出立
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夢を見た。
小さい頃の。
「ナツキ!?せっかく描いた絵をどうして・・・・!?」
「・・・だって・・!私の絵、単純でつまらないって言われたの!!」
そうだ。あの日は別の絵画教室の人たちに、自分の絵がただの風景画ばかりで面白味がないと馬鹿にされて、悔しくて大泣きしながら描いた絵をビリビリに破いたんだ。
記憶の中のホクサイ先生が静かに微笑んで、私の頭を撫でた。
「私はナツキの絵が好きだよ。まるで海の声が聞こえてくるようじゃ・・・・。ナツキは被写体と、対話ができる子だね。誰にでもできることではない」
「・・・ほんと・・・?」
「本当だとも。ホッホ、こりゃ私もすぐに追い越されてしまうな」
いつでも優しかった先生。
孤児だった私を育てて、大好きな絵の書き方を教えてくれた大恩人。
「先生、私ね、先生も誰も描けないような海を描くのが夢なの・・・・。わ、笑う?」
確か、この前にこれを他の子に言ったら、巨匠ホクサイが書けないような絵をお前が書けるわけがないと鼻で笑われたんだ。
でも、先生なら、笑わないでくれそうな気がして、勇気を出して夢を口にしてみた。
「笑わないとも。・・・それはナツキにしかできないことじゃ。海が一等好きなナツキの絵じゃ・・・・。大きくなったら、海をたくさん見て回るといい。ひろーい海じゃ・・・・・きっとそのうちに、夢は叶うじゃろう」
「ほんと!?できたら、先生に見せてあげるね!!」
「・・・おやおや、そんな長生きできるかなァ・・・・・」
困ったように笑うホクサイ先生の顔が薄れていく。
まだ覚めないで、幸せな夢を見せてと願うけれども、無情にも目の前に見慣れた天井が現れた。
「・・・・」
見回すとグースカと家族と海賊が寝ていた。
何となくホクサイ先生との思い出に浸りたくなって、簡単に身支度を済ませて教会へ向かった。
「・・・・・先生・・・私、海賊になるよ・・・」
最初で最後の、先生との合作。
確か7歳の時に、大きな絵を描いてみたいと言ったら、先生が大きなキャンパスを用意して、描くのを手伝ってくれたんだ。
「・・・フフ、下手くそね」
所々、粗が目に入る。
それでも、自分にとっては小さい頃の幸せな思い出の象徴だった。
「下手?どこがだ!?」
「わっ!!びっくりした・・・」
いつの間にかルフィが隣にいた。どうやら家を出た私に気づいて追ってきたらしい。
「・・・ほら、こことか。処理が甘いの」
「う〜〜〜ん、だめだ。おれにはわかんねェや!でも、おれ、この絵すっげー好きだ!」
ルフィの言葉に胸がとても温かくなった。
「なんかよ、海が話しかけてくるみてェな感じがしてよ!これ描いたやつは、すげー海が好きなやつだと思ったんだ!だから仲間にしたかったんだ!」
「!!」
先生と、同じ言葉だった。
何かの思いが込み上げてきたような感覚がした。
「・・・ルフィ、私ね、夢があるの」
「ん?」
「誰も描いたことのない海を描きたいの。私にしか描けない、大好きな海の絵を・・・」
ルフィは私の夢を笑うだろうか。
子供みたいな、まさに夢物語のような夢だ。
「そーか!にしし!海は広いからな。おれが誰もみたこともないような海に連れてってやるからそれを描けよ!な!!ナツキならいつかきっとすげー海が描けるさ!!」
「!」
また、先生の言葉とルフィが重なる。
「絵描きで海賊なんて、きっとなかなかいねェぞ!ワクワクしねェか?おれ、ゲージュツの事はよくわかんねェけどよ、お前の絵が一番好きだ!」
どうしてこの人は、一番欲しい言葉をくれるのだろう。
コンテストで賞を取って、よくわからない褒め言葉を並べられるよりも「絵が好きだ」と言われることが何よりも嬉しかった。
それは先生が昔から言ってくれたことだから。
「ありがとう・・・!!私を、海に誘ってくれて・・・!あまり海賊らしいことはできないかもしれないけど、役に立てるよう頑張るね」
「海賊らしいことなんて簡単だ!好きなことを好きなだけやれば良いんだ!自由なんだ!海賊は!!」
「自由・・・・・?」
「ああ。自由に絵描いてもいいし、肉食ってもいいし、寝てもいいし、肉食ってもいいし・・・」
「お肉食べ過ぎじゃない?」
「良いんだ!自由だから!」
なんて楽しい人なんだろう。
こんな人がいるなんて思わなかった。
1年前にホクサイ先生が亡くなってからは、世界が色を失ったようだった。
そんな世界が、また色づき始めた。
ルフィが、色をつけてくれた。
「ルフィは、海賊王になりたいって言ったわよね」
「ああ。そうだ!」
「じゃあ、好きなことをやりながら、それをお手伝いするわ」
「おう!」
にしし、と愉快に笑うルフィ。
