仮初と本物
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その日XANXUSは9代目に呼び出され、一人ボンゴレの本部へと赴いていた。
「ツナ君の継承式を今度正式に行うことになった。」
それは2年前、開催はしたが事故が起き中断されたものだった。後になり、その継承式も、敵を炙り出すための口実に過ぎなかったことを知ったのだった。
「・・・それをわざわざ言うために呼び出したのか・・・!」
苛立ちながらそう尋ねると9代目は頷いた。
「そうだ。XANXUS、必ず出席しなさい。自分が出席することの意味はわかるね?前回のように来ないと言うのなら、周りが謀反の疑いを君にかける。」
そんなのは知っている。
だがXANXUSが継承式に参加すること、それが沢田綱吉を10代目として認めることを意味してしまうことも知っていた。
「部下の出席は認めただろうが・・・・!!」
苦肉の策で、前回はスクアーロたち幹部を式に参席させた。それが、XANXUSにできる最大限の譲歩と、彼のプライドを守る術だった。
「来ないと言うのなら、ヴァリアーの解体を命じざるを得ない。いつまでも、お前のプライドばかりを尊重していられない。わかるね。」
その言葉にXANXUSはついに我慢が効かなくなって怒鳴り声を上げた。
「テメェがいつ俺のプライドを尊重なんてしやがった!あ!?」
「・・・・・・もう子供じゃないんだ。いい加減、ツナくんを認めてやりなさい。」
「るせぇ!カスが!!黙れ!」
XANXUSは座っていた椅子を蹴り上げて、その場を後にした。
これ以上一緒にいたら、引き金を引きそうだった。
外に出ると、雨がぽつぽつと降っていた。
その天気にも苛立ちながら、XANXUSはヴァリアーの迎えの車に乗り込んだ。運転手を担っていた部下はXANXUSの機嫌の悪さを察して、ビクつきながら運転をしてヴァリアーの城へと向かう。
道中、見覚えのある町並みが目に入った。
「・・・止めろ・・・。」
「は・・・?」
「止めろっつったんだ!何度も言わせるんじゃねぇ!!」
「は、はいっ!!」
訳もわからず、運転手の男は車を止めた。XANXUSはバタンとドアを開け、車と運転手をおいて、どこかへ向かっていた。
そこはナポリの街だった。
ナツキの顔が思い浮かんで、この街に住んでいる彼女に無性に会いたくなったのだ。
ヴァリアーに戻って、継承式のことをスクアーロ達に伝えるのが嫌だった。
そしてナツキの側は、どこよりも気安いと知っていたから、足がそこに向かった。
雨の中歩いて、ナツキの住むマンションに着く。
そこでXANXUSはインターホンを押すが、返事はない。留守にしているようだ。
考えてみれば、約束をせずにナツキに会ったことはない。
契約上の関係だ。それが当たり前だった。
そのことに、やけに辛い気持ちになった。
それでもXANXUSは待った。
軒下で待ってはいたが、次第に強くなる雨はそんな屋根などお構いなしにXANXUSに叩きつけられた。
濡れても、気にせずに、XANXUSはいつ来るかもわからないナツキを待ち続けた。
1時間は経っただろうか。
ピチャピチャと雨の音に紛れて、足音が聞こえた。
「XANXUS・・・?」
ナツキだった。
「・・・どうかしたの・・・・!?ああ、びしょ濡れじゃない・・・!」
ナツキはその姿を見て動揺した。
XANXUSが雨に濡れていたこともあるが、それだけではない。
頬が濡れていて、泣いているように見えたのだ。
それは涙ではなく雨であるとわかるのだが、それでもXANXUSがひどく憔悴して、自分を頼りにしてきたのだとわかった。
「とにかく入ろう。ね?」
ナツキの手には食材の入った袋が握られていた。
買い物に行っていたんだなとぼんやりXANXUSは考えた。
そしてナツキの部屋まで行くと、XANXUSはすぐに風呂場へ押し込まれた。
「着替えは用意するから、すぐにあったまって。風邪ひいちゃうわ。」
優しくそう言うナツキにXANXUSは胸が握り締められるような苦しさを感じた。しかしそれは、不思議と不快なものではなかった。