仮初に嵐
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神妙な面持ちのXANXUSに対して、ナツキは能天気な笑顔を向けた。
「あー・・・えっと、その、ごめんなさい!行けなくなっちゃった!あはは、まさか土壇場で断られるなんて思わなかったわ。えーと、どうしましょうね、代わりに良いホテルにでも泊まる?」
「ナツキ、」
「あ、請求先はうちでいいわ。迷惑料ってところね!XANXUSにわざわざ日本にまで来させてあんまりよね。あ、もしイタリアに帰りたかったらそれでもいいわ。」
「ナツキ、」
「なんかお姉さんがまた不安定になっちゃたんだって。嫌よね、全く。私が甥っ子になんかするとでも思ってるのかしら?」
あっけらかんと言ってのけるナツキではあったが、XANXUSにとってはその笑顔がむしろ見ていて辛かった。
「ナツキ、行き先は変えねえ。」
兄から帰宅を押し止まるように言われたのだろうことを察したXANXUSは、激しく苛立っていた。それもこれも、ナツキが楽しみにしていたのを知っていたからだ。
そのまま運転する手を止めないで、XANXUSは柳守家へと向かった。その間ナツキが何度も止めるよう促したが聞く耳は持たなかった。
「ナツキ様!?しかし、本日は来られないと・・・・」
「当主はどこだ。」
「XANXUS、待って。だめよ、脅しちゃ・・・・!」
家に着くや否や、XANXUSは門番に詰め寄った。予定を狂わされて気が立ったのだろうとナツキは思っていたが、そうではない。
「会わせろ。ボンゴレに楯突く気がねぇなら従え!」
有無を言わさぬ絶対的な権力で、門番は怯えながら奥へ家令を呼びに行った。
「お嬢様、XANXUS様・・・こちらへ・・・。」
ただならぬ緊張感の中、ナツキは生まれた家へと歩みを進める。
敷居を跨ぐのは実に5年ぶりだった。
何かが湧き上がってきて、それを堪えなければならない気がして、下唇を噛んだ。
久しぶりの実家なのにすごく居心地が悪かった。
XANXUSをとうとう本気で怒らせてしまったこと、帰省を断られたのにこうしてきてしまったこと、色々な思いが渦巻いて、つい俯いていると右手がXANXUSの手に包まれた。
「悪いがもう我慢ならねぇ。」
「・・・XANXUS・・・?」
予定を狂わせた張本人である自分に対して怒っていると思っていたが、そうだとしたらこの手はなんだろうか。よくわからなかったけれど、慰めるように包み込んでくれたその大きな手を、ナツキは握り返したのだった。
そのままXANXUSに手を引かれ、主人の兄が待つ部屋へと通された。
「・・・XANXUS君、この度は本当に、」
ナツキだけであればここに来るはずがないから、XANXUSが激昂して訪れたのだとすぐに海斗は察し、詫びを入れようとした。
しかし、それを待たずにXANXUSはナツキの手を話し、海斗の胸ぐらに怒りに任せて掴みかかった。
「XANXUS!?」
すぐさま仲裁に入ろうと、ナツキが駆け寄ろうとすると、XANXUSは空いている方の手でそれを制した。
「テメェ、いい加減にしろよ。」
恐ろしい威圧感でXANXUSは海斗に詰め寄った。
「なんでナツキは自分の家なのに帰れねぇんだ。」
「!!」
ナツキはXANXUSの言葉に目を見開いた。
ここでようやく、彼が怒っているのは、予定を狂わされたことではなく、自分のためなのだと察した。
「XANXUS、私は大丈夫だから・・・、その手を離して・・・・」
「黙ってろ。」
「!」
XANXUSが気が短いと言うのはスクアーロから何度も聞かされていたから知っていた。しかし、ナツキのことでこれほどまでに激昂するとは予想していなかったため、その威圧感にナツキもただ言われた通り押し黙ってしまった。
「血のつながった妹なんかより嫁が大事なんだな。テメェは。」
「!!」
ナツキは心臓にまるで針がささったかのような気持ちを覚えた。
「・・・そんなことはない・・・。ナツキも、色葉も俺にとってはかけがえのない家族だ・・・。」
海斗は声を絞り出した。
「あいつの顔を見てそれが言えるか!?」
XANXUSの怒声に海斗はつい閉口した。
「・・・XANXUS、もう・・・・止めて・・・。私は本当に大丈夫だし、これ以上は、ファミリー間の問題になってしまうから・・・ね?」
ナツキの嘆願にXANXUSは渋々海斗の襟口を掴んでいた手を離した。
そしてナツキが気づいた時には、すでに柳守の敷地を出ていたのだった。