仮初の初デート
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
______________________
美味しいウイスキーが手に入ったの。
彼の好物なんでしょう?
こんなスケジュールはどうかしら。
・・・・
じゃあXANXUによろしくね。
このメールは読んだらしっかり消しておくこと!
______________________
ナツキから来たメールを見てスクアーロはそれをXANXUS に伝えることを少し躊躇った。
しかしナツキをそこそこ気に入っているようだったXANXUSのことを思い出し、スクアーロは決意を固めた。
唯一の上司が居座る執務室に入ると、本日は珍しく物が飛んでこなかった。
どうやら機嫌は悪くないらしいと、スクアーロはひとまず安堵する。
そして、ナツキから連絡が来たことを告げた。
「なんつってるんだ?」
「それが・・・あー、見せた方が早ぇなぁ。」
まだ削除はされていないメールの文面をXANXUSに見せる。
その眉間の皺が少しでも動いたら距離を取らねばと、スクアーロは覚悟を決めた。
しかし、XANXUSの機嫌がそれ以上悪くなることはなかった。
「わかったと伝えておけ。」
「あぁ!?いいのかよ!?結構な要求してんぞあいつ!?」
「あ?さっさとしろ、カス。」
「!!」
そう言い放つとついにXANXUSは机に置いてあったペーパーウェイトをスクアーロに投げつけた。
まさか凶器を投げられる原因が、自分になるとは予想していなかった。
「わ、わかったぁ!!!」
逃げるように執務室から出て、スクアーロは即座にナツキに了承の返信をして、メールのデータを削除した。
どうやら思っていた以上にXANXUSはナツキに好感を持っているらしい。長年友人であったのだ。ナツキを気に入る理由は十分に理解できる。
XANXUSはナツキをどの程度気に入っているのだろうかと考えていると、早速ナツキから連絡が来た。
_____________________
ナポリに『コニーニョ』ってバーがあるからそこに21時。
あとは予定通りに。
_____________________
簡素な返信が来て、スクアーロはまたXANXUSの元に行かねばと憂鬱になるのであった。
**********************
ナポリのバー「コニーニョ」
XANXUSは予定よりやや早く着いてしまい、一人カウンターで酒を飲んでいた。
「ごめんなさい。お待たせした?」
「ああ。」
「ふふっ、普通は待っていないって言うところよ。でもありがとう。」
XANXUSが入店してから10分ほどではあるが、彼としてはかなり待った方なのだろう。
そんなことは知らずに、ナツキは申し訳ない気持ちになりながら、XANXUSの目の前にドリンクしかないことを把握する。
「食べ物は何か頼んだ?」
「いや・・・」
「勝手に頼むわね。店員さん、注文いいですか?・・・えーと、カプレーゼと、エビのアヒージョと・・・バゲットも。あ、ねえピザ頼んだら食べる?」
「・・・ああ」
「じゃあこのマルゲリータを。」
夕食をまだ食べていなかったナツキは女ひとりにしてはやや多い量を注文する。
「ドリンクはいかがいたしますか?」
「じゃあ・・・うーん、モヒートを。」
飲むよりも食べる方が優先なんだな、なんてXANXUSが頭の隅で考えながら酒を飲む。すぐにナツキのカクテルも運ばれ、そのままXANXUSに体を向けた。
「?」
何だろうかとXANXUSは一瞬思ったが、グラスを軽く持ち上げたナツキに、その意図を察した。
「はい、乾杯」
「・・・」
XANXUSは何も言わなかったが、グラスを近づけるナツキを拒むことはなかった。
そんなXANXUSに文句を言うでもなく、ナツキはカン、と小さな高い音を鳴らし、グラスに口をつけた。
「うん、美味しい!」
それまで仕事で少し疲れていたナツキは鼻に抜ける爽やかなミントの香りを楽しんだ。少しすると食べ物も順々に運ばれてきてナツキは幸せそうな笑顔を浮かべた。
「お腹は減ってる?」
「食えなくはねぇ。」
「じゃあ食べたくなったら勝手に食べていいからね。」
「・・・ああ。」
スクアーロがナツキを紹介するときに、面倒な女ではないと言っていたのを、早速実感していた。
初めて会った時も感じたが、気疲れさせないように振る舞うのが絶妙に上手いとXANXUSは感じていた。
(・・・本当に適任だったな・・・・・・)
適度に話を続けるナツキにXANXUSは最初にあった時以上に好感を持っていた。
そしてそれはナツキもであった。
(この人、愛想はそんなによくないけど、これくらいの空気感の方が楽でいいな・・・。スクアーロでもよかったけど、これはこれで悪くはないかもしれない。)
そうして少しずつ会話をしながら、夜が段々と更けていくのだった。