仮初の初デート
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「そろそろ行く?」
バーで会ってから2時間近く経過していた。
「・・ああ・・・」
もうこんな時間か、と口には出さないがXANXUSは思っていた。
「先出てろ。」
そうXANXUSが言うと、その意図を察したナツキは口を尖らせた。
「・・・・・私の方食べたわよ。」
「俺の方が飲んだ。」
おそらくXANXUSは支払いを済ませるつもりなのだろう。互いに金に困ってはいないのは知っている。
ナツキは複雑な気持ちになったが、ここで自分が支払うと粘るのも彼の面子に傷をつける行為だと言う認識はあったので、そこで引くことにした。
店を出て、夜風に当たってXANXUSを待つ。
ひんやりとした空気が、ちょうどいい酔い覚ましとなった。
「ありがとう。」
バーから出てきたXANXUSにナツキはそう言った。XANXUSはそれに何かを返すと言うことは別段しなかった。
「じゃ、次は私の番ね。こっちよ。」
ナツキが先導すると、XANXUSは大人しくその後ろについていった。
二人の予定は、バーで仮初の逢瀬を交わすことだけではなかった。
「ここよ。」
少し歩くと、ナツキはあるマンションの前で立ち止まった。
「今はここに住んでるの。」
「・・・狭くねぇのか?」
「私はこれくらいで十分だけどなぁ。」
エントランスから二人でエレベーターに乗り込む。
これこそがナツキの考えた計画であり、スクアーロがXANXUSに伝えることを渋った原因だった。
それは飲んだ帰りに、ナツキの部屋で一夜を明かすこと。
男女の間ではよくあることだし、それが自分たちにあってもなんら不思議ではない。そう、周りは考える。
住まいに行くような関係であるとどこからか漏れ出れば、狙い通りである。
チン、とエレベーターが目的の階についたことを告げて、扉を開けた。
そして廊下を少し歩いて、お目当ての部屋の前にたどり着く。
「さ、ようこそ。・・・と言っても家具家電付きだから私物は少ないけどね。」
ナツキの言う通り、部屋は殺風景であった。
それでも2LDKで、一人暮らしの部屋としては十分すぎるはずだ。
「好きに座って。今・・・あ、最初にお風呂入る?」
キッチンに向かおうとしたナツキがXANXUSに尋ねた。
「好きにしろ。」
「んー、じゃあ最初に入ろうかな。待ってね、すぐ準備できるから・・・」
ナツキはそう言って、風呂場に向かった。その言葉通り、すぐに準備はできたようで、XANXUSに先に入るよう声をかける。その従いXANXUSは風呂場へ向かい体を清めた。
「あれ・・・・ごめんなさい。少し小さかったわね。」
「・・・そうだな。」
風呂場から上がってきたXANXUSが身に付けていたのはナツキが兄用に用意していた寝巻きであった。
当主の兄もスタイルはいいと思っていたが、XANXUSはそれ以上に背が高い。ズボンの裾が少し短いようであった。
「次は別なものを用意しておくわね。」
「・・・ああ・・・」
次があることにXANXUSは不思議な感覚を覚えた。
「じゃあ私も入ってくるから。これ好きに飲んでて。」
そう言ってナツキもXANXUSに続き風呂場へと向かっていった。テーブルの上には、テキーラとウイスキーが並んでいた。
「・・・・・・」
自分たちが契約上の関係でしかないとはいえナツキの無防備さにXANXUSは呆れていた。
スクアーロの紹介ということがよほど信頼に足るのか、腕っ節の自信からなのか、はたまた能天気なだけなのか。
一瞬か考えたのちにXANXUSは思考をやめて、目の前のウイスキーをトワイスアップで飲み始める。
「・・・!」
ナツキが良いウイスキーを手に入れたというのは、XANXUSと会う口実ではなく本当の話のようで、そこにあったのはかなりの上物だった。