仮初に寒明け
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(・・・私、XANXUSになんてことを・・・・・・)
少し冷静になって、先ほどのことを思い返すと、涙とはまた別の熱が顔に集まってきた。その理由も、ずっと前からわかっていた。
自分がXANXUSとしっかり向き合ったのと同じように、彼もまた、私にいつも寄り添ってくれていた。
今日だって、私が食べたいと言っていた些細な言葉を覚えていて、慰めるためにここに連れてきてくれた。
スクアーロや部下には随分と厳しいらしいが、私にはいつも優しかった。
「ナツキ、食えそうか?」
「あ、うん。・・・楽しみに、してたし・・・」
「そうだな。」
ホテルのスタッフに泣き顔を見せるのも嫌だろうと、好きでもないであろう人付き合いを買って出てくれたのだろう。
「・・・ありがとう・・・」
「いいから、さっさと食うぞ。」
リビングに出てみるとホテル自慢の夕食が目の前に並んでいた。
「わ、美味しそう・・・」
目を輝かせるナツキの姿にXANXUSはひとまず安心して、椅子を弾いた。
「ほら、座れ。」
「あ、うん。ありがとう・・・」
あまりエスコートされ慣れていないからなのか、XANXUSがするという珍しさからなのか、すごく嬉しく思う気持ちが湧きあがった。
「「!」」
例の幻とまで言われた肉のステーキを一切れ、ほぼ同時に食べて、XANXUSと目があった。
「すごく美味しい!なんでこんなに美味しいのかしら・・・」
美味しいものとは不思議なもので、どこか穴の空いた心を満たしてくれた。しかしその時間もあっという間に過ぎてしまう。
「お酒を・・・・あ、XANXUS、お風呂入りたいよね・・・。ごめんなさい、その・・・今から入る?」
本来であれば夕食前に入る予定だったのが、ナツキを慰めていたせいで叶わなかったのだ。
「・・・・・」
しかし一方のXANXUSはナツキを一人にさせることに一抹の不安を覚えた。不満も吐き出したし、夕食にも満足したため、だいぶ元気そうにしてはいるが、それでも家族から心無い扱いを受けたのは今日のことなのだ。
入浴はしたいが、一人にするのは、そう考えたところであることを思い出した。
「・・・少し待ってろ。」
「?」
XANXUSがホテルの内線でどこかに連絡をし出した。それから1分ほどして、扉から女性の声が聞こえた。
「30分ほどこいつを頼む。」
「かしこまりました。」
「???」
XANXUSが入浴のため姿を消し、女性スタッフと二人取り残される。
「ではマッサージ30分コースですね。場所は寝室でよろしいでしょうか?」
「・・・あ、はい。それで大丈夫です。」
ニコニコと品の良い笑顔を浮かべるスタッフはマッサージをしに来たらしい。そこですぐに、XANXUSが自分を一人残すことを心配して気を効かせたのだと察した。
(・・・優しいな・・・・。びっくりするから、何か一言は欲しいけど・・・・)
本日何度目かわからないXANXUSの心遣いへの感謝の気持ちが溢れる。
(う・・・そしてすごい気持ちいい・・・・。あー、天国・・・)
心地よさでウトウトしてくる。そこまで遅い時間ではないが、夜も更けているし、お腹いっぱい食べた後だから仕方がない。
いつの間にやらマッサージが終わって、XANXUSの気配がした。気づけばスタッフの女性も退室したようだ。
「・・・ん・・・あ、寝ちゃってたのか・・・」
「起きるのか?」
ベッドで体を起こすとXANXUSがそう声をかけた。ナツキはそのまま寝ようと布団の中に入るが、ふとある疑問が生じた。
(ベッドってここだけ・・・・?)
ものすごく今更なのだが、この大きなベッド以外に寝る専用の場所は見当たらない。XANXUSとは同じ部屋で寝たことはあるが、同じ布団で寝たことはない。しかし私が横になっているこのベッドの淵でXANXUSは寝酒らしきものを飲んでいる。
「一緒に寝るの?」
「あ?・・・・別に今更気にすることもねぇだろ。」
「それもそうかもしれないけど・・・」
確かに彼のいう通り、今まで何度も一つ屋根の下で夜を明かしたことはあるが、広いとはいえ同じベッドで寝るのはどうなのだろう。
(・・・なんか、普通に恋人みたい・・・・・)
利害の一致した契約相手だというのに、それ以上の気持ちをXANXUSに対して抱いている。
「消すぞ。」
「あ、うん。」
明かりを消すと、XANXUSが布団に入ってきたので、なんだか照れ臭くて端によって彼に背を向けて横になった。
「・・・おやすみなさい。」
「ああ。」
疲れていたのだろう私は、XANXUSの横で寝るのは緊張したがすぐに眠りについたのだった。