変わらない君
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6年も会うことがなかったナツキにこの短期間で2回も会って、でもナツキは変わっていて・・・。
大切な思い出の中のナツキが、変わってしまった彼女の姿に塗りつぶされてしまうのが嫌で、俺はいつの間にか、昔ナツキとよく散歩に来ていた森の中にいた。
確かこっちにいくと小さな湖があって、その周りに少しだけ咲いていた花で、あいつは器用に花冠を作ってたんだ。
「!」
湖の近くまで来るとあの頃はなかった場所に、花が咲いていた。
なんとなくそれを摘んで、昔のナツキを思い出しながら花冠とやらを作ってみたくなった。
「・・・?」
しかし花々は繋がる事なくバラバラと手から落ちていく。
そうだ。結局昔もうまく作れなかったんだ。
だがもうあれから6年も経つ。
もう少し頑張ればできそうな気がして、また挑戦していると人の気配がした。
「ナツキ・・・・・?」
そこにいたのはなんとナツキで、俺は咄嗟に手に持っていた花を後ろ手に隠した。
「「どうして・・・」」
お互い心底驚いて、同じ言葉を同時に吐き出した。
「・・・プ」
「?」
どうやらナツキは言葉がかぶってしまった事になのか、俺の驚いた顔になのかはわからないが、我慢できずに笑い出した。
「あはは、だめだ。もう。」
困ったように笑うその顔は、記憶の中のナツキと全く同じだった。
その笑顔に心臓がギュッと掴まれるようになるこの感覚も、実に6年ぶりだった。
「で、こんなところで何やってんの?」
笑いがやんだナツキは思い出したようにそう尋ねてきた。
「・・・いや・・・」
口ごもる俺にナツキは段々と訝しげな顔を見せた。
お前とのことを思い出して、こんなもの作ってたなんて言えるわけがねえ。
「・・・・・何を持っているの?」
そういうナツキからは、何かを恐れるような緊張感が伝わってきた。
まさか、武器でも隠し持ってると思ってるんじゃねえだろうな。
そんなものではない。
だがくだらなすぎてそんなこと言えない。
「ち、ちげぇっ!!危ないもんじゃねぇっ!!!」
そう言うと、先ほどまで笑顔を見せてくれていたはずのナツキは、怖がったように体を震わせた。
「ちげぇ!!本当に・・・!怖がらせるつもりは・・・・!」
そう言うとナツキは、また少し困った顔をして話し始めた。
「・・・怖がっていないわ。驚いただけよ。」
「は?」
驚いただけ?
なぜかと思うと、顔に出ていたらしくナツキはその理由を答えた。
「声が大きいのよ、あなたは。」
"声が大きいよ、スクアーロ"
困ったように微笑んで、昔のようにお前はそう言った。
なんだ、お前、変わってなかったんだな。
きっとずっとそこにいたんだ。
思い出なんかじゃなくて。
大人の仮面をつけていたかもしれないが、中身はずっと、俺の知ってるナツキだったんだと、ここでようやく気がついた。
そう思うと、まるで昔のように、
いや、昔以上に、ナツキを愛しく思う気持ちが湧き上がってしまった。
「・・・何これ?」
掌の中を見せると、眉根を寄せてそう言うナツキ。
「なんか、昔お前が作ってたろぉ・・・・。気が向いてやってみようと思っただけだぁ。」
「・・・・じゃあもしかしてこれ、花冠なの・・・・?」
「わ、悪いか!?」
いつかのやり取りのように、揶揄われた気がして、きっと俺は今顔を赤くして声を荒げたんだろう。
目の前のナツキはペタリとすぐそばの地面に腰を下ろして手のひらを見せた。
なんでこいつも花を持ってるのかと思ったが、それは俺のものとは違って花束のようになっていた。
その花束をバラしてナツキはいつかのように俺に手本を見せた。
「こうだってば。」
隣に座って、近い距離でその手元を見る。
夢中になって、子供のように花をつなぎ合わせるその姿は、やっぱり俺の知ってるナツキだ。
「ほら、ここを通して・・・・」
パッと顔を上げたナツキ。
そうだ。確か俺は、ここでナツキと初めてのキスをした。
そんなことを思い出すと、目の前のナツキの顔が徐々に赤く染まるのが分かった。
あの時真っ赤になったのは、確か俺の方だ。
キスをしてみたいけど、いつどうすればいいのかとばかり考えていた頃だった。
「ナツキ・・・・・・」
「まって・・!スクアーロ、何を・・・・」
あの時とは少し違うけれど、ナツキの唇の引力は変わらねえんだな、なんて馬鹿なことを考えながら、俺はナツキにキスをしてしまった。
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