継承式
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XANXUSの雨の日の来訪から1ヶ月が経った。
初めは月一の会合の予定だったはずなのに、気づけば毎週のように顔を合わせていた。
それを面倒に思うどころか、楽しみにしてしまっている自分にナツキは気づいていた。
(・・・放っとけないんだよね・・・・・)
子供のような大人の彼を思い出して、苦笑する。
どうかXANXUSが傷付かずに過ごせれば良いのに、そういつも思うようになっていた。
「XANXUS」
その日もXANXUSとの食事だった。
外食をして、ナツキの家で酒を飲みながら話をしたり映画を(主にナツキだけが)見たりして、別々に眠りにつく。
今日もその予定で、二人は食事を終えて、ナツキの家に向かっていた。
「あのスープが美味しかったんだけど、何のスープだったんだろ・・・」
「さあな。また行けば良いだろ。」
「そうね。」
他愛無い話をして、のんびり歩きながら帰路に着く。
二人はナツキの家に帰る途中にある公園を通っていた。
静かな公園に、二人の話し声だけが響いていた。
「・・・ナツキ、」
「ん?」
歩みを止めて、静かな声でXANXUSは呼びかけた。
「継承式が、ある。」
「・・・・・うん。」
XANXUSではなく沢田綱吉のボンゴレ10代目ボスの継承式。XANXUSが出席したくないというのは自明だった。
「私に、何かできることはある?」
「・・・・出席してほしい。」
「もちろん。」
ナツキは即答した。彼の不安を少しでも取り除きたかった。
「じゃあドレスを新調しないとね!お偉方がくるでしょうから張り切らないと!」
少し重くなってしまった空気を払拭しようとナツキは明るくそういってのけた。そのナツキの気遣いに気づきながらも、XANXUSはそれには触れなかった。
「俺が用意する。」
「え?いいよ、そこまでしなくていいよ。面倒でしょう?」
「・・・・だが普通はそういうもんだろ。」
「それは・・・・」
普通の"恋人"ならそれは普通のことだ。だがナツキとXANXUSは違う。仮初の、利害の一致による恋人関係であるだけだ。
その後うまいこと言いくるめられてしまって、ナツキは次回の逢瀬の前にでもXANXUSと服屋に行くことになってしまった。
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あっという間に継承式当日を迎えた。
先日XANXUSに貢がれてしまったのは、彼の瞳と同じ色の真っ赤なドレス。ナツキは手に取った時は派手すぎるのではないかとも思ったが、着てみると存外馴染んでいて、自身の黒髪とのコントラストも映えている。
「きゃああ!ナツキちゃん、かわいいわぁ〜〜」
「・・・・・ありがとうございます。」
メイクを済ませて立ち上がると、背後にはXANXUSの部下のルッスーリアがいた。ここは、ヴァリアーが継承式に出席するために確保したホテルの一室である。
やたらと濃いヴァリアーの面々に挨拶を済ませたのは30分ほど前。スクアーロとXANXUS以外は完全に初対面で、彼らはナツキとXANXUSが仮初の恋人であるということはご存知らしい。
「まだか?」
「もう!ボスったら!乙女の部屋にはノックをするものよ!」
前触れなく開いた扉から現れたXANXUSに対してルッスーリアが向けた言葉は誰に触れられることもなく宙を漂った。
「ごめんなさい、待たせたわ・・・。そういえば言い忘れていたけどうちの家の者も出席するみたいだから、あいさつに来ると思う。」
「ああ。」
ナツキの兄とその部下が出席するのは何も不思議なことではないし、それによって特段手間が増えるわけでもない。ただ、ナツキの兄海斗にはバレているがその部下にはしっかり恋人同士だと見せつける必要はあるだろう。
「横にいりゃいいんだろ。」
「ええ。」
「・・・さっさと行くぞ。」
スクアーロが運転席で待つ車に、ナツキとXANXUSは乗り込んだ。その一連の様子を見ていた他の幹部たちは顔を見合わせた。
「本当に付き合っちゃえばいいと思うのよねぇ。」
「しし、俺もあの二人お似合いだと思う。おかげで最近のボス、あんまり機嫌悪くなんねーしな。」
部下にそんな風に噂されているなんて知ることもなく、車内でXANXUSは不意に顔を顰めるのだった。