変わらない君
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「う゛おぉい!ナツキ!いるかぁ!!?」
「声が大きいよ、スクアーロ。」
いつもより少しだけ高い声が私の口から出た。
ああ、これはきっと夢だ。
「・・・・何してんだぁ?」
「んー、花冠作ってる。」
18歳の私は、その時たまたま子供達が遊んでいるのをチラリと見て、不意にそれを作りたくなったんだ。
「何が楽しいんだぁ!?」
「たまにやると楽しくない?こういうの。」
口を真一文字にするスクアーロ。その髪はまだ肩より少し長いくらい。
「そうかぁ・・・?」
「スクアーロは出来なさそうだもんねぇ・・・」
そう言うとムキになって、私と同じように花を摘んで、あなたは一生懸命花冠を作ろうとしたんだ。
でも不器用で、どうしても花どうしがつながらなくて、手のひらにはクタクタになった花の残骸が残ったんだ。
「こうだよ、ほら。」
「!」
近づいて作り方を教えようとすると、あなたはその距離に照れて、耳まで真っ赤になったんだ。
その真っ赤な顔のまま、スクアーロは私にそっとキスをした。
私のファーストキス。
でももうその感触は思い出せない。
ただ、あの時の私は、すごくすごく幸せだった。
*******************
ピピピピ、と無機質な音が響いて私は目を覚ました。
「・・・・・懐かしい・・・」
美しい思い出と、切ない現実とのギャップにほんの少しの悲しみを覚えた。
その日は何もすることがなかった。
夢を見たせいだろうか。
もう一度あの場所に行ったら、色褪せてしまった初恋の思い出が綺麗になりそうで、
気づいたらその地に私は赴いていた。
「・・・何してんだろ私・・・・・」
そう独りごちて、郊外の森にある小さな湖の周りを歩く。
時期はちょうどあの時と一緒。
6年が経ち、一部にしか咲いていなかった野花は見渡す限りの花畑へと変わっていた。
「綺麗・・・・」
せっかくだから家に飾るように少し摘んでいこう。
何本かを手折り、小さな花束になっていく。
「フフッ」
子供もみたいなことをして、何をしてるんだと思いつつも、楽しくなってきて思わず笑みが溢れた。
「ナツキ・・・?」
「!」
後ろから突然名前を呼ばれ、慌てて振り向くと、そこにはスクアーロが立っていた。
「「どうして・・・」」
全く同じ言葉が同時に出て、二人で目を丸くさせた。
「・・・プ・・・あはは、だめだ。もう。」
なんだかアホらしくてついつい笑いを堪えきれなくなってしまった。
スクアーロはまだ驚いているようだった。
「で、こんなところで何やってんの?」
笑いが止まって、少し落ち着いたのでそう聞いてみた。
「・・・いや・・・」
「?」
そういえばよく見てみると、スクアーロは両腕を背中に回して、まるで何かを隠しているように見えた。
「・・・・・何を持っているの?」
まさか銃なんかではあるまいな。
いや、剣士だから刀かもしれない。
もしかすると、この近くで仕事でもあったのだろうかと少し警戒する。
その警戒に彼も気付いたようで、慌てたように弁明し始めた。
「ち、ちげぇっ!!危ないもんじゃねぇっ!!!」
「っ!」
突然大声を出すものだから、驚いて体がびくついてしまった。
「ちげぇ!!本当に・・・!怖がらせるつもりは・・・・!」
余計に慌てそう言ったスクアーロに、何か勘違いをさせているのだと気づいた。
「・・・怖がっていないわ。驚いただけよ。」
「は?」
「声が大きいのよ、あなたは。」
スクアーロはなぜか一瞬動きが止まって、それからそっと背に隠した両手を見せた。
「・・・何これ?」
その掌の中には摘まれた花がぐちゃぐちゃになって握られていた。
「なんか、昔お前が作ってたろぉ・・・・。気が向いてやってみようと思っただけだぁ。」
「・・・・じゃあもしかしてこれ、花冠なの・・・・?」
「わ、悪いか!?」
耳まで赤く染まったその顔に、思い出の中のその姿が重なった。
不器用なのは義手のせいか、それとも元来そういうタチなのか。
少なくとも、相変わらず花冠は作れないらしい。
「・・・こうだってば」
地べたに座って、それまでに摘んでいた花束をつなぎ合わせて花冠に変えていく。
「ほら、ここをこう通して・・・・・・!」
隣に腰を下ろしたスクアーロに見せようとしたら、思ったよりその顔が近くにあって驚いた。
まるで、あの時みたい。
でも、あの時と違うのは、今顔を真っ赤にさせてるのは、スクアーロじゃなくて私だということだ。
自分の顔が火照っていることに気づいて、余計に恥ずかしくなりさらに顔が赤くなるのがわかる。
「ナツキ・・・・・」
それに気づいたスクアーロが、どういうわけか顔を近づけてきた。
「まって・・!スクアーロ、何を・・・・」
抗議を聞き入れられることはなく、腰に手を当てられて、いつの間にか私の唇には彼のそれが重なっていた。
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