仮初に寒明け
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"お前が当主につく気がないのは知ってる。だが周りがな・・・"
「適当にふらふらするわ。そうしたらみんな諦めてくれる。」
"色葉が不安定だから、ついていてやらないと・・・。ナツキ、悪いが席を外してもらえるか?"
「あ、うん。そうね・・・。わかったわ。」
"ナツキ、もう少しの辛抱だ。"
「・・・・そうね・・・・・・」
"お前だって家族なんだから。"
ねえ、兄さん、
だったらどうして助けてくれないの?
********************
勢いよく起き上がると見慣れない景色が広がっていた。
そうだ、ここはホテルで、日本に来ていて・・・
(夢だ・・・・嫌な夢・・・・・)
時刻はおそらく深夜あたり。額には少し汗が滲んでいて、嫌な記憶を詰め込んだような悪夢を思い出しては辟易した。
「・・・XANXUS・・・・・」
右には眠っているXANXUSの姿があった。
そのことにひどく安心感を覚えた。
(・・・・好き・・・・)
愛想はないけれど、静かな優しさで寄り添ってくれる彼をたまらなく愛しいと思った。
また悪夢を見てしまいそうで、でもXANXUSがいれば平気な気がして、起こさないよう気をつけながら近づいた。
「・・・・どうした・・・?」
「あ、」
当たり前だ。殺し屋なのだから、気配には敏感らしい。深く眠っていたように見えたけれど、起こしてしまったようだ。
「嫌な夢を見て、」
「そうか・・・」
起こしてしまったことを謝ろうとする前に、XANXUSは納得したように私の体を引き寄せて腕の中に閉じ込めた。そして眠かったのだろう。微かな寝息が聞こえてきた。
その温もりで恐怖や不安が和らいで、代わりにXANXUSへ対する想いが溢れ出した。
「・・・・好き・・・・・」
声になるかならないかくらいの小ささで漏れ出た。もっとその温もりに縋りたくて、浅ましいとは思いつつ、XANXUSの胸に顔を寄せようとした。
「え、」
しかしそれは、肩に手を当てて体を少し離されたことで叶わなかった。
(起きてた・・・!?)
目を開けてこちらを見るXANXUSがいた。聞かれてしまったのだろうか?その顔からは感情は読み取れない。
「・・・・」
「・・え・・・?」
徐々に顔を近づけるXANXUSに、思わず反射的に目を閉じた。
するとすぐに、唇に熱を感じた。キスをされたのだと気付くまでに少し時間がかかった。
「眠れそうか?」
「え・・・あ・・うん・・・」
頭を軽く撫でながら、まるで何事もなかったかのようにそう尋ねるXANXUSにやっとの思いでそう答えると、「そうか」と言って、彼は今度は額に唇を落とした。
そして再び引き寄せられ、その腕の中にすっぽり収まってしまったと思ったら、また静かな寝息が聞こえてきて、今度こそ寝たのだろうと思った。
(・・・・・何か起こった気がする・・・・)
顔に熱が溜まって、思考が働かなかった。
それでもXANXUSの温もりと安心する香りでいつの間にか私は寝入ってしまった。
今度は悪夢を見ることはなかった。
******************
「ん・・・」
朝日が顔に当たって目を開けると、昨夜のままXANXUSの腕の中にいることに気づいた。
「起きたか。」
「・・・・・・」
少し見上げると、こちらは完全に目が覚めている様子のXANXUSがいた。
「い、いつ起きたの?」
そう尋ねると、チラリと枕元の時計を見て「20分前だな」とXANXUSは答えたのだった。
「起こしてくれればよかったのに・・・」
そうしたらXANXUSも無理にこの体勢を、と思ったところで昨夜のことを思い出して顔に熱が溜まるのがわかった。と言うか今更ながら、距離がかなり近い。
「・・・あ、えっと・・・」
「今日は・・・・・」
「え?」
XANXUSの手が伸びてきて、そのまま優しい力で頭を撫でられた。
「イタリアに帰るか?」
「・・・!」
「このままもう一泊したいならそれでもいい。それくらいなら融通は効くはずだ。」
XANXUSが気遣ってくれているのを感じた。
本当はイタリアに帰りたい。
日本での嫌のことは忘れて、イタリアで静かに暮らしたい。
けれど、XANXUSがそばにいてくれるなら、勇気が持てる気がした。
「XANXUS・・・・あの、あのね、」
「なんだ。」
ぶっきらぼうで、一切愛想はない。でも頭に乗せられた手はどこまでも優しかった。
「・・・もう一度・・・家に行ってみようと思う。私・・・ようやく、決心がついたの・・・・」
「・・・そうか。」
「それで、その・・・ついてきてくれたりする・・・?」
目の前のXANXUSの目がほんの少し細められて、彼はそのまま首肯してくれた。