばかりの羊皮紙を読んでいた。シェーマス・フィネガンとディーン・トーマスが、興奮した顔で四人を手招きした。
「『決闘クラブ』を始めるんだって!」
「今夜が第一回目だ。」
ハリー、ロン、ハーマイオニーも興味を持ったらしい。ナツキもそうだった。
「僕たちも行こうか。」
ハリーの言葉にロンとハーマイオニーは賛成した。しかしナツキはどんよりとした表情でそれを断った。
「・・・今夜、また温室に行かないといけないの。寒くなってきたから、防寒しないとってスプラウト先生が・・・・」
ナツキの言葉を聞いてハリーは申し訳なさそうな顔をした。しかしナツキが罰則を受けるのはハリーのせいではない。
「ロックハートがまともな先生なら私も一緒に行けたのに!」
その夜、ナツキは温室で耳当てをつけながらバタバタもがくマンドラゴラに靴下とマフラーを身に付けさせた。寒くなってきたというのに、ナツキは汗まみれである。
作業があらかた終わり、寮に向かったナツキはシャワーを浴びた。その後女子部屋でハーマイオニーがナツキに声をかけ、決闘クラブで起こったことを教えてくれた。
「ハリーがパーセルマウス!?でも、ハリーはグリフィンドールだし、スリザリンとは関係ないよ。」
「でも関係があるかどうかはわからないじゃない。もちろん私はハリーが悪いことをしたとは思っていないわよ。でも、スリザリンの血が入っていないとは限らないわ。1000年前の人なんだから。」
「それはそうだけど・・・そしたらスリザリンの血に関しては皆に言えることだよ。スリザリンがパーセルマウスだからって、パーセルマウスすなわちスリザリンの継承者とも限らないでしょ。」
「私やナツキがそう思っても、他のみんなはそうは思わないのよ。」
ハーマイオニーの指摘はその通りで、翌日の談話室での皆のハリーへの風当たりは強かった。しかしナツキは昨夜に引き続き、スプラウト先生の作業を朝から手伝っており、作業が終わってからは疲れて寮に戻るのも億劫だったので、誰もいない廊下のベンチでボーッと雪を眺めていた。
そろそろ次の「変身術」の授業の教科書を取りに行かねば。そう思って、思い腰を上げ、寮へ向かった。その途中でクシャクシャ頭の後ろ姿を見つけた。
「ハリー、」
「ナツキ、・・・お疲れ様・・・」
ハリーは午前中なのにクタクタになっているナツキに思わずそういった。そして、ハッフルパフ生に怖がられていることをナツキに漏らした。
「犯人が明るみに出てきたときに謝ってもらおう!全く、ちょっと珍しいことができたからってすぐに除け者にするなんて信じられない!」
「うん。そうだね。ナツキに話してみてよかったよ。」
ハリーは少しだけ気持ちが軽くなった。暗い廊下に差し掛かった時、ハリーは何かにつまずいた。
「ハリー、だいじょ・・・」
ナツキは言葉を失った。ジャスティン・フィンチ‐フレッチリーが転がっていた。冷たく、ガチガチに硬直し、恐怖の跡が顔に凍りつき、虚ろな目は天井を凝視している。その隣にもう一つ、サー・ニコラスも、床から十五センチほど上に、真横にじっと動かずに浮いていた。首は半分落ち、顔にはジャスティンと同じ恐怖が貼りついていた。
ハリーとナツキはその場に立ち尽くした。きっとこの場を離れた方が、自分達にとって良いことをもたらす。しかし、放っておくのも気が引ける。
「せ、先生を呼びに行こう。」
ナツキが声を振り絞りそう言うと、ハリーも頷いた。しかし、二人が歩こうとした時、最悪なことにピーブズが現れ、大声で叫んだ。
「襲われた!襲われた!またまた襲われた!生きてても死んでても、みんな危ないぞ!命からがら逃げろ!おーそーわーれーたー!」
続々と生徒が廊下に集まってきて、その光景を目にした。
ナツキとハリーは壁際で、息を殺すように、その光景を見ていた。すると、マクゴナガル先生がやってきた。
「現行犯だ!」
顔面蒼白のアーニーが、芝居の仕種のようにハリーを指差した。
「おやめなさい、マクミラン!」
マクゴナガル先生が厳しくたしなめた。
「おいでなさい、ポッター。ゴドリクソンも。」
そしてナツキは今学期2度目の校長室だな、とどこか遠くを見てそう思った。