仮初の初デート
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
しばらく酒を嗜んでいると、ドライヤーの音が聞こえてきて、そしてリビングにナツキが寝巻き姿で現れた。
「どう?それ、美味しいでしょう。」
「悪くねえ。」
早速手に入れたウイスキーを飲んでいるXANXUSを見つけ、ナツキは嬉しそうにそう尋ねた。XANXUSの素っ気ない返しにも文句を言うことはない。
「たまたま縁があってね、頂いたのよ。日本のウイスキーも素敵でしょう?あ、いいおつまみもあるのよ。持ってくるわね。」
キッチンの方から箱を持ってきたナツキはソファに座るXANXUSのすぐ脇に腰掛ける。
風呂上がりの香りをXANXUSは感じた。そして化粧をしていなと少し幼くなるのだな、と頭の隅で考えていた。
「これは人気のやつでずっと食べてみたかったの。」
楽しそうに箱を開けて、つまみを取り出すナツキ。そこでふと、XANXUSは他の女とは全く違うナツキに気づく。
「作ったりしねぇのか。」
「え?おつまみ?」
XANXUSに今まで付き纏ってきた女のほとんどは料理ができ、いい妻になれることをアピールしていた。正直プロが作ったものの方がはるかに上手いし、第一何が入ってるか怪し過ぎて、あまりそれらを口に入れた記憶はない。
「作ったりもするけど、こっちの方美味しいじゃない。お金払ってるんだから。」
なんとも正直なその言葉にXANXUSはつい吹き出してしまった。
「ぷはっ、テメェは、全く・・・・」
「?」
何が面白かったのかよくわからないナツキは首を傾げた。お取り寄せおつまみがお気に召さないと言うわけではないらしい。では、どうしてこの男は笑っているのだろうかと不思議に思った。
(何だろう・・・?まあご機嫌ならいいか。)
「食うのが好きなのか?」
「え?・・・そうね。食には結構お金かけちゃうかも。」
「何が好きなんだ?」
思わぬXANXUSからの連続の質問にナツキは目を丸くした。
これまで質問はほとんどナツキからであったが、XANXUSの方もこちらを気にかけるようになってきたようだと気づく。どうやら契約のパートナーとして気に入ってもらえたようだ。
「嫌いなものは少ないけど・・・強いて言えば辛すぎるものはあんまり。お酒は私もウイスキーが好きよ。あと日本酒も。辛口も飲めるけど甘い方が好きね。」
「なら今度食わせてやる。酒も。」
「え?ほんと!嬉しい!」
スクアーロが聞いたら卒倒するような会話だが、そんなことは知らないナツキはヴァリアーのボスが紹介する店はさぞかし美味しいのだろうと目を輝かせていた。
「あなたは?お酒の他には何が好き?」
「肉。」
「肉かぁ・・・美味しいところ、いっぱいあるわね。次に紹介するのを考えておくわ。」
そんな色気のない話をしていくうちに、気づけばもう真夜中になっていた。
口数が少なくなってきたナツキにXANXUSは眠いのだろうと察して、「眠いのか」と彼にしては珍しく気づかった言葉が出た。
「うん。寝る?」
その日はもう十二分に満足したため、XANXUSはコクリと頷いた。
「そっちの部屋にお布団敷いておいたんだけど、ベッドがいいなら私のを使って。・・・ふわぁ・・」
「布団でいい。・・・さっさと寝ろ。」
「ん。おやすみ。」
「ああ。」
リビングで別れを告げ、それぞれ別の部屋へ向かう。
ナツキはこの計画を思いついてからイタリアへやってきたらしく、その部屋は元々XANXUS(最初はスクアーロ)のために用意されたものだった。
甘いものを食べ、上等な酒を飲み、気安い契約相手とのやりとりにも満足し、XANXUSはこの日、ほんの少しだけスクアーロに感謝した。そして、この馬鹿馬鹿しい偽の恋人計画が互いにうまくいくといいと思いながら、真新しい布団の中で目を瞑ったのだった。