仮初のパーティーin日本
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「XANXUS君も変なのに巻き込まれたね。済まなかった。」
「・・・・・いや、俺も同じことをコイツに頼んだんだ。」
それだけで海斗は色々と理解したらしい。
「余計なことを・・・と言いたいところだが、正直助かった。すでに、お前をボンゴレとのパイプ役にどうかという声が聞こえてきている。・・・・・このところ、色葉が不安定でな・・・・。」
「当然よ。初めての妊娠なのよ。過敏になるのも無理ないわ。」
ナツキがここにきて、この仮初の恋人作戦を実行したのは、義姉が妊娠したことに関連していた。当主の子を身籠ったのに、その当主が廃嫡されるかもしれない、その余波が自分と子供に襲いかかるかもしれないと、不安であったに違いないのだ。
事実、先程ナツキがXANXUSと仲睦まじい姿を見せると、義姉は大層安心していた。
「俺がもう少しなんとかできたらこんなことさせなくて良かったのにな・・・。今だに、柳守は武の家系だから、強者こそが当主になるべきだという声はあるから困ったもんだ。」
「・・・・時代は変わっているのにね。・・・じゃあ私たち、目的は果たせたようだからもう行くわね。長居してもいいことはないだろうから。」
ナツキはそう言って立ち上がり、XANXUSもそれにつづいた。
「ナツキ、」
扉に手をかけ、外に出ようとするナツキを海斗は引き止めた。
「いつでも帰ってきていいんだからな。」
「・・・うん・・・・。もう少し、落ち着いたらね。」
パタン、と扉が閉まった。
ホテルを出て、ナツキはチラリとXANXUSを見た。
「ごめん、あんまりご飯食べられなかったね。今からどこか行く?」
「・・・肉。」
「フフ、わかったわ。」
ナツキは手際良くタクシーを呼んで、XANXUSが好みそうな料亭へと彼を連れていった。
「・・・兄さんには参ったわ。こんなに簡単にバレるとは思わなかったの。」
苦笑しているが、本当に困ってはいないようだ。兄弟仲は良いらしい。
それが余計に、ナツキの複雑な立場を際立たせていた。
「兄貴は随分と優秀なようだな・・・」
XANXUSがぽつりと呟いた。
それは一眼で自分たちの偽りを見抜いたこと。そして、上に立つものの威厳を備えていたことへの率直な感想だった。
「・・・そうなの。兄の手腕は会ってわかったわよね?私よりずっと、上に立つものとしての能力を備えてる。でも、武という一点においてのみ、私の方が優れてる。・・・・・兄よりも私の方が扱いやすいから私を当主にと考えている者も少なくないわ・・・・・・・」
ナツキは寂しそうにそう言った。
「仲は悪くねえのにな。」
「・・・・そう・・・。そうなの・・・・」
困ったように笑みを浮かべてXANXUSを見るその姿は、なんだかとても痛ましかった。
ナツキと兄の最後に交わしたやりとりから、おそらくほとんど里帰りもできていないのだろう。当人同士は、何もいがみ合ってなどいないのに。
「ナツキ、お前が望むなら・・・・」
「お待たせいたしました。」
XANXUSが言葉を続けようとしたその時、店員がお盆を持って現れた。和牛のステーキがその上には乗っている。
「わ!美味しそう〜」
先程の空気から一変して、ナツキは嬉しそうな笑顔を浮かべた。XANXUSのためと言ってここに連れてこられたが、本当はただ自分が食べたかっただけなのでは、とさえ思う変わり身の早さだった。
ナイフとフォークを器用に使い、一口サイズの肉をナツキは口に運ぶ。
「ん〜〜〜〜!!」
その幸せそうな様子を見て、XANXUSはよくわからない安心感を覚えた。
「あ、XANXUS、さっき何言おうとしたの?」
先程口から出てきそうになった言葉を思い出し、XANXUSは言うかどうか少し悩んだ。そしてそれを告げることを選んだ。
「お前が望むなら、嫁にしてやってもいい。」
ナツキは目を見開いた。
そして、にっこりと微笑んだ。
「フフ、ありがとう。元気づけようとしてくれたのね。素敵な提案だけど、そこまで迷惑をかけるつもりはないから安心して。」
冗談だとナツキは捉えていた。実際にそれが冗談なのか、本気なのかはXANXUSすらも計りかねることだった。
「これ、うめぇな。」
「でしょ!」
とりあえずナツキが笑っているようだから、それでいいかとXANXUSはそれ以上考えるのをやめた。
そしてその楽しいひとときを楽しむのだった。