この時、私はこの人について行こうと、心から決心したのだった。
小さい頃の。
「ナツキ!?せっかく描いた絵をどうして・・・・!?」
「・・・だって・・!私の絵、単純でつまらないって言われたの!!」
そうだ。あの日は別の絵画教室の人たちに、自分の絵がただの風景画ばかりで面白味がないと馬鹿にされて、悔しくて大泣きしながら描いた絵をビリビリに破いたんだ。
記憶の中のホクサイ先生が静かに微笑んで、私の頭を撫でた。
「私はナツキの絵が好きだよ。まるで海の声が聞こえてくるようじゃ・・・・。ナツキは被写体と、対話ができる子だね。誰にでもできることではない」
「・・・ほんと・・・?」
「本当だとも。ホッホ、こりゃ私もすぐに追い越されてしまうな」
いつでも優しかった先生。
孤児だった私を育てて、大好きな絵の書き方を教えてくれた大恩人。
「先生、私ね、先生も誰も描けないような海を描くのが夢なの・・・・。わ、笑う?」
確か、この前にこれを他の子に言ったら、巨匠ホクサイが書けないような絵をお前が書けるわけがないと鼻で笑われたんだ。
でも、先生なら、笑わないでくれそうな気がして、勇気を出して夢を口にしてみた。
「笑わないとも。・・・それはナツキにしかできないことじゃ。海が一等好きなナツキの絵じゃ・・・・。大きくなったら、海をたくさん見て回るといい。ひろーい海じゃ・・・・・きっとそのうちに、夢は叶うじゃろう」
「ほんと!?できたら、先生に見せてあげるね!!」
「・・・おやおや、そんな長生きできるかなァ・・・・・」
困ったように笑うホクサイ先生の顔が薄れていく。
まだ覚めないで、幸せな夢を見せてと願うけれども、無情にも目の前に見慣れた天井が現れた。
「・・・・」
見回すとグースカと家族と海賊が寝ていた。
何となくホクサイ先生との思い出に浸りたくなって、簡単に身支度を済ませて教会へ向かった。
「・・・・・先生・・・私、海賊になるよ・・・」
最初で最後の、先生との合作。
確か7歳の時に、大きな絵を描いてみたいと言ったら、先生が大きなキャンパスを用意して、描くのを手伝ってくれたんだ。
「・・・フフ、下手くそね」
所々、粗が目に入る。
それでも、自分にとっては小さい頃の幸せな思い出の象徴だった。
「下手?どこがだ!?」
「わっ!!びっくりした・・・」
いつの間にかルフィが隣にいた。どうやら家を出た私に気づいて追ってきたらしい。
「・・・ほら、こことか。処理が甘いの」
「う〜〜〜ん、だめだ。おれにはわかんねェや!でも、おれ、この絵すっげー好きだ!」
ルフィの言葉に胸がとても温かくなった。
「なんかよ、海が話しかけてくるみてェな感じがしてよ!これ描いたやつは、すげー海が好きなやつだと思ったんだ!だから仲間にしたかったんだ!」
「!!」
先生と、同じ言葉だった。
何かの思いが込み上げてきたような感覚がした。
「・・・ルフィ、私ね、夢があるの」
「ん?」
「誰も描いたことのない海を描きたいの。私にしか描けない、大好きな海の絵を・・・」
ルフィは私の夢を笑うだろうか。
子供みたいな、まさに夢物語のような夢だ。
「そーか!にしし!海は広いからな。おれが誰もみたこともないような海に連れてってやるからそれを描けよ!な!!ナツキならいつかきっとすげー海が描けるさ!!」
「!」
また、先生の言葉とルフィが重なる。
「絵描きで海賊なんて、きっとなかなかいねェぞ!ワクワクしねェか?おれ、ゲージュツの事はよくわかんねェけどよ、お前の絵が一番好きだ!」
どうしてこの人は、一番欲しい言葉をくれるのだろう。
コンテストで賞を取って、よくわからない褒め言葉を並べられるよりも「絵が好きだ」と言われることが何よりも嬉しかった。
それは先生が昔から言ってくれたことだから。
「ありがとう・・・!!私を、海に誘ってくれて・・・!あまり海賊らしいことはできないかもしれないけど、役に立てるよう頑張るね」
「海賊らしいことなんて簡単だ!好きなことを好きなだけやれば良いんだ!自由なんだ!海賊は!!」
「自由・・・・・?」
「ああ。自由に絵描いてもいいし、肉食ってもいいし、寝てもいいし、肉食ってもいいし・・・」
「お肉食べ過ぎじゃない?」
「良いんだ!自由だから!」
なんて楽しい人なんだろう。
こんな人がいるなんて思わなかった。
1年前にホクサイ先生が亡くなってからは、世界が色を失ったようだった。
そんな世界が、また色づき始めた。
ルフィが、色をつけてくれた。
「ルフィは、海賊王になりたいって言ったわよね」
「ああ。そうだ!」
「じゃあ、好きなことをやりながら、それをお手伝いするわ」
「おう!」
にしし、と愉快に笑うルフィ。
この時、私はこの人について行こうと、心から決心したのだった。