仮初と本物
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「もしもし、スクアーロ?」
XANXUSが入浴している間に、と思ってナツキはスクアーロに電話をかけた。
『あ?』
「・・・今うちにXANXUSが来てるんだけど、この事って把握してる?」
『お前んちに?ボンゴレ本部に行っていたはずだがぁ・・・・』
その言葉でナツキはボンゴレで何か嫌なことがあったのだろうと察した。
「・・・そっか。もし、急な仕事とかがないなら、XANXUS預かっていい?」
『それは願ったり叶ったりだぁ・・・!本部帰りは・・物がよく飛ぶ・・・』
なるほど、ボンゴレ本部に行くといつも機嫌を悪くするのだな、とナツキはスクアーロの苦労を察する。
だが先程のXANXUSは機嫌が悪いのとは違っていたような気がした。
「・・・じゃあ、何かあったら連絡してね。」
『それはこっちのセリフだぁ。暴れたら追い出していいからなぁ!』
普段どれほど暴君なのだろうかと、ナツキは苦笑をこぼし、スクアーロに別れを告げた。
「さて、」
突然のXANXUSの来訪に、少し困る。
というのも、いつもは彼が来ることに合わせて何か上等なものを用意しておくのに、手元にはごくごくありふれた食材だけ。
自分が食べるものを適当に作って食べようとしていたのだ。ウイスキーだけは上等な銘柄がストックされている。その上等なウイスキーのお供に自分の手料理とはいかに、と思ったが、この雨の中、再びXANXUSを外に連れ出すのも憚られる。
「まあなんか適当に作るか。」
満足させることは叶わないだろうが、腹を膨らませることはできる。そう思い、ナツキは料理を始めた。
少しして、XANXUSが風呂場から出てきた。
初めて見るナツキの料理姿に少し目を見開くXANXUSであったが、そういえば料理をするにはするとナツキが言っていたことを思い出す。
「もうすぐできるから、ちゃんと髪の毛乾かしておいで。」
せっかく暖まったというのに髪が濡れているXANXUSを見て、ナツキは苦笑をこぼしそう言った。渋々それに従うXANXUSを見送り、再び夕食作りを再開する。
ドライヤーの音が止まった頃に、ちょうど準備が整い、皿をテーブルに並べていく。
XANXUSはてっきりナツキは料理は上手くないのだと思っていたが、それほど時間をかけずに目の前に並べられて品を見る限り、上手い方なのではないかと思った。
「ごめんね、あんまりいいもの使っていないんだけど・・・あ、ウイスキーはあったんだった!」
ナツキはそう言ってキッチンへ向かった。その間に、XANXUSは目の前にあった肉料理をパクりと口に含んだ。
「・・・・・」
もちろん普段自分が口にしているものよりは劣っていた。それでも、嫌いではなかった。
「あ、もう食べてたのね。お味は?」
「・・・食える・・・」
「もう、失礼ね。」
口ではそういうが怒ったような素振りは見せず、ナツキはXANXUSのためにとボトルを注いだ。美味いとは言わないまでも、XANXUSが食べるのをやめていないのでそれだけで満足だった。
「直前でもいいから連絡してくれれば何か良いもの買ってきたのに。」
それに連絡さえあれば、XANXUSをびしょ濡れにさせる前に帰ってこれたかもしれない。
「別にこれでもいい。」
「!」
"これ"が意味するのが自分の手料理だとわかり、ナツキは嬉しく思った。プロの料理ほど美味しくはないと明らかなのに、XANXUSが世辞を言うタイプの人間ではないとわかってきたからこそ、素直にその言葉を受け入れられた。
食事をしながら、ナツキが他愛もないことを話す。
そのうちに、さっきまでささくれ立っていた気持ちが落ち着いてくるのがわかった。
食事とその片付けを終えて、ナツキは風呂に入っていた。
XANXUSはその間もナツキが用意した酒を少しずつ飲んでいた。
(・・・なぜ俺は・・・今ここに・・・・・)
窓から街を眺めながら、自分のナツキに対する気持ちが気安さだけではないということを、XANXUSは自覚し始めていたのだった。