仮初に嵐
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「よし!」
継承式から約1週間が経つ今日、晴れやかな心持ちでナツキは荷物をまとめていた。3日前に兄から男の子が産まれたと連絡があったのだ。ナツキにとっては初めての甥になる。
そしてXANXUSとの交際により、ナツキを後継ではなくボンゴレとのパイプ役に徹させた方が良いという声もだいぶ大きくなってきたようだし、後継候補を産んだことにより兄嫁の家での立場もようやく盤石なものとなってきているようで、ついにナツキは久しぶりに日本の実家へと帰省することを決めたのだった。
そこへガチャリと玄関の扉が開く音がした。
「あ、XANXUS、来てくれたのね。」
「ああ。」
先日の雨の来訪以来、またXANXUSを待たせるようなことがないようにと、彼には合鍵を渡していたから、鍵を開けて入ってきたようだ。XANXUSがいてくれた方が兄嫁の色葉が余計な勘ぐりをせず安心して過ごせるだろうと付き添いを願うと、面倒そうな様子を見せながらも頷いてくれたのだった。
「・・・・・多いな。」
「昨日つい買いすぎちゃって・・・・・」
産まれた甥への大量のプレゼントがそこにはあった。もらって困るものではないだろうと思って、つい調子に乗って買いすぎてしまったのだ。
「用意ができてんなら行くぞ。」
ため息をつきながらも玄関に置いていたプレゼントのほとんどをXANXUSが持ち上げ、部屋を後にしようとした。
「あ、ごめんなさい、ありがとう!」
その気遣いに感謝して、ナツキも慌ててXANXUSの跡をおい、空港へと向かうためヴァリアーの運転手が待つ車に乗り込んだ。運転手の彼は、ナツキの荷物を一緒に運んでやる主人の姿にギョッとしながらも、平静を装うよう勤め上げたのだった。
そのまま空港へ向かい、XANXUSに用意してもらった自家用機に乗り込む。彼の財力とパワーにはお世話になりっぱなしである。
兄にはXANXUSに最高のおもてなしをするように頼んでいるから、これまでのお礼もできるだろうと、ナツキは張り切っていた。実家の近所の老舗の酒蔵の日本酒が絶品なのだ。きっとXANXUSも気にいる。
そして約12時間の長いフライトを終え、ようやく二人は日本へと到着した。
「XANXUS、着いたよ。」
「・・・ん・・・ああ・・」
眠っていたXANXUSを起こし下乗する。そのまま車に乗り込もうとした時、運転手ではなくXANXUSが運転席に乗ったものだからナツキは驚いた。
「XANXUSが運転するの?」
「・・・テメェがするのか?」
「いや、そういう意味じゃ・・・・それに私あんまり得意じゃないし。」
「なら黙っとけ。」
「・・・・」
そう言われてしまっては黙るしかなかった。ここでナツキはだから機内で全然飲酒をしなかったのかと気づいた。最初から運転をするつもりだったのだろう。
XANXUSとしては融通が利くからこうしたに過ぎなかった。ナツキと一緒に過ごすのは気安いが、だからと言ってその家族もそうだとは限らない。なんなら話を聞く限り居心地は良くなさそうだと思っていたため、帰りたくなった時にすぐ出られるようにと運転役をかったに過ぎなかった。しかし、流石にそれをナツキに言うことは憚られたため口にはしなかった。
XANXUSの運転する車に揺られて20分ほどが経過した時、ナツキの携帯電話の着信が鳴った。
「兄さんだ。ちょっと出るね。」
そう断って、ナツキは電話を耳に当てた。
「あ、兄さん、今向かってるところ。あと二、三十分で・・・・え?」
XANXUSは助手席に座るナツキの顔がみるみる曇っていくことに気がついた。
「あ・・・えっと・・・・わかった。うん・・・XANXUSには正式に謝罪をしておいてね。・・・・・うん・・・・・・・・・ううん、大丈夫。心配しないで。わかってるから。・・・・・・じゃあ、また・・そのうち・・・・」
歯切れが悪そうにナツキは通話を切った。
「なんだったんだ?」
なんとなく予想はついてしまったが、XANXUSはできるだけ静かに、そう尋ねた。