仮初のパーティーinイタリア
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「ナツキ、ボスさんに何話したんだ?」
機嫌を悪くしてバルコニーを去る後ろ姿を見て、スクアーロはそう尋ねた。先程の会話をスクアーロに告げると、彼はため息をついた。
「・・・なるほどなぁ・・・・。そりゃああなるわけだ。」
「私、余計なことを言っちゃったのかしら・・・?」
ナツキはこの時、XANXUSと9代目に血の繋がりがないことを知らなかった。ボンゴレの重要機密の一つであるからだ。
「ナツキ、少し離れるぞぉ。話さねぇといけねぇことがある。」
スクアーロはナツキを連れ出し、庭園の方にまで出てきた。周りには人はいない。
「・・・XANXUSは、養子なんだ。」
「え・・・・!?」
スクアーロはとうとう、XANXUSが養子として引き取られた経緯、ゆりかご、そして2年前の争奪戦についてナツキに告げた。全て、ナツキを友人としてもXANXUSの契約相手としても信用しているから話したのだった。
「それ、私に話していいの・・・?」
「信用してる。ナツキじゃなかったら話さねぇ。」
「・・・・・そう・・・。私、XANXUSのところに行くわ・・・。」
謝らないと、そうナツキは強く思った。知らなかったとはいえ、彼が触れてほしくないところに触れてしまったのだ。
余計なことをしてしまった。
クーデターを起こしていたことは予想がついていたのに、その理由を単なる後継者争いによるいざこざであろうと、深く考えていなかった自分を恥じた。
「XANXUS・・・・!」
会場を見廻すと、隅でとんでもない威圧感を放ちながらグラスを片手に持つXANXUSがいた。その周りには、ナツキがいない隙を狙ってか、再び女たちが群がっていた。
この女性たちは、どれだけ知っているのだろうか。全員9代目の差し金なのだろうかと疑い始めてしまう。そしてもし、この気持ちをXANXUSも抱えているのだとしたら、不愉快極まりないことは目に見えている。
「・・・私の彼に、何か御用でも?」
気づけばそんな言葉が口から出ていた。一方で、彼に無神経なことを言ってしまった自分に言えたものではないと知ってはいた。
それでも、そういうと、女たちは忌々しげにナツキを見て、その場を後にした。
「・・・少し話さない?」
令嬢たちがいなくなったからか、先程のような威圧感は放っていないが、変わらず機嫌は悪そうだった。しかしXANXUSは立ち上がった。
二人で会場を抜け出し、庭園に出る。一眼はない。
ナツキはそこでXANXUSと向き合い、頭を下げた。
「・・・・何の真似だ。」
「ごめんなさい・・・・!!」
ナツキは頭を上げて再びXANXUSを見た。開口一番が謝罪だとは思わなかったのか驚いているようだった。
「・・・ハァ・・・、もういい。少し、イラついただけだ。」
XANXUSはその言葉通り、彼にしては怒っていない方だった。
「・・・スクアーロから、全部聞いたわ。あなたのこと・・・。私、本当に無神経なことを言ったのね・・・・・。ごめんなさい。」
目の前のナツキの態度を一言で表すと、"誠実"であった。XANXUSはふと、自分に対してこのように誠意を見せてくれたものは今までいなかったのではと思った。
自分に対して謝罪をするのは、恐れを抱いているからに他ならない者達ばかりだった。
ナツキの目には、恐れはなかった。
ただ、真摯にXANXUSに対する申し訳ないという思いを感じることができた。そんなのは、初めてだった。
「・・・・・いいっつってんだろ。もう謝るな。・・・何も知らなかったんだ。それを察しろとまでは言わねぇ。」
XANXUSの本心だった。
口には出さないが、契約者に自身の身の上を正確に話していなかったことにも非はある。それに何より、ナツキは自分に誠実でいてくれるのだとわかったことだけでも僥倖だ。
「・・・そうね。知らなかった・・・・。でも、だからと言ってそれがあなたを傷つけていい理由にはならないわ・・・・。ごめんなさい。」
「・・・傷・・・・?」
そこで初めてXANXUSは自分が傷ついていたのかと、自覚した。
確かに、あの時、怒りとは異なった感情だったと思い出す。よくわからないが、苛ついていた。そのことに余計に苛立ったのだ。
「・・・・・ここの飯は、うまくねぇ・・・」
「え?」
突然料理の話をしだすXANXUSの意図を測りかねて、ナツキは素っ頓狂な声を上げた。
「この後食いに行くぞ。テメェが払え。俺を不快にさせた罰だ。」
「! ・・・もちろん・・・。お詫びにいくらでも奢るわ。」
XANXUSはもう苛立ってはいなかった。
その代わり、今までに味わったことのない心地よさをナツキに対して感じていた。