変わった君
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あの再会から約1ヶ月が経った。
私の生活には何も変化はない。
いつものように依頼された情報を調べるだけ。
今日もそれは変わらない。
ただ、珍しく対面でのデータの受け渡しを希望されていた。
かなりやばい情報ではあるから、特に不思議には思うことはなく、待ち合わせ場所のバーへ向かった。
「・・・何してるの?」
そこで待っていたのは、つい最近6年ぶりの再会を果たしてしまった元彼。
そんなスクアーロも予想していなかったようで、目を見開いていた。
「な・・・?お前がじょうほ・・・」
「シーーっ!!」
「!・・・・悪ぃ・・・」
何年殺し屋をやってるんだ、この男は。
取引がばれたら色々とまずいというのに。
「・・・とりあえず、これ。」
「おう・・・・」
側から見たら恋人にプレゼントを渡しているようにしか見えないだろう。
男性を介してくれと頼んだら元恋人が現れるとは思わなかったが、まあいい。
・・・気分が悪くなったフリでもして帰ろう。
「私、かえ・・・」
「お客様、お飲み物はいかがなさいますか?」
・・・・・・・さて、どうしようか。
ものすごく帰りたいけれど、このタイミングで、プレゼントを渡すだけ渡して帰るのは印象に残ってしまうし、誰かに怪しまれてもまずい。
「俺と同じのでいい。」
「かしこまりました。」
スクアーロも同じ考えなのだろう。
店員は注文を受け取ると満足そうにその場を去った。
「・・・一杯だけね。」
「ああ・・・」
気まずいのは否定できないが、いい大人なのだし、一杯くらいは付き合える。
スクアーロを見ると、今日はあのパーティーの時とは違い、長い髪は束ねられていた。
「まだ切ってなかったの?」
「ああ。」
髪を切らない理由は知ってる。
知り合った頃のスクアーロは、ちょうど髪を伸ばし始めた時だったから。
「てめぇは・・・またずいぶん短くしたんだなぁ。」
「あなたよりはね。」
昔は伸ばしていた髪も、今では肩よりも高い位置にある。
「・・・楽よ。おすすめするわ。」
そういうとスクアーロは少しだけ眉間に皺を寄せた。
切らない理由を知っていてそんなことを言う私を不快に思ったのだろう。
「変わったな。」
「・・・・・お互い様よ。」
再び沈黙が流れた。
「お待たせいたしました。」
そこへ店員が漸くドリンクを持って現れた。
時間にしては数分だろうけれど、ずいぶん長く感じてしまった。
「ありがとう。」
そのあとは30分くらい当たり障りのない話を適当にして別れた。
"変わったな"
一人で帰路に着くと、彼のその言葉が何度も頭の中で再生された。
「・・・・お互い様だよ・・・・」
私の知ってるスクアーロは、いつも無邪気に剣を振り回して、いつも馬鹿みたいな大声を出していて。
あんなつまらなそうな大人びた雰囲気を出すような人じゃなかった。
上司の為と、私を放っておいて強さを求めるあなたを止めなかったのは、そんなところが好きだったからだ。
でももうそんな彼はいないみたい。
昔の話だし、もうスクアーロを好きだとかそんな気持ちは忘れてしまったけれど、なんだか切ない気持ちになった。
綺麗な初恋のままで終わって欲しかったのに、こんなちょっとした再会で、その思い出に泥がついてしまったような気分。
「・・・最悪・・・」
そう独り言を呟いて、静かに家の扉を開けた。
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