ワールドリーグカップ開始!
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「大丈夫だ。ナツキ」
ワタルはナツキに言い聞かせるようにそう言い続けた。キバナが居た堪れなくなっていると、ちょうどそこにレッドが入ってきた。
「・・・ワタルさん、屋上にアーマーガアタクシーを手配できました」
「ああ。ありがとう。ナツキ、関係者通路から行けるから大丈夫だ。誰にも会わずにホテルまで送ってくれる。レッドくんと先に行ってくれるか?俺はこの後用があるから」
ナツキはコクンと頷いて、レッドに着いていった。控え室にはワタルとキバナが残された。
「・・・驚いただろう」
ワタルが漸くキバナをその視界に入れたようだった。
「ナツキのやつ、どうしたんだ?あんなすげーバトルの後なのに、真っ青になって・・・・・」
「勝手にあまり詳しいことは言えないんだが、ナツキはファンが苦手なんだ。昔いき過ぎたファンが居て、それがきっかけで公式バトルから遠ざかっていたんだ」
ワタルからの説明を聞いて漸くキバナは納得した。ナツキが青くなったのは、バトルの後のスタジアムの自分を称える歓声だったのだろう。そしてそんなナツキに追い討ちをかけるように、キバナはエントランスにいた新しいファンの話をしてしまった。
「・・・悪い。知らなかったとはいえ、ナツキにファンが増えるなって言っちまった・・・・・・・」
「そうか・・・・。いや、キバナが言わなくてもいずれこうなることは誰にでもわかっていた。ナツキは、トレーナーとしてかなり魅力的だからな・・・・・・」
キバナは閉口した。タチの悪いファンというのはどこにでもいる。ナツキはかなり強い。それに加え、容姿も良かった。その見た目と、バトルでの強さのギャップがまた受けるのだろうな、とキバナは思った。
ここでふと、目の前のワタルが心配そうにはしていたがどこか嬉しそうにも見えることに気がついた。
「?」
「・・・ナツキはやっぱりバトルが好きなんだと今日改めて思ったよ。実は今大会はナツキが復帰するにはもってこいだと思ったんだ。ガラルはバトルを興行としているからファンとの付き合い方をよく知ってるトレーナーや関係者が多いだろう?キバナも、もしよかったら気にかけてやってくれないか?」
「ああ。もちろんだ」
なるほどな、とキバナは思った。確かにガラルはその辺りは他の地方よりもしっかりしているかもしれない。自分もファンとの付き合いは上手な方だと思う。
「ありがとう。じゃあ、俺はナツキが気になるからホテルに戻るよ」
「おう」
*******************************
『メッセージロト!』
その日の夜、キバナのスマホロトムにメッセージが届いた。送り主はナツキだ。
"今日は心配かけてすみませんでした。もう大丈夫です。"
キバナは思わずメッセージアプリの通話ボタンを押した。
『・・・もしもし?キバナさん?』
「おう。もう調子は良さそうか?」
電話口の声はいつも通りのように聞こえた。
『はい。ご心配をおかけしました』
「・・・ああ。その、なんだ、ワタルから、少しだけ事情を聞いた。」
もし勝手に知っていたら嫌な気がするのではないかと思い、キバナは白状した。ナツキはすでにそのことをワタルから聞いてるようで、特に驚いた様子も咎める様子もなかった。
『・・・昔、嫌なことがあって、注目されるのが苦手になってしまったんです。バトルが好きでトレーナーになっただけなのにどうして?って、子供の私には耐えられなくて・・・・・・』
キバナは黙ってその話を聞いた。一流のトレーナーであるキバナ自身も似たような悩みを抱えた時期があった。周りの変化についていけなくて辛い思いをしたこともある。自分はただ、バトルを楽しみたいだけなのに、と。
『・・・・・でもやっぱり、大舞台でバトルをするのは楽しくて、私のポケモンも同じみたいです。今日は、情けないところをお見せしましたが、もう、大丈夫です。次は、最後まで決めてみせます』
決意に満ちた声だった。ナツキがそういうと電話口から、それに応えるようにポケモンの声が聞こえた。ナツキのパートナーたちだ。キバナはつい笑ってしまった。
「ハハ、みんなして頼もしいな。ナツキ、頑張れよ。決勝で会おうぜ」
『はい!』
そうして通話が切れた。部屋の奥からキバナのポケモンであるヌメルゴンがのそのそと歩いてきた。
「あー、なんか他に言うことあっただろ、俺・・・・」
「ヌメ?」
ぬるぬるのヌメルゴンの体を撫でながらそう呟いた。
「俺を頼れよ、とか。あー、でもまだそんなに親しくないのに気持ち悪いよな・・・」
ガシガシを頭をかきながらキバナは自分の気持ちに向き合った。
「普段とバトルのギャップにグッときたと思ったら、ちょっと弱くて、でも強くてって、なんなのアイツ・・・・・・・」
「ヌメ〜」
キバナの独り言に返事をしているのか、撫でられて心地よいのかヌメルゴンは間延びした声を発した。
「・・・ナツキのこと好きになっちまった・・・・・・・・」
「ヌメ!」