利害の一致
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先の電話から程なくして、イタリア郊外のとあるレストランにてナツキ、スクアーロ、XANXUSはついに対面を果たしたのであった。
「こっちがナツキで、こっちがXANXUSだ。」
「初めまして。」
「ああ・・・」
初めましての返しが、「ああ」ってことあるか、とスクアーロは心の中で大声で毒突いた。しかし特に気にしてもいないようなナツキの様子を見てホッとしたのであった。
「食事をしながらで申し訳ないけれど、契約の確認と、軽く打ち合わせをしましょう。」
そういってナツキは話をテキパキと進めていった。
「まず、3ヶ月の契約ということにしてそのあとは1ヶ月ごとに更新していく、という形を提案するわ。とりあえず主要なこの辺りのパーティーに一緒に出席しましょう。定期的に外で会えると信憑性が増すから、そうできればいいんだけど、これはお互いの仕事が仕事だし月に一回会えるか会えないか程度でいいと思うわ。」
そんなところでどうかしら、とXANXUSを見つめるナツキ。
XANXUSはというと、予想と全く違うタイプの女であったために内心では驚いていた。仮初めの恋人なんてバカらしいことを思いつくようだから、腕はたつが抜けた令嬢のような人物像を想像していたのだ。
しかしそれに反し、必要な情報だけを取捨選択して話し、XANXUSに媚びを売ることも全くないその姿勢に好感を覚えた。
「構わねえ。」
「そう。で、設定は作り込み過ぎても疲れてしまうだけだから、シンプルにしましょう。私たちは、今日スクアーロの紹介で出会って互いに意気投合した、って程で。」
「だから仕事の契約なのにレストランを指定したのかぁ・・・。妙だと思ったぜ。」
「嘘で固めるよりも本当の話をそれっぽくしたほうが簡単だし騙しやすいわ。常套手段でしょ。で、質問はある?」
ナツキがあまりに簡潔に契約を済ませるものであったから、話自体はすぐに終わり、その後はお互いの把握のためにと簡単に会話をしながら食事を済ませるのであった。
食事の後、ナツキは二人と別れ、一人帰路に着いた。
(なんだか思っていた感じと違ったな・・・・・)
XANXUSのことはある程度は噂で知っていた。ボンゴレ9代目の息子で、かつて10代目に最も近いと言われた男。昔、スクアーロからも彼が10代目の座を狙っていたと言う話は聞いていた。しかし、現在10代目に内定しているのは日本にいる全く別の人物で、確かまだ成人すらしていないはずだ。
そして今までの間に、ボンゴレの上層部の動向とスクアーロの様子から察するに、おそらく二度はクーデターないしはそれに近いものを起こしているとナツキは予想していた。実際にその予想は完全に当たっていた。
これらの情報から、ナツキはXANXUSを高慢で上昇思考の強い、典型的なお坊ちゃんタイプとプロファイリングしていた。しかし実際に会ってみると、大きく外れているわけではないが違和感があった。
(権力に執着しているようなタイプには感じなかったけど・・・訳ありかな。)
時を同じくして、スクアーロは車を運転しながら後部座席にいるXANXUSと取引相手の話をしていたのだった。
「いい奴だったろぉ?」
「まあ、面倒ではなかった。」
スクアーロは、自身の推薦した人物に間違いはなかったことに安心した。
「あとはあいつに任せときゃなんとかなるから、言う事聞けよぉ?ナツキの野郎、普段は温厚なんだが怒るとなぁ・・・」
何かを思い出したのか、普段は大声で話すスクアーロの声は尻すぼみになりその顔は心なしか青かった。
ナツキの言うことを聞くかどうかは置いておいて、確かに全てを任せて安心できる相手だとXANXUSは思った。それと同時に、あの女を当主に、と願う者たちがいることにも納得がいった。
「次はいつだ?」
何とは無しにXANXUSの口から出た疑問であったが、スクアーロには次回を期待しているように聞こえた。しかしここでそれを茶化せば、この男はせっかくの契約を破談にし、降ってくる見合い話に再び苛立って物を投げるのだ、と想像し、真面目に答えることにした。
「そのうち俺の方に連絡が来るんじゃねえかぁ?」
「・・・そうか。」
バックミラー越しに見たXANXUSの表情からは何も読み取れなかった。しかしさほど不機嫌ではないことにスクアーロは安堵したのだった